序章
これは神と人が同じ地上で暮らし、まだ近しい関係にあった頃のお話です。
小さな屋敷で、わたくしは生まれた。
わたくしの名前は『セリ』
父様は神、母様は人間らしいんですよ。
なぜらしいって?わたくし、半年位前に生まれたばかりだから詳しい事は知らない訳ですよ。
だだ、神の血を引いているせいか、知能や精神年齢は、多分大人ですよ。
見た目は赤ちゃんですけどね…。
生まれて、暫くは母様と二人きりで静かに暮らしてたと思うけど……、いまいち記憶が曖昧ですね~。
ある日、見知らぬ人達が来てわたくしは、誘拐されてしまって、でも一応ここ母様の実家らしい、この城に連れてこられちゃったんですよね~。
連れてこられた、その日から母様とは会っていない。
わたくしを拉致したのは、この国の王様と王妃様。
母様は、この辺り一帯を支配する小領地の王族の出身らしいけど。
大きな国を、治める父様に、逆らえず母様を人質として父様差し出したらしい。
その母様が、わたくしを身籠って、なぜか国に帰って来て、わたくしが生まれた。
母子共々、父様に捨てられたって事なのかな?
だけど、わたくしを、人質に父様に反旗を翻したらしい。
その父様は、神の身でありながら、人々を支配し今やこの辺りを手中に治め、王と呼ばれていた。
その上、母様の実家は。父様と戦をしたらしく、今この城は父様に攻められて落城寸前だった。
「この一族は、すべて根絶やしとの命令だ」
「一族の者を探せ」
父様の兵士が城の中まで入ってきたらしく。
あちら、こちらで悲鳴や叫び声が聞こえた。
赤子のわたくしは、一人で動ける訳も無く…わたくしの世話をしていた者達は、皆、わたくしを置いて逃げだしていた。
「ここに、赤子がいるぞ!」
とうとう、兵士に見つかってしまったみたい。
生まれてから、そんなに経っていないのに、わたくしの人生が終わりに近いとは…。
でも、わたくしの姿を見た兵達は、なにやら躊躇っていて、私を殺さないみたい。
(?)
「この赤子は!?その、…王様の元にお連れしろ!」
兵士に抱かれ連れて行かれたのは、王様こと、どうやら父様の所。
初めて見た父様の姿は、想像していたのとは違っていた。
まるで海の色様な、青く美しい長い髪を三つ編みに結い、スラッした姿、女性と見違う様な美しい容姿、赤い珊瑚の様な綺麗な瞳が、私を見つめていた。
「……」
無言のままわたくしを見つめて、何も言わない。
(沈黙が…返って怖いんですよー!)
その時だ。父様の後ろの方から声が聞こえた。
「待つニャ。主に手出しするな。ニャー」
一匹の赤い目をした白い子猫。
この猫の名前は、顕明連。
意思を持つ、神器で、猫の姿に化けているの。
本体は刀なんだよ。
顕ちゃんは、わたくしが、父様から受け継いだ神の力から、創りだされた神器で、わたくしの一番のお友達。
「神器か…」
父様も顕ちゃんの登場、少し、驚いているみたい。
「主の命を助けてくれるニャら、あんた達の言うこと何でも聞くニャー。あたいには、すべてを見通せる力が、あるニャー」
「すべてを見通せる力か…。なるほど、それでこちらの動きが、読まれてたのか。まあ別にそんな力、ぼくには必要無いかな」
どうやら、父様は、顕ちゃんの力には、興味が無い見たい。
「敵対する者の情報に、興味無いのかニャー」
「興味無い。君は、正確に情報を教えてくれなさそうだしね」
「ニャー!!」
顕ちゃんは、図星をつかれて驚いているみたい。
「でなければ、この城は落とせなかった」
「あいつら、主やあたいの力を利用してろくでもない事、企むからニャー。その上、主を、小さな部屋に閉じ込めろくに世話もした無いからニャ!」
顕ちゃんの取引は、ダメになったし、わたくし達は、殺されてしまうのでしょうか?
(顕ちゃんだけでも、速く逃げて…)
顕ちゃんには、わたくしの心の声が聞こえるんですよね~。
そっと、わたくしに手を伸ばしてきた父様。
「主に触るニャ!!」
首でも絞められるかと思ったら、わたくしの頬に少し触って安心させる様に笑顔を見せた。そして後ろを向き、顕ちゃんに話し掛ける。
「ぼくには、君の力は必要無いし、君の主を殺す気も無いよ」
「本当かニャー…」
「ああ。まあ、とりあえず二人は、ぼくの城においで」
こうして、わたくし新たな生活が初まったのです。
初めまして、この度は神の娘を音読み頂きありがとうございます。
これからも頑張って更新致しますので、よろしくお願い致します。
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