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俺の担任するクラスの美少女

俺の担任するクラスの美少女が突然求婚してきたんだが俺は一体どうすればいい

作者: 瑳和希

 私自身初めて書いた作品です。稚拙な文章ですが、最後まで読んでいただけると幸いです。何かございましたらご指摘のほどよろしくお願いします。

 春も終わり緑のしげる五月。俺たちはふたり、教室で向かい合っていた。


 「なあ、本気で言ってるのかそれ?」


 俺の質問に対し彼女は少し震えた声で答える。


 「あ、当たり前です。わ、私はあなたのお嫁さんになりたいんです!」


 やはりというべきか、彼女の思いに変わりはないらしい。たが、申し訳ないがその思いに応えることが俺にはできない。なぜなら.....


 「だ、か、ら、無理なんだって! 俺は先生でお前は生徒だろ! 先生と生徒で付き合うなんて無理! 俺はつかまりたくない! 勘弁してくれ! 頼むから俺を犯罪者にしないでくれ!」


 そう、俺とこいつは先生と生徒。結婚どころか付き合うことすら不可能なのだ。なのにこいつはしつこく迫ってくる。俺は思わずため息をつく。


 (なあ、誰か教えてくれ! どうしてこんなことになったんだ!)



———


 俺の名前は相模健介さがみけんすけ私立錦織にしきおり学園の英語教師である。


 顔立ては至って平凡で、強いて特徴を挙げるとするならば少し釣り上がった目だろうか。そんな、イケメンでもなかった俺は学生時代では常に空気だったモブ野郎である。当然の如くそんな奴に彼女などという崇高なものができるはずがなく......年齢(25)=彼女いない歴。もちろん〇貞だ。あれ? おかしいな。なんだか目から汗がたくさん......


  ただ、そんな俺にも多少のツキはあったらしい。なんて言ったて、天使様がいるくらいだから。

 

 その天使様の名前は錦織楓にしきおりかえで名前から分かる通りで父親がこの学園の理事長らしい。それだけでも有名だというのに彼女はこの学園1の美少女としても有名なのだ。そこらにいる女優よりも整った美貌はくりくりとした目を印象付かせる。

 それに加えて基本的にだれにでも優しく接っするその優しい性格。まさに天使様という言葉がぴったりな生徒である。中には彼女の優しさを勘違いする男子がいるとかいないとか......それだけでなく非公式のファンクラブがあるらそうで日々彼女のことを見守っているらしい。


 控えめにいってチートである。天は彼女に一物のみならず四物ぐらい与えたのだろう。正直言って雲の上の存在すぎて俺の中ではひとつの鑑賞物になっている。ともかく、そんな彼女のことは置いておこう。


 現在、俺の担当する1年2組の生徒たちは進路指導の一環として将来の夢を書いてもらっている。高校生になったばかりで将来の夢と言われても困るだろうが諦めてもらう。これはこの先決める進路に関わってくるからだ。

 ただ、待っている側としては暇である。


 「ふぁあ」


 おっと、いくら退屈でも生徒が頑張ってる中あくびはまずい、気を引き締めなくては、と考えているとなぜかこちらを向いていた錦織と目があった。と思ったら錦織が猛烈な勢いでプリントに何か書き始めた。その手が止まるとなぜか錦織は顔を真っ赤にしていた。熱でもあるのだろうか?


 (何かいたんだあいつは? まあ、いいか。どうせ放課後になったら全員の分は見るんだし。)


 その後、錦織が猛烈な勢いで書いてから5分ほどが経過すると、授業の終了を告げるチャイムが教室に響いた。


 「はい、終わり! 全員プリント前におくれー。裏向きにしておけよ。自分の見られても構わない奴は別だけどな。」


 俺の一言に途端にざわつきだすクラス。俺は思わずため息を溢すが彼らが騒ぐのも若さ故だから仕方がないだろう。ただ挨拶だけはしておかなければなるまい。


 「じゃぁ今日はこれで終わり! 日直、号令お願い。」


 「はい。気をつけ、礼!」


 『さようなら!』

 

 「おう、また明日なー。」


 (ふぅ、やっと終わったよ。あとは職員室でこのプリントの中身を確認するだけだな。)


 そう思いながら俺は教室を出て職員室へと向かった。


——————————

———————

—————


  俺は職員室にある自分の席(窓側のはじっこだ)で今さっき回収したばかりのプリントをよむことにした。


 (ふむふむ、意外としっかり書いてんなー。進路とかと絡めと考えてる奴も結構いるし。)


