244話
やられた。
私は、姫様の護衛として冥界にやって来た。
にも関わらず、あっさりと敵の呪術にはまってしまった。
そして、更に厄介なのは、ここは私、自信の精神の世界。
恐らく、私の体は八寒地獄の何処で眠って居るのだろ。
神である私に死は無いが、長時間、眠ったままでは、私の体は氷に閉じ込められてしまう。
そうなると、色々と厄介だ。
そして何よりも、姫様の事が心配だ。
真っ黒な、世界の中に光が見える。
私は、その光を目指して歩いた。
すると、光の中は地上の王宮で、いつもの日常があった。
そこには、姫様や陛下の姿もあった。
「ユジン」
明るい笑顔で姫様が、私に話しかける。
これは、私の心が生み出し幻と分かって居るが、無下には出来ない。
「はい。姫様」
無意味な事だと分かっていても、返事を返す私がいる。
「お庭を一緒に散歩しょう?」
そう言われれば、私に『否』の選択は無い。
「はい。姫様」
そうして、私は姫様と庭を歩く。
だが、平和な日常は、ここまでだった。
突然、私達の前に現れたのは『咎人』だ!!
そして、咎人は姫様に襲いかかる。
私は、慌てて姫様の前に立ち塞がり『神器』を抜き応戦する。
だが当然、私が生み出した幻の敵を倒せる訳が無い。
幻の『咎人』との戦いが、無限に続く、どうやら、それが私の見た悪夢の様だ。
だが何時までこんな所で手間どっている訳には行かない。
本当の姫様を助けに行かなければならないから。
私は、戦いながら、必死に、この呪術を破る方法を考えた。
◇◇◇
やれやれ。
どうやら、私は呪術に掛かってしまった様ですね。
八寒地獄の騒動を治める為に、セリさん達と八寒地獄に向かったまでは良かったですが、完全に油断しました。
先ずは呪術から抜け出して、セリさんの救出に向かうべきですが、この八寒地獄で一番、危険なのは、リアさんでしょう。
リアさんはただの人間。
この八寒地獄の呪術が一番効果的に効く人間です。
それしても、私の見ている幻は、冥府ですか?
執務室には山積みにされた書類。そして鬼達が、何かある度に、私に相談にくる。
それは私に取っては、いつもの日常。
少しだけ違うのは、どうやら八寒地獄での私の失態が叔父上の耳に届き、厄介な事になっていると言う事です。
幻とはいえ事実、この後の処理を考えれば、最悪の想定して、今、ここで色々と対策を考えるのには、丁度良いかも知れません。
そして執務室にある椅子に座り、私は対策を考えながら仕事を初めます。
(それにしても八寒地獄の悪夢を初めて経験しましたが、なんとも甘い夢ですね…。一応、神の端くれである、私だからこの程度なのかも知れませが)
そして夢の中でも、全ての仕事を終わらせてから、私は呪術を破るべく動く。
呪術を破る為に私は神器を呼び、神器を武器に変える。
本当は、こんなに事はやりたくありませんが今回は仕方ありません。
空中で武器に変化した神器が、現実の私の体の上に落下する。
「ぐっ!!」
覚悟の上とはいえ、重い金棒が私の体に落ちたのです。
だが、その衝撃と痛みのお陰で私は目を覚まします。
そう。自らの体に痛みや衝撃を与えて強制的に目を覚ます。
これが呪術を破る唯一の方法。
そして目を覚ました私は先ずはユジンさんを探す事にした。