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放り込まれた爆弾

10話までしばしお付き合いくださいませ。

明日から毎日更新しますが一日一話更新にします。


11話から物語がしっかりと動き始めます。

この10話が結構大事なんです……。


「え?」


 思わずそう言ってしまった。


「ねぇ、住原君?」

「なに?」

「七海とお話ししたことある?」


 いやいや、待て待て、待ってくれ。

 これで「はい」とか答えてみろ。

 周りの視線がどうなるのかを。そして平凡な俺の高校生活がどうなるのかを。

 死んでも「はい」とは答えたくない。ここは嘘を付こうかと考えていると、白雪が「ふ~ん」と言って水巻と俺を交互に見ていた。


 でも内心期待している自分がいるのも事実。


 どうする俺!?


「ないけど?」

 俺は好意を隠す為に嘘を付く事にした。

 どうせ告白をしても振られる事はわかっている。だったら現実を突き付けられて絶望するよりも少しでも曖昧な形でもいいから可能性を残しておいた方がいいに決まっている。初めて誰かを好きになったんだ。こんな数分で終わりが見える初恋にはしたくない。


 本当は「うん」って言いたかった。

 だけどそれで白雪を困らせたくなかった……違う。

 臆病な俺が白雪に振られたくなくて振られるぐらいなら傷つかない方向で逃げようとしているだけだった。


 情けないとは思う。


 だけどそれでもここで一か八かの賭けみたいな行為で失恋をしたくなかった。

 せめて失恋するにしてももう少しだけこの初恋を楽しんでからにしたかった。


「それは嘘よ。住原空哲とはちょくちょく私話しているわ。そうよね、住原空哲?」


 ちょっと待てぇ!!!!!!!!!!!!


 ニヤリと笑ってそう言う白雪に俺の頭が追いつかなくなる。

 ほら見て見ろ。

 周りの男子の突き刺さるような痛い視線の数々を。

 てかボクシング部男子いきなり教室でシャドーするな! マジでリアルの意味で怖いから。それに女子ヒソヒソ話しするならもっとちゃんとしろ! 全部俺の悪口言っているの聞こえているからな! そして何もヒソヒソ話しは女子だけの特権ではない。


「うそだろ?」

「ってことは、白雪の好きな相手って住原?」

「俺じゃねぇのか……?」


 静寂が支配したクラスから聞こえてくる声。


 この状況を心の底から楽しんでいるようにしか見えない白雪に俺は完全に踊らされている事にようやく気付く。


「それ、本当なの?」

「……うん。と言っても本の感想を求められているだけだよ」


 ここまで来た以上、嘘を付き通す事は出来ないと観念する。

 そもそも白雪がこう言ってくると言う事は単純に考えて俺の事が好きな可能性の方が高いのでは? と俺の頭が答えを導きだす。


「なら私決めた! 住原君! 七海が好きなのは住原君!」

「本当に住原空哲でいいの?」

「うん!」

「わかったわ。なら異性として好きかそうじゃないかで答えるわ……私は住原空哲を異性として――」


 俺を含めた、クラス中が緊張に包まれる。

 そして後三秒もしないうちに俺の初恋が急展開で進展していくのか五分にも満たない短い時間で終わりを告げるのかが決まる。

 全身からは嫌な汗が噴き出し始める。

 たった一秒にも満たない時間がとても長く感じる。


 そして白雪が俺の顔を見て、一度息を吸ってから口を動かす。


「ほら、あんた達早く席に座りなさい。一年生じゃないんだからチャイムの音ぐらい聞いてなさい!」


 白雪の言葉よりも早く別の方向から担任の先生の声が聞こえてきた。

 そのまま教壇に立ち大きくため息を吐いた。

 まさかの展開に心臓が命拾いをしたときのような感覚に襲われた。

 だけど何処か消化不良で終わってしまった。


 怒らせるととても怖い事で有名な担任の先生には誰も文句が言えず大人しく席に着くクラスメイト達。


「残念だったわね、答え聞けなくて」


 クラスがざわざわしている間にサラッと白雪が俺に言ってきた。

 だけどタイミングがタイミングなだけに、皆の前で答えを言われなかっただけに心の中で少し安心していた。とは言っても内心かなり期待していた分、心の中はかなりの消化不良感は大きかった。


「どうせ真面目に答える気がなかったの間違いでは?」


 俺は少し恥ずかしい気持ちになったので、心に反して白雪に素っ気ない態度をとってしまった。


「あったわよ」

「……珍しい」

「気になるんだったら後で教えてあげようか?」

「いい」

「そう」


 そのまま俺達は新しいクラス担任となった先生と一緒に帰りのHRホームルームをして一日の行事――始業式を終わらせた。

 その後クラス担任に呼ばれ白雪は荷物を持ち教室を出て行った。

 どうやら俺が気になっていた答えは消化不良のまま終わる運命だったらしい。


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