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神の娘  作者: アイ氏
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188話

遥か昔の冥界には、まだ冥府の機関も存在しなければ、地獄も天国も存在していません。


人間の魂が冥界に来る事も無ければ鬼達の存在もありませんでした。


そして、今の様に統治神の特別な許可が無くても、神ならば誰でも冥界へ入れる世界でした。


そしてムクロは、その時の冥界の統治神でした。


あれは天界の神々を招いて華やかな宴が模様された日の事です。


私も冥界の神として宴に出席していました。


冥界は地底の異界。


常闇の世界です。


だから屋敷では1日中、蝋燭の火が灯されます。


普段なら蝋燭の火には、冥界の黒い炎が使われますが、今回は天界の神々の為に天界の炎である聖火が灯されたんです。


聖火には、邪気を燃やす性質があり、天界の神は、清浄な場所を好みますから、その為に特別に使われたんです。


そこで事故が起ったのです。


突然でした。



冥界の神は邪気や穢れに強く、普段から、邪気でその身が多少穢れていても、あまり気にしないのが災いしたのかも知れません。


聖火の性質もあり、ムクロの着物に燃え移った瞬間、炎となって一気に燃え上がりました。


誰もが驚いて立ち尽くす中、聖火を消したのは陛下でした。


助け出されたムクロですが、既に酷い火傷の状態でした。



そして天界の神々は血や穢れを嫌います。


火傷し傷ついたムクロを労るどころか、嫌悪を示し、その態度がムクロの心を余計に傷付けたんです。


そして、それからです。


ムクロが変わったのは、永遠に消える事の無い火傷を追って屋敷から出る事は無くなり。


統治神としての役目も放棄して、嫌悪を向けた天界の神々を恨む様になって行きました。


特に宴でムクロを、穢れと呼んで避けた者、嫌悪した者達を配下の神を襲わせて報復行為を繰り返したんです。


その事が今度は天界で問題となり、天界のアマテル様の命令を受けて、エンマ様が冥界へ降りてきました。


最初は、天界の神々に対して報復行為を止める警告しに来たのですが、警告は無視されて天界との戦に発展してしまいました。


冥界の神々の中には、そんなムクロから心が離れ、エンマ様に味方する者、ムクロに味方する神に別れて戦がありました。


そして、敗れたムクロは統治神の地位を失い。


冥界はエンマ様が新たな統治神になります。


それでも、ムクロと、その配下の神々は納得せず抵抗を続けます。


最後は、エンラ様の話した通り彼らは地獄に封じ込められてしまったのです。


「その戦に父様は関わっていないの?」


「はい。陛下は冥界の宴にアマテル様の代理で出席されていますが…。それ以後は冥界にもムクロにも関わっていません。その後は、ずっとエンマ様の指揮の元に全てが進みました」


それはちょっと以外ですね。


「ねぇ。そのムクロって神様の火傷が治せたら、元に戻るかな?」


「どうでしょう…。火傷を治す薬は有るのですが…。陛下は火傷を治す薬を造ったと聞いています」


「でも火傷治ってないんでしょ?父様の火傷の薬が効かなかったの?」


「いえ。天界の神の施しは受けないと門前払いをしたそうです」


「そっか…。ねぇ?その火傷の薬はまだあるのかな?」


「どうでしょうか?私には分かりません。陛下は、薬を作る時、生命造化で薬草から造りますが、その後、薬草が不要になれば消す事が多いですし、使った薬も既、遥かな時が経ってますし残っているか…どうか…」


「う~ん。確かに…。火傷が治ったら解決するかな?って思ったんだけど…」


「姫様…。残念ですが無理かと思います」


「セリさん。そう単純ではありませんよ…。きっかけは、確かに聖火による火傷や天界の神々の態度に問題があったかも知れませんが、もう、勝ち負けをはっきりさせないと解決されません。そして、父が負ければ、また色々と秩序が乱れます」


「……ですよね」


そして話ながら歩いている内に巨大な門が見えます。


「凄い大きな門だね!」


ユジンは、複雑な表情で門を見上げています。


「ここが冥府の入口です。取りあえず父上の元に行きましょう」


エンラ様は、そう言ってエンマ様の居る宮殿まで案内してくれます。


案内された宮殿の中に入れば立派な椅子に誰か座って居るのが見えます。


「父上。戻りました。荒神達に動きは?」


「エンラ戻ったか…荒神共の動きは何も無い…。む?そなた、ユジン!?」


「エンマ王。お久しぶりです…」


「そなた何しに冥府に参った?」


(ひぇー!エンマ様、ユジンに容赦無く塩対応ですか?)


「私は冥界の神です。冥界にいて何か問題でも!」


売り子言葉に買い言葉で、ユジンもツンツンしていて、ちょっと怖いですよー!


「旧知の仲の荒神共に助太刀に参ったのか?」



「そんなつもりはありませんし、貴方を助けに来た訳でもありません。姫様がご両親を心配されて、どうしても冥府へ行くと言われるので護衛として来ただけです…」


(え??あれ?ユジンは冥府の危機を知って助太刀に来たんですよね??)


「ふむ。そうか。セトはムクロの手に落ちたか…」


「はい。父様は竜宮にいます。わたしは竜宮から避難させられて…。だから、わたくしが、なんとかしたいと思って来たんです!」


「そうか…。ふむ、今は猫の手でもありがたい」


わたくしとけんちゃんを見てそう言います。


「にゃんか馬鹿にしているにゃ!」


「そんなつもりは無い。そなた達には浄化の力があろう?この冥界は、神木でも浄化仕切れぬ程に、邪気に満ち溢れてしまっている。一度、浄化をして清浄にして貰えると助かる」


「それから、ユジンそなたは、地上へ帰るのだな。ムクロの神器は、冥界生まれの者を操る。そなたが、操られぬ保証は無い。余の背後を取られては敵わぬ。今すぐに地上に帰れ」


「お断りします!貴方の指図は受けません!」


両者睨み合っています。


え、えっと、既に仲間内で不穏な喧嘩が勃発してしまいそうですよー!!

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