表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の娘  作者: アイ氏
256/269

255話



さて、今日からはエンラ様の案内で冥府の、あちらこちらにお邪魔して、浄化作業をする事になりましたよ。


けんちゃんは既に神器の刀になっていて準備万端ですよ。


残念なのはユジンは、わたくしの護衛として付いて来てくれるけど母様の付き添いは無理な事ですね。


エンラ様曰く、『冥府の宮殿の外には、人間を襲う動物や植物が沢山いるから危険です』との事。


『……えっと。それはわたくしも危険なのでは?』って言ったら、『セリさんは神族ですから襲われる事は絶対にありません』って答えが返って来ましたよ。


(すっかり忘れてましたよ)


わたくし、自分が神様とか未だに自覚が無いんですよね〜。


こうして、母様と分かれてエンラ様とユジンの3人で、先ず向ったのは『三途の川』です。


「先ず冥府に来たら、やはり最初は三途の川の観光でしょう。ここは、冥界と現世を境目に存在している川です」



ー三途の川のほとりー


そう言って、冥府の宮殿を出で暫く歩くと目の前に大きな川が現れたのです。


「ふぁ!大きな川ですね!」


「はい。川幅もそうですが、深さもかなりありますよ」


「じゃあ、早速浄化しますね」


そう言って、わたくしが川に近づこうとすると、ユジンが止めます。


「姫様。お待ち下さい。川に落ちたら大変です!今、誰かに縄を持ってこさせましょう」


「ふぇ??縄なんてどうするの?」


「姫様が川に落ちても大丈夫な様に姫様とあの木と姫様を縄で結ぶんです」


それは、かなり恥ずかしし、わたくしはワンちゃんじゃ無いんですよ!


だから断固拒否しますよ。


「ユジン、絶対に嫌だからね!わたくしなら大丈夫だから、そこで待ってて!」


わたくしはユジンが止めるのも無視して、川に近づき神器の刃を通じて、わたくしの神通力を川の水に込めます。


わたくしが込めた神通力は川全体に広がり、あっと言う間に浄化完了ですよ。


「ふぅ~」


それからゆっくりと改めて、川を眺めれば上流の方に綺麗で大きな橋が掛かっているのに気が付きましたよ。


あの橋を渡って冥府に来るんですかね?わたくしはエンラ様に早速聞いてみます。


「エンラ様、あの橋を渡って皆、冥府に来るの?」


「はい。そうですね。ただし、あの橋を渡れるのは、生前に善行をした者に限ります。先ずは、現世側の川のほとりで、生前の着物から冥府の着物に着替えます。そして現世から持ち込んだ着物から罪の重さを量り、どの手段で冥府に来るかが決まるんです。生前に善行を積んだ者は橋から、罪の軽い者は川の浅瀬を渡って、悪人は川の深い所を泳いで渡って貰います」


橋の近くの川辺を見れば、沢山の船が並んでます。


「へぇ〜。あれ?でも船もありますよね?」


「はい。最近は三途の川を渡るのに船もあります。三途の川の渡し賃を払った人間には特別に船を出してます。

あそこにいる、奪衣婆さんにお金を払うと船に乗る切符が貰えます」


「へぇ~」


船でも渡れるなんて、便利で良いですよね。


わたくしは、単純にそう考えていましたが、ユジンは違う様です。


「……奪衣婆の賄賂を合法化したんですね」


エンラ様にそう言います。

エンラ様も困った顔になりながら、ユジンの問に答えます。


「そうです…。以前から奪衣婆さんが死者からの賄賂を受け取り、三途の川を楽に渡らせているのが冥府では問題になってました。しかし、奪衣婆さんは神族であり奪衣婆さんが居ないと、冥府も色々と困りますから、そこで死者から川の渡し賃を貰い船を出す事を合法化しました。こちらも、船の維持費や人件費もありますから、取り分は奪衣婆さんと冥府の半々で何とか納得して頂きました」


(神様が賄賂って…。神様にも色々な方が居るんですね)


「昔話は、ここまでにして今日は特別にセリさんの為に船を用意しました。これで三途の川下りを楽しみましょう」


「良いんですか?」


「はい。折角ですから、冥府を色々と見学して下さい」


「ありがとうございます。楽しみですよ」


そして、わたくしは船に乗り込みます。


冥府の船は屋形船ですね。


窓は全開に開けらて景色も楽しめますし、屋形の中には、お菓子とかお茶も用意されていて快適ですよ。


そうして、ゆっくり寛いでいたら、突然、川底から手が出で船の縁を掴んだのです。


「きぁー!」


わたくしが悲鳴を上げると、エンラ様が平然と手に向かって、金棒を振って払い除けます。


「大変失礼しました。三途の川を泳いて渡った人間が、船に乗り込もうとした様です!」


そう言って、エンラ様は再び座って平然としています。


「姫様。三途の川では、時々有ることですから。でも私やエンラ様がいる限り、この船に侵入なんてさせません。大丈夫です。」


「へぇ~。良くある事なんだ…」


二人は慣れっこなんですかね?


更に、別な方向から悲鳴が聞こえて来たので悲鳴の方を見れば、巨大な魚が人を飲み込んでますよ!


「ふきゃー!!今度は人が!人が巨大な魚に食べられてますよ!」


「心配いりませ。あれは三途の川の巨大魚達です。三途の川を歩いたり泳いで渡る悪人達は苦労しながら川を渡るんですよ。これも刑罰の一環です。全ては因果応報です」


「…そ、そうなんですね」


(悪い事をすると死んでからも色々と大変ですね~)


船は、そんな恐い景色も一切お構い無しに進みます。


(あっちこっち悲鳴とか聞こえて来ますが、まぁ気の所為ですよね…。うん)


わたくしは景色を見るのを止めて、船の中でお菓子を食べる事に専念しましたよ


そして川を下ると今度は子供の無邪気な声が聞こえてきます。



三途の川で子供が遊んでるんですかね??


お読み頂きありがとうございます。

来週もまた月曜日に更新予定です。よろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