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神の娘  作者: アイ氏
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184話



ー王宮の食堂ー



ユジンの苦しそうな声が食堂に響きます。


「ううっ…。お、お許しくださ…い。も、もう、桃は食べられ…ません……」


「ダメだ。ここにある桃でやっと終わるんだから。どんどん食べて」


あれから頂いた、沢山の桃を父様とユジンと、わたくしで食べます。


わたくしは体に良く無いからと三食はちゃんとした食事で、食後やおやつに桃を食べるだけですが、父様達は、三食もおやつも全て桃だけ生活です。


(父様達は日に日に精神がガリガリ削られますね…)



「……む、無理です。最近ずっと口の中が甘くて、王宮の食堂も桃の甘い香りが四六時中漂ってますし……。き、気分が…」



「わかってる。僕だって同じさ……最近では、とうとう夢にまで見るようになった……」



その時、庭から突然、聞き覚えのある声がします。


「よう!セト!嬢ちゃん元気にしてたか?」


そう言って、遠慮無く庭な面した食堂の戸を開けて、ズカズカと入って来ます。


「ふぁー!!春眠様どうして?」



「冬厳から色々と聞いてな。大活躍だったらしいじゃねぇーか。俺様からも、萬福を助けてくれた礼を言いにな!」



とか言ってますが、絶対に冷やかしにですよね~。



ですが、今回は春眠様の訪問は大歓迎です。


いつもなら露骨に迷惑そうな態度をとる父様や、ユジンも立ち上がって笑顔で出迎えます。


「やあ!春眠、良く来たね。歓迎するよ。ふふふ」


「春眠様ようこそお出でくださいました」


父様とユジンに左右を囲まれ、春眠様はちょっと驚きながら左右を見ます。


「お?なんでぃ?!いつもと様子が違くないか?」


一応、春眠様も父様の様子が違うのに気が付き怪しみます。


「気のせいだよ。それより桃が沢山あるから、春眠も沢山、食べていきなよ。なんなら全部、食べても良いよ…」


「は?桃?いや、オレ様達も桃源郷から礼にって冬厳が、白桃を沢山貰ってな。兄弟で食ったぞ」


未だ食べきれずに机に上に置かれた大量の桃を目にして、春眠様は嫌な予感がしたのか、段々と顔色が悪くなっていきます。


「………あっ!いけね。オレ様、役目が有ったんだ!!わりぃー!また今度……」


そう言って帰ろうとしますが、左右を囲んでいた父様とユジンが、春眠様の両腕を掴んで放しません。


「ダメだよ。春眠。桃を食べ終わるまで帰さないよ」


「そうです。春眠様、遠慮なさらず、桃を沢山お召し上がり下さい」


父様とユジンが、強引に春眠様を椅子に座わらせて追いつめます。


春眠様は逃げる事を諦めたのか


「チキショー!どうしてオレ様がこんな目にー!食えばいいんだろぉー!」


と言って桃を食べ初めます。


春眠様の協力も得て、桃は全て完食が出来ましたよ。


◇◇◇


ー冥府ー


その日、冥府では以上事態が起きていた。


地獄では鬼や亡者達が暴れ回り暴徒化していた。


冥府のあちらこちらからも火の手が上がる。


「父上。非常に不味いです」


「地獄の深くに、封じ籠めていた荒神(こうじん)が、まさか封印を破ろうとはな。エンラ。そなたは直ちに地上に迎え。この事態をセトにも知らせるのだ」


「はい」


エンラは父の意を受けて急いで地上に迎かうのだった。


◇◇◇


季節は変わり夏です。


わたくしの、もっとも苦手な暑い季節です。


そんな夏に父様から久々に竜宮に行く話が出ましたよ。


「最近、色々と大変な事ばかりあったから、たまには、竜宮でのんびりとしよう」



確かに、ここ暫く、色々と大変な事ばかりでしたよね…。


わたくしは、嬉しいのですが疫病の混乱から、国がまだ完全に回復してないのに大丈夫なんでしょうか?


「大丈夫なの?お仕事とかは?!」


「何の心配もいらないよ!地上は、ガクサンやユジンに、竜宮はジェノにやらせるから、僕達は、涼しい竜宮でのんびりと夏休みを凄そう」


父様には、のんびりの夏ですが、ガクサンやジェノには、激務の夏になること受け合いですね。


(お気の毒です)



こうして、父様の提案で竜宮での夏休みが、はじまろうとしていたのです。



久しぶりに王宮の池から竜宮へ繋がる門を潜るって竜宮に行きます。


いつも通り門の前には、アズがお迎えに来てくれましたよ。


「アズ、お迎えありがとう。屋敷までよろしくね」


「はい。お嬢様」


「にゃん。また、よろしくにゃ」


簡単な挨拶をして船に乗ります。


水路を進めれば街が見えて来ましたよ。


この街にはファイも住んでるですよね。


ちょうちん草の大会以来、会っていたないのですが、元気ですかね?


「ねぇ~。父様。せっかく街に来たんだしファイに会っていかない?」


「うん。いいよ」


父様もあっさり賛成してくれて、父様とファイの家にやって来ましたよ。


「お邪魔しますー!」


そう断って庭に入ると庭にはファイの姿が、手には水の入ったバケツを持っています。


「ファイ!こんにちは。遊びに来たよー!」


「ああ。あんた達か。久しぶりだな…」


「何してたの?」


「今、ちょうちん草に水をやる所だ。大会が近いからな。良かったら俺のちょうちん草を見て助言をくれないか?」


ちょうちん草の大会が近い?もうそんな時期なんですね~。

一応、前回、特別審査員ですが、ちょうちん草の知識は0のわたくしに助言なんて求められても、何も答えられ無いんですよね。


「ええー!助言なんて無理だよ……」


「だだ、見てくれるだけでもいいんだ。それとも俺のちょうちん草なんて、見る価値も無いか……無いよな……」


そう断ると、明らかにがっかりした表情になり、拗らせ発言が漏れます。


「違うよー!ファイの育てた、ちょうちん草は見たいよ」


「そうか//見てくれるか…。案内する」


ファイが、そう言って少し照れたように返事をします。


「僕は、ここで待ってるよ」


父様に、とってちょうちん草は黒歴史ですからね、興味が無いのは仕方ありません。


ファイに庭に案内されて付いて行くと、そこには沢山のちょうちん草が植えてあったのです。


「ふぁ!凄い数のちょうちん草?」


「ああ。全部で50株はあるな」


「前回は、しゃべるちょうちん草を出したが…。今回はしゃべるちょうちん草が見つからなくてな……。取りあえず、この基本種で勝負をと考えている」


「へぇ~」


「葉の濃い緑。実の美しい鱗。目も輝きに、実も油ものっていて、二つ成っている。この株では優勝が狙えない事はわかってるが、俺なりに最善を尽くすつもりだ」


そう話すファイの顔は自信にあふれています。


ファイのちょうちん草に対する愛情と頑張りが伺えますね。


「うん。ファイ。次の大会も頑張ってね」


この時は、平和な竜宮にも冥府の混乱の魔の手が迫っていることに、わたくし達は、誰も気が付ていなかったのです。



今週もありがとうございました。


また来週、日曜日、夜9時に更新予定です。


広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援いただけると書くモチベーションに繋がります。


よろしくお願いいたします。

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