 また一枚、プリントを取る。


 (おっ、こいつ医者になりたいんか。そういえば〇〇大の医学部進学希望だったけ。こいつ確か全国模試でも結構上の方にいた気がすんな。えーと、なんて名前だっけこいつ。)


 俺はプリントの上の名前に目を向けた。


 「そうそう! 新田朝史にったあさふみだ! わりとイケメンなやつなんだよなーこいつ。」


 「こいつは弁護士になりたいんか。で、〇〇大の本学部に通いたいと。でこっちは国会議員になりたいと。 てかこの学校めちゃくちゃレベル高いな! なんだこのレベル! さすが進学校!」


 俺が考えていたことはどうやら口に出ていたらしい。周りの先生にちょっと冷たい目を向けられてしまった。なんだかいたたまれない気持ちでプリントに目を落とすと、次は錦織のプリントだった。


 (そーいえばあいつなんかすげー勢いで書いてたけど結局なんだったんだあれ?まぁとりあえず……読みますか。)


  将来の夢      お嫁さん


 (ん? なんかおかしくないかこれ? 高校生らしくないファンシーな夢が見えるんだが......と、とりあえずもう一回だけみてみるか。)


  将来の夢      お嫁さん


 「ブゥハッ!」


 (やっぱりお嫁さんになってるぅぅー?! は?! なにこれ?! どういうこと?! なんで高校生にもなって将来の夢がお嫁さんになるわけ?! もしかして急いで書いてたのってこれが原因…… 実は天使様って頭悪い……いやいや今はそんなこと考えてる場合じゃないってこれ! マジどうすんの? やっぱ明日呼び出して直接聞いた方がいいかな?)




 結局この日はこのことがショックすぎて仕事が手につかなかった。


 「はぁ、まじどうしようこれ……明日どこに呼び出せばいいんだ? 理事長の娘呼び出すところなんて知らんぞ俺は……」


 はぁ、明日がひどく憂鬱に感じる。心なしか、住んでいるマンションへの足取りも重たい。

 いっそのこともう休んでしまおうかと思ったがそんなことしたらさらにめんどくさくなるのは目に見えている。 


 (ほんと......どうしたらいいんだ!)


——————————

———————

—————


 とまぁそんなやばい出来事から一日経った。いつもの俺なら、今日は金曜日! とか言って素直に喜びこの週末の予定に想いを馳せているところだが、今日に限ってはそうもいかない。


 理由は明白であろう。そう、昨日のプリントだ。夜までじっくり整理しようとしたが結局何も解決しなかった。


 「なんで将来の夢に『お嫁さん』なんて書くかな?」


 俺は答えのない問を一人、口にした。

 ともかく、今日の放課後あいつを呼び出すとするか。その時に話でも聞いてやろう。

 

 「はぁ、とりあえず、学校行きますか。」 


 錦織としっかり話そう。そう誓って俺はマンションを出た。


——————————

———————

—————


 俺の英語の授業は基本的に1日の最後だ。それに加え、今日の授業が週の最後ということもあって疲れが溜まってくることだろう。中には寝ている奴もちらほらいた。

 そんな中、うちのクラスの超絶美少女であり、俺の悩みの種、錦織楓も寝ていた。周りの奴らも寝ているので他に寝ているやつがいてもおかしくはない。が、錦織に関していえば別だ。あいつは俺の英語の授業で一度も寝たことがない。どれだけ退屈な内容だろうとあいつは起きていた。

 にもかかわらず、錦織は寝ていた。それはもうぐっすりと。いつもであれば容赦なく起こしている俺も思わず躊躇うほど爆睡していた。


 「何かあったんかねぇ?」


 俺は気づけばそう呟いていた。


——————————

———————

—————


 授業終了を告げるチャイムが鳴った。結局俺は錦織を起こすことができなかった。だが、それも全てあいつが悪い。あんな幸せそうに寝ている美少女(というかもはや天使)を起こせるやつがいるだろうか、いやいない。もし起こせるやつがいるとするならば、そいつの心は砂漠のように枯れ果てているのだろう。

 

 いかんいかん。話が変な方向にずれた。とりあえずホームルームに入ったこともあり、生徒は全員起きている。とりあえず来週の連絡だけはしなくては。

 

 「来週は—————————だからなー。忘れんなよ。じゃあ今日は終わり! 号令よろしく!」 


 「はい。気をつけ、礼。」 

  

 『さようなら。』


 「あっ、錦織だけ残ってくれ。他はまた来週にな。じゃぁなー。」





 生徒たちが一斉に下校する中、1年2組の教室には俺と錦織だけが残った。教室には5月らしい落ち着いた日差しがさしこんでくる。


 そんな中、錦織が不安そうに尋ねてきた。

 

 「先生、それで......なんで私だけ残されたんですか?」


 あぁ、ついにこの時が来てしまった。錦織の答え方次第で俺の首が飛ぶことになるだろう。社会的にな! 


