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神の娘  作者: アイ氏
238/269

237話

姫様の護衛の為に冥界へ帰って来た。


冥界は地上とは、余りにも環境が違うので、姫様の事が心配だったが、今の所は、お元気にして居られので安心した。


天界や地上生まれの神族は、冥界を好まない。


天界には、美しい青空や夜になれば星空、そして何よりも風が吹き抜ける。


だが、冥界は地下の異界であるが故に、昼も夜も常闇の環境。


そして風も吹かない。


更に地下に溜まる大量の温泉が独特の硫黄の匂いを放ち、その匂いを嫌う者も多い。


だから以前に緊急事態とは言え、姫様が長く冥界へ留まるのは辛いだろうと、急いで竜宮へお返しした。


今回の訪問も短期で終わると思っていたが、エンラ様から渡された予定表を見て驚いた。


冥界の全ての場所を浄化する計画、はっきり言ってかなりの時間が必要な筈だ。


余りにも、幼い姫様様には厳しい計画。


その事をエンラ様に抗議したが、これでも穢が強い場所に絞ったと言う。


どうやら、私の想像以上に、冥界には問題がありそうだ。


だが少しでも姫様に、お疲れの様子や負担に感じる様子が見られたら誰が何と言おうとも、姫様を連れて地上に戻る。


そう例え姫様、ご自身が反対されてもだ。


そう私は心に決めた。



その姫様は奥方様との再会で酷く泣かれてしまったので、心配で、お側に居たかったが、皆が、こういう時は親子二人っきりにした方が良いと言うので仕方なくお側を離れた。


地獄の炎から生まれた、私には親という存在は居ない。


だから、こういう時は本当にどうして良いか分からない。


親を持つ鬼達やエンラ様が、そう言うならばならばと仕方なく姫様のお側をはなれた。


だが姫様の身に何か有っては大変なので、暫く部屋の前に立って居たが、それも皆が止めるので、私は別の部屋で休む事になった。


部屋に居ても、やる事が無く落ち着かない。


そして、ここは勝手知ってる冥府の宮殿。


そこで私は資料室に行く事にした。


少しでも、今の冥府の事を把握して起きたいからだ。


久しぶりに、資料室へ来れば整理はされているが、そこは書類の山。


その中から適当に書類を読み漁る。


私が冥府の副官を勤めて居た頃と今の冥府も余り変わら無いが、一つ気になる書類を発見した。


それは八寒地獄からの書類だ。


冥府には、八大地獄と八寒地獄の二つが有るが、殆どの人間は八大地獄に落とされる。


今の冥府の神々の殆どは八大地獄から生まれた者が多いからだ。


無論。私も八大地獄に由来する神。


八寒地獄には冥府が作られる前から、住んでいる神々がいる。


彼らは、一応は冥府に従っているが、冥府の役人が居ない為に、余り交流が無いのも事実だ。



そんな彼が、姫様に八寒地獄へ来て欲しいと、要請を冥府にして来た。


私の知る限り彼らは他所者が八寒地獄へ入って来る事を好まない筈だ。


姫様の偉大な、浄化の力を知り要請を出したとは思うが、彼らのこの動きに、私は少し違和感を覚えるのだった。



そして夜になり、今夜は、姫様が冥府にお出ましになられた事を歓迎して、晩餐会が開かれる。


暫く、お側を離れてしまったが姫様は大丈夫だろうか?


晩餐会の部屋に行くと、姫様は、すっかり落ち着かれて母君のお側に付いていた。



私の姿を見つけるなり、姫様が私の元にくる。


「ユジン。姿が見えないから心配したよ。今まで何処に居たの?」


そして叱責された。


叱責は当然だ。私は護衛として、ここに来たのに姫様のお側を離れてしまったのだから。


(やはり皆の言う事など無視して、部屋の前に立って居れば良かった…)


私はとても後悔した。


慌てて謝罪すれば、姫様は怒った様子も無く、更に私の元にやって来た奥方様を紹介してきた。


本来なら、私の様な者は捨て置いても良いのだか。


姫様、母君、奥方様と会うのは、これが初めてだ。



そして、何より、私は故国を滅ぼした者。


陛下の命令に従っての事だが、私を心良く思わないだろうし、何より人間は、私に怯える。


だが、私を怯える事も無く、平然としていた。


思い掛けずお礼まで言われてしまう。


こんな人間は初めてだ。


少しだけ、陛下が心惹かれた気持ちが分かり、そして姫様は、陛下に良く似ていると思っていたが、どうやら奥方様にも似ているとわかった。


そして晩餐会が漸く終わり、皆が寝静まった頃、騒ぎが起きた。


何者かが、冥府へ侵入したらしい。


先程の事があったので、私は姫様がお休みの部屋の前で、立っていた。


皆や姫様は、寝る様に言ったがずっと立っていて本当に良かった。


もし姫様の身に何かあったと思うと、ゾッとする。


だが、残念ながら、この騒ぎが姫様のお耳にも届いてしまったらしい。


また姫様の身に危険が及ぶ予感がした。











今週もお読み頂きありがとうございました。


また来週もよろしくお願い致します。

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