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学校一の美女だろうが私のお兄ちゃんを振るとはいい度胸じゃない ~義妹とはあくまで偽物の恋人であって本物ではないはずなのだが、妙に色々とリアルなのはなぜ~  作者: 光影
第四章 恋の神様が選んだ勝者と敗者

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期間限定で注目を浴びたこともあった


 育枝は気持ちを切り替える為に一回クラスに戻ろうとしていた。

 後ろをチラッと何度か振り返ったが空哲はしばらく屋上にいるみたいだ。

 出入口の扉を開けるとそこには白雪が立っていた。


「やっぱり見てたんだ」

「気付いていたの?」

「まぁ、なんとなく。私の声が小さくなると同時に会話が聞こえないせいか一人は残り、一人は帰って行ったなぐらいには。てかそれと同時にさっきまで開いていた扉を閉めたら駄目ですよ。流石に風もないのに扉が閉まるは不自然ですから」


 育枝がニヤリと微笑む。


「人の気配に敏感なだけじゃなくて勘も鋭いのね」


 すると白雪の表情が真剣な表情に変わる。


「何を二人で話していたの?」

「答える義理はありません。てか恋人同士なんですから何を話してもいいじゃないですか」

「なにその自慢ムカつくんだけど」

「でもそらにぃの事異性として好きではないってあの時図書室で言ってませんでしたっけ? 好きでもないなら別に気にしなくてもいいのでは? それともあの日渡り廊下で泣いていた方が先輩の本性なんですか?」


 育枝は冷たい声と相手を挑発する時の口調で呟き、白雪はそれに負けじと鋭い視線で育枝を睨みつける。


「喧嘩売ってるの?」

「あれ? そう聞こえませんでした?」


 ピリピリとした空気が生まれた空間は異様な感じに包まれる。


「いい度胸じゃない、義妹いもうと!」

「てか空哲君と【奇跡の空】は別人とか言ってませんでしたか?」

「なんのことかしら。時間が経てばやっぱり諦めきれない私の本心があっただけだけど?」

「都合のいい女ですね」

「ちなみに今は七海って呼ばれているわ」

「そうですか。でも私は彼女なんで当然名前で呼ばれています。残念でしたね」

「そうそう、実はね私と空哲君は席が隣でね。最近は毎日授業中でも話す仲になったのよ」

「うそ!?」

(それくらい知ってるわよ!)

「あら、聞いてなかったの? それは可哀想に。ほら私って勉強もできるし本も書けるしで空哲君から見たら頼りになる女だからね」

「それ利用されているだけでしょ?」

「あら? 利用すらしてもらえない女よりは百倍マシだと思うわよ? それとも何かしら、学校で私と空哲君が仲が良いと困るのかしら?」

「さぁね! だったら勝手にすればいいじゃない!」


 そう言って育枝は逃げるようにして階段を降りて、自分のクラスへと戻っていく。育枝の姿が見えなくなってから今度は入れ替わるようにして白雪が屋上に行く。




 俺はもしもの事を考えていた。

 もし俺と育枝が兄妹にならずして高校で出会っていたらと言うもしもの世界の事だ。

 すると俺はこうして育枝と仲良くなれたのだろうか。仮に育枝が俺に好意を持ってくれて今みたいに色々と仲良くしてくれても今と同じように接する事が出来たのだろうか?

 それがわからない。

 だから困っていたのだ。

 客観的に育枝を見ようとするのだが中々それが出来ない。さっき見た育枝がどうしても今まで見ていた育枝とは別人にしか見えない。それだけ……あっそうゆう事か。


 ――これは俺の勝手な想像。


 育枝は今まで俺の為に何処か一歩身を引いていたのかもしれない。本当は俺の前でオシャレをしたかった、だけど敢えてそれをしなかった。もし育枝が言っていた「今日が特別な日」を「最後の日だから素直になった」と解釈するならば……。

(多分合っている。その解釈で。そして自分は絶対に白雪七海に勝ってはいけないと思っていた。だけど最後だけは我儘になってしまった)

 これが育枝からの最後のメッセージだったのだろう。

 そう考えると俺の中でようやく何かがしっくりときた。


 だけど一つだけ気になる事がある。

 本当は最後聞こうと思ったが育枝が「恥ずかしい」と言ってきたので聞けずにいたことだ。

 なんで家では一切甘えてこない育枝が学校だけでわざわざ甘えてくるのかと言う疑問だ。 

 普通は逆ではないだろうか。人目があるからこそ恥ずかしくて、人目がないからこそ恥ずかしくない。だから大胆な行動も出来る。


 考えられる可能性はいくつかある。


 ――本当は恥ずかしくて甘えられない。だけど偽物の恋人として認知される為に学校では無理をしている。

 可能性は低いかもしれないが、考えようによっては合ってる気もする。


 ――家では誰にも邪魔されないから甘える必要がない、だってずっと一緒だから。

 確かに、これは一理あるかもしれない。


 ――全ては計画通り進んでいて、私と言う存在を使って白雪七海の心を揺れ動かす

 こう言った考えも当然ある。


 ――本当はリアリティを追求する為だけに学校では小悪魔になっていて、本当は俺に対して恋愛感情がない。これは育枝の迫真の演技。

 これは流石に合って欲しくはないが、可能性としては考えられる。


 正直こればかりは育枝に聞かないとわからない。だけど育枝はどれにしろ俺の為に文句一つ言わずに協力してくれているとなると、今後の事を考えると育枝にも最後しっかりと自分の正直な気持ちと今後育枝とはどうしていきたいのかを今日中には伝えておきたい。


 今まで気が回らなかった事にまで今なら回る。

 そして色々と何となくわかってきた。


 育枝は空哲である俺も空である俺もどちらも好きな気がする。だからこそどちらの俺でもいつも俺の味方になってくれたのだろう。そこに恋愛感情があるかは不明確。

 それでも可能性で言えば育枝の人生を変えた【奇跡の空】である俺の方に気持ちが偏っている気は正直する。


 かつては期間限定ではあったが、世間から認められた。

 あの頃の俺は何だかんだ輝いていたし、人の注目を浴びていたし多少なりとも影響力はあった。だけど今はただの平凡な高校生で育枝の補助あり気じゃないとまだ一人で作品も作れない欠陥品。

 

 だけどそんな俺でも好きなだと言ってくれる人がいるのもやはり事実。


 そんな相手に俺は今後どう向き合っていきたいのだろうか。

 そしてどういったニュアンスと言葉でしっかりと自分の気持ちを伝えればいいのだろうか。なかなか言葉が纏まらない。もし完全復活した【奇跡の空】だったらこの感情すら全てを利用して物語を一つ書けるだろう。つまりはこの感情とどう向き合っていくのが正解なのかを導きだせるというわけで。


 俺はベンチに座り、大空をゆっくりと移動する雲を見ながら真剣に考えていた。

 するとそこに金色の長い髪を垂らしながら、笑顔のまま俺の顔を除き込んでくる一人の女子高生――白雪七海。


「どうしたの? そんなに思い悩んで。私が相談相手になってあげようか?」


 普段昼休みは教室にいる白雪が教室の外にいる事だけでもかなり珍しい。

 しかも普段から誰も来ないような校舎の一つの屋上にいるって事は答えは一つしかない。


とうとう育枝と白雪が会ってしまった。

それにしてもバチバチしてる。


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