 「それよりも先に、悪りぃな、錦織。突然呼び出したりなんかして。実は聞きたいことがあってな。お前今日、俺の授業で寝てたろ? それを責めるつもりはないけどいつも俺の授業で寝てないお前が今日に限って寝てたからな。なんかあったのかと思ってさ。」

 

 本当に聞きたいことはあの将来の夢のことだが、会話のきっかけとしてはこれがベストだろう。

 

 「じ、実は、少し緊張してしまって。昨日よく眠れなかったんです。」


 錦織が緊張しているのはおそらくあのプリントが原因だろう。このままでは聞きたいことが聞けないと思った俺は錦織にはっきりと告げることにした。


 「緊張して寝れなかったのは昨日書いたあのプリントが原因か? 俺がお前を呼び出したのもあの将来の夢のプリントが理由なんだが......」


 そう告げると彼女が顔を真っ赤にした。

 まぁそうなるよな、普通。あんなのが人に見られるなんて最悪の羞恥プレイだもんなー。

 俺は人ごとのように(現実逃避)思っていると、


 「あのーそのーこれはつまりそういうことですよね?」 

 

 ん? なにいってるかわからんが多分書き直しのことを言ってるんだろうな。


 「あぁ。そういうことだ。じゃあ頼むぞ。」 


 俺は錦織に昨日書かれたプリントを渡した。


 「はい。」


 錦織がかすれそうな声で呟く。すると、彼女は、


 「で、では、ふ、不束者ですが、これからよろしくお願いします!」


 ん? 今なんか変なことが聞こえたような......


 「ふぇ? い、今お前なんていったの? 俺、最近耳が遠くなったのか、お前のいってることがうまく聞こえなかったんだけど。不束者ですがっていった?」

 

 「はい!そ、その通りです。まさしく先生がおっしゃりますとおり、わたしは今日、先生に結婚の承認をいただきました。」


 「ちょっと待て! まずお前いつもそんな喋り方してないよな! なんでそんないかにも使い慣れてません、みたいな敬語使ってんの?!それよりも結婚ってなに?! 誰が結婚するって?! 」


 「えっ? 先生にわたしが告白したからOKしてくれたんじゃないんですか?」 


 「んなわけあるか! そもそもいつ俺が告白されたよ?! こちとらこれまで生きてきて1度も告白されたことないんだぞ!」


 この状況に全くついていけない。なにがどうなってるのかさっぱりだ。俺がいつの間にか告白されてて、いつのまにかOKしてたなんてことある? 


 「わ、わたし、将来の夢にちゃんと先生のお嫁さんって書きましたよ? だからOKしてくれたんじゃないんですか?」


 「いやチゲェよ! 俺はお前に将来の夢を書き直させようと思ってただけだよ! てかどこに俺のことが書いてあったの?!」 


 すると、彼女は震える手で俺の出した用紙を指さした。

 そこには、小さな点が2つあるだけで......

てっ、まさかこれが?! 

 俺は恐る恐るスマホを使ってその点を拡大する。

 そこにははっきりと 『先生』 と書かれていた。


 「いや気づくか! どんだけ小さな字で書いてんだよ! 逆にすげーわ! てか生徒と結婚なんてできるか!」


 「で、でも、わたしの思いは本当なんです。どうかわたしをもらってください!」


 そこから、俺たちは己の持ちうるすべての言い訳を駆使して相手の意見を拒否し続けた。どちらも自分の意見を通そうと躍起になっているため、一向に決着がつかない。平行線であった。


 (はぁ、何でこんなことになってんの? 錦織も譲らねぇし、やっぱ呼び出すのやめた方がよかったか?)


