265話
冥府に戻った、わたくし達の汚れた姿を見たエンラ様が正に鬼の様な形相で、こっちにやって来ます。
(エンラ様、何故か怒ってますね!とても顔が怖いですよ!)
「せっかく冥府の掃除が一段落したと言うのに…。その姿は汚れた姿は一体、何事ですか?」
そう言われれば、確かに、今、掃除したばかりのピカピカの冥府に汚れた姿で戻って来たら、それは怒られますよね。
エンラ様の迫力にエンマ様もたじたじです!
「これには事情があってだな…」
「それは、どんな事情ですか?今すぐに!分かり易く!ご説明を願います!」
そう問い詰める様に言います。
更にエンマ様の近くには『ほうき』を持って掃除を終わらせたらしい母様の姿もあります。
その顔は、エンラ様と同じく、わたくし達の方を見て明らかに怒ってますね…。
これは、わたくしも大ピンチなのでは?!
そう思っていたら、母様と目が合った早々にわたくしも問い詰められます。
「まぁ、セリ…。その姿は一体どうたのかしら?突然に姿が見えなくなったから、掃除に飽きて遊びいったのはまだ子供だから仕方がないと思ってたけど。そんなに着物を泥だらけにして戻ってくるなんてダメじゃない!今ようやく冥府の掃除が終わった所なのに!」
「ふぁ?!こ、これは違うの?!その色々とあって、ちょっとエンマ様やユジンの戦いに巻き込まれちゃって…」
ふぁん?!ただでさえ、わたくし今朝は大掃除大作戦で何にも出来なかったのに、掃除をサボった上に、外で遊んで泥だらけになって帰って来てしまったので、母様の中で完全にダメな子になってしまいましたよ。
「まぁ。反省をするどころか、人のせいにするなんて?!戦闘って、そんな事ある訳が無いでしょう?!」
「ふぁー!そんなつもりは…。えっと…でも本当なんだよ!本当に今まで戦いがあって」
(う~ん。現実にあった事なんだけど、残念ながら話を信じてもらえませんね…)
困りましたよ。
ここは一旦、話を変えますかね?
「えっと。取り得ず詳しい詳しいお話は、お風呂に入ってからで!!ほら、わたくし泥だらけで汚れてるし…」
そう言うと、エンマ様が、わたくしに助け船をだしてくれます。
「そうだな。セリは湯殿に行くが良い。後の事は余が責任を持って対応しよう。リア殿も、セリを怒らないでやってくれ。全ては、余に責任がある」
「エンマ様。……もう。仕方がないわね。セリお風呂に行ってらっしゃい」
母様は、まだ何か言いたそうだけど取り得ず、エンマ様が取り成してくれた、お陰で、お説教は止み、お風呂に行く事を許してくれます。
お風呂で綺麗にした後は、やはり母様の事が気になり、わたくしは名誉挽回をするべく、母様のご機嫌を取る方法を考えます。
そして、今は母様が待って居る、お部屋には戻り辛いので、わたくしは一人で冥府の廊下を、ふらふらと歩きます。
すると廊下で出会ったのは、エンラ様です。
エンラ様が、わたくしに気が付いて話掛けて来ましたよ。
「あ!セリさん、先程は大変失礼しました。父から詳しく話を聞きました。また冥界の為に力を貸して頂きありがとうございます。セリさんが連れて来た、赤兎さんも、私が責任を持って冥府に部屋を用意しましたのでご安心下さい」
そう言ってくれたので、わたくしはお礼を言います。
そして今、一番気がかりな母様の事を相談します。
「はい。ありがとうございます。あのね。それでね!エンラ様に相談があるんですが、良いですか?」
「相談ですか?私でお力になれるのでしたら相談にのりますよ」
わたくしは悩みを打ち明けます。
「わたくし今朝から、お掃除とか全然出来なくて、その上、汚れた姿で帰って来たでしょ?きっとそんな、わたくしの姿に母様は失望したと思うし、怒っても居ると思うの。でも、わたくしは母様に嫌われたく無いのし、出来れば何かして母様を喜ばせたいの。
母様を喜こばせるには、どうしたら良いですかね?」
「リアさんも父から事情を聞いて、もう怒って無いと思いますよ」
「そうかなぁ?でも、わたくし、母様とずっと離れていたでしょ?だから嫌われたら、どうしょうって心配で…」
「そうですね。セリさんの気持ちは分かりました。それならリアさんに贈り物をしたらどうですか?セリさんから心の籠もった品物をあげれば喜ぶのでは?冥界には、両親に日頃の感謝を込めて、贈り物を贈る日がありますしね。幸いその日は、明日です」
「ふあ!贈り物ですか?それ良いかも!あ!でも、母様に何あげたら喜んでくれますかね?」
「冥界では、一般的に手作りの物や絵、植物を贈りますね。私も一応、両親に明日贈る予定で用意してます」
「エンラ様は何を贈るんですか?」
「はい。私は、この日の為に用意した『ちょうちん草』を贈る予定です」
ふぁ!まさかのと云うか、エンラ様らしい贈り物ですね~。
わたくしが悩んでいたら、エンラ様が声を掛けてくれます。
「セリさん。リアさんが喜びそうな物を知りたいなら、お力になれると思います」
「本当?」
「ここ冥府には『人生史』と呼ばれる、生前の地上で生きていた時の記録を記した資料があります。それを読めば色々と分かるかと。本来は、関係者以外は閲覧禁止ですが…セリさんに特別に」
「見せてくれるんですか?」
「はい。今から資料課の資料室に案内します」
「ふぁ~。ありがとうございます」
そして、わたくしは一つ気になった事をエンラ様に聞きます。
「ところで、その『人生史』って、わたくしのもあるんですか?!」
「いいえ。セリさんの『人生史』はありません。何度も言いますが、セリさんは人間では無くて神族ですから、『人生史』は人間だけです。冥府の裁判資料として使う為にで作成されてます」
「そっか〜。良かった〜」
母様の人生史を勝手に覗くのは申し訳無いけど、わたくし、かなり興味がありますよ!
そうして、わたくしはエンラ様と資料課へ向うのです。