234話
いつもの様に、冥府の宮殿を掃除していたら、エンマ様に呼ばれて、冥界に娘がやって来るって聞かされた。
最初は娘に何かあったのかと驚いて、エンマ様に取り乱し姿を見せてしまったけど直ぐに私の勘違いだと分かってホッした。
私も初めて知ったけど、セリは私と同じ人間では無くて神族で、本来なら、冥界に来る事は永遠に無いのだと初めて教えられた。
その話を聞いて、私は驚いたが、だからと言ってセリが私の可愛い娘である事に変わりは無いし、娘に会える日をとても楽しみにして待っていた。
だけど娘がやって来るまでが色々と大変だった。
先ずは、陛下からセリが冥界にやって来るに当たって様々な条件が突き付けられた。
その話を聞いた時は私はとても驚いた。
娘が来たら、私と一緒に暮らせると楽しみにして居たけど、天国の私の家で暮らすのは無理そうだと理解した…。
だってセリ専用の寝室、居間、衣装部屋、浴室、化粧室の用意なんて、私の小さな家では部屋が足りない。
でもセリと暮すのを諦めたく無くて、一応、セリのお迎えの為に、色々と準備を進めているエンラ様に尋ねてしまう。
「あの…この条件を全て本当に守るのでしょうか?セリはまだ小さいですし、私と一緒の家で暮らしても大丈夫だと思いますわ」
「リアさんの天国の家では、少々難しいかと思います。お気持ちは分かりますが、叔父上から、出された条件は全て飲む様に父上から言われています。それが無理なら、きっと叔父上は、セリさんを冥界には寄越して下さいません」
はっきりと断れ、私は困惑してしまった。
「…そうなのですか?」
そして理由を聞かされたれば、陛下のセリへの愛情の深さがわかった。
「はい。父上が言うには、叔父上は、セリさんを何処へもやりたく無いのだと、だから条件は全て飲む様にと謂われいます」
勿論、娘を大切思ってくれているのは大変有り難い。
だけど話を聞いていると、陛下は少しセリを甘やかし過ぎでは無いかしら…。
幼い頃から、贅沢に慣れて欲しい物を何でも与えられて育ってなんて知らなかった。
私はセリの将来がとても心配になった。
(我儘な子に育って無ければ良いけど…)
母親の私が側に居られたら、陛下が、セリを甘やかすのを少しは止められたと思うと、死んだ事が恨めしく思う。
後悔しても仕方ないけど、セリが冥界へ来たら、例え、陛下の突きつけた条件を破棄してでも、私に出来る事をするわ。
私はそう心に密かに心に誓った。
そうして、セリがやって来る日が近づいた。
竜宮からは、セリの荷物が沢山さん送られ来て、その荷物の片付けが、大変だった。
送れて来た着物はどれも美しい絹の布で作られ、髪飾り等の装飾品は、とても繊細な細工と、美しい宝石がさり気なく嵌められていた。
どれも人間には作れ無い物ばかりで、セリが私の想像は倍以上に贅沢な、暮らしをしていた事に、再び驚いてしまった。
そしてセリがやって来る、朝がやって来た。
エンラ様が、わざわざセリを迎えに、竜宮へ行くと聞き、いつもの入庁時間より早く冥府にやって来てお礼とお見送をした。
「エンラ様。セリのお迎えありがとうございます。冥府までの道中はとても暗いので、どうかよろしくお願いします」
私には、地上から冥界まで、来る間の記憶が無い。
気が付いたら、冥界に居た。
どうやら死んだ時に頭を打った事と、セリの強力な浄化の力の為に、体から魂が抜けて直ぐに冥界の冥府に来てしまったらしい。
後で普通に冥府に来た人の話では、地上と冥界を繋ぐ道は真っ暗な坂道で、普通はこの道をかなり歩くと聞いた。
竜宮で寝ているセリの姿を思い出せば、セリは、まだ小さな女の子だった。
冥界の時の流れと地上の時の流れは違う知って居ても、私にはセリの姿を見て初めて、私が死んでから数年しか立って居ない事を知った。
それから数日後、セリが冥界へとやって来た。
その姿を見た時には、私は思わず走り出していた。
そして娘を抱きしめていた。
赤ちゃんだった時の記憶しか無い、私には、無事に成長した娘に再開した事が嬉しくてたまらなかった。
だけど、私が突然に抱きしめたから、セリは驚いてしまったみたい。
無理もない。
私と別れたのは、まだ赤ちゃんの時だったから、私の事が分からないみたいで困惑していた。
その後直ぐにエンラ様の声が聞こえて来た。
「こちらはリアさんです。セリさんのお母様です」
その言葉を聞いた途端に、セリは驚いから、私との再開を喜んでくれた。
本当良かった。
気が付いたら、また私はセリを強く抱きしめていた。
そしてセリも私も泣いていた。
本当に会えて良かった。
今週もありがとうございました。
本来なら、外伝で書こうと思っていた話なのですが、外伝の方の更新が思う様に進まず、もう本編で書いてしまえと、開き直って書く事にしました。
今後も、セリ以外の視点で話を進める事があると思います。
よろしくお願いします。