187話
セトが刀の神器『大通連』を構え、シドウが、斧の神器の『百鬼丸』を構え対峙している。
これが普通の戦いなら斧の方が強いだろう。
だが神の戦いは、そんなに単純ではない。
武器の形状よりも神通力の強さが物を言うからだ。
だからこそ格下のシドウは、斧を構えたまま下手に動く事が出来なかったのだ。
そして、そんな神々の戦いに、ジェノは巻き込まれ無いように、少しづつ距離を取るように鬼達の攻撃を避けながら後退していく。
ジェノの後退を逃げていると勘違いした鬼達は調子に乗り更に激しい攻撃を仕掛ける。
そんな様子にジェノは溜め息を付いてから独り言を吐く。
「やれやれ、冥府の獄卒の皆様は竜宮のお得意様なので揉め事は避けたいのですが…。荒神には他者わ操る神器を持つ者が居ると聞きます。洗脳され操られているなら仕方ありませんね…」
そして鬼達に宣言するように言う。
「この辺で攻撃に転じさせて頂きます!!」
だが、その宣言を受けても鬼達は小馬鹿にした態度を崩さない。
「お前達、人の姿に変身しただけの、魚に何が出来る?」
ジェノは徴発に乗る事なく冷静に言い返す。
「我々を侮って貰っては困りますね。そもそも、貴方達の竜宮で、不審な動きに、我々が気がついて無いとでも思いましたか?気が付いていましたよ。そして今夜、屋敷を襲撃して来る事も、しかし目的がわからない。だから黙って泳がせていたに過ぎません。そして、その目的も分かった以上、貴方達は用済みです」
そう言うと懐から小さな小瓶を取り出し鬼達に投げつける!
美しい歌声が響くと小瓶が割れ、そして凄まじい爆炎が上がり、鬼は爆発に巻き込まれ吹き飛ばされた。
突然の出来事に爆発に巻き込ま無かった鬼達もあっけに取られる。
「いかがですか?我が主が造りし爆薬の味は?薬とは怪我や病気を癒すばかりではありません。毒も、この爆薬も、また主の造りし薬。今回は特別に主様の薬でおもてなし致しましょう。そして冥界の皆様には我が竜宮に手を出した事を後悔して頂きましょうか?」
ジェノは笑顔で、そう言うと懐から小瓶を幾つも取り出し、次々に鬼達に投げ付ける。
そして一気に爆発させるのだった。
鬼達は、その爆発と衝撃で既に動けなくなっている。
シドウも鬼達もセトや人魚の力を侮っていた。
神は神器を取り上げてしまえば通常の武器を使い血を浴びてまで反撃されないと、そして人魚は空気や水を振動させる程度の能力しか持たない非力な存在と。
だが想像をしていなかった反撃を喰って立場が完全に逆転していた。
◇◇◇
シドウは斧の構えてたまま、ずっと動かない。
いや動けなかった。
(クソ…。隙がねぇ)
セトがシドウに話し掛ける。
「さっきから神器を構えたまま、全然動か無いけど、それが時間稼ぎかい?それとも、ただ動け無いだけなのかな?待つのも飽きたし…。僕から仕掛けさせてもらうよ」
そう言うと神器、『大通連』を抜いて一気に間を詰めて切り込む。
その速い攻撃を咄嗟に斧で防ぐも、何故か斧が段々と氷りに覆われはじめた。
神器が完全に氷に覆われてしまった。
だがシドウの戦意は喪失してはいない。
「クソがー!まだだ!」
そう毒ずくが、心とは裏腹に神器を失い、最早シドウに勝機は無い。
その上、凍結は斧だけでは済まなかった。
段々とシドウの体をも氷らし初めたのだ。
「アァー!!」
驚き、悲鳴を上げて氷りを振り払おうとするが凍結は消して止まる事は無かった。
そうして最後は全身が氷の中に閉じ込められてしまうのだった。
こうしてシドウとの戦いの決着もあっさりと着く。
既にジェノは鬼達との戦いを終わらせ、街で暴れていた鬼達の制圧も終わったとの配下の人魚から報告が入っていた。
頃合いを見てジェノはセトに報告する。
「さすが主様です。こちらも全ての鬼退治が終わりました」
爆発を喰らい意識の無い鬼達と街で暴れていた鬼達が縛られた状態で島に溢れている。
「主様。この鬼の方々はどう致しますか?」
「う~ん。そうだね。全員まとめて消しても良いんだけど…。それをやったら後でエンマから文句が来そうだし…。取りあえず皆まとめて氷に閉じ込めて、島の周りの海に浮かべ置こう。その内、冥府から連絡があるだろから、後の始末はエンマに任せるよ」
「畏まりました」
こうして、冥界の門の島には、荒神、シドウや鬼達が閉じ込められた氷が沢山浮かんでいた。
◇◇◇
ー地上ー
エンラ様は、懐から黒い手形を出します。
「私の権限でお二人に冥界に立ち入る許可を出します。そして冥界への道を開きます」
そして、現れた真っ暗な洞窟の様な入口の真っ暗な坂道を下って行きます。
「ずっと真っ暗な下り坂道が続くの?」
「はい。この坂道は、冥府の門まで繋がっています」
「姫様。暗い坂道で、転んだら大変ですから、私が抱っこ致しますね」
「えー?大丈夫だよ。転んだりしないよー」
そんなにドジな、お子ちゃまではありませんし自由に歩きたいお年頃ですよー!
「え?ですが…」
でもユジンは全然、納得してくれません。
仕方ありません多少の不自由は我慢して譲歩案を伝えます。
「じゃあ。手繋いで」
「はい。姫様」
そうして冥府へと繋がる長い坂道を歩いて行きます。
歩きながら、エンラ様は、今、冥府の置かれた状況を色々と説明してくれます。
「今、冥府は人間達の裁判は中止し結界を張って、なんとかムクロの攻撃から逃れている状況です」
「そのムクロって神様は何処にいるの?」
「おそらく地獄ですね。ですから、私とユジンさんでなんとか地獄に忍び込み、ムクロを倒せればと思っております。彼女は操る事が出来るだけで、戦闘力は無いと聞いていますし……」
「か、彼女??女の人なの?」
「はい。そう聞いています。ただ私は会ったこたが無いので、わかりませが……。ユジンさんの方が詳しのでは?」
「え? あ、はい。確かにムクロは女神です。ただ昔、神々の宴で、事故が起こり、蝋燭の火が彼女の着物に移り、そして酷い火傷をおってから、ムクロはすっかり性格が変わってしまいました……」
「えー!」
ムクロと言う神様が女性だった事も驚きですが、酷い火傷をしたなんて、とてもお気の毒です。
ユジンは、昔の事を思い出し辛い表情を、浮かべながら色々と話してくれたのです。
今週もありがとうございました。
最近は、暑い日が続いています。皆様もご自愛くださいませ。
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