214話
わたくしが驚いても日月星様は、穏やかに話しを続けます。
「神は不老不死。死と言う概念は無い。であるならば、確かに私は塵となって消えたのだろう。そして、永遠を生きると思われた神族が消えたのだ。周囲の者達は、セト殿の力を脅威に思うだろう。周囲から怯えた目を向けられる、忌避される事になるだろう。そして神達は永遠に消える事は無い。だから、永遠にセト殿は恐れられる。それはとても孤独な事であろうな…。貴女も、セト殿に対する周囲の態度に心を痛る様な思いをされたのでは無いか?」
そう辛そうに言います。
「あ、確かにそうですね…。父様は、みんなに恐れられてますよ…」
嘘を言っても通用しなさそうなので、ありのまま事実を言うと、益々、暗い表情になります。
(でも父様は全然、周囲の事なんて気にして無いんですけどね~。だから日月星様が責任感じる事は無いと思いますが…)
わたくしは日月星様を、なんとか元気付けたいと思い、一生懸命に父様が周りを気にしてない事、そして父様は別に孤独でもなく、周りには沢山の人が居る事をいいます。
わたくしも小さい頃は、怯えた事もあったけど、今は全然、怖く無いし嫌いじゃないですしね…。
「でも父様には親友だって宣言している春眠様が居るし!他にもアシア様とかも、父様は怖いとか言ってるけど本気で怯えて居る様には全然見えないし!父様には、父様を慕ってくれる人魚さん達も沢山居るの。だから大丈夫なんですよ!
それにね。父様はちょっと子供ぽくて困ったちゃんだけど、わたくしにメロメロで、わたくしも父様が大好きですよ!!」
そう言うと、今度は『クスクス』笑って愉快そうな表情に変わり答えます。
「ふむ。親子仲良しで何よりだ」
(う~ん//わたくしなんかムキになって父様の事を言ってしまって、ちょっと恥ずかしいですね//)
ここは話題を変えましょうかね?
「あ//あの、それで、わたくしは帰れる方法は無いんでしょうか?」
「それに付いては心配はいらない。私が、貴女を元の時代に返そう」
「出来るんですか?」
「ああ。出来る。ただし少し時間を頂きたい。貴女を、未来の竜宮の温室の白梅殿の呪術が発動した直後に貴女を返さねばならない。そこまで細かくやるには、相当、高度な呪術になるし、失敗も出来ない。だから事前に多少の練習も必要になる」
「ふぁー!聞いただけでも大変そうですね。あの別にそこまで細かくなくても大丈夫ですよ?ええ。もう元の時代に帰れれば!!」
「いや。大切な娘が消えて、少し時が立ってから貴女が無事に戻っても、セト殿が、その間、黙って白梅殿を許すとは思えない。
そうなると未来の白梅殿の身も危うい。だから呪術が発動して消えた直後に無事に貴女をセト殿と元に返さねばならないと私は思う。セリ殿も先程、白梅殿に長時間、消えてままだと父様か怒る!と言っていた筈。違うかな?」
そう言われると反論しにくいですよ。
「う!!確かに、そうですね…じゃあ。日月星様。大変だと思いますが、よろしくお願いします」
そう言って、わたくしは軽く頭を下げてお願いします。
「ああ。セリ殿が元の時代に帰れる様に力を尽くそう。帰る準備が整うまで、ゆっくりと私の屋敷で過ごされるがよ。遠慮はいらぬ」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
いや~。過去に飛ばされてどうなるかと思いましたが、元の世界に帰れそうで安心しましたよ。
でも、日月星様は不思議な神様ですね…。
親切で、穏やかで、物知りで悪い神様には全然見えませんね。
(求婚みたいな台詞を言われた時は驚きましたが…//)
どうして父様達と敵対したんですかね?
そんな疑問が顔に出てしまったのか、日月星様が、わたくしに聞いて来ます。
「何かセリ殿は、私に何か聞きたい事でもあるのかな?」
そう問われ、わたくしは思い気って聞いてみます。
「はい…。あの気を悪くしないで欲しいんですけど、どうして日月星様は、アマテル様や父様と敵対したのかなって?その…、とても悪い神様には見えなくて……」
「ふむ。セリ殿の疑問は最もな事だな。それには私の神器の力が関係していてな」
「神器の力ですか?」
「そう、私の神器の力は、邪気や穢れと言う陰の気を吸収して、一時的に神通力を爆発的に高める効果がある。だがこの力が、なんと言うか諸刃の剣でな。私の神通力を高めると同時に邪気を呼ぶから。心が邪気に捕らわれて破壊的な衝動が心を支配して自分自身では制御することが不能なのだ。一種の麻薬を吸っている様なものだ。そして邪気に捕らわれたまま暴走した結果、アマテル殿や貴女の父親のセト殿とも敵対する事になってしまった」
「ふぁー!」
なんか飛んでも無い力ですよ!
「しかしセリ殿の浄化の力のお陰で邪気が消え自制も効く。神通力を高めつつ心が邪気に捕らわれる事がない。故にセリ殿、私は、貴女かを欲しかった。そうすれば、私は、正気でいられる。私は有る意味で無敵だな。だが…。残念では有るが貴女はこの世界の者では無い」
(///ふぁー!ときどき口説く様な台詞をサラッと言うから、本当にドキドキしますよ。白梅さんの言う通り天然タラシさんなのかも//)
「//えっと…。ご、ごめんなさい」
「いや。セリ殿が詫びる事では無い。それに、どうやら私は私のままで、この世から消える事が出来そうだ…そう思えば十分に本望だ」
そう言われると、わたくし悲しくなってしまいますよ。
日月星様が、今のままなら、きっと争いなんて生まれなかったし、父様だって、皆に恐れられる事もなかったんですから…。
「ああ、すまない。貴女を困らせるつもりはなかった。寧ろ私を正気に戻してくれたセリ殿には感謝している。
そして、これは私の勝手な願いなのだが…。セリ殿。私が既に放った数々の呪いが地上を蝕んでいる。貴女のその浄化の力で払っては貰う事は可能だろうか?」
突然、思っても見ない事を言われ、わたくしは正直困惑します。
「え?う~ん。実は、ちょっと前に『死星』と言う貴方が放った呪い他にも色々と、わたくしは払った事が有るんです。でも、その時は、けんちゃん…。あ、わたくしの神器の力で、でも今は神器が無いから、払らえるか、どうか……」
そう、この時代に飛ばされたのは、わたくしだけなんですよね…。
もし、けんちゃんも一緒に飛ばれてたら、こんな時は絶体にわたくしの側にいてくれるはずです。
「神器か……。確かに、神器の有る無しで、格段に神通力が違うからな。しかし、そうか。『死星』を…。やはり、セリ殿の力は恐ろしく強い」
『死星』を知ってるって事は既に居るんですかね!?
「あの、この時代にも『死星』って居るんですか?」
「ああ。残念ながら、『死星』も入れば、『咎人』も居る。ついでに言えば、『荒神』とアマテル殿に味方すると者達は呼んでるが、私と同様にアマテル殿と敵対する神や『疫病神』と呼ばれる地上に蔓延した邪気や穢れのせいで自ら堕ちて自我を失い邪気を撒き散らす神も居る」
『死星』の他にも『咎人』『荒神』『疫病神』なんか、怖い単語が次々出で来ましたよ。
「ふぁー!」
そんなに危険な時代だったとはびっくりですよー!!
今週もありがとうございました。
いつの間にか、4万アクセス超えてました。
本当にありがとうございます。
また来週、日曜日の21時に更新予定です。
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