 俺は今更ながら自分の決めたことを後悔し始めた。

 お互いが疲弊した状況の中で、俺はこれで最後にしようと思いながらもう一度尋ねた。


 「なぁ、本当にいいのか? 俺みたいな冴えないやつよりいい男はいっぱいいるだろ? お前可愛いんだから俺みたいなやつじゃなくて別の男にしろよ。」


 「か、かわいいって......ていうか先生! なんでそんなに自分のことを卑下するんですか?! 先生はすっごくかっこいいのに......だ、だから先生のお嫁さんになりたいって思ったのに......ねぇ、先生、やっぱりわたし、先生のお嫁さんになりたい!」


 「だ、か、ら、無理だって! 先生と生徒とか犯罪だから! 俺は捕まりたくないんだよ! だから勘弁してくれ! いや、勘弁してください!」


 正直いって人生で最も強く願った瞬間だった。俺の頭の中にはただ一つ、こいつの求婚を受けたら死ぬ、という思いだけだった。


 「なら、せめてわたしと付き合ってください!」


 「それも無理に決まってんだろ! そもそも生徒と付き合うことがダメなんだよ! わかるか?」


 あっ、こいつ涙目になってる。え? そんなに俺と結婚したかったの? いや、だがダメだ。そんなことで絆されたら社会的に死んじまう。ここは耐えるんだ。


 「もうっ、先生のバカ! もういい! わかった! なら絶対に先生が私なしじゃ生きられないようにしてやるっ! それで結婚してやる!」


 おうおう、また変なこと言い出したぞこいつ。


 「先生! わたし、あなたをわたしにメロメロにさせて結婚する! わかった?」


 とりあえず、危機はさったらしい。錦織が折れてくれたようだ。正直、錦織が言ったことも考えるとアレだが、それはもう忘れよう。今はこの危機を乗り越えた喜びを味わいたい。


 「あぁもうわかったよ。それでいいからとりあえずこれ書き直そうな?」


 結局彼女は渋々といった様子で書き直した。

 うむうむ。人間素直が一番だからな。散々言いあったけど結局書き直させたからよしとするか。終わり良ければ全てよし、てな。







 


 一人になった教室で少女は電話をしていた。


 「そう、そう、いくらお金をかけてもいいから何としてもその部屋を押さえなさい。それとお父様の説得もよろしく。私は生活用品の準備をするわ。」


 いつもの学校での姿とは違う口調で話し終えた少女はつぶやいた。


 「待っててください、先生。もうすぐお家にいきますね。」










 先週の金曜日にあった、錦織からの衝撃の告白から1週間がたった。その間、なぜだろうか......錦織がこちらをチラチラ見てくるようになった。


 「いや、なんでそうなるんだよ! 俺は確かにふってるはずだよな?! 見られることが増えるってどんな状況だよ?! なんで諦めてくれないのあの子?!」


 そうなのだ。あれ以来彼女は俺のことを諦めるどころか、更にアプローチをかけて来てるような気がするのだ。

 まぁ、ただ見られてるだけっていうのが唯一の救いだよな......

 と、現実から逃げていると、ドアをバンバンと叩く音が聞こえた。


 「あんたね、さっきからうるさいんだよ! 他の部屋のやつのことも考えな!」


 外からしわがれた声が聞こえた。俺は思わず呟いてしまった。


 「うわっ、最悪......富ばあさんかよ。」


 どうやら俺の言葉は外にいる彼女(?)に聞こえていたようだ。


 「なんだってこの青二才が! とっとと表に出てきな!」


 俺はその声に逆らうことができず、部屋の外に出た。ドアの外には少し小さく腰の曲がったお婆さんがいた。

 まぁ俺のいるマンションの大家なわけだが......

 彼女(?)の名前は福富恵美(ふくとみえり)、俺のいるマンションの大家だ。いかにも怖いお婆さんといった顔立ちである。確か今年で70歳だったはずだ。あんなシワだらけの顔ですごまれたら大の大人でもビビる。

 まぁ、そんな富ばあさんは根がいい人なので、俺はあんまり嫌いじゃない。


 「すみません富ばあさん。それにしてもどうしたんですか?いつもはこんな時間に外に出てないですよね?」


 基本的に平日であれば彼女(?)は毎日10時過ぎくらいに外に出てくる。そして今の時刻は朝の8時。だからこの時間帯に外に出てきているということは、何かしらの話があるのだろう。


