苦闘
この南極(難局)を乗り越えなくては・・・
いくらなんでもこれは異常すぎる
タランはようやく自身の身に危険が及んでいることに気がつき始める
「2ヶ月も吹雪がやまないなんてことがあるのでしょうか?」
「それもおかしいが寒暖計をみてみよ」タラン
「ま、マイナス80度!ダナカでそんな気温はありえません」隊員
「うーむ、これはどうやらダクーミの罠にハマってしまったか・・・」
「罠とはどうういう事でしょう?」ダブテ
「いまは仮定にすぎない、全ては吹雪がやんでから」タラン
「燃料消費が予想を遙かに上回る現状、これからは省エネ対策をとる」
今まではゆったりと30人収容のモジュールを20人で使っていたが
タラン他幹部も個室の使用を止め同じモジュールで寝泊まりする
食堂モジュールも一つ閉鎖して風呂の回数も減らした。
装甲車も一旦縮小化して籠城に特化してなんとか冬を乗り越える作戦に
切り替えた。
今まで半袖シャツで快適だったが空調温度を控え防寒服着用に切り替えた
「残存燃料と食料備蓄を逐一報告するように」タラン
「は、省エネ化が進み現状だとあと1年は持ちこたえられます
食料は⒉年ほど備蓄あります。」
「すまぬがこれからは100人の隊員を5人程度にしモジュールは一つのみを
使用する。後は全て縮小化するこれで5年はしのげるはず。
「げ、5年もですか?」
「全ては生存する為の作戦、我々は生きて帰る責任がある」タラン
5人体勢になり2週間後奇跡的に天候が回復した
「この期をのがしてはならん、ドローンを飛ばし上空を偵察する」
「は、ただちに」
無人ドローンが用意され上空を舞う、しかし厳しすぎる気温で
なかなか上手く飛び立てない。
「気圧が低すぎる・・・」技術担当の隊員がなげく
午後になり快晴となった気温がいくらか上がりようやくドローンが飛べた
「こっこれはなにごと・・・・」
上空100Mから360度周囲を見渡すが・・・・
「吹雪の前の地形がまったく別物になってます。」
「詳しく報告せよ」
「見渡す限りの雪原で。数㎞先までまったくなにもありません」
タランが手にしてる探知機のアラームが激しく鳴る
「吹雪前に無かった魔物が数M先はおろか周囲数㎞先までおびただしく
存在してる・・・」
「しかし、一匹も見えませんが・・・」
「おそらく雪、というか氷の中だろう生存もしていまい」
「それに、これを見ろ」タラン
「あ、ものすごい数の縮小体がすぐ近くに密集してますね」
危険を覚悟で装甲車で探索に出ることになった
「途中で悪天候になったらその場に待機し最小限の人数で持ちこたえよ」
ダブテは基地に留守番タラン以下12人で捜索隊は現場に向かう
「あ、なにか丘が見えます」
扉は氷に閉ざされていたが隊員全員で氷を砕き扉を露出させた
「さあ、中にはないにがあるか、もしかしたら罠かもしれない」
つ、ついに・・・・縮小体の保存倉を発見した。
「おおおおっようやく見つけましたね」隊員
「おちつけ、とにかく数を調べよ」
「おおよその計算ですが一千万以上かと」
「たぶんだがダクーミが仕掛けた移動魔方陣上に我々が偶然踏み込み
転送されてしまったのだろう」タラン
「しかし、ここはどこなのでしょう」隊員
「今ここでやるべきことをやってから話す」タラン
「ダクーミ式魔法が掛けられた縮小体を再び縮小化することは可能なのでしょうか」
「わからんが、やらなければこれだけの縮小体を運び出すことは不可能だ」
「一か八かですね」隊員
タランが魔法を掛ける・・・・
「ビシュシュシュ」
「おおおっ無事にフィルム化に成功です」隊員
