249話
母様は、エンラ様が救出に向かって居ると聞いて、わたくしは安心しましたよ。
そして、これからどうするか、ユジンに相談したのですが、ユジンはわたくしが話掛けると突然、土下座します!
わたくし、びっくりしましたよ!
「ユジン?!急に、どうしたの?!」
「姫様。申し訳ありません。姫様をお守りすると約束をしていながら、その約束を守れませんでした…。この上は如何様な罰もお受けします」
「ふぇ??」
(ユジンは、責任感が強いから…。気にしてるみたいですが、そう言われても困りますね…)
「ユジン。えっと、ほら、わたくし無事だし。それにユジンとの約束も破って、竜宮石を使ったちゃったしね。ここはお互様って事で。うん。良いんじゃ無いかな?」
わたくしがそう言えば、今度はけんちゃんが擁護します。
「にゃー。主は悪くないにゃ~。緊急事態だにゃん。あれを使う様に言ったのは、あたいだにゃん。悪いのは、あたいにゃ!」
わたくしを擁護してくれるのは有り難いですが、今はちょっと面倒な事になりそうなんですよね。
『けんちゃん。ユジンを責めちゃダメだよ』
わたくしは、小さな声で言いますが、時は既に遅く、ユジンは更に顔色が悪くなります。
(目にうっすらと涙が?!)
「はい。言う通りです。私は姫様とは違い、言い訳の余地も無い罪を犯しました。この罪はこの身を持って償います」
そう言うと、腰に差していた刀を抜き自分の首に当てます!
「ふぁ!!ちょっと!ユジン何する気?!止めて!」
「ですが姫様。私にはこれ位しか、償う方法が思い付きません。あ?もしかして姫様が何かご希望の罰でも?」
えっと、わたくしに、そういう趣味はありませんよ!
「違うよ。そうじゃなくてユジン。自分の身を粗末に扱ったら、わたくしもう絶体に許さないからね」
ここは、ユジンに怪我して欲しくないから、わたくし本気で怒りますよ。
「ですが、それでは罪を償えません」
それでも、ユジンはまだ引き下がってくれません。
そこで、わたくしは提案を出す事にしましたよ。
「えっと。あ?!そうだ。これからも、まだまだ危険な事があるかも知れないから、今まで以上に、ユジンがわたくしの側に居て守ってくれたら、それが一番の償いですよ。だからね。わたくしを守る為にも万全の状態でいなきゃダメなんだよ?!」
「かしこまりました。今後、何があろうと、姫様のお側に控えます」
「いやぁ。それは、えっと、いつも通りで良いよ。夜はちゃんと寝て、昼間だけでも…」
(ユジンはどうして、こうも行き過ぎるんですかね…)
もう話を変えるしか無いですね。
「それで母様とエンラ様はどこに居るの?」
「あ、はい。今、調べますので、お待ち下さい」
そう言って、ユジンが手振ると、ユジン目掛けて大きな蜂が飛んで来ましたよ。
「ふぁ!大きな蜂?!ユジン危ないよ!」
ですが、蜂は、ユジンを攻撃する様子は無くユジンの手の上に乗ります。
「あれ?」
「姫様。驚かせて申し訳ありません。この蜂は、地獄のスズメ蜂でして、エンラ様が蜂を使役として連れて来たんです」
「だ、大丈夫なの?」
「はい。蜂達は言葉こそ話せませが、私達の言葉は理解出来ますし、思念で直接、見た映像を伝えたりも出来ます」
そう言うと、ユジンは軽く目を閉じます。蜂さんの思念を受け取っているのでしょうか?
少ししてから、目を開くき、わたくしに話し掛けます。
「姫様。どうやらエンラ様は奥方様を助けた後、拐われた者を救出に、八寒地獄の宮殿に向かった様ですね」
「さらわれ者?キャラさんですよね?キャラさんは無事なの?」
「そこまでは…申し訳ありません」
蜂さんが見たのは、エンラ様が八寒地獄の宮殿に行く所なんですかね?
エンラ様の行き先も分かったし、母様やキャラさんも心配です。
「う〜ん。なら、わたくし達もエンラ様と合流しょう?ここに居て仕方ないし」
そう言えば、ユジンも賛成してくれます。
「確か、ここ居て埒があきませんからね」
そして、わたくし達の話を聞いていた、けんちゃんが思わぬ提案したのです。
「にゃ〜。それなら主。あの2人に案内させるにゃ」
そう言うと、雪華さんと氷姫様の方に視線を向けます。
わたくしも、チラッと2人を見てから、けんちゃんに聞きます。
「案内してくれるかなぁ?」
そう聞けば驚く答えが返ってきましたよ。
「あいつら、主の言う事なら聞くみたいなにゃ」
「あいつら??って雪華さんだけじゃ無いの?」
「うにゃ?2人共にゃ」
「エ??2人共??」
わたくしが、それを聞いてびっくりして居ると、ユジンが何かを察したらしく、口を開きます。
「姫様。恐らく2人共に、ムクロの『魅了香』による洗脳が効いていると思いますよ」
「え?そうなの?!」
「『魅了香』は、『香』なのです。『香』は周囲に広がりますから、そして、その香を嗅いだ者全てが洗脳させます。だからとても危険なのです」
確かに、甘い香が一面に広がりましたよね。
そして、冥界生まれの、ユジンも危ない事に、わたくしは思い至ります。
(一度、操られてますし)
わたくしは、慌てて、ユジンに確かめます。
「ユジンは大丈夫なの?」
ユジンまで洗脳されたら大変ですからね。
「はい。私は大丈夫です。それに私が来た頃には香は飛んでましたから」
「そっか。良かった」
でも、2人共、いつまでも洗脳の状態なのは良くありませんよね?
八寒地獄の統治問題もありますし。
「ユジン。どうすれば『魅了香』が解けるのかな?」
わたくしが、そう問えば、ユジンはあっさりと解決方法を教えてくれます。
「ムクロに解いても貰うしか無いですね」
「そっか。どの道、ムクロさんは冥府に居るから、そうなるとやっぱりエンラ様と合流してからだよね?」
「はい」
「よし。じゃあ今からエンラ様の所にいくよ!」
そうして、わたくし達はエンラ様の元に向かったのです。
今週もお読み頂きありがとうございました。
今月から、仕事が繁忙期に入り忙しいので、来年の1月まで不定期更新とさせて頂きます。
楽しみに読んでいる方には大変、申し訳ありません。
よろしくお願い致します。