258話
ー翌日ー
朝から、わたくしは母様に起こされましたよ。
「セリ。朝よ。起きて」
「むにゃ?母様?まだ、わたくし眠いですよー」
申し訳無いですが、わたくしは、もう少し寝て居たいですよ!
(…ちょっと位なら良いですよね?)
「セリ、寝ちゃだめよ!今日は冥府の大掃除大作戦があるんだから」
その言葉に、わたくしは驚いて目が覚めましたよ。
「ふぇ?大掃除大作戦??って母様!!その格好はなんですか?お仕着せですか?」
そこには紺色の質素な着物に前掛け、袖には襷を掛け、頭には三角巾を被った母様の姿があったのです。
「えぇ。そうよ。今日は、セリも私と一緒にこれを着て大掃除を頑張りましょう」
そう言って、わたくしにも、お仕着せと三角巾を渡します。
「え?大掃除?今日もわたくしは浄化作業の筈では?」
「あら?今日は冥府の大掃除を起こなうって、昨日エンラ様から通達があったわよ」
「そうなの?」
でも大掃除の通達でなんで母様がお仕着せに着替えているんでしょうか?
そして違和感を感じ無い程、お仕着せ姿が似合ってますね。
以前、父様が母様は、王宮でお仕着せ来てたって、言ってましたけど、仮装を楽しんでいたのでは無くて、本当にお掃除とかする為に着てたんですかね?
わたくしは、気になったので母様に聞いて見ましたよ。
「あ?もしかして母様って、王宮でもお仕着せとか着てお掃除とかやってたの?」
そう聞けば母様はあっさりとお掃除をしていた事を認めましたよ。
「あら?なんでセリが、そんな事を知ってるの?」
今初めて知った事実なんですが…。
「うん。父様がね。母様はお仕着せ着てたって、え?でもまさか、本当にお掃除とかする為に着てたの??母様は、お姫様じゃあないの?」
そう言えば、母様は、困った様に笑って誤魔化します。
「えー。まぁ、ちょっと私の場合色々とあってね…。あはは」
何か、わたくしには言えない事情があるんでしょうか?
父様が、母様に家事を強要したとは、ちょっと考えにくいのですが…。
わたくし、あの時は、母様が仮装好きな人だと、勝手に思っていましたが、もしかしたら、違うのかも知れません。
母様が事情を知られたく無い様なので、、わたくしは敢えて、違う話をします。
「ところで母様はお掃除とか出来るの?」
「もちろんよ。私こう見えてもお掃除、洗濯、お料理なんでも得意なのよ」
(家事が得意なお姫様なんてびっくりですよ!)
本当に出来るんですかね?
◇◇◇
母様は意外にも家事が得意と豪語してますが、わたくし生まれてから、一度も、お掃除とかした事が無いんですよね…。
でも母様が、やる気満々ですから、わたくしも母様と一緒に頑張りますよ。
母様やユジンと一緒に集合場所に行けばエンラ様は既に支度して待っていましたよ。
(ふぁ!エンラ様着物の袖に襷掛けて、頭には三角巾してますよ!お掃除やる気ですか?びっくりですよ!)
「セリさん。おはようございます」
「えっと。今日の浄化作業は無いんですか?今から大掃除をするんですよね?」
わたくしは、エンラ様に聞きます。
「いえ。セリさんには神通力を使って浄化の水を作って頂きたいんです。冥府は、そこまで穢れが溜まってませんから、その水で掃除をすれば、浄化完了です。勿論、セリさんはお掃除等の作業は必要ありません」
「ううん。わたくしも母様と一緒にお掃除頑張りますね」
「そうですか?手伝って頂けるなら有難いですが、余り無理はしないで下さい。ではよろしく、お願いします」
その後、エンラ様から、庭の井戸に神通力で水を溜めて下さいと言われたので、わたくしは、その井戸に水を作って溜めてましたよ!
そして、わたくしは母様と合流してお掃除のお手伝いです。
母様は、得意と豪語しただけ合って、本当にテキパキと雑巾を廊下に掛けていきます。
「セリ。廊下を磨く時はこうやるのよ」
そう言って、お手本を見せてくれたので、わたくしは母様の真似をして掃除をします。
やってみましたが、はっきり言って、わたくしには無理でしたよ…。
雑巾は固く絞れないし、更にはバケツを倒して廊下を水浸しにして、皆さんに、余計な仕事を増やしてしまいましたよ。
そんな、わたくしの失敗に母様は少し困った様な笑顔で優しく、後始末をしてくれますが、完全に、わたくし邪魔ですよね。
(お掃除って、こんなに大変だったんですね。びっくりですよ)
そこで、わたくしは雑巾がダメならホウキでと思って掃きますが、何故か余計にゴミが散乱してしまいます。
最終的には、わたくしは皆さんがやってる作業の見学になってしまいましたよ。
(はぁ〜。わたくし何も出来ませんでしたよ。きっと母様も呆れてますね…。母様にダメな子って嫌われて無いと良いのですが…)
そんな不安な思いを抱えながら、わたくしは、お掃除の邪魔にならない隅っこでぼんやりとしていると、ユジンが心配して話し掛けて来ましたよ。
「姫様。お元気が無い、ご様子ですが大丈夫ですか?」
「ユジン。わたくしね。お掃除が上手に出来無くて落ち込んでるの」
「姫様。それならご安心下さい。私も掃除は出来ません」
(ユジン自慢にもならない宣言と微妙な慰めは、ありがたいですが、わたくしそれでは全然元気にはなれませんよ…)
ですがユジンも掃除が出来無いと言う自己申告もありましたし、それなら邪魔にならない様に、ユジンと一緒に移動した方がいいですかね?
そこでわたくしは、ユジンに聞きます。
「ユジン。どこか静かで皆の邪魔にならない場所は無いかな?」
そう言うと、ユジンは少し考えてから心当たりがあるのか答えてくれます。
「それでしたら、私の部屋に参りませんか?。ご案内します。行きましょう、姫様」
そしてユジンは歩き出したので、私もユジンの後に着いていきます。
そして廊下を歩いていると、見慣れない格好をした方が、大きな木の陰に隠れて、建物の中の様子を伺って居る姿が目に入ります。
その姿は背中からは黒い翼が生えて特徴的な着物白い着物を着ています。
(鬼さんでは無いですよね?それに冥府の役人さんが着ている着物は黒い色や紺色の着物ですので、白い色の着物は初め見ますね)
わたくしは、その事も気になって、そっと小さな声でユジンに尋ねます。
「ユジン。あそこに見慣れない方が居るんだけど、あの方も冥府の役人さん?」
ユジンは、その姿を見て驚いた様子で無意識に呟きます。
「烏天狗…。何故ここに」
そして、これが、また事件の初まりだったのです。