211話
わたくしは誘拐されて、父様が来るのを待っています。
誘拐されてから時間は少し立っているのですが、身の危険はありません。
(ただ黙って座っているのは、しんどいのですが…。静か過ぎて息がつまりそうですね…)
何か、白梅さんとお話とか出来ないですかね?
(そして出来れば父様の復讐を諦めて貰らえたら…)
わたくしは勇気を出して話し掛けます。
「あの…。何かお話しませんか?」
すると、上から、わたくしを睨む白梅さん視線を向けられます。
(ヒァッ!!話掛けた、だけで怒らせてちゃいましたか?!)
そう思って『ビクビク』していましたが、先程の様に怒鳴られません。
そして溜め息を付いてから「……良いわよ。で?何を話すのよ?」
そう答えてくれましたよ。
わたくしは、気になった事を聞きます。
「えっと。あ、昔の事とか…。その日月星様は、どういう神様だったんだですか?どこで知り合ったの?」
興味津々に聞けば、白梅さんは少し懐かしいそうな表情で答えてくれましたよ。
「そうね…。あれは彼が地上へ降りて来た時のだった。私の目の前が突然、光り輝いて、とても美しい神が降りて来て、私は、びっくりしたわ。そして驚く私に優しい笑顔で謝ってくれたの。セトも美形って、皆言ってるけど、彼に比べれば、ブサイクよ!」
ふあ~!父様がブサイク!!
それにしても悪い神様だし、何となく熊さんの様な筋肉ムチムチに怖い顔の神様を想像してましたが美形で『キラキラ』なんて、びっくりですよー!!
更には話は続きます。
「その後、彼は良く私の所に通って来てくれたわ。そして私の居る地が、とても気に言ったと言って屋敷を立てたの。そうして彼の屋敷の庭の梅木になったの。あの頃は幸せだったわ。彼は白梅が一番好きだといってたし、毎年欠かさず花見をしてくれたわ」
恋話の様な言い方なので、『ドキドキ』してましたが白梅さん、本当に梅の木なんですね…。
(ナニカニナウ)
そうして昔話を続けている内に、段々と悲しい表情に変わっていきます。
「でも、暫くしてから段々と彼の様子がおかしくなった。普段から、イライラして、他の神に喧嘩を仕掛けて……。正直、あの時の彼は怖かったわ。でもフッと優しい彼に戻る時もって……。戻った時は自分のした事に驚いて、その後は酷く自分のした事に苦しんでいたわ。私には何も出来なかった。彼を救う力はなかった…。それが悲しかった…」
う~ん。性格が変ったんですか!?ムクロさん見たいに操られていたとか?!
気になりますね。
もう少し詳しく聞いて見ましょう。
「性格が変わるって?例えば春眠様、見たいな感じですか?二重神格見たいな??それとも、なんて言うか誰かに操てるとか!?」
わたくしの質問に、白梅さんは、ただ首を横に振ります。
「春眠とも違うし、操てるかは私にもわからないわ…」
そうして、また新たに決意した様な怒った顔に戻ります。
「とにかく彼は苦しんでいたわ。それなのに問答無用で日月星を消したセトを許せ無いの!だからこそ、今日こそセトを必ずギャフンと言わせるわ!」
(あー。最後はそこに行き着くんですね…。もう復讐を諦めて貰うのは無理そうですね…)
「父様がギャフンって言うと良いですね…。………が、頑張って下さいね…わたくし影なら応援してますよ」
もう、わたくしには何も出来ません。
父様、早く来て下さい~。
◇◇◇
セトとユジンが温室に向かう途中の庭で、エンラが現れた。
「お久しぶりです。叔父上」
「エンラ!何故、君がここに?」
そう問われ、エンラは軽く頭を下げてから答える。
「はい。冥界の浄化の件で、セリさんを迎え入れる準備が出来ましたので、お迎えに来たのですが…。何やら、屋敷が騒がしくて取り次ぎは時間が掛かりそうでしたので、勝手にお邪魔させて頂きました」
「そうか…。悪いけど、今は、それどころじゃ無くてね。セリが拐われた」
セトの言葉にエンラも驚く。
「それは!何者が?!」
「梅の神木だ!!」
「梅の神木ですか?それは昔、日月星に組した荒神の?」
「そう。その白梅だ」
「それはまた。以前から、叔父上に復讐を考えて色々と、竜宮で騒動を起こして居るのは聞いていましが……。まさか、セリさんにまで害が及ぶとは…。叔父上が、神木から、作られた梅酒がお好きなのは知っています。それで本来なら地上に封じられていた、神木を助けた事も。ですが、一度考え直した方が良いかと思いますよ」
「まあ。そうだね。僕の娘を拐ったんだ。今回は、何時もの様に笑って見過ごす訳にはいかないな」
セトは明らかに怒っている。
「叔父上。私も一緒に行きます。梅の神木の分身は、呪術を使うと聞いています。私も多少ですが呪術が使えますし、セリさんを助けるのに、お役に立てると思います」
「助かるよ」
こうして、3人はセリを助けに向かうのだった。