「話してる暇があったら全てを荷台に運び込むのだ、この天気が
いつまで続くのか予断を許さない」
隊員総出で一千万の縮小化されたフィルムを荷台に積み込む
荷台にあった食料を半分投棄しなんとか積み込み完了
「さ、すぐに引き上げだ」天気は曇り空、いつ吹雪いてもおかしくない
「なにかの本で残り数Mで吹雪に遭遇して遭難したという話を聞いている
とにかく急がねば命があぶない」装甲車は燃料無視で最高速度でうなりをあげる
「いかん、吹雪いてきた」タラン
近代化されたレーダーもソナーも猛吹雪の前では全く役に立たない」
「地図上ではあと少しで到着の筈がんばれ!」タラン
いよいよ吹雪は猛烈さを極め風速40m、外に立てば吹き飛ばされる
「これ以上移動するのは危険、ここでビバークする」タラン
「しかし、ここで止まったら我々は遭難です」
「いや、下手に動くよりもここは待機が得策、我を信じよ」タラン
「風下から降りて雪濠を作る、車内にいては凍死する」
予想通り装甲車の風下側には吹雪が吹きだまり瞬く間に雪が車高ぶん積もる
魔石エネルギーを使う装甲車に排気ガスの危険はないが逆に暖気がとれない
12人が収まれる大きさの穴をなんとかスコップで作り全員避難する
翌日
「すまんが10人はフィルムになってもらう」タラン
「は、覚悟の上です」
「それで我々が生還できる可能性はどのくらいですか」隊員
「手はつくしたがあと3日が限界だろうな」タラン
「これでタラン様への借金は返さなくてすみますね」隊員
「馬鹿をもうすな、こんなところで死んでたまるか、お前は一生我の為に
ただ働きするのだ」
「ひえーそれでは生きても死んでも地獄ですぅ」隊員
三日後・・・・
「生きてるか?」タランが尋ねる
「まだ生きてます」隊員
「いよいよ年貢の納め時かもしれぬな・・・」タラン
「しかし、不思議な感覚なのですが、私は絶対に助かる予感がしてます」
「む、末期に及んで生死を分けるのは生きるという気力の差じゃ」タラン
「我は絶対に死ねん、大王に会うまでは絶対にな」
「タラン様は幸せですねあの大王が嫁とはとんでもない果報者」
「うむ、実はな、ダメ元で告白しただけなのだが」
「わたしもダメ元で告白したら受け入れて貰えたでしょうか?」
「ふ、絶対に不可能とは申さないが大抵は当たって砕けるな」
「しかし、其方とて思いをよせてる女子の1人や2人いるはずだろう?」
「はい、許嫁がいますが器量は・・・」
「馬鹿者、女子は器量ではない人柄である、我が大王に惚れたのは容姿ではない」
「確かに大王は聖女にして女神、神様にして仏様」隊員
「問題はだれにでも愛してしまうところなんだが・・・」タラン
「それは違います大王は慈悲深いだけで個人的な好き嫌いではありません」
「其方よくわかってるな、惜しかったな我が先にぶんどってしまって」
「いくらなんでも大王に手が届くとは思ってませんから」隊員
「しかし許嫁がいるのならますますこんな所で死ねんな!」タラン
「今回の遠征、数多の志願者から私が選ばれたときは天にも昇る気持ちでした
憧れのタラン様と仕事が出来る喜びで一杯でした。」
だがその声は段々小さくなっていく
「私は、本当の幸せ者ですタラン様に看取ってもらえるなんて・・・」
「馬鹿者、こんなところで死んでる場合か!やることはいくらでもあるのだ」
「し、しかし全身に力が入りません、もはやこれまでのようです」
「がんばるのだ!」頬をパンパン叩くタラン、しかし反応が無くなって行く
その時
救助隊が塞がれていた穴を開けて助けにきてくれた!
