186話
ー王宮ー
王宮は、誰も動かなくなっています。
誰も動いてなくて、びっくりですが、ユジンなら、
絶対に無事だろうと信じて、わたくしは、けんちゃんと一緒にユジンを必死に探します。
そうして、ユジンの姿を見つけると側には、エンラ様の姿もあります。
エンラ様の姿を見つけて何故みんな動かないのか納得します。
(エンラ様の呪術で時間が止まっていたんですね)
「ユジンー!エンラ様!助けてー!!竜宮が大変なの!」
「にゃー!」
わたくしは、竜宮で起こった事をユジンとエンラ様に詳しく話ます。
エンラ様は難しい顔になって話します。
「既に手遅れでしたか…。すみません。セリさんや竜宮を巻き込んで。竜宮で起こった事は、全て冥界の問題です。荒神ムクロの手の者の仕業です。」
そう話すエンラ様。
「荒神ムクロ?!」
「はい。荒神と言うのは、天界の意向に逆らう神の総称です。
そして、荒神ムクロについてですが…。
彼らは、父が冥界を支配する前から、冥界に住んでいた冥界生まれの神達です。
そして父エンマ様が、天界から降りて来て冥界の統治神となった。
冥界の神達は、その事を必ずしも皆が喜んで受け入れた訳ではないんです。
反対し抵抗した者も沢山います。
そして残念ですが、長い戦いの果てに、父は荒神達を捕らえて地獄の奥深くに封印致しました。
彼らは、父を怨む余り神としての道を踏み外し、既に聖なる神通力を失い、邪力を持ち、残念ながら他の者を害する存在に成り下がってしまったのです。
その荒神達の頂点に君臨する荒神ムクロ。
そしてムクロの持つ神器の『紅流し』の技『魅力香』の力は脅威です」
「『魅力香』?」
「はい。『魅力香』は、羽衣の形をしたムクロの神器の技で、その羽衣から漂う甘い香りが、冥界に生まれの者だけを、自由に洗脳して操る事が出来るのです」
「え?!じゃあ、冥府にいる、わたくしの母様も悪い神様に操れてしまったの?!」
「いえ。リアさんは人間。地上で生まれてますし、操れません。……ですが……申し訳ありません。実は冥府で働いている鬼達は冥界生まれ。鬼達が操られ、リアさんは拉致されてしまったのです。もしかしたら、叔父上を抑える為に、人質になってしまった可能性があります…」
「人質!?……父様と母様は大丈夫だよね?」
「それは、叔父上は大丈夫だと思いますが、リアさんは非常に危険な状態です。そもそも、亡者が冥府から出ると穢れに当てられ妖化してしまいますから。そうなると、自我を失い『咎人』になってしまう可能があります」
「そんな!父様が動けない今、ここは私達でなんとかするしかないんですよね?!ユジンは、これから冥府に行つもりなんでしょ?わたくしも連れて行って!」
そう言うとユジンは驚いて止めます。
「姫様。私は遊びに行くのでありません!」
「ユジン、分かってるよ。でもね。わたくしは冥界生まれじゃないから操られ無いし、浄化や解呪も出来るから!何か力になれる事があると思うの!そのムクロって神様を、なんとかして、母様を助けたいの。
だからお願い」
わたくしは、手を合わせてユジンに頼み込ます。
「ひ…姫様…ダメです」
「ユジンさん。叔父上のお力添えが無理な現状。
セリさんの協力を私からもお願いしたい。セリさんの浄化の力は邪気を持つムクロ達に抵抗出来る可能性があります。ユジンさん。私からもお願いします。冥府は今、危機に瀕しています」
「ユジン!お願い!」
わたくしとエンラ様に強く頼まれユジンは折れます。
「はぁー。わかりました。姫様は私がお守り致します」
わたくし達の話を聞いてた、けんちゃんも決意を固めます。
「あたいも主に付いて行くにゃ!」
こうして、わたくしは冥府の危機を救うべく冥界へ行くのです。
◇◇◇
ー竜宮ー
小さな島には立派な巨大な門が立っていた。
その門こそが、天界と竜宮を繋ぐ門だった。
その島には、荒神シドウと鬼達、人質のリア、対峙するようにセトとジェノ、その近くにはキヌ、大きめの船の中にはアズの姿があった。
荒神シドウは、その門を忌々しそうに見上げてから、門を開ける様に要求する。
「ここが天界の門か!冥界の門と同じで随分と御大層な門だな。さぁ、とっとと門を開けろ!」
「やれやれ、せっかちだね。それから僕の妻に、いつまでも汚い手で触るのは止めて貰らおうか?」
そう言うと、懐から小刀を取り出し鬼の片腕を切り落とした。
片腕を切り落とされ鬼は凄まじい悲鳴をあげ、暴れ、リアを投げ出す様に手放した。
その騒ぎに乗じてリアを取り戻すと、近くにいたキヌがリアを抱えて船に戻り、そのまま3人を乗せた、船は島を離れていった。
鬼達が突然の出来事に呆気に取られた隙にジェノは、神器を持っていた鬼に攻撃を加え神器も奪い返し、セトに手渡す。
呆気なく人質や神器が奪還されシドウは慌てた。
「おいおい。話が違うじゃねーか。天界の神は血や穢れが弱点じゃねーのか?なんで平気な顔してんだよ?!」
セトの着物には鬼の腕を切り落とした際に浴びた返り血が滲む。
「君達に神器を取り上げられてしまったからね。お陰でこんな刃物を使う羽目になってしまったよ」
そう言うと持っていた血で汚れた小刀を放り捨てる。
更に返り血で汚れた場所を不快そうに見ながらシドウの問に答える。
「僕は血や穢れは嫌いだけど、別に弱点ではないよ。
ついでに言うと、君達を、ここに案内したのは屋敷を破壊や血で汚れるのが嫌だから…。
そして、ここは天界の門では無く、君達か来た冥界の門の前だよ。
穢れを嫌う天界の神や精霊達の通る門の前で血を流す訳にはいかないからね。
さて、リアも保護出来たし、僕の神器も返して貰ったから、君達が今すぐ、しっぽを巻いて冥界に帰るなら見逃してあげても良いよ」
シドウは、やや冷や汗を掻きながらも答える。
「ああ。そうかよ。弱点がないってか……。だがな、手ぶらで冥界な帰る訳には行かないんでね。冥界の制圧が済むまで、あんたの足留め位はして見せるさ!
おい!!お前らは、そこの人魚をやっちまいな!オレが、セトの相手をする!」
そう命令されて、鬼達はジェノを取り囲む。
「残念だね。大人しく言う事を聞いていれば、消えなくて済むのに…。僕の妻を人質に取り、僕の着物を血で汚した罪は重いよ。覚悟して貰おうか?」
セトは取り戻した神器『大通連』を手にシドウと対峙する。
そして、シドウも自分の神器を呼び出した。
「こい!神器『百鬼丸』!!」
そうシドウが叫ぶと、突然、土の中から、大な百足が現れた。
「神器錬成」
そして百足は巨体な斧に姿を変えるのだった。
今週もありがとうございました。
なるべく1話を短く読み易くを目指して書いていますが、最近は気がつけば文章が長くなってしまっています。
でもせっかく書いたので削らずに、そのまま掲載をしています。
長い文章を最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。
体調不良により、来週一回休載致します。
体調を整えて、7月9日から、また更新を再開致します。
続きを楽しみにして頂いていた方には、本当に申し訳ありません。
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よろしくお願いいたします。