254話
ー冥府の食堂ー
八寒地獄から息子が帰って来た。
丁度、食事の時間だからと食堂で話を聞く事にした。
報告を聞いて、驚いたのは、氷姫が、ムクロの魅了に掛けて、こちらの都合の良い様に、命令が出来る事になった事だ。
魅了香は強力だが、神通力の強い神が、そう簡単に掛かる事は無い。
特にムクロの力は皆が分かっている。
それなりに警戒もすれば、自らの神通力を使いある程度防御する。
だから、まさかセリが竜宮石で、氷姫を魅了に掛けるとは、氷姫も予予想外だっただろう。
だからあっさりと魅了に掛かった。
実に面白い事だ。
そして私は、今後の予定を尋ねた。
八寒地獄の事が無ければ、先ずは、冥府や八大地獄から、浄化作業を進める予定だった。
その予定が大幅に狂ってしまった。
「八寒地獄の件は良くやった。それで、今後の予定はどうする?」
「はい。先ずは冥府の浄化をセリさんにお願いするつもりです。次いでに、冥府の色々な部署を私も見て回ろうかと」
「は?セリの浄化作業はともかく、何故お前が今更、冥府の各部署の見学をする必要があるのだ?」
「私は、ユジンさんが冥界から出奔してから、ずっと冥府の副官として働いて来ました。その事に不満はありません。ですが、正直、経験不足だと思う時があります。冥府の各部署を回って改めて、色々と仕事を経験して見れば、更なる、改善点や、勉強になると思うのです」
息子は、最もらしい事を言っているが単なる好奇心だな。
だが別に反対はしない。副官という仕事は極めて重要な仕事だ。
各部署の者達と親しくなり、全ての部署の仕事を全て把握していた方が業務が円滑に進むし、息子には、現場の苦労を実際に見て経験させる事は良いだろ。
まぁ、これは少しでも息子に成長の場を与えたいと思う親としての気持ちだな。
地上は現在、極めて平和だ。
だからと言って、この平和がずっと続くとは限らない。
また地上で戦があれば、死者は増え冥府は忙しいなる。
そうなれば、副官の仕事もまた多忙になるだろ。
暇な今は良い機会だ。だから許可した。
「……分かった。好きにするが良い」
だが、息子は何かに熱中すると、休む事を知らず不眠不休で飽きるまで頑張り続けという悪い癖がある。
それにセリが巻き込まれては、セリも大変だろう。
弟とは、セリが帰ることを望んだら直ぐに竜宮に帰すと約束したが、浄化作業の途中で帰られては困る。
ここは息子にクギを刺さねばなるまい。
「冥府の各部署を回る目的はあく迄も、セリの浄化の為だ。そなたの我儘に付き合わせて困らせぬ様にな」
「はい。善処します」
一応、無理はしないと約束はしたがエンラと一緒に冥府の浄化作業に当たるセリを私は気の毒に思った…。
◇◇◇◇
母様と何故かユジンまで、お薬のお茶を貰って、わたくし達は冥府の宿泊しているお部屋に帰ってきましたよ。
早速、母様は、急須と湯呑みを用意してお茶を飲みます。
そして、楽しそうに呟きます。
「ふふふ。このお茶が無くなったら、また少しお暇を頂いて、お薬を貰いに行かないとね」
(あ〜。もう母様は、絶対お茶の袋を全て集めるつもりですね…)
これからも冥界で、わたくしの絵が描かれたお茶の袋が出回るのかと思うと本当に恥ずかしですよ…。
母様が入れてくれたお茶を飲みながら、ゆっくりして居るとエンラ様が、わたくしの部屋を訪ねて来ましたよ。
「セリさん。ゆっくりして居る所に申し訳ありません。今後の予定に付いて話があります。今、大丈夫ですか?」
「はい」
「今日は、このままゆっくり休んでいただいて、明日からは冥府の各部署を私と回る事になります」
エンラ様の話では、冥府を色々と回る予定なんですね。
どうやら、また忙しくなりそうですよ。
お読み頂きありがとうございました。
来週から、また1週間に一回の更新に戻ります。
仕事のシフトの都合から日曜日の更新が難しくなったので、次回から更新予定日を日曜日から月曜日に変更致します。
また『万年悪戦苦闘』の連載を再開しました。
2月14日には新連載の小説を投稿予定です。
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これからも頑張って更新していきますので、よろしくお願い致します。