176話
突然、けんちゃんの声がしたのです。
「今の主には無理にゃ」
「ふぁ!けんちゃん!良かった目が覚めたんだね」
抱っこしていた、けんちゃんを見ます
今のわたくしには、けんちゃんは心強い存在ですよ。
「にゃ~。途中から目覚めて話も聞いてたにゃ。だけど、今の主には浄化どころか、まともな神通力も無いにゃ」
「う~ん。そうなのかな?」
神通力無い言われても、自覚が無いので半信半疑です。
「にゃい。『死星』の戦いから、ずっと神通力が回復してないにゃ。だからどこからか穢れを貰って、疫病になったにゃ。あたいは、主の分身だからわかるにゃ」
わたくしより、わたくしの事が分かるけんちゃんは、頼りになりますね~。
「どうすれば、神通力は回復するのかな?教えて?」
「そ、それは、あたいにも、わからにゃいにゃ!」
それが肝心な所なんですが…。
「それなら心配は入りませんわ。桃源郷には白桃さんの桃が有りますからな。桃を食べれば、直ぐに回復しますわ。白桃はん。桃を、ぎょうさん持ってきてや」
「おお!わかった。オレの桃は上手いぞ!黄桃にも引け劣らん!待っていろ!すぐに持ってくる。幸福、悪い運ぶの手伝ってくれ」
「はい。白桃様」
そう言うと、幸福さんと一緒に、部屋を出て行きます。
「セリはんは、自分の神通力の状態が、自分で分からんの?」
「ええ。まぁよくわからないんですよね~。他にも、穢れとか邪気と言われても……。ごめんなさい」
「セリはんは、半分人間の血が混ぜってはるからな。そう言う事なら、自分が何か神通力が、どの位あるか分かる道具を造ってあげますわ。自分、物体造化の力が有りますからな」
「物体造化?」
「セトはん達が生命を造る生命造化に対して、自分には物を造る力があるんや。神通力から道具を造り出す力や」
「そんな凄い力もあるんですね」
そう言うと、アシア様は紙と筆を持って来て、何かを書き出します。
「何を書いてるんですか?」
「今から自分が造る道具の機能や設計図や。造化の力は創造や。だから複雑な物を造る時は、こうして紙に図や機能を書き出して、頭の中に叩き込んでから造ると成功率が格段に上がるんですわ」
「へぇー☆」
造化の力は創造力。
それはなんとなくわかりますね。
水とか火も頭の中で思い絵がきますし、でも実際に絵や設定を書いて成功率を上げるとか、そんな方法が有るとは思いませんでしたね。
「普段から身に付けられる装飾品とかがええかな?
指輪、耳飾り、腕輪、首飾り何がええ?トンボ玉の模様は花がええかな?セリはん女の子やし。好きな花とか教えてーな?」
「う~ん、装身具なら腕輪が良いですね。お花は薔薇が大好きですよー☆」
「薔薇の花に何か思い出でもあるん?」
「うん。あのね。わたくしの初めての誕生日にね。
父様が、薔薇の髪飾りくれたの。それからね。本物の薔薇の花が見たいって、お願いしたら王宮のお庭に沢山の薔薇を植えてくれたの。それがとても嬉しくて、それ以来、わたくし薔薇の花が一番大好きなの」
「ほう~。あのセトはんが……そらマジ驚きですわ。
よし!なら薔薇で。自分らも出来る事は、最善を尽くしますんで。一つ萬福の事よろしく頼みますわ」
そう言って、アシア様は頭を下げます。
「あ?!えっと………分かりました。頑張りますね…」
いつの間にか萬福さんを、浄化かする事が決定して、退路を塞がれてしまった感じですが、こうなったら頑張るしかありません。
(当たって砕けろですねー!)
「主……。あっさり嵌められたにゃ…」
◇◇◇◇
ー四季の神の屋敷ー
セトは、天馬を連れたまま、急いで門を潜り出迎えに来た冬厳に会う。
「突然、約束も無しに訪ねてすまない。その上、急な頼みで悪いんだけど、今すぐに桃源郷への行き方を教え欲しい」
「突然、何事かと思ったが桃源郷の行き方とは?
セト殿も知っていると思うが、地上の神々の中には、天界や冥府の者を心良く思って無い者も居る。いたずらに桃源郷へ行かれて波風を立てるのは、私としては望む所ではありません……」
「僕としても、桃源郷には関わりたくは無いんだけど…。今回ばかりはそうも言ってられなくてね。娘が、アシアに拐われてしまってから」
「それは……何かの間違いでは…。いくらアシアでもそんな無礼は」
「いや。証拠は無いけど、今回に限りアシアが絡んでいると見て間違い無い。今、地上では、疫病が、流行っていて、この疫病の病状は、昔、萬福が起こした疫病にそっくりなんだ……萬福の封印が解けたかも知れない」
「そんな……まさか!」
「萬福を封印したのは、大陸の神アシアだ。そしてセリには強い浄化の力がある。アシアの目的はおそらくセリの力を使って、萬福を浄化して、正気に戻す事だ。たが、残念だけど、アシアの思惑道りに行くとは限らない。その時は、僕の力がきっと必要になるし、セリだけでは無く地上も危険だ」
「セリ殿にそんな力が?!」
「冬厳は、セリと居る時、心地よさを感じたりしない?」
「それは……、確かにあります」
「うん。普段のセリの浄化の力は微かなだけど、あの子の回りは、いつも穏やかな空気が流れている。人も神も精霊も皆その気に惹き付けられる。そしてセリが神器の力を解放した時、その浄化の力は邪力に堕ちた咎人も浄化する力がある。その力にアシアは目を付けた。だからセリを拐っていった」
「……分かりました。しばしお待ち頂きたい。桃源郷へ案内致します。」
「ありがとう。冬厳…」
少ししてから、冬厳は戻って来た。
だがその様子は、少し困っている様だった。
「それで、桃源郷に行く方法なのですが……//実はその、この『転移の鈴』を使うのですが、この『鈴』にはアシアの呪術が掛けてあり、私にしか使え無い代物なのです。ただ、その他の者を連れて行く事も可能なのですが、条件が有るのです。その条件が//……」
「は?ごめん良く聞こえなかった」
「///手を、、繋ぐのです……私と//」
「はぁぁー!!」
セトの大きな声が辺りに響き渡った。