266話
ー冥府ー資料課の資料室ー
エンラ様に着いて資料課にやって来ましたよ。そこには、沢山の本棚があり、その中には、沢山の巻物が山積みになって居たのです。
「ふぁ~!沢山の巻物の山ですね~」
「そうですね。これが全て現在冥府で管理している魂人間の人生史です。こちらは、これから裁判に掛ける人間の人生史、そしてこちらは、裁判で地獄行きになった人間達。転生が決まった人間の人生史は、こちらにありますが、定期的に処分しています。そしてリアさんの人生史はこちらで保管しているかと思います」
案内されたのは、物置見たいな小さな部屋です。
そこの巻物は少し埃が溜まっていて、巻物も色褪せているのでなんとなく放置されてる感じがしますね。
「エンラ様ここは?」
「こちらは言わば事故案件の人生史を集めた部屋です」
「事故案件?」
「はい。冥府にて裁判不能になった人達の事です」
「例えば、こちらは叔父上が地上で倒した咎人となった人間達の人生史です。他にも、叔父上が気に入れて、こちらの人間を不老不死に戻してしまったので冥府に来る事が無くなったり、他にも…」
そう言って、エンラ様が巻物の説明をしてくれますが、事故案件には父様が色々と関わっている見たいで、なんか娘として申し訳ないですよ。
「えっと…。なんか父様が色々と迷惑を掛けてごめんなさい」
「いえ。セリさんが謝罪する事ではありません。それだけ叔父上が地上で咎人となった人間を地獄に落として居ると言う事です。それに父だって気に入った人間を冥府で官吏として働かせてますから、叔父上だけが事故案件を作っている訳でもありませんよ」
「あ、そうなんですね」
ふぅ〜。それを聞いわたくし一安心しましたよ。
それに父様ちゃんと仕事をしていたんですね。
それからエンラ様は母様の人生史を探してくれますが一向に見つかりません。
「う〜ん。おかしいですね。リアさんの人生史が何処にも見当たりません」
「ふぁ!無いんですか?」
「はい。セリさんすみません。ちょっと資料課の者に聞いて来ます。ここで待っていて下さい」
そう言ってエンラ様は席を外します。
まぁ、仕方ありません。
ここは大人しく待ちましょう。
そうして、少し立ってから、エンラ様が戻って来ましたよ。
母様の人生史の行方は分かったんでしょうか?
「セリさん、すみません。どうやらリアさんの人生史は、資料課の者がリアさんに頼まれて処分してしまったようです」
「……そうですか…」
人生史を誰にも見られたく無い母様の気持ちも分かりますけどね。
残念ですが、振り出しに戻ってしまいましたね…。
わたくしが、がっかりしていると、エンラ様が別の提案をしてくれます。
「セリさん。思い出したのですが、冥府の庭にリアさんの血縁の人間が居るんですよ。ですから彼等に、リアさんのお好きな物を聞くと言うのはどうですか?」
「ふぁ?!母様の身内ですか?」
「はい。地獄に繋がる門がある庭に居ますから、今から聞きに行きましょう」
母様に身内が冥府に居るとかびっくりですね!
「庭にですか?」
「はい」
でも、何故、庭に?とわたくしは疑問に思いながらエンラ様に付いて行きます。
そして案内された庭には磔にされた人の姿が会ったのです!!
この光景は、八寒地獄に行く時に見てますが、まさかホンモノの人間が磔にされていたとはびっくりですよ!!
作り物では無かったんですね!!
わたくしは、びっくりして仕舞いましたが、エンラ様は至って冷静に、その人達を紹介します。
「セリさん紹介します。左からリアさんの継母、異母弟、従兄弟とその伴侶の女性です。他に地獄にはリアさんのお父様もいらしゃるのですが刑罰執行中ですので、セリさんがお会いするには些か刺激が強過ぎる状態になっているかと…。
それから一番リアさんの事を知って居ると思われるリアさんのお母様は既に転生されて、冥界には居ません」
(う〜ん。この光景も、わたくしに取っては刺激的なんですが…)
エンラ様の刺激の基準が良く分かりませんね。
取り敢えず、なんでこんな事になったのか、わたくしはエンラ様に理由を尋ねます。
「…えっと先ずは、この人達は何故こんな事に?」
「ああ。理由を簡単に説明すると、リアさんの死の原因を作った人達ですから、現世では叔父上が、そして冥府では父がきっちりと落とし前を付けたのでこうなってます。父は身内を大切にしてますから、義理妹であるリアさんの報復ですね」
「…そうなんですね。じゃあ、ずっとこのままなの?」
「そうですね。最初の頃は父の気が済むまでという話でしたが…。最近は、もう庭の一部になってますから、永遠に、このままかも知れませんね。多分、父上も忘れていると思いますし」
ひぇ~。母様に酷い事をした人達ですから同情はしませんが、ずっとこのままなのは気の毒ですよ。
「さて、ではリアさんの事を聞いてみましょう!」
そう言うと、エンラ様が話掛けてます。
しかし、最早、魚が死んだ様な目に、まともな精神状態じゃ無い様で、答えは帰って来ません。
業を煮やしたエンラ様が頭に適度な大きさの石を落としましたよ。
「ふぁ!死んじゃいますよー!」
「大丈夫です。セリさん。この人間達は既に死んでます。地上で肉体を失うった魂は父の力によって新たな肉体へと魂が移されます。その肉体は冥府仕様ですのでどんなに怪我をしても瞬く間に傷が治り肉体は再生します。」
エンラ様の言う通り、あっと言う間に怪我が治って行きます。
いや~。本当に色と凄いですよ。あの世って、現世で悪い事をすると大変な目に合いますねぇ…。
でも結局話掛けてもまともな答えは無くて、ここでも母様の好きな物は分かりませんでしたね。
わたくしは諦めてエンラ様と廊下を歩きます。そして偶然、廊下を歩いていたキャラさんと出会います。
「あら。セリさん?」
「ふぁ!キャラさん」
「それにエンラ様も//どうされたんですか?」
わたくしは、キャラさんに訳を話します。
「それなら、私と一緒に裁縫をして手作りしませんか?」
「裁縫ですか?」
「ええ。今、私も母に上げる巾着に刺繍を挿してるんです。セリさんも一緒にどうですか?」
「わたくし、刺繍とかやった事無いんだけど出来るかな?」
「簡単な模様ですし、私が教えますから」
「ふぁ!ありがとう」
わたくしとキャラさんの会話を聞いていた、エンラ様が、わたくしに話し掛けて来ます。
「セリさん。どうやら無事に悩みを解決、出来そうですね」
「はい。エンラ様も色々相談に乗ってくれてありがとうございました」
「いえ。ではこれで私は仕事に戻ります」
そうして、わたくしはエンラ様と分かれて今度はキャラさんと一緒に刺繍をする事になったのです。
わたくし初めだから楽しみですよ。
閲覧頂きありがとうございました。
最近は、暑い日が続きます。皆様も熱中症にご注意下さいませ。
では次回の更新もよろしくお願いします。