260話
ある日、突然、オレ達に何も告げずに日月星の旦那が消えた。
それはオレ達、妖獣の苦難の初まりだった。
何故なら日月星の旦那が突然に消えた事を知った天界の神が、オレ達を封印する為に攻めて来たからだ。
悔しいが、オレ達、妖獣は人型の神の前では無力だ。
殆どの妖獣がロクな抵抗も出来ずに次々に地上に封印されてた。
例外は神木の白梅くらいだ。
白梅は地上の神木だし、その神木を攻撃すれば、地上神神族と揉める可能性があったからだ。
もっとも白梅は封じられ無かったが、そのまま旦那の屋敷に残された。木だから自分で移動は出来ない。
それに神木と言えど、木だから手入れとか誰かの世話が無いと枯れて消滅してしまう事もあるらしい。
仲間が誰も居なくなった、あの場に残されたのは残酷だと思う。
風の噂では、人に切られたとか、大海の神が切ったとか聞いたしな…。
そしてオレは何とか封印を免れ逃走出来た。
逃げて、逃げて気が付いたら仲間とはぐれ1人になってた。
その後も、オレは1人でずっと天界の追っ手に怯えながら地上を彷徨っていたと思う。
そんな時に、人間も居ない山奥で暮らす烏天狗の村に辿り着いたんだ。
烏天狗は親切にも、オレを天界の奴らから匿ってくれた。
異空間移転と言う能力があり、神と同じ神通力を持つ烏天狗は、天界でも地上でも冥界でも危険な存在として扱われオレと同じ様に何処にも居場所が無かった。
そして、烏天狗達の里にいて分かったが、烏天狗は地上から冥界に移住したがっている事を知ってオレは協力する事にした。
大昔にも、冥界に住もうと計画したけど、最も、その時の冥界の統治神の排除には成功したが、冥界征服って時になって天界から今の統治神のエンマが降りて来て手酷く地上に追い出さたって聞いた。
だから、今回はエンマを倒してす為に冥界にやって来た。
◇◇
もしかして、ムクロさんに火傷させたのは、烏天狗かも知れませんね。日月星様の仕業だって父様とかエンマ様が言ってたけど、日月星様は否定しましたし。
そんな事を酷い事をする、烏天狗と関わって、赤兎ちゃんが無事でいられる筈もありません。赤兎ちゃんが心配です。
それに赤兎ちゃんの辛さが伝わってきます。
だから、わたくしは全力で止め無いとですね!
でも、ただ悪い事はダメって言っても無理ですよね。
昔一緒だった白梅さん事を話してみましょう。
日月星様が消えた後、白梅さんは父様に保護されて、竜宮で暮らしてるんですから。
白梅さんが無事なんだから、きっと赤兎ちゃんもわたくし達、神族を信じて烏天狗と関わるのは止めてくれるかも知れません。
「あのね。赤兎ちゃん。白梅さんは元気ですよ。今は竜宮にで暮らしいるんですよ」
「嘘だ!!竜宮だって?!オレ達を封じのは、その竜宮を支配する。大海の神セトなんだぞ!あついは、オレ達、妖獣を容赦なく封じやがった危険な奴だぞ!」
ふぁー!父様、何やってるんですかー!だから暴君様、扱いされてるんですね!
これじゃあ。わたくしが父様の娘だとは口が裂けても言えなくなりましたよ。
「いや〜。そう言われても、わたくしは、えっと、あ、ほら一応これでも神族でしょう?だから竜宮に行った事があるんですよ。その時に白梅さんに会いましたよ。元気でしたよ。ええ」
ふぅ。ちょと嘘くさくなりましたが何とか言い訳が出来ましたよ。
「そうなのか?白梅は神木だからな。それで助かったのかも知れん。だがオレは違う。それにもう、烏天狗達の計画ははじまってるんだ。今更、後には引けねぇよ」
「ふぁ!計画ってユジンを人質にエンマ様と交渉するの?」
「いや。あいつは計画が失敗した時の逃走の時間を稼ぐ為の人質だ。オレ達の冥界乗っ取り計画は呪術を使って起こなう。」
「そんな!何処に何の呪術を仕掛けたの?」
ムクロさんの時の様な事がエンマ様に起きたら大変です!
「それは絶対に言えん!とにかく小娘。お前はここから逃げろ」
「え?逃がしてくれるの?」
「お前の様な小娘1人居なくても問題は無いしな。これから戦いがはじまるだよ!邪魔だ!」
(いや〜ある意味ユジンより私を人質にした方が効果あるかも知れません。ええ。きっと。でもそれは言えません)
それにユジンの事も心配です。
「こんな話を聞いて、わたくし1人で逃げる訳にはいかないですよ。それにそんな危険な呪術が仕掛けられてるなら何とかしないと!」
わたくしがそう言うと、赤兎ちゃんは強い口調で言います。
「止めとけ!烏天狗だって、もう後が無いんだ。それにオレも、どうせ居場所なんて無いだ。これが最後の悪あがきだ。とにかく小娘、お前はオレの邪魔をすんな!」
「そんな危ない事して天界や竜宮だって黙って無いと思いますよ。大海の神に勝てるんですか?!
それに冥府にはエンマ様だけじゃありませんよ!先代の統治神のムクロさんだって今はエンマ様と仲直りして冥府で暮らしてるんですよ。勝てるんですか?
ねぇ?それよりも、わたくしと手を組まない?
わたくしが赤兎ちゃんが安心して住める場所を提供しますよ。勿論、天界からも竜宮からも追っ手なんて無いですよ。赤兎ちゃんは日月星様の所に居た時の様に、安心安全に暮らせる場所が欲しいだけなんでしょう?」
そう言うと赤兎ちゃんは図星を突かれたのか下を向き呟く様に言います。
「お前、見たいな小娘に何が出来るんだ…」
わたくしは、赤兎ちゃんの手を取り話します。
「それを言ったら烏天狗さんだって何も出来ませんよ。このままだと赤兎ちゃんは利用された挙句、きっと地上に封印どころか地獄に落とされてしまいますよ。ねぇ?お願い赤兎ちゃん!一度だけで良いから、わたくしを信じて協力して、きっと日月星様だって、そう望んでると思うの」
「何でお前が…そこまでするんだ。お前には関係無いだろ…」
「関係はあるよ。だって昔、わたくしが日月星様の屋敷に居た頃に、わたくしを色々と世話してくれたじゃないですか?それに、それを言ったら赤兎ちゃんも、どうして、わたくしを逃がそうとしてくれるの?」
「そ、それは、なんだ。つまり…。日月星の旦那が、お前の事を気に掛けてたからだ!」
わたくしは、もう一度、赤兎ちゃんにお願いします。
「お願い。赤兎ちゃん。わたくしを信じて」
「あー。分かったよ。1回だけだからな!」
「うん。ありがとう赤兎ちゃん♡やっぱり赤兎ちゃんは可愛い兎さんですね」
そう言って、赤兎ちゃんの頭を撫でます。
相変わらず、モフモフの手触りが最高ですね!
「可愛いとか言うな!それからオレに馴れ馴れしく触んな」
「ふふふ。赤兎ちゃんは、照れ屋さんですね〜」
「やめろ!誰が照れ屋だ!」
さぁ!皆が幸せに暮らせる様に、わたくし行動開始ですよ!