259話
わたくしとユジンは気が付かれ無い様にソッと、その場を離れます。
そして安全な場所まで来てから、ユジンが呟いた言葉が気になったので、わたくしは聞き返しましたよ。
「烏天狗??ユジン。ねぇ烏天狗って?」
「あ!はい。姫様。烏天狗とは何と説明すればいいか…。彼らは神とは違うのですが我々と同じ不老不死で、そして神通力も持って居るんです。当然、生命造化で生まれた命でもありません。神とは違う種族と考えて頂ければ分かり易いと思います。
そして彼らの力の能力の一つに異空間転移があります。昔は、天界にも住んで居ましたが、彼等の素行が悪かった為に、天界から追い出さました。現在は、その力を使って冥界や地上を行き来して居るんです。冥界は、地上の人間の魂を受け入れる為に、地上と繋がりがありますから」
「じゃあ。天狗さんは地上から来たの?」
「はい。ムクロが、冥界を治めていた頃から冥界に彼等の居住する場所はありません。
何の目的で冥界に来たのか分かりませんが、烏天狗は昔から、神族に反感を持っていて信用なりません。ここで、その姿をで見てしまった以上、エンマ王にお知らせして置くべきです」
「うん。分かった。じゃあ、知らせに行こう」
「はい。姫様」
そうして、わたくし達が廊下を歩いていた時です。
可愛い、赤毛のうさぎさんと出会います。
そして、それは日月星様の所に居た『赤兎ちゃん』だったのです。
わたくしには、予想もしてない再開に驚きましたよ。
「ふぁ!赤兎ちゃん!」
突然の赤兎ちゃんとの出会いに、わたくしも驚きますが、赤兎ちゃんも、それは同じだった見たいですね!
「うぉー?!小娘か?!なんでここに?!」
わたくしがは過去に飛ばされたので、あの時代から、どれくらいの時間が経過しているか分からないけど、赤兎ちゃんも、わたくしの事を覚えていてくれたのです。
だけど赤兎ちゃんの事を知らないユジンの態度は違います。
「姫様!そのウサギに不用意に近付いてはなりません!離れて下さい!」
「え??!」
わたくしは、その言葉に驚き止まりますが、赤兎ちゃんが、わたくしの手を無理やり引っ張ったてので、わたくしは転んでしまいます。
そして尻もちを付いて倒れた、わたくしの首元に赤兎ちゃんが刃物を突き付けます。
「わりぃーな。小娘…。そこのお前!冥府の副官だったユジンだな!この小娘に大怪我を負わせたく無かったら大人しく武器を捨てろ!」
そう言って、ユジンの方を睨みます。
その行動が信じられなくて、わたくしは赤兎ちゃんに尋ねます。
「赤兎ちゃん?!なんでこんな事をするの?!」
わたくしの問にも赤兎ちゃんは無言です。
「……」
そして赤兎ちゃんは首に下げていた笛を取り出して吹いてから、もう一度ユジンに武器を捨てる様に迫ったのです。
「この刃物には猛毒がたっぷり塗ってあるんだぜ。ちょと振れるだけでも皮膚が被れる。この小娘のが毒で苦しんでもいいのか?!どうなんだ!」
「……分かった」
そう言われるとユジンは赤兎ちゃんの要求通りに神器を捨てます。
わたくしは今、身動きも取れないので、ユジンに謝る事しか出来ません。
「ユジン…ごめんね」
そこへ、先程、見かけた烏天狗がやって来ます。
「ほう。冥府の副官だったユジンか…。我々を散々見下していた神が、自ら神器をす。捨てて無抵抗とわな。ガキ1人の為に、お優しい事だ」
そう馬鹿にした様に言って何度もユジンを殴ります。
「ぐっ!」
「どうした?殴り返してみろ?!」
わたくしは、その酷い状況を何とか止めたくて叫びます。
「や!止めて!ユジン。ユジン。大丈夫?!しっかりして」
沢山、殴られで倒れたユジンに、わたくしは声掛けます。
「私なら大丈夫です。姫様…」
そう弱々しく答えると、ユジンは意識を失ってしまいます。
「ふん。気を失ったか!まぁいい。丁度、冥府との交渉の材料に仕える。人質を探していた所だ。冥府の副官ユジンなら良い人質になるだろう」
そう言うと、更に他の烏天狗も現れて、わたくし達は捕らえられて、冥府から離れた場所に連れて行かれます。
そこは外から見ると一件大きな洞窟ですが、中は石の道や建て物が建っていて地底の中にある街です。
(冥界にこんな場所があるなんて…地底の異界の地底街ですね)
そしてユジンとは別の場所に、わたくしは閉じ込められてしまいましたよ。
沢山殴られて怪我をしてましたし、何処で捕らえられたユジンが心配です。
エンラ様達は、『お掃除大作戦』の最中で、わたくし達が捕らわれて攫われた事に気が付いてくれるか分かりません。
やはりここは自力でどうにかするのが一番良いのですが…。
色々と抜け出す方法を考えますが、残念ながら何も思いつきません…。
小さな声でわたくしを呼ぶ声が聞こえます。
『おい。小娘』
ソッと部屋に入って来た赤兎ちゃんの姿を見て、わたくしは嬉しくて声を上げまいますが、直ぐに赤兎ちゃんに口を塞がれます。
「赤ふぐー」
『しー静かにしろ小娘!デカい声出すな!バレれんだろ!いいか手を離すぞ!静かにしろよ』
わたくしは、無言で頷くと赤兎ちゃんが手を離します。
そして、わたくしも小声で喋ります。
『ふぁ~。ごめんなさい』
『はぁ~。お前はあれから百年以上もたってのに変わんねぇな。ガキんちょ神』
わたくしは、先ず赤兎ちゃんにどうして烏天狗さんと一緒に居るのか、そして烏天狗さんの目的が何なのか、赤兎ちゃんに聞く事にしましたよ。
話によっては、ユジンを助けたり、何か赤兎ちゃんの力に慣れるかも知れません。
(あんな酷い事をされたのに、赤兎ちゃんを嫌いになれないのは、何処かお人好しで、その上この見た目が可愛い過ぎるからなんですよね〜。本当に可愛い♡)
そして、わたくしは、赤兎ちゃんの頭を撫でながら話します。
『赤兎ちゃん。日月星様が、ある日に突然居なくなった事は白梅さんから聞いて知ってる。でも、どうして烏天狗と一緒に冥界に居るの?』
わたくしが尋ねると赤兎ちゃんは、昔を思い出した様に話します。
『ああ。日月星の旦那が消えてから、色々と有ったんだよ。俺達は居場所が無くなってな。天界から降りて来た武神に封印された奴も居た…オレもずっと地上を逃げ回ってた。そんな時だった烏天狗に出会ったのは…』
そうして赤兎ちゃんは、過去の話をわたくしに話してくれたのです。
閲覧頂きありがとうございました。
暫くは、不定期連載ですが、なるべく短期間で掲載出来る様に頑張ります。
これからも、よろしくお願いします。