195話
ご機嫌斜めな、父様が部屋へ入って来ましたよ。
取りあえず、わたくしは、笑って誤魔化しながら挨拶をします。
「エヘヘ…。父様、おはよー!」
「セリ。今はお昼だよ…」
「え?あ、うん。じゃあ、こんにちは…かな?」
そんな会話で、少し呆れたのかため息を付いてますね。
「そうじゃ無くて、僕は怒っているんだよ。勝手に冥界へ行ってはダメじゃないか…」
あー 開口一番お説教ですかー?
まぁ~そうなりますよね~。
「うん。ご、ごめんなさい…。でも、あのね。わたくし母様の事が心配で、じっとして居られ無かったの!それにね。わたくしの浄化の力でムクロさんは正気に戻ってくれたし、エンマ様とも話し合うって和解する事になったし。わたくし頑張ったんだよ。だから…」
「それは分かっている。エンマからも、話を聞いたし。確かにセリの浄化や解呪の力は凄い。でも今回、冥界の事も、萬福の時も、セリが自らの危険を返りみず危険な場所に踏み込む必要は無い。セリはまだ小さくて、無力な子供だ。そんな危険な事はしなくてもいいんだ」
わたくしの行動全否定ですかー!!
「そんなに怒らなくても!アシア様だってエンマ様だって、助かったって言ってたもん!」
「アシアもエンマも、最高位の神の一柱だよ。別にセリが手を貸さなくても、自力でなんと出来る」
「うっ…。それは、そうかも知れないけど…でも、それって、封印とかでしょう…。本当の解決には、ならないし…」
「セリの気持ちもわかるけどね。もっと自分の身を大事にして欲しい。こんな無謀な事ばかりして、いたらいつか本当に自分の身を危うくするよ。
もし、セリの身に何かあったらと、考えただけで僕は、ぞっとする。その事を忘れないで欲しい。もし本当に小さな傷の一つでも負わせたら、その者は、僕がすぐに消すけどね…」
最後の『消す』は、ちょっと危ない発言ですが、わたくし、それだけ父様に大切に思われているって事ですよね。
「はい。……心配掛けてごめんなさい。父様」
後は母様の事も気になります。
ここは勇気を出して聞いて見ましょう。
「あ、あの、それで母様は大丈夫なんだよね……?!」
「うん。リアは大丈夫。咎人にはなってない。それに、大きくなったセリに会えてとても喜んでいたよ」
ここで父様が驚きの発言です。
「はぇ??いつ?いつ?わたくし、母様と会ったの?」
「え?ああ。ここ竜宮屋敷で、まあ、セリはぐっすり眠ってたし記憶に無いだろうけど…」
わたくしが、屋敷に運ばれた時の事ですか?!
「そ、そんな~。父様酷いですよー!どうして起こしてくれなかったんですかー!?わたくしだって母様と会ってお話したかったのに!会いたかったのに!!」
わたくし怒っちゃいますよー!
「え?いやリアも僕も起こしたけど、全然起きなくてね」
どうやら起こしてくれたのは本当なんですね…。
「そんな~!一生の不覚ですよー!わたくしだって、母様に会いたかったのにー!うっ~~」
目からは悔し涙が溢れます。
「僕もせめてセリが目覚てからでもって頼んだだけど、エンマは頭が固くてね。亡者は冥府で暮らすのが決まりだって……。絶対に譲らなかった…」
「そうですか…」
母様が、咎人とかになったゃたら大変だし仕方ありません。
「でも、落ち着いて冥府の混乱が落ち着いた、エンマが、セリを冥府に招待したいって言ってたよ」
「え?本当に?」
「うん。セリの浄化の力が目当てなんだけどね…。
どうやら、今回のムクロの封印が解けたのも、冥界に邪気が溜まり過ぎて、黄桃の力を持ってもなお、抑えられないからなんだ。
ムクロとの争いが解決したなら、危険は無いから冥界へ行く事を許す事にした。だから、また会える日が来るから泣かないで」
そう言って、わたくしの涙を拭いてくれます。
浄化の力が目当てでも、母様に会えるなら、わたくし喜んでいきますよー!
「うん。その日が楽しみ!」
その後、父様も許してくれたので、ユジンのお見舞いに行きます。
「ユジン!お見舞いに来たよ!怪我は大丈夫?!」
そう声を掛けてから、部屋の扉を開けると、何故か書類の仕事をして居るユジンの姿が目に入ります。
「姫様。良かった。お目覚めになられたんですね」
「ユジン、何で仕事なんて、酷い怪我をしてたんだから、寝てないと!」
「大丈夫ですよ。陛下の薬ですっかり回復しましたから…」
いつもの優しい笑顔で答えます。
そして突然、わたくしの前に来て跪くき真面目な顔で話します。
「姫様。今回はムクロを救ってくださり、ありがとうございました。改めて、私からも、お礼を申し上げます」
「ふぁ!ユジン急にどうしたの?」
「姫様も、ご存知かと思いますが、私とムクロ達とは旧知の仲でした。天界と冥界で、争いが生じた時に、私はどちらの味方に付くべきか悩みました。
そして、色々と考えた末に、私はエンマ王に付いたのです。
ですが、それは、両者の和解のきっかけを作りたいとと願ったからです。
しかし私の願いも虚しくムクロ達は、エンマ王の手によって、地獄最下層に封じ込められ、私は何も出来なかった…。
ならばせめて、これから冥界を生きる者達の環境を良くして行こうと考え、頑張りましたが、それも上手く行かず、全てが空回りばかりで、とうとう、私は全て投げ出して地上へ逃げ出してしまったんです…」
ユジンの辛い思いが伝わって来ます。
きっとユジンは、一生懸命に努力して来たんでしょうね。
だけど、何一つ報われ無かった…。
そんな悔しい気持ちが伝わって来ます。
ユジンは、自分が無力だと言うけれど、絶対に頑張って報われないなんて事は無いと、わたくしは思いますよ。
「ユジン……。ユジンは無力なんかじゃ無いよ。だって今回は、わたくしを守ってくれたじゃない。それにエンラ様が前に言っていたでしょ?
ユジンが考えた政策が有ったから、冥府も改革出来たって。
確かにユジンの努力は、直ぐに結果が出なかったかも知れないけど。
でもユジンの撒いた種は、ちゃんと、あちらこちらで芽を吹いて花が咲いてるよ。
そして、これからもきっと沢山の花が咲くよ。
それに両者の橋渡しだって、これからでしょ?
これから話し合いが行われるだから。
自分が無力って決めつけちゃダメ!
ユジン努力はムダじゃないよ。
だから頑張った自分をもっと褒めてあげて」
「……姫様…。ありがとうございます…。私は、これからも、地上や冥界の為に精一杯働いて参ります」
(いや~、ユジンは頑張り過ぎ働き過ぎだと思いますけどね~)
「うん。無理しない程度に頑張ってね…。取りあえず、今は仕事は少しお休みして、一緒にお茶にしょう?わたくし、ユジンを呼びに来たんだよ」
「あ、はい。この書類だけ片付けましたら……」
(あ~。ユジンは、本当に真面目ですね~)
でも、ムクロさん達が対立を止めて和解するんだし、ユジンもまた、ムクロさん達と仲良く話せる日が来るといいですね~。
そして、ユジンの願い通り、冥界の皆さんが、幸せに暮らせる日が来るといいですよね~。
まあ、あの世は過酷な労働環境らしいので幸せに暮らすのは大変かも知れませんけどね…。
今週もありがとうございました。
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また、来週も、よろしくお願い致します。