189話
昔、喧嘩して、ユジンは冥府を去ったと聞いていましたが、仲直りできそうな雰囲気は全然ありません。
「私がムクロに操られる事はありません。操られているなら、とっくの昔に、そうなって貴方と敵対しています。この際ですからはっきり言います。私もムクロの事故には、正直、疑問を抱いています。あれは本当に事故だったのかと…!!」
(ふぁー!事故では無くて事件の疑惑が有るんですかー?)
ユジンから出た衝撃的な言葉に、エンマ様は顔色一つ変えません。
「……事故であろう。冥界の神の中には天界の神の誰かが、仕業と陰謀を疑う声が有るのも知っている。だが、その宴には、余も兄者も出席はして居ない。弟のセトが、天界の使者として出席しただけだ。そして、そのセトが、ムクロを助けたのも事実であろう。もし事故が、天界の陰謀によるものなら、セトが、助けたりはしないし、後日、天界から見舞いの使者、火傷の薬なぞ、冥界に差し向ける事はない」
「確かに…。ですが、あの聖火の燃えかたは尋常ではなかった…。だからこそ疑問が芽生え、冥界の神の中には、天界の冥界乗っ取りを疑者もいた」
「余はその場に居ない…。結果的に、余が冥界の統治神になる事になったが、その決断は、兄アマテルに取っても余に取っても苦渋の決断だった。これ以上議論しても仕方あるまい。話は、これで終わりだ」
納得いかないのか、なおユジンは、話を続けます。
「待ってください。まだ話は終わってはいません!
それに宴には、陛下、いえセト様が来られた。なのにその後は貴方が全てを指揮し、冥界の統治神に就いたのか?」
「簡単だ。宴に出席したのは兄者天主アマテルの名代と、何故か知らんが、地上の統治神だったアシアにも名代を頼まれからだ」
(ふぁ!ここでアシア様ですか?なんか『自分、改まった席は苦手ですわ。セトはんがアマテルはんの代わりに、冥界行くなら、ついでに自分の名代も一つよろしゅう頼みますわ』と言いそうですよね…。あのアジア様なら……)
「セトが、その後、積極的に冥界に関わらなかったのは、下手に関わってそれこそ冥界の統治神にでも祭り上げられては敵わぬ思っと意図的に逃げたからだ。、天界と冥界の間には、確執が生まれた。このまま、放置すれば、天界と冥界で全面戦争になっていたであろう。混乱を治める為にムクロに変わる統治神の必要があった。その役目が余に回って来た」
父様は確かに地上が大好きですからね。
「………」
ユジンも、父様が関わらない理由には、納得してしまったのか沈黙します。
「納得したか?では話は、これで終いだ」
「では地獄に行くぞ。セリ」
「ふぇ?あ、はい!」
その後もユジンは、エンマ様とわたくしの後ろを着いて来ます。
「ユジン、そなたも冥府に残れ。万が一にも操られては敵わぬ」
「貴方の命令には従うつもりはありません。私は、姫様をお守りする為に地獄に行くのです。貴方に着いている訳ではありません」
「ふん強情だな。わかった。……好きにしろ」
ピリピリした雰囲気ですが、喧嘩にならなくて安心しましたよ。
冥府の立派な建物を離れ庭へとやってきます。
その庭は、かつてのユジンの宮殿の庭によく似てますね…。
遠目には、人が磔にされて居る様な飾りも見えます……
(コワイ)
(ここがユジンの宮殿の庭の元になったお庭かぁ〜。ほんと不気味ですね……エンマ様の趣味をちょっと疑いますね~)
「不気味な庭にゃ…」
けんちゃんは、わたくしの気持ちを察した様に、大きな声で呟きます。
(ひぇ~!なんて失礼な事を……ユジンはこの庭が冥界で一番良いにだと言っていたのに)
わたくしは、慌てて、小さな声でけんちゃんを窘めます。
『けんちゃん失礼な事言っちゃダメだよ…』
『にゃ~。だって主』
「良い。本当の事だ。ここの庭は、地獄に逝く亡者達も通る。その亡者達の恐怖を煽り、脱走防止の為に故意に、この様な作りにしてある」
「え??故意にに不気味な庭?エンマ様の趣味では無くて?」
「そうだ。でなければ、余もこの様な悪趣な庭は好かぬ…」
(悪趣!ワザと……。ユジンは、このお庭が冥府のエンマ様の宮殿に作られていたから冥界で一番良い庭と勘違いして、王宮の自分の宮殿に再現たんですよー!そして王宮の皆に怖がられ悩んでいたのですが。……ユジンが気の毒ですね…)
わたくしとエンマ様の話が聞こえたのか、ユジンの顔は真っ赤になって下を向いてます。
(勘違いが恥ずかしいんですね~)
まあ、今さらですが、誤解が解けてよかったですね。
そして大きな門に辿り着きます。
「ここが地獄の入口だ」
エンマ様は、門を見ながらそう言います。
この先、どんな危険があっても、わたくし頑張りますよ!!