114話
春眠様が賛成なら、エンラ様に反対をしてもらいましょう。
わたくしは、咄嗟にそう考え、エンラ様に話を振ります。
「えっと…。エンラ様は?エンラ様は、やっぱりちゃんとした審査員にお願いしたいですよね?」
エンラ様も優勝候補の一人、エンラ様が反対すればきっと取り止めになります。
(ええ…きっと)
「私も別に構いませんよ。」
エンラ様の答えは、わたくしの期待した答えとは真逆です。
(ふぁー !そこは空気を呼んでくださーい!!)
さて困りましたね。
取りあえず、さらし者だけは回避したいのですが……。
こういう時はユジンを頼りにしましょう。
わたくしが嫌なんだから、きっとユジンは反対して守ってくれますよね?!
「ねぇ~ユジン。ユジンも、わたくしには無理だと思うでしょ?」
わたくしが、『無理と言って!』と願いを込めながら、ユジンを見つめます。
でもユジンは、わたくしの気持ちには全然気が付きません。
「え?いえ。きっと姫様なら大丈夫です。自信をお持ちください」
そう励まされます。
(ええ??ちょっとユジン何を言ってるんですかー!!)
そこは違いますよー!!
ユジンまで賛成するなんて酷い!
冬厳様に神器を突き付けるより、今こそ助けて欲しいのに。
味方が、一人もいないなんて………。わたくし、絶体絶命のピンチです!!
もう断れそうにありません。
断れないなら仕方ありません。
裏切り者のユジンを巻き添えに、わたくしは自爆作戦決行を決意します!!
わたくし1人より、ユジンと2人で晒し者になるなら、きっと怖くありません。
「わかった。皆が賛成なら審査員をやるね。でもね、わたくし思うだけど、他の審査員は、キシルとキヌでしょ?キシルは元々は天界の精霊で、キヌは人魚、わたくしは地上から来たし。冥界の審査員が欠けていて、ちょっと不公平だと思うの?だからもう一人、冥界の審査員がいれば完璧に公平でしょ?」
そう言えばジェノからも賛同を得られます。
「確かにお嬢様のお話も一理ありますね」
「でしょ?だからね。ユジンも審査員にしては??」
この発言にユジンは慌てます。
「ひ、姫様。何を?!」
(おほほほww ユジン、今さら慌てても遅いんですよー!!)
「ジェノはどう思う?」
わたくしがジェノに尋ねれば、ジェノは、一人では決めかねるのか、春眠様とエンラ様に意見を伺います。
「そうですね…。私はお嬢様の意見に賛成致しますが、春眠様とエンラ様はいかがでしょうか?」
そう尋ねられ2人は、それぞれ意見を言います。
「私は別に構いませんよ。確かに冥界の方が、審査員にいないのは、お嬢様の言う通り少々不公平ですし。エンラ殿も心強い事でしょう」
「私は、別に今の審査に不平不満はありませんが、周囲の方が公平に見えるなら、セリさんの言う通りユジンさんを審査員に加えるべきでしょう」
ユジンは困った顔で2人にいいます。
「お、お二方、ジェノ殿、そ、そんな困ります。わ、私には無理です//」
(やれやれユジンも諦めが悪いですね。)
ここは、わたくしがトドメを刺してあげましょう。
「大丈夫!ユジンなら出来るよ♡明日は、わたくしと一緒に頑張ろうね♡」
そう言うと抵抗を諦めたのか素直に返事を返してくれます。
「……はい。ひ、姫様」
わたくしのトドメでジェノの気持ちも固まります。
「それでは決まりですね。ユジン様。冥府代表の審査員として、明日はよろしくお願いいたします」
「こちらこそ…よろしくお願いします」
ジェノの決定的な言葉で、ユジン、まさに『撃沈』って、感じですねw
ジェノも見事にユジンにトドメを刺しましたね。
(ふふふ。作戦通りですねー!)
こうして、わたくしとユジンは、明日は審査員として参加する事になったのです。
夜、大人の皆さんは楽しく飲んで騒いでますが、わたくしは、お子ちゃまなので寝る時間です。
シノエの審査員としての仕事は、今日だけで、今夜からは、またわたくしのお世話係に復帰してくれましたよ。
ユジンは、明日の不安からか、ジェノに『ちょうちん草』の審査基準が書かれた本を借りて必死に勉強しています。
わたくしも、一応本を借りたのですが内容が難し過ぎて全然、頭に入りません。
(ちょうちん草には、こんなに決まりが沢山合って驚きますね)
ただ本をペラペラと捲り挿し絵だけを何となく見ていた、わたくしに、けんちゃんから鋭い突っ込みが来ます。
「主、本をペラペラめくっても、内容は頭にはいらないにゃ!」
「けんちゃん。だって内容が難しいくて…。だから鋭い突っ込みやめて…」
わたくしは話題を変えるべく違う話をします。
「それよりけんちゃんは、獅子さんと、マタダビはしなかったの?」
春眠様もお招きしたので、てっきり獅子さん『とマタタビ』やっていると思ったのですが、今夜のけんちゃんは酔っていません。
「獅子も、あたいも、明日は主の活躍を応援する大事な日だにゃー。だからマタダビ断にゃ!」
そう答えます。
「けんちゃん、ありがとう」
(まあ、今日のちょうちん草大会を、見た限りでは、料理部門は盛り上がっていましたが、園芸部門は、余り見てる方も居なかったし、きっと明日も、ひっそりやるのでしょうし。だから、きっと何とかなりますよね)
そして難しい本を読んでいると、だんだん眠くなるから不思議です。
「わたくし、もう寝るね。けんちゃん。おやすみなさい」
「主、お休みにゃ~」
すぴーZzz
こうして、今日も無事に終わったのです。