199話
ちょうちん草大会の延期は、色々な所で影響が出ていたんですね。
「ふぁ~!そうだったんですかー!」
「ふむ。それで先ずは竜宮の者達に詫びをと思っての…」
「そうなんですね。わざわざ訪ねくれて下さりありがとうございます」
「わたくしとユジンも、ちょうちん草大会の審査員として、明後日、大会に参加するんですよ」
「ほほ。そうであったか。審査員とは余程ちょうちん草に詳しいのだな」
『いや〜。実は全然分からないんですよね〜』とは言えませんので軽く流します。
「ええ。まぁ…」
「お手柔らかに頼むぞ。では妾達は、これで失礼する」
そう言って帰ろうとしますが、わたくしは、ユジンとムクロさん達が、余り話していないのが気になったので思い切って引き止めます。
「あの、これからわたくし達は、お昼ご飯にするんです。良かったらムクロさん達も一緒にどうですか?」
わたくしの、その言葉にユジンは戸惑います。
「姫様?」
そして問題は他にもあります。
予定していない事だったので、準備が可能かどうかをジェノに確かめます。
「ジェノ、大丈夫?」
ジェノはいたって冷静で、わたくしの我が儘をあっさりと許してくれます。
「問題ありません。お嬢様のお望みままに」
そんなやり取りを聞いてムクロさん達も招待に応じてくれましたよ。
「ふむ。ならば遠慮無く馳走になるとしょう」
ユジンとムクロさん達もわだかまりが解けと仲良くなってくれると良いのですが…。
◇◇
ー屋敷の客間ー
竜宮で用意された食事は、ご馳走様ばかりです。
急だったにも関わらず、こんな風に豪華な食事を用意してくれるなんて流石ですね。
机には、わたくしの大好きなバラの花が綺麗に花瓶に生けられ華やかな雰囲気です。
そうして和やかな食事の初まります。
ムクロさん達は竜宮の料理は初めての様で興味津々です。
「ほう。竜宮の料理は色々とあるのだな」
竜宮は三界の料理全てが食べらる唯一の世界ですからね。
暫くは、美しく盛り付けられた料理を楽しんでいましたが、ユジンの一言で少し雰囲気が変わります。
「ムクロ。貴女は冥界の統治から本当に手を引く事に納得したのですか?」
ユジンの、その質問にムクロさんはあっさりと答えます。
「ああ。無論じゃ」
お供の2人もムクロさんの答えに賛同している感じですが、ユジンは合えてお供の2人にも確かめます。
「シドウ。ゼンキ。2人も、それで納得したのですか?」
最初に答えたのは、シドウと呼ばれるお供の方です。
「ああ。少なくともオレには冥府の仕事なんて無理だ!!だから、これからもエンマが治めるのが良いと思ってる」
そう力強く言い切りましたよ!!
「私だってお断りですよ!あんな仕事ばかりの日々を送るなんて…」
2人の答えにユジンは困惑します。
「は?」
ユジンの困惑を他所に、2人の話はまだまだ続きます。
「ユジン、貴方は知らないかも知れないが、エンマは俗に云う仕事中毒です。ああなっては、神生もお終いです」
2人の口からエンマ様の悪口がドンドン飛んできますよ。
「知ってるか?!あのエンマは、365日休まず働いて居るんだぞ!!」
(ふぁー!父様から鬼さん達は、365日休まず働いているとは、聞いてましたが、エンマ様もだったとは驚きですねー!そして冥府の働き方改革後の今でもエンマ様は毎日働いているんですね。びっくりですよー!)
「しかも休んだり遊びに行かないのか?って聞いたら、用事があれば分身を使っているから、仕事に支障は無いとか答えたんだぞ!そう言う話しじゃねーての!」
そんな2人の話に、ユジンは段々と冷静さを取り戻して、エンマ様を擁護します。
「冥府は毎日死者が来るから休まず働くのは当たり前の事です。私だって副官時代は、それが普通でした。
別に変ではありません。上に立つ者ならば、率先して部下以上に働くのは当然です!エンマ様は普通です。
ただ私の場合は、今の陛下に拾われから、そ、その休みを頂いたり、こうして姫様と楽し時間を過ごさせて頂いて……。正直、戸惑う時があります。休み過ぎでは無いかと…。こんなに幸せで良いのかと///」
ユジンの答えに、今度はムクロさん達が驚き、更にはユジンに憐れむ様な視線を向けてきます…。
ユジンとムクロさん達の間に、余計に深い溝が出来てしまった気がしますが…。
もう、わたくしには何も出来そうにありません。
(ユジン。なんか色々とごめんなさい)
最後にムクロさんの答えで、ユジンも少し納得した様です。
「とにかく今の冥界の統治神の仕事は毎日毎日、亡者共の生前の経歴が書かれた人生史とか云う書類の山に囲まれ、その書類に全て目を通して、裁判、目通して裁判の繰り返しじゃ。とても妾にエンマの代わり等出来ん。最早、冥界は妾達には治められる世界では無くなってしまったのだ。故にそなたの心配は取り越し苦労じゃ」
エンマ様を褒めているのか貶しているのか分かりませんが、冥界の統治神はエンマ様以外には勤まらないとって事で、ユジンの心配は無事に解決ですかね?
そこは安心しましたよ。
この後は、ユジンの冥界にいた頃の話なんかも聞けてとても楽し食事になりましたよ。
◇◇◇
ー翌日ー
今日は『ちょうちん草大会』の初日ですね。
大会の料理部門の投票が有るために、わたくしは朝は少し食べただけで終わりにして会場に来ましたよ。
(会場でどんな美味しい料理が食べられるか楽しみですね)
そうして会場入りすれば相変わらず凄い人の数です。
「ふぁ~!凄い人!」
大会の会場には、ユジンとけんちゃん案内役にアズとシスカが一緒に来てくれています。
「にゃ〜ん。アズ。あたいの籠を絶対に放すなにゃん。もし籠を置き忘れたでもされたら、あたいもう主に永遠に会えにゃくなるにゃ。そんなの嫌にゃ」
けんちゃんも、この人の多さにヤバイと感じたのか籠を持ってくれている、アズさんに頼んでます。
「はい。神器様大丈夫です」
そして、お子ちゃまのわたくしにはユジンが手を差し伸べてくれます。
「姫様。迷子になったら大変ですから。お手を」
(ここは、ユジンの言う事を聞いて迷子にならない様に手を繋いだ方が良いですね)
「うん。ユジンありがとう」
さぁ。これできっと大丈夫です。
美味しい料理を沢山食べちゃいますよー!
今週もありがとうございました。
来週でいよいよ200話です。
意図してなかったのですが100話の辺りも、丁度『ちょうちん草大会』の話で、今回も再び『ちょうちん草大会』の話になっているので不思議な感じです。
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また来週もよろしくお願いいたします。