129話
天界には肉や魚の料理が無い。
なら天界の皆さんはなに食べて生きているのでしょうか??
「天界では血や死を穢れと呼んで嫌うし。生き物の殺生は禁忌だからね。食事の食べる習慣や料理の文化は無いんだ。神も精霊も不老不死だから食べなくても問題も無いし」
「え?!じゃあ父様も?」
「うん。僕も天界にいた頃は食事なんてしなかったね。嗜好品として時々、お酒を飲んでたくらいかな」
「えー!お酒だけ?!」
「それ逆に体に悪くないの?」
「悪く無い。その体に悪いってのも人間のだけの話だし。でも地上に降りて来て、地上の神達が人間の様に野菜や果物、木の実に茸とかを色々調理して食べる生活をして、僕も彼と交流する内に食事するのが当たり前になっていったんだ」
「へぇ~」
「その後は、地上の神達が持ち込んだ食事の文化が、天界にも段々と広まって、天界でも野菜や果物を色々と栽培していて、今では普通に流通して神の中にも食事を楽しむ者はいるよ。まあ、生きる為と言うより味を楽しむ嗜好品に近い感じだけど」
地上の文化が天界へ輸出されていたとは、びっくりですね。
地上の神と言うと、春眠様達が広めてくれたんですかね?
そう言えば、春眠様は、ちょうちん草の他にも果物とか、色々品種改良とかしてましたね。
春眠様のお屋敷で食べたお菓子どれも美味しかったですもんね。
天界にも食事を広めてくれた地上の神様達に感謝ですね~。
「へぇ~。じゃあどうして父様はお肉とかお魚を食べる様になったの?父様、いつも普通に食べてるでしょ?」
「僕の場合は、肉や魚はハフサから焼き魚を貰って食べたのが、はじまりだね」
「地上の神でも穢れを嫌う神が、多いから肉や魚を食べるのは極めて稀。今でも肉や魚を食べるのは穢れに強い神とか、人間と接点がある冥府神くらいだね。彼らも穢れに強し、肉や魚の料理は、人間から伝わった文化だね」
「へぇ~じゃあ、わたくしも穢れ強いのかな?」
「そうだね。僕に似て穢れ強いんだろね。それにセリには人間の血が入っているから、もしかしたら食事は必要なのかも知れないね。好き嫌い言わずに、沢山食べないと大きくなれないよ」
(セリは、同じ年の人間の子供より、少し小さし細いから、ちょっと心配なんだよね)
「そうかな?好きな物だけ食べても大きくなれるもん」
(わたくし、お野菜あんまり好きでは無いんですね~。出来れば食べたく無い)
「そんな訳で、天界の食事は余り期待しない方がいいよ…」
「は~い」
「にゃん~。さかにゃ食べたいにゃん~、あたい地上に帰りたいにゃ~」
けんちゃん。がっかりの気持ちはわかりますが…。
けんちゃん1人では地上に帰れませんよ。
父様の言う事も聞かないで、天界に行くと返事した、わたくしも今ちょっと後悔してますよ。
まさか天界に肉や魚の料理が無いとは思いませんでたし…。
宴と言うから、天界のご馳走てんこ盛り食べられるとばかり思ってましたよ///
父様が、地上暮らしが好きな気持ちが、ようやく分かりましたね。
「まあ、2人共そうがっかりしないで…僕の屋敷限定で、魚や肉も食事は用意させるし。天界の生活も地上と変わらないよ。セリは肉や魚の他にも甘い果物とか、甘いお菓子とか大好きでしょ?それは天界にも沢山の種類があるよ」
「え?ほんと?」
「うん!大丈夫だよ」
「ふぁ~♡ありがとう。父様♡」
「あたいの分の、さかにゃも用意してくれるにゃ?」
「もちろん」
「やったにゃんー!お前、いい奴にゃん」
けんちゃんが、父様の肩に乗ってスリスリしてるなんて初めて見ますね!!
「じゃあ、屋敷に向かうよ」
こうなると、父様の屋敷が一番の楽しみですね~。
「は~い」
「にゃ」
天界の父様の屋敷は、竜宮とは、また趣が違う大きな屋敷。
でも、その屋敷の一画の建物は、なんか地上の王宮に雰囲気が似ていますね。
天馬を、降りて玄関に迎えば、お出迎えの精霊さん達や綺麗な女の方が立っています。
「おかえりないませ」
海の様な青い髪に赤い珊瑚の様な瞳、白い真珠の美しい髪飾り、薄紫の艶やかな着物を着た、父様にそっくりな美しい女の人が、お出迎えしてくれましたよ~。