 「そうそう。すっかり忘れてたよ。どっかの誰がが騒いでたせいでね。」


 「まじですんません。」


 流石に理不尽かと思うが確かに騒いでたのは俺なので謝罪はしておかねばなるまい。


 「わかったよ。次からは気をつけるんだよ。それとね、今日、あんたの隣に新しい人が来ることになったからそれを伝えておこうと思ってね。」


 「新しい入居者ですか。なるほど、わかりました。今日くるんですね。わざわざ教えてくれてありがとうございます。」


 「これも大家として当然のことさね。ほれ、さっさと仕事に行ってきな。」


 そこで俺はもう学校に行かなくてはいけないことに気づいた。


 「ヤッベ、遅刻とか洒落にならん。じゃぁ自分は準備して行ってきます。」


 「はいよ。気をつけてね。」


 こうやって気遣ってくれるあたり、本当にいい人なんだと思う。

 でも、とりあえず今は学校に行こう。ほんとに遅刻する。


——————————

———————

—————


 今日の授業も問題なく終了し、俺はひとり夜空の下を歩いていた。とはいっても錦織は相変わらずこっちを見てくるし、今日に限っては少しばかりそわそわしていた。


 「マジであいつなんなんだろう? 正直なにがしたいかさっぱりなんだが......」


 ともかく、明日から休みなんだから今日は買い置きしてあったカップラーメンとビール共に夜を過ごそう。

 謎の決意を固め、俺はマンションまでの道のりをゆっくりと歩いて行った。


——————————

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—————


俺が部屋でカップラーメンの準備をしていると、外から 「ピンポーン」 というインターホンの音がなった。


 「すみませーん、誰かいませんかー?」


こんな時間(といってもまだ20時ごろだが)にいったいなんのようだ? 声的にどうやら女性のようだが......


 「はーい、今出まーす。」


 俺はそう返事をしてドアに向かった。

 ドアを開けると、そこには1人の美少女が立っていた。いや、美少女なんていう言葉では形容できない。これはもはや天使だ。それもうちの学校にいるような......


 「夜分遅くにすみません。今日こちらに引っ越してきた錦織かえでです。今日からお隣ですからよろしくお願いします、せ、ん、せ、い。」


 というか本人だった。

 え? いやいやちょっと待って。なんでこいつがここにいんの? 確かに富ばあさんから入居者が来るとは聞いてたけど、なんでこいつなの?えっ、おかしくないですか?


 「どうしたんですか、先生?」


 そんな俺のことを楽しむかのように聞いてくる錦織。正直言って可愛かったが、なんかムカついた。


 「『どうしたんですか?』じゃねーよ! なんでお前がここにいんだよ! おかしいだろ! まさかあれか?! 今日ソワソワしてたのはこれが理由か? あーもーその反応でわかったわ、そうだったんだな!」


 そんな『えっ、ばれてた。』みたいな顔してたら誰だって分かるだろう。

 てかそんなことよりも! なんでこいつがここにいるかが重要だろうが! 


 「おい! なんでお前がここにいるんだ! ちゃんと説明しろ!」


 「な、なんでって言われても......この前のことをやっているとしか言えないんですけど......」


 何言ってんだこいつ? この前のことってなんだよ? あの衝撃の告白の日のことか?


 「おい、この前のことってなんだ? 俺全然わかんないんだけど?」


 「え? あの時わたし言ってたじゃないですか。『絶対に先生が私なしじゃ生きられないようにしてやる』って。」


 その時、俺の頭を電流が走ったような衝撃が襲った。そして、俺はその日のことを思い出した。そうだ。錦織は確かにあの時そんなことを言っていた。無かったことにしたかった俺は、あえてそのことを忘れてていたんだ。

 いや、でも、だ。だからといって普通こんなことするか? どう考えたっておかしいと思うだろ普通。


 「なぁ錦織、お前さ、自分がやってることがおかしいと思わないわけ?」


 俺は錦織を傷つけないように、そして諭すように尋ねた。

 たが、このやろうときたら......


 「えっ? 普通このぐらいの事はやりますよね? 絶対に落としたい人がいたらこんぐらい普通だと思うんですけど。」


 「いやおかしいから! 誰がそんなことお前に教えたの?! 第一、こんな時間に男の所訪ねるとかそれだけでやばいから! 特に俺が!」


 俺はなりふり構わず錦織の考え方の異常性を伝えた。だが、錦織には届かなかったらしい。


 「まあまあ先生。そんなに怒んないでくださいよー。もしかしてカルシウムたりてないんじゃないんですか? カップラーメンばっか食べてたら体壊しますよ。よければわたしがご飯作りましょうか?」


