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超能力と中二病は息が合う  作者: とにお
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 東京エリアの中で活気があり最も人が多く住む、中央区。外側の地区と比べると比較的きれいに舗装された道路からもこの地区の発展具合が伺える。そんな道路を壊す勢いで暴れる二人の男がいた。一人は炎系の能力者だろう、右手に火の玉を浮かべている。もう一人は外見からは想像が付かないが、手ぶらでも余裕を見せていることから能力者だろう。周りの通行人は足を止めて観戦する者や、一度だけ顔を向けて歩き去って行く者など、反応は様々だった。

「てめぇ、さっさと謝りやがれ」

 炎の男が怒りながら言えば、

「君がどんくさかっただけじゃないか」

 と長身で手ぶらな男が挑発するように答える。

 どうやら二人はぶつかっただけらしい。さっきからこんな感じで5分ほど言い合っていた。


「さっきからバカにしやがって、少し痛い目に合わないと分からないらしいな」

 もう我慢の限界だったのだろう、炎の男が右手を前に出し、ずっと浮かべていた火の玉を射出した。


「これだからアホは嫌いなんだ」

 自身が危険に晒されているのにも関わらず、余裕な態度崩さない長身男はそのまま棒立ちだった

 バレーボールほどの火の玉が勢いよく手ぶらな男に向かって進んでいく。そのままの勢いで長身男にぶつかりそうになり、通行人の女子中学生は思わず目を閉じていた。


 爆発音が街に響き渡り、おそるおそる女子中学生は目を開くと、そこにはさっきと何も変わらない姿で立っている長身男がいた。


「バリアか?」

「どうかな? でも、君は僕のライターより無能そうだ」

 と言いながら、手ぶらだった男はポッケからタバコとライターを取り出し、火をつけた。

「試してみるか?」

「お好きにどうぞ」


 炎の男が両手を前に出し、先ほどとは比べ物にならない火力の炎を放出した。

 迫る炎を見て、長身男には予想外の火力だったのだろう。火をつけたタバコを右手に持ち、軽く舌打ちをしながら、顔に血管が浮かび上がるほど意識を集中していた。すると、二人の男のちょうど真ん中あたりに四角い透明なバリアのようなものが生成されていた。


 真正面から衝突する二つの能力は力が拮抗していたため、力が分散し炎が左右に割れた。

 炎の男は「しまった」と口に出し、長身男は表情を曇らせていた。なぜなら左右に割れた炎の片方の先には傍観していたのであろう通行人達がいたのだから。


 後ろのほうで誰かの悲鳴が聞こえ、逃げようとする動きがあったが、最前にいた女子中学生は恐怖で動けなくなっていた。少し離れた位置にいた友達が何か言っているようだが、彼女の頭の中までは入っていかなかった。(ああ、終わった……)と諦めた彼女は能力者で自慢の姉にいつも迷惑ばかりかけていたことを後悔していた。これが走馬灯だろうかと考えていた彼女は突然発生した突風に目を見開いた。目の前の炎がかき消されたのだ。


 全員が放心状態だったのだろう。あたりは誰もいないかのように静かだった。


「火傷してない?」

 突然声をかけられた女子中学生は「はいっ!」っと変な声を出してしまったことを後悔しながら

「大丈夫です」

 と答えた。


 黒髪でサイドを短く刈り上げた高校生は「ならよかった」とほっとした表情を見せた後、少し睨むように道路の上の二人のほうに顔を向けた。

「おい! 危ないだろ」

 と言った後、少し笑みを浮かべた。

「そんなに暴れたいなら外でやれよ、一石二鳥だろう?」


 この街で今の言葉の意味を分からない者はいないだろう。呆気にとられていた道路の二人は顔を見合わせた。

「あの制服は一校の生徒だ、俺たちとは出来が違う」

 と急に冷静になった炎の男に対して、

「あれが噂の一校生ね、ここは大人しく退散しよう。通行人を巻き込んでしまったのは僕の本意でもないしね」

 と二人は互いに背を向けて解散していった。


 二人がどこかへ行ったのを確認した高校生は腕時計を確認し、歩き始めた。二、三歩進むと、後ろから

「あの~」

 と声が聞こえた。振り返るとさっきの女子中学生が

「ありがとうございました!」

 と勢いよく頭を下げた。

「どういたしまして、ああいうのは観ていたら危ないよ」

「はい、すみません。初めて能力者同士の喧嘩を見たものですから……」

 この子も新学期から中央区に引っ越してきたのかなと高校生は共感を覚えながら

「じゃあ」

 と手を振り、学校に向かおうとまた二、三歩進むと、

「あのっ!お名前、教えていただいてもよろしいでしょうか?」

 目を輝かせながら女子中学生が訪ねてきた。

「な、名前?」

 考え事をしていた高校生はびっくりしながら反応し、

「俺は二中白呂。」

 と答えて、左手を振りながらゆっくりと去って行った。







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