262話
油断した。
まさか、あそこで姫様が烏天狗の人質になるなど…。
姫様は、ご無事だろうか?
早く助けに行かなければ、きっと今頃は怖い思いをされて居るに違い無い。
そう思い、私は急いで姫様を助けに行く為に烏天狗達の隙を伺う。
幸い、私から神器を取り上げて烏天狗も油断している。
今なら、簡単に脱出が出来るだろう。
そうして、その機会は早くもやってきた。
見張りの交代の時間だ。
私は彼等が入れ替わる、その隙に蜂の姿に変わった神器を呼び寄せて、牢の鍵を取らせた。
これで私は難なく何時でも牢の鍵を開けられる。
そして、私は牢で大人しくして居ると油断して昼寝をしていた見張りを倒し、私の変わりに牢に閉じ込めた。
いずれは見つかるが、姫様を助けて逃げる位の時間は稼げる筈だ。
だから問題は無い。
そうして事前に神器に探させていた、姫様が閉じ込められて居る部屋へと辿り着いた。
そこで姫様と兎の話を聞いたのは偶然だった。
まさか、昔、ムクロの火傷に烏天狗が関わっていたなんて…。
その話を聞いて、私は烏天狗達を自分の手で葬る決意をした。
そうしなければ、私の怒りは収まらない。
あの赤毛の兎は本来なら危険な妖獣だが、姫様には好意的だし姫様も気に入っている。
姫様は不思議な方だ。
姫様と一緒に居ると良い意味で気が抜けるし、優しい気持に慣れる。
姫様は、春の陽だまりの様な方だ。
そして何故か姫様は困って居る者を見つけると躊躇いも無く手を差し伸べられる。
私の時もそうだった。
私に臆する事も無く姫様は近付いてきた。
本来なら、私の様な冥界生まれの神は、天界や地上の神達さえも、嫌われるのに…。
だが姫様は、私が何者でも気にしてない。
あの兎の事も同様無のだろう。
そして、あの兎が、この危険な場所から姫様を逃がしてくれるなら、姫様の事は心配は無い。
だが万が一という事もある。もしあの兎が姫様を騙して裏切っていたらな、例え姫様を悲しませる事になっても、私が切るそう思って、私は姫様達に気が付かれ無い様に影から姫様達の脱出の手助けをしながら見守った。
どうやら、私の考え過ぎだった様だ。
そして姫様達は冥府に向かった。
姫様は、烏天狗達の事をエンマ王に知らせるのだろう。
だがエンマ王が烏天狗の事を知っては烏天狗達は追い払われてしまう。
そんな事になったら困る。
誰であろうと私の復讐の邪魔はさせない。
エンマ王が来る前に、姫様が戻って来る前に始末する。それが私の出した結論だ。
そして私は神器はを武器へと錬成して力を発動させた。
◇◇◇◇
さて、エンマ様と赤兎ちゃんと一緒にユジンが捕まっている場所に戻って来ましたよ。
あれから結構なが時間立ってますから、もしかしたら手遅れだったのかも知れません。
黒い火柱があちらこちらから立ち上っていますよ!
これが冥界を手に入れる為に烏天狗が仕掛けた呪術なのでしょうか?
でも何故、自分達の住んでる場所が吹き飛んでるんですかね?
不思議な状況ですが、先ずはユジンを見てけるのが最優先ですよ。
わたくしは、出来る限り、大きな声で叫び、ユジンに呼びかけます。
「ユジンー!!どこ?!返事してー!」
すると、わたくしの叫びに答える様に、火柱の中から、逃げ惑う烏天狗と神器を手に戦うユジンの姿が見えます。
ユジンの無事な姿を見つけて安心したのも束の間、やはり何か違和感が有ります。
ユジンが被害者なはずなのですが…。
何故か、逃げたり、泣いて命乞いをして居るのは烏天狗達で、でも、そんな烏天狗に容赦なく、ユジンは黒い炎を放って追い詰めてます。
はっきり言って暴れて居るのはユジンの方ですね。
このままだと烏天狗達の方が危険ですよ。
だけど、最初にわたくし達に悪い事をしたのは烏天狗達ですから、わたくしは、この状況を黙って見過ごした方が良いのでしょか?
う〜ん。困りましたね…。
お読み頂きありがとうございました。
残業もあり仕事が忙しく家に帰ると『クタクタ』で書く気力がなくなり、長らく更新が滞りまして申し訳ありません。
まだ少し忙しい日々が続きますので次回の更新も気長に待って頂ければと思います。
よろしくお願いします。