 ニヤニヤして提案してくる錦織にキレそうだったが、そこはなんとか堪える......はずだった。

 錦織が勝手に部屋に入るまでは。


 「じゃぁ先生、お、お邪魔しまーす。」


 「ちょっと待て! なに勝手に入ってんだ!」


 錦織は入ってすぐ、机の上に置いてあったカップラーメンに目をつけた。


 「やっぱりカップラーメンじゃないですか! ちょっと冷蔵庫見せてください! わたしが何か作ります!」


 「おい! なに勝手に人んちの冷蔵庫開いてんだ! たいしたもん入ってないからみんなよ!」


 たが、今更言っても後の祭り。我が家の冷蔵庫は錦織に物色されていた。すると錦織が、


 「ふむふむ。これだけあればチャーハンが作れますね。 先生! この中にあるのでチャーハン作っていいですか?」


 俺はもう色々と諦めた。こいつにはなにを言っても無駄だということを理解してしまった。


 「はぁ、もう勝手にしろ。もうどうでもいい。」


 「わかりました! じゃあちょっと待っててください。特製のチャーハン作りますから。」


 そう言って錦織は料理をスタートした。

 特にすることのない俺はてもちぶたさになったので、横になってテレビを見ることにした。


——————————

———————

—————


キッチンからの音が消えた。どうやら完成したらしい。


 「せんせー。できましたよー。」


 そう言って錦織はキッチンから盛り付けたチャーハンを持ってきた。


「出来立てなんで早く食べてください。」

 

 そう言って差し出されたチャーハンを見る。はっきり言って、めちゃくちゃうまそうだった。見た目は完全にプロの店のもの。肝心の味はというと......絶品だった。

 この家にあるものからよくぞここまでと思わせるような一品だった。ごはんパラパラで、胡椒はしっかりとスパイシーさを感じさせる。それだけでなく、素材の一つ一つが自分を主張しそれがまた、味のハーモニーをかなでていた。

 長くなったが、一言でまとめるとするならば、これまでの人生で最も美味しかった。


 「はぁ、うまかった。」


 「本当ですか?! 頑張った甲斐がありました。」


 「ああ、ほんと、美味しかった。こんな腕どこで身につけたんだ?」


 「実は、お母さんから花嫁修行の一環としておしえてもらってて。なんでも『まずは胃袋から!』って。」


 なるほど。要するにだ、錦織がこんな風に育ったのはお母さんが原因ということか。ちょっと行き過ぎなところもあるが、メシはうまかったしよしとしてやろう。(こんなことで許してしまう俺、なんてちょろい。)


 「それにしても、よかったですね、先生。こんな美少女が親代わりにご飯を作ってくれるなんてなかなかありませんよ。」


 「はぁ、そうだな。実際うまかったし感謝してるよ。」


 そう言うと、錦織は顔を真っ赤にしてしまった。


 「そういうところがずるいんだから……」


 錦織が何か小さな声でつぶやいていたが俺にはよく聞こえなかった。



 そうして夜も遅くなり、錦織は隣の部屋へと帰っていった。

 錦織のご飯のおかげかは知らないが、久しぶりにぐっすりと眠れたような気がする。









目を覚ますと目の前に彫刻のような綺麗な顔立ちをした女性の顔があった。


 「あっ、健介くん起きたんだ。おはよう。」


 そして、その女性は天使のような笑顔でそう告げた。


 「ああ、おはよう。」

  

 俺はとりあえずそう返すが、彼女が何か聞きたそうにしていた。


 「そういえばなんか寝言言ってたけどなんの夢見てたの?」


 そう聞いてくる彼女の言葉に俺は思わず赤面するしかなかった。

 だって言いづらいだろう。君と出会った日の夢を見てたなんて。


 俺と彼女が出会ってから少しして俺たちは様々な経験をした。文化祭に夏休み、それに修学旅行。卒業式もあった。その思い出の全てに楓は俺の隣に立っていた。思えば俺は初めて出会った日からもう絆され始めていたのだろう。でも、それが嫌とは思わない。あの日があったからこそ俺は最愛の人と結婚し一緒になれたのだから。


 「楓、実はさ、君と出会った日の夢を見てたんだ。君があの日ああ言ってくれたから今の俺たちがあると思うんだ。ありがとう、愛してるよ。」


 俺がそう告げると彼女はさらに綺麗な笑顔を浮かべて、


 「私も愛してる! 健介くん。」


 そう言ってくれた。

 いかがだったでしょうか?少しでも面白いと思っていただけましたら、評価して下さると作者の意欲が高まります。

 この作品はまだまだ回収したいネタがあるのでもしかしたら連載するかもしれません。その時はどうかお願いします。

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