182話
山主さん達を見送って、わたくし達も疲れたのでお部屋で休憩です。
もうすっかり夕方になっていて、日も暮れてきましたよ。
幸福さんは、わたくし達に気を使ってお茶やお食事を持って来てくれます。
「幸福さんありがとう。でも萬福さんに付き添って無くて良いの?」
「大丈夫です。今は白桃様やアシア様が兄に付き添ってくれてますし。兄は静かに寝ていますから…。それに皆様もお疲れでしょう。私には、簡単なお食事をご用意する位しか出来ませんが、召し上がってくださいね」
そう言ってお食事を用意してくれます。
天界と同じでお野菜や果物ばかりですが、とても美味しそうです。
何気、無くお食事を並べる幸福さんの様子にある事に気が付きます。
「あれ?幸福さん?!痣が消えてる?!」
「はい。突然、降った光の雨を浴びたらあっと云う間に消えてしまったんです」
「これもセリの力だね」
「そうだっんですか。セリさんには、兄を救って貰った上に、あたしの痣まで……。本当にありがとうございました。これで肌を隠さずに済みます」
そう言って喜びます。
これから幸福さんには肌を気にすること無く素敵な着物を沢山着ておしゃれを楽しんで貰えれば嬉しですね。
(まあ~。白桃様の餌食になりそうですが…)
痣と言えば、地上でも消えない痣が、色々と問題になってましたね。痣を苦に自殺する者までいるとか……。
「ねぇ~。父様、地上で疫病に患った人達も『慈雨』を、使えば痣が消えるのかな?」
「『慈雨』を、使わなくても、元凶だった萬福が浄化されてるし、萬福の邪気はもう消えたから、疫病を患った者達も、徐々に回復するだろうし、慈雨を、浴びなくても痣は薄くなって自然と消えて来るよ」
「そうだな。もうもう間もなく、私の季節も終わり、春兄が下りる季節になる。暖かくなれば、更に人々病も癒え易くなるだろ」
冬厳様もそう言って同意します。
「本当?良かったぁ~」
わたくし達の食事を終わる頃、アシア様と白桃様も部屋へやって来ます。
「やあ。今回はホンマ助かりましたわ。冬厳も、おおきに。セトはんと仲良く手繋いで桃源郷に来てくれて。お陰で色々と助かりましたわ」
とニヤニヤ笑って言います。
突然の爆弾発言に冬厳様も、そして父様も慌てます。
「///なっ!、アシアー!余計な事を!」
「君ね!」
「ふぁ!!手~?!」
わたくしもびっくりですよー!
どうして父様と冬厳様が手を繋いで桃源郷に来たんですかねー?
ニヤニヤ笑っているアシア様に父様が抗議の声をあげます。
「アシア!君ね!!何で許可の無い者が桃源郷に入る条件が手を繋ぐなんだ!」
「そりゃ。決まってますやん。この桃源郷は、一見さんお断りやで!でも、まあ~。鈴を持つ者が特別に招待したいならって条件付きで桃源郷へ連れて来る事を認めても良いかなぁーって。手繋ぐ位に仲良さんなら良いかなーって。でもまさかホンマにやるとは思ってませんでしたわー!」
アシア様が、からかう様に言うと、父様はブチキレ寸前って感じです。
ですが、そんな状況を、いち早く止めたのは白桃様です。
「やめろー!アシア。セトをあんまり刺激するなー!桃源郷を危険にさらすなー!」
そう言って、アシア様のお腹に肘打ちをして黙らせます。
「グボー!」
変な悲鳴を上げて倒れるアシア様。
父様は自業自得と冷たい表情、冬厳様は、やれやれとちょと呆れ表情に幸福さんは困った顔。
(白桃様、人の姿は弱いからって言ってましたけど
十分、戦力なったと思いますよー!)
まあ、そんな、こんなで、楽しい時間は、あっという間に流れ、すっかり夜になってしまいました。
「父様。もう夜だし、カヤメも心配しているし。そろそろ帰えろう?」
(ええ。きっとカヤメは、とても心配してます)
ですが、わたくしはある問題に気が付きます。
「あ、でも、どうやって帰ったら…」
(わたくしも冬厳様と手を繋ぐんですかね?)
そんな疑問を、アシア様はあっさりと解決します。
「帰るなら、これを使ってや」
そう言ってアシアは、わたくしに鈴を渡します。
「これは?」
「転移の鈴や。この鈴を『リーン』と鳴らせば、いつでも桃源郷へこれますし、また元いた自分の場所に帰れます。これはセリはんを連れてくるのに使った鈴や。この鈴を使えば元の場所に帰れるで」
「わたくしを拐った時に使った鈴ですか?」
「拐ったなんて人聞きの悪い…。招待言ってや。あ、因みに、セリはんが、お友達を桃源郷に招待するなら、手を繋いでから鈴を鳴らしてや。そうすれば、一緒に桃源郷に来れるで。神器は無条件で一緒に桃源郷に来れる」
(その条件は変わらないですね)
さて、わたくしはアシア様から渡された鈴で父様と手を繋いで帰ります。
「ありがとうございました。セリさん。兄は、まだ眠っていて、お見送り出来ませんが、落ち着いたら改めて一緒にお礼に参りますね」
「いつでも、桃源郷に遊びに来い。オレの上手い桃を、好きなだけご馳走するぞ」
「また会おう」
白桃様や幸福さん、アシア様、そして冬厳様も皆さん、わたくし達を見送ってくれます。
わたくしが、最後に挨拶をする前に、アシア様が、わたくしの前に来て、突然、跪きます。
「セリはん、今回はホンマにおおきに。この大陸の神アシアは、今回のセリはんの恩は絶対に忘れへん。そして今後どんな時もセリはんの見方や。いつでも力になりますわ。何か困った事が起きたら、いつでも桃源郷に訪ねて来てや。あ!勿論、ただ遊びに来るだけでも大歓迎や。また遊びに来てや」
(アシア様が、真面目な顔で真面目な事を言うと、ちょっと、そのギャップにドキドキしてしまいますね//)
「//はい。ありがとうございます。では皆さん失礼致しますね。さようなら」
そう言って見送ってくれた皆さんにお辞儀をしてから鈴をならします。
辺りが、真っ暗になって、再び明るくなると、わたくしの部屋に戻っていたのです。
部屋に戻って直ぐに、刀になっていた、けんちゃんを元に戻します。
カヤメに見っかったら、また怒られますからね。
子猫に戻るとけんちゃんは、わたくしの肩に乗って甘えて来ます。
「にぁ~。今回も主は大活躍にゃん。流石にゃ」
「うん。けんちゃんのお陰だよ。ありがとう」
わたくし達の声がしても宮殿は何故か『しーん』としていて人の気配が感じられません。
(???)
いつもなら人の気配を感じるし、カヤメだって心配している筈です。
「カヤメー!ただいま!」
大きな声でカヤメを呼んでみますが、全然反応がありません。
「………あれ??」
すると父様が、思い出した様に驚きの爆弾発言を投下したのです!!
今週もお読み頂きありがとうございました。
また来週の日曜日に更新致します。
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