185話
ファイのちょうちん草を見学して楽しい時間を過ごした後、ようやく竜宮の屋敷に到着です。
いつもの様にジェノを初め沢山の人魚達が出迎えてくれましたよ。
「お帰りなさいませ。主様。お嬢様」
父様は、ジェノの顔を見るなり口を開きます。
「一応、先に言って置くけど、今回は、竜宮でのんびりするつもりなんだ。絶対に仕事はしないよ」
父様は、もう本当に仕事をする気0なのか、そう言ってジェノを牽制します。
「はい。承っております。…ですが!!残念ながら、主様に判断を仰がねばならない案件がございます」
父様の牽制も虚しくジェノは、あっさりと仕事の話を父様にします。
「……」
父様は無言で返事すらしませんね。
ジェノは更にダメ押しする様に言います。
「緊急を要する案件でございます」
それを聞いて父様も諦めたのか
「やれやれ。分かった。話を聞こう。セリは部屋でゆっくりしているといいよ。シノエ。セリを頼む」
「はい。主様。お嬢様お疲れでしょう。今、お部屋にご案内致しますね」
「うん」
竜宮のわたくしに用意された、お部屋は、とても素敵で気分が上がりますね。
その上、素敵な着物や身の回りの小物も沢山、用意して有るんだから、いつも驚かされます。
「よろしければ、お召し変え致しますか?今お茶やお菓子もお持ち致しますね」
「うん」
◇◇
わたくしが部屋でのんびりしている頃、父様とジェノは遅くまで仕事をしていましたよ。
そうして、夜になり寝静まる頃、突然、わたくし達は、冥府の事件に巻き込まれたのです。
「お嬢様。失礼致します。起きてくださいませ!」
そう言って、わたくしを起こしたのはシノエでは無くてシスカです。
「むにゃむにゃ。どうしたのシスカ?シノエは?」
「シノエさんは今はいません。お嬢様、大変申訳ありませんが、直ぐにお着替えてくださいませ。この屋敷を脱出致します」
「へ??」
突然、そう言われても事情が分からず、途方にくれてしまいます。
この時、既に屋敷は悪い人達に占拠されていたのです。
わたくしが脱出の準備をしている頃、父様の部屋には、悪い人達が、戸を蹴り破り部屋へと乱入していました。
◇◇◇
夜遅くに屋敷を不法に侵入してきた、者達の頭には角が有り鬼である事が一目で分かる。
そして、鬼達を従えているのは見るからに荒々しい神だった。
「どこの神と鬼か知らないけど、こんな夜遅くに随分手荒な訪問だね」
侵入してきた神はセトを確認してから従えて来た鬼達に指示をする。
「余裕を噛ましているのも今だけだ!おい!例の女を連れてこい!」
手を後ろ手に縛られ、ぐったりと気を失って女性が鬼達によって引きずられながらセトの目の前に連れてこられる。
セトは、その捕らえられている女の顔を見て酷く驚く。
「まさか……!!」
その驚きに満足した様な表情を見せ、その神は刃物を女に突き付けた。
そして勝ち誇った様にセトに向かって口を開く。
「さあ。この女を助けたかったら、大人く言う事を聞け!もし逆らうなら、この場で、この女の首を切り落とす。いいのか?貴様の大事な女だろ?」
そう言って、女の首に刃物を当てた刃が当たっている皮膚は傷つき、僅かに血が滲む。
脅しではなく本気で言っている事が分かる。
「分かった。…君達に従うよ」
セトは、両手を上げて抵抗する事も無くあっさりと同意する。
「よし!まずは神器を武器に変えてから、オレ達に差し出せ!最高位の神といえど神器が無ければ戦えまい」
「分かった…」
そう答えると、神器を呼び武器へと変えてから、シドウの方へ投げる。
驚くほどあっさりと要求が通り、シドウは調子に乗り馬鹿にした様に言う。
「それほどこの女が大事か?それとも、この女の血が流れ穢れるのが怖いのか?血だ穢れだと天界の神共は哀れな弱点を持ったものだな」
「そうだね。僕も血や穢れは好きでは無いね。それで?君達は何処の誰で、その目的はなに?」
「オレは冥神の神シドウ。もっとも、天界に逆らう神を、あんた達の間では荒神と呼ぶんだったな。まあ、荒神シドウとでも名乗っておこうか。望みは、当然、天界の神の支配からの冥界の解放。
その為に天界との交渉を望む。その交渉場所として竜宮を我々の支配下におく。さぁ、この女が大事なら、竜宮をオレ達に明け渡し、そして竜宮にある天界へと繋ぐ扉を開けて貰おうか」
そう要求するのだった。
◇◇◇
シスカは、わたくしを抱き抱えてどこかへと走ります。
そんな道の途中で、けんちゃんが慌ててわたくしの所にやって来ます。
「主、無事にゃん?!」
「けんちゃん!わたくしは大丈夫だけど、突然寝ている所を起こされて、もう何がなんだか…」
「主、緊急事態にゃ!屋敷が得体の知れない連中に囲まれてるにゃ!街も、あちらこちらから火の手が上がっているのが分かるにゃ!」
わたくしは、その話を聞きシスカに迎っている場所を訪ねます。
「ええー!!ねぇシスカ、わたくし達はどこに行くの?外に出たら危険なんじゃ?!」
「緊急時に屋敷を抜け地上の門まで安全に行ける隠し水路と船がありますので、お嬢様を地上にお返しいします」
「待って!わたくし一人で逃げるなんて嫌!父様や、みんなも一緒に!!」
「お嬢様を地上に逃がす事は主様の命令です。主様は、お嬢様を危険にさらす事は望んではおりません」
「でも…」
「お嬢様、何の心配も入りません。急いでいますので、詳しく説明している時間はないですが、主様も私達も大丈夫でございます。戦闘力の無いシノエさん達、精霊は一時、天界へ避難致しましたし。さあ、お嬢様も、地上へお逃げください。アズ、お嬢様を頼だわよ」
屋敷の隠し水路から、外に出て街の方を見れば、けんちゃんの言う通り、街のあちらこちらから煙が上がり、大変な事態が起こっていることが分かります。
そして、わたくしは不安な気持ちのまま竜宮から1人脱出し、けんちゃんと一緒に地上に戻ってきたのです。
でも王宮に付いた途端に、みんな固まった様に動かなくなっていたから、びっくりです。
もしかして地上でも何かあったんですかね?!
今週もお読み頂きまして、ありがとうございます。
さて木曜日から会社に新人さんが入社してくれました。ブラック企業の会社に就職してくださり、大変ありがたい気持ちで一杯です。
ですが同時に私の仕事に新人さん教育係の仕事が増えてしまったのも、また事実で一段と仕事の環境が厳しくなってしまいました……。
右も左もわからない新人さんに仕事を教えるのは、とても難しく普通に仕事をするより、精神的に疲労を感じる今日この頃です。
そんな疲労困憊の私に広告下の【☆☆☆☆☆】【★★★★★】にして応援いただけると嬉しです。
仕事で一杯一杯の身の上ですが更新予定に変わりはありません。また来週の日曜日の夜9時に予定しています。
来週もよろしくお願いいたします。