181話
倒れている萬福さんの側まで、アシア様が急いで駆け寄り呼び掛けます。
「萬福!!」
萬福さんの体には赤黒痣や火傷も無くて取り敢えず安心です。
抱き起こし、呼び掛けると、『ピクッ』と反応した後に目を開きます。
「自分やアシアや。萬福わかるか?!正気を取り戻したんやな?!」
「アシア……?おいらは、今までどうしていたんだってけ?あ、あ……そうだ…。おいら、……沢山の人を傷付けて、死に追いやってうっ…っ」
そう言って涙を流します
「悪い夢を見てたんや」
「夢じゃないよ……全て現実だよ。おいらは、なんて事を…」
萬福さんは後悔の涙を流します。
冬厳様が辛い顔をしながら萬福さんを慰めます。
「萬福。君は福の神としても良く頑張ったと、私は思う。あの時の地上の状態は本当に酷かった。それに、君が助けた人間の全てが堕落した訳では無い。きっと君に感謝している人間も幸せな人生を送った人間も沢山いるだろ」
「でも、おいらが…」
父様も冬厳様に続き萬福さんに話掛けます。
「萬福。人間は、ほっといても穢れに当てられて、いつかは死ぬし、死ねば冥府に逝くだけ。そして地獄に落ちるか転生して再び生命となって地上に戻るだけの事と。死なせたからといって気に病む必要なんて、どこにも無いよ。もしまた地上で暮らすつもりなら、今度は慈悲や恩恵ばかり与えるのでは無くて、厳しさも必要だよ。堕落したら力にものを言わせてちゃんと解決!僕の様に人間を、支配してもいい」
父様、それで慰めてるつもりですか……?!
「いや、萬福に力ずくとか暴力なんて無理やろ……」
(デスヨネー)
一応、アシア様が『ボソッ』とツッコミを入れます。
萬福さんは唖然として答えます。
「え……うん。ありがとう……」
エンラ様は地上でずっと暮らしている父様は神様の中では特殊だって言ってましたけど、父様と同じ事が出来る神様は確かにいませんよね…。
「……」
父様の『暴君論?』の前に、先程までの悲痛な雰囲気は消え、皆が沈黙してしまいます。
皆さんお疲れですし、ここは、わたくしが父様の『暴君論?』で唖然としてる皆さんを屋敷に帰る様に促します。
「えっと……。こ、幸福さんも白桃様も待ってます。帰りましょうかね?!ね?!」
「そ、そやね。屋敷に戻りましょか。とは言え自分も、転移の呪術を使うのはしんどいですわ。ここは、山主はんに頼みましょか?」
そう言うと、萬福さんもアシア様も『よろよろ』立ち上がます。
「山主はーん!」
アシア様が叫ぶと、その声は森のあちらこちらに『こだま』となって響きます。
「ふぁ!アシア様の声が何度も響いて凄いー!」
「神通力で、普通より響かせてるんでわ。声に気が付いて、直ぐに山主はんと来てくれますやろ」
「山主さんって?」
「山主はんは、巨大な神鳥や。神獣達のまとめ役でもある。桃源郷の森の主や」
そうして話していると、突然、空が暗くなるのに驚いて上を見れば巨大な鳥が舞い降りたのです。
「ふぁー!本当、大きな鳥!」
白く美しい羽、見た目は鳩に良く似てますね。
「山主はん。来てくれておおきに。悪いけど、自分らを屋敷まで乗せや」
神鳥さんは人の言葉を喋っり返事をします。
「ふむ。了解した」
そうして、わたくし達は、巨大な神鳥さんの背中に乗ります。
空から見る桃源郷は、深緑の森りどこまでも広がり、美しい川や、野原とても美しい場所です。
「綺麗…」
「ああ。この辺りは穢れで近寄れなかったが、すっかり浄化されていますわ。セリはんのお陰や」
「え?わたくしは何も…」
「セリはんが降らせてくれた『慈雨』が、この森一帯を浄化したんや」
「ふぁ~。わたくしの『慈雨』が?それは良かったですよ」
「萬福も無事に浄化に出来たし。みんーな。セリはんのお陰やで、萬福も礼をいいや」
「君がおいらを?助けてくれたのか?」
「あ、うん。でも、それは皆さんの協力のお陰ですよ。わたくしだけの力じゃ……」
「いや。セリ殿の力のだ。私からも改めて礼を言う」
「せや。セリはん力や」
「ありがとう。こんなおいらを、助けてくれて本当ありがとうー。あの暖かい光が、闇に閉じ込められていたおいらを救いだしてくれたのを覚えてる」
「そんな……わたくしは//」
「やれやれ。セリは、全然、自分の力の価値が分かって無いね」
「ふぇ?」
「死星の消滅も、萬福の浄化も、今まで誰も無し得なかったんだよ。だから素直に謝意を受ければいい」
「///父様。はい。どういたしまして//」
そう、褒められると、なんだか照れちゃいますね。
そうしている内に、アシア様の屋敷に着きましたよ。
「お、お兄ちゃん!!」
「萬福、無事だったんだな!」
屋敷に着くと、幸福さんと白桃様が出迎えてくれます。
萬福さんは神鳥から下りると、直ぐ幸福さんの所に駆け寄ります。
「こ、幸福?!幸福ごめんよ~」
「ううん。いいの。こうしてまた会えたんだから……」
萬福さんは、幸福さんに会えて安心したのか、そこで力尽きたのか、再び倒れます。
萬福さんは、白桃様によって部屋へと運ばれます。
幸福さんも一緒に付き添っていきます。
アシア様は、そんな様子を見ながら、山主さんに改めて、お礼を言います。
「山主はん。乗せてくれておおきに」
「ああ。それと、こいつらの事もあるしな。出てこい」
そう呼ばれると、物陰から『ピョン』とウサギさんとカエルさんがわたくしの前へと姿を現れたのです。
「あ、貴方達は、あの時のウサギさんとカエルさん?」
そう聞くと、頷いてウサギさんとカエルさんは、
わたくしの前に来ると、申し訳なさそうに頭を下げます。
「はい。そうです。先程は失礼な事ばかり言いってしまって……。本当にごめんなさい」
「穢れに当てれてとんでもない暴言を……申し訳ない。あれから森に帰って山主様に叱られて、反省して、こうして謝りに…」
「ううん。気にして無いよ、アシア様も穢れに当てられイライラしているって行ってたし。もうイライラは大丈夫なの?」
「もうすっかり穢れが無くなりましたから。それにしても、何とお優しい。桃源郷の穢れを浄化して頂いた上に我々を許してくださるとは…」
「うん。気にしてないよ」
神獣さん達と楽しく話をしていたら父様がわたくしの様子を見にやって来ます。
「セリ。神獣達と何の話をして入るんだい?」
「と、父様?!」
流石に、先程の話を父様には出来ません。
「ちょっとね。世間話を…えへへ」
「世間話??」
父様は、訳が分からない顔ですが、ここは何が何でも笑って誤魔化すの一択ですね。
そうして何事も無く神獣さんや山主さんも森へと帰って行ったのです。
お読み頂きありがとうございました。
せっかく旅行に行ったのに、残念ながら雨に降られて余り観光が出来ず、ホテルで過ごす時間が長く暇潰しに小説を書いていました(涙)
その成果により、本日『神の娘~外伝~』も同時に更新しています。
こちらも合わせて読んで頂ければ嬉しいです。
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