「タラン様ご無事ですか?」
「われは大丈夫この者を直ちに救うのだ」
なんと居住モジュールから10mの地点で遭難していたのだった
直ちに隊員は医療室に運ばれ蘇生術を施される・・・・・
間一髪、あと数分遅かったら手遅れだったがなんとか一命は取り留めた
しかし、凍傷の傷は深く片足は切断、両手指のほとんどがもげてしまってる
「大丈夫我が国の最新医療なら義足も義手も本物と区別がつかないレベルじゃ」
3日後意識が戻った隊員がタランに話す「これで私は一生タラン様の奴隷ですね」
「馬鹿者、奴隷制度は我が国にはないし賭博も御法度じゃ、借金などはないぞ」
「しかし一時的に助かったとはいえ我々が遭難してるのは事実で・・・」
「大丈夫、だいたいの事情が分かったので策はある」タラン
気丈に構えていたタランだが助かった安堵感から一気に気が緩み
その場に倒れ込む様に二日ほど眠り込んでしまった。
「大王、タラン様の消息が掴めました」伝令が伝える
「詳しく伝えてください」アスタージナス
「は、昨日オストラリアの漁船がタラン様のSOS信号を受信しました」
「なんと、オストラリア?」
「は、どうやらタラン様は南極に転送されているようです」
「な、南極・・・いったいどういうことでしょう?」ウラアール
「ダクーミのなんらかの罠かもしれません」アスタージナス
「いくらダナカを捜索しても見つからないわけですね」
直ちに極寒地向けに急遽開発された雪上車を含む救援物資を満載した
ICBMがゴカシより発射された。6000Kmの距離をわずか20分で
到達出来る超兵器。今回は避難予想点に予備をふくめ5発発射された。
偶然猛吹雪の合間の晴天だったことが幸いしタラン隊はICBMの投下地点を
確認し無事救援物資を受け取ることが出来た。
「おおっこの雪上車なら海岸まで走破可能だろう」
「南極の3Dマップを得たので最短距離でピックアップポイントに向かえる」
「今日は天気がいい、早速行動開始だ」
モジュールを回収し隊は即座に行動を開始する、1分1秒無駄にできない
好天によりなんとかGPS信号を得られたので現在地点も判明した
「なんたること南極大陸のど真ん中ではないか・・・これでは海岸まで
好天でも一週間以上はかかるな、ダクーミめ2重3重の罠を仕掛けおって」
「しかし、タラン様の好判断でした。むやみに移動していたら全滅でした」
「うむ、以前大王から南極に関する情報を得ていたのが幸いだった
マイナス80度の環境なんて極地以外では考えられないからな」タラン
雪上車一台に4人が乗車し残りの隊員は消耗を避ける為交代で縮小化してる
悪天候になればその場に待機しとどまる。極寒地仕様の雪上車は猛吹雪でも
車内は快適に保たれる。魔石発電機のお陰で省エネの必要が無く
車内では軽装ですごせる。簡易シャワー、ミニキッチンも完備されてる
雪上車の後ろに荷台を4つ繋げて発見された1000万体の縮小体も
運搬されてる。
天気が回復するとすぐに出発、連絡も入れて到着予定時刻の打ち合わせを行う
ピックアップ予定地の沿岸上に護衛線が待機しいつでも救援用のオスプレイを
発進できる体勢。
「しかし、自律走行が可能の本雪上車がなかったらこの行程は不可能でしたね」
「我がUSAの研究室は世界最高峰なのだ不可能はない。」タラン
途切れ途切れのGPS信号から進路を自動予想しほぼ自動運転が出来る
最新鋭の雪上車のお陰で夜間でも猛吹雪以外では走行可能。
「しかし、全く地形が変わらないので目測で運転してたら気が狂いそうです」隊員
「まったくすごいものを作ってくれた」タラン
移動開始4日目
「タラン様この先に魔物の反応と縮小体の反応が大量にあります」
「む、我らが遭難したポイントと同じ現象だな」タラン
「どうしますか?」隊員
「どうするも、我々の任務は縮小体の捜索と発見だ。行くしか無い」
現場に着くと案の定魔物は全て凍り漬けで生存の見込みは無い
多分自然発生の現住魔物がダクーミの移動魔方陣に気がつかず転送されて
絶命したのだろう、なんという悲劇。一体ダナカにはどのくらいの罠があるのか
「ダクーミの仕掛けた魔方陣を探知する装置がないと悲劇は終わらない」タラン
「またしても一千万体の縮小体が発見されました」隊員
「やむを得ない必要最低限の荷物を残して全て破棄せよ」タラン
「とにかく出来るだけ詳細な情報を本国に送りスタージナス様隊の調査は
一時中断してもらう。ダクーミの魔方陣探知装置が出来るまでは危険過ぎる」
間一髪アニソンに向けて出発直前だったスタージナス隊は出発を留まれた。
「なんと、ダクーミの隠し魔方陣にハマったら下手したら南極送りだつた訳か
寒冷地対策をしてない我々が南