242話
そして、いよいよ、八寒地獄へ出発となったのですが…。
何故か、氷姫様が車輪の付いた牢屋の様な場所に入れられて居ます。
しかも凄い怖い形相で、こちらを睨んでいて、とても怖い怖いですよ!
わたくしは、その視線に耐えられず、エンラ様に小声で聞きます。
『エンラ様、どうして氷姫様を閉じ込めてるの?』
「はい。八寒地獄に行く途中で暴れられては困りますので、当然の処置です!』
『ふぁー!聞こえる様に大きな声で言うの止めてー!!』
「すみません。私は元々、声が大きいですから」
(確かに、エンラ様の声は、はっきりとして良く通るけど、絶対に聞こえる様に言ってますよね…)
わたくし、余計な事を言って更に雰囲気を悪化させたく無いので、もう氷姫様の事は何も言いませんよ。
それにしても冥府で用意してくれた八寒地獄用の防寒服はモコモコで暖かくて、冥府では暑い位ですよ。
エンラ様もユジンも母様も、かなり着込んでますけど熱く無いんですかね?
そして気になるのは、けんちゃんには防寒装備が何も用意されていない事です。
毛皮が有るとはいえ、それがちょっと心配ですね。
そこで、わたくしがエンラ様にけんちゃんの事を聞きます。
「けんちゃんは、何か着なくて大丈夫なの?」
そうすると予想もしてない答えが返ってきます。
「はい。ここでセリさんに神器錬成をして頂きます。武器となった神器に寒さは関係ありません」
「えー!そうなの?」
「にゃにー?!」
「そして八寒地獄へ入って、直ぐに、セリさんには『慈雨』お願いします」
「すぐにですか?」
「はい。事前に氷姫さんの身柄を拘束して、我々が八寒地獄に行く事は八寒地獄の者達に知らせていません。セリさんが、『慈雨』を使って浄化をすれば、皆が我々に注目し、そして好感を寄せることでしょう」
「ふぁ?いやあ〜。注目とかは必要が無いんじゃないですかね?」
(晒し者は嫌なんですが…)
「いいえ。今後の冥府と八寒地獄の関係の為にも必要です!」
(そう言われたら、わたくし何も言えませんね)
「…そうですか。分かりました…」
そうして、わたくしは何時でも、『慈雨』が使える様に準備し、八寒地獄へ向かったのです。
◇◇◇
私の名前はキャラ。
神の父と人間を母に持つ人間。
地上で亡くなって、あの世である冥界へとやって来た。
私の様な神の血を引く人間は魂がちょっと特殊なので、転生が難しく、永遠に冥界の住人とらして暮らす事になっている。
だけど、その事に不満は無い。
地上では辛い事ばかりで冥界で暮らしている今の方が幸せだから…。
そして今は冥府の従業員として働いる。
今夜は遅番で、冥府で夜まで仕事をしていたら、突然、「お前が、神と人間の間に生まれ娘か?」と知らない鬼に尋ねられた。
冥府や八大地獄で、働く鬼は皆様、髪が黒いのに、その鬼の髪は青みががった白だったのが珍しいかったので、良く覚えている。
そして私が「はい…」と答えると、いきなり口と鼻を塞がれた。
そのままの意識を失って、気が付いたら見知らぬ場所にいた。
何が起こったのか良く分からない。
そして私の目が覚めた事に気がつくと、今度は白い髪の女鬼が優しく私に話かけてきた。
「お嬢様。お目覚めですか?」
「貴女は誰?ここは何処なの?」
「ここは八寒地獄です。私は、お客様を、おもてなしする様に主様から言われています」
「お客様??」
「お嬢様の事ですわ」
「私はお客様とは違うわ!私は無理矢理ここに連れて来られたの!私を今すぐに冥府に返して下さい!」
「私は、主様からお客様を、おもてないする様に言われただけですから…」
「では、どうして私を連れて来たんですか?!その主様の目的を教え下さい」
「お嬢様。そう興奮、為さらずに。今、お茶をご用意して致しましたのでお召し上がり下さい」
言葉は丁寧だけど、私の話を一切、聞いてくれない。
どうして私を拐ったのか目的も分からないし冥府に帰してくれそうに無い本当に困ったわ。