163話
賢妙連が光を帯ると同時に、わたくしは体の中から、強い力が込み上げて来るのを感じます。
(これが神通力なんですかね?!)
その力を、空に向けて放ったのです。
『慈雨!!』
わたくしが、頭に浮かんだ言葉を叫ぶと、空は強い光を一瞬放ち、そして光り輝く雨が優しく降り注いできたのです。
わたくし達はなんともありませんが、『咎人』や『死星』は雨を浴びると踠き苦しんでいます。
「アァァー★★なんだコレハ★★浄化の力か★★」
『死星』は苦しみに耐えながら、わたくしを睨みつけます!!
「お前は危険だ★★アタシ達を消す程の浄化の力を持つなんて★★オマエを殺す★★」
そう言って、死星は、わたくしに向かって斬りかかって来ましたよ!!
「きゃー!」
父様もユジンも、わたくしを守ろうと『死星』に斬りかかります。
「セリ!」
「姫様!」
だけど父様達より先に、賢妙連の刀身がわたくしを守る様に、強い光を放つと、わたくしに近づいた『死星』は、体が火に包まれてしまいました!
「嫌だ★★アタシは消えたく無い★★アァー★★」
『死星』や『咎人』の体からは黒い煙が出て、周辺は黒い煙のせいで視界が悪くなって行きます。
その後、苦しむ声は消え、辺りはシーンと静まり返ったのです。
結界が、消えて、咎人の襲撃に備えていたエンラ様かを驚きの声を上げます。
「一体、何が……死星や咎人の気配が全て消えた?!」
「ニャロメ?!」
そうして、わたくしの元には、父様やユジンが駆けつけてくれましたよ。
「セリ、無事か?!」
父様は、わたくしの無事を、確認するように抱き上げます。
「父様。大丈夫だよ。あ、あの戦いの邪魔をしてごめんなさい……。でも、キャラさんをなんとか助けてあげたかったの!」
「セリの気持ちはわかるけど、結界を自ら破るなんて危険な事はしてはダメだよ」
「そうですよ。姫様。危険な行為です。それにしても、姫様、この雨はいったい?」
ユジンの突然の質問にわたくしも困惑します。
「えぇー??えっと、わたくしにも、よく分からないの。何が起こったのかな?」
わたくしが、自分でも何が起こったのか良くわからないんだから困ります。
「僕の推測が、正しければ強力な浄化の力による完全解呪…」
「え??解呪って、ナンデスカ?」
「つまり『死星』が完全に消滅したってことだよ。とても強力な呪いを…」
「えー!?冗談ですよね?父様」
「いやきっと間違いない。セリの神通力は、浄化に特化しているんたろね。そして浄化の最終形態が、絶対解呪。この力の前には、どんな呪いも呪術も無効化されてしまう。とても稀な力だ」
浄化特化ですか!?それはなんか強いのか弱いのわからない力ですね。
「とにかく姫様は、凄いです。姫様はさながら『浄化の神』と言うことですね」
いきなり浄化の神とか言われてもね~。
正直困ります。
「えっと、よくわからないけど、今日の事は、何かの偶然かも知れないし、わたくしは、ただの平凡なお姫様ですよ…その、だから浄化とか解呪とか、また出来るとは限らないし…」
今さらですが、怖い思いもしたし恐怖で震えが来ます。
これからも、浄化の力があるんだから、戦ったり『死星』を、浄化しろとか言われても、わたくしには出来る気がしません。
(怖い思いは、もう沢山なんですが……)
父様はそんな、わたくしの気持ちを察してくれた様に答えます。
「うんうん。セリが、浄化の神でもただの平凡なセリでも僕に取っては、可愛い娘で在ることに変わりはないよ。無理に『死星』に関わったり、危険を犯してまで浄化なんてしなくても良いんだよ。『死星』を倒すのは僕の役目だしね。何があってもセリは僕が守るから大丈夫だよ」
そうですよね。父様は強いし、大丈夫ですよね。
安心しましたよ。
そうしている内に段々と黒い煙は消えて、それと同時に沢山の人が姿を現したのです。
そしてその中には、呆然として座っているキャラさんの姿もあったのです。
その姿は邪悪さが消えてあどけない少女に見えます。
まるで『業鏡』で見た幼い頃の無邪気なキャラさんに戻った様です。
「どうやら、キャラさんが正気を取り戻した様です。我々の目的は、キャラさんの魂を冥府に連れて還る事ですから、私がキャラさんと話して見ます」
「それから、縞獅子さん、直ぐにお迎え課の火車族を全員呼び出してください。セリさんの神通力で、ただの亡者に戻ったんですから、この場にいる魂を全員を直ちに冥府に送ります」
「承知致しました、ニャロメ!」
そう言ってエンラ様は直ぐにお仕事を初めてしまいました。
今週もありがとうございました。
また来週、日曜日の夜9時に更新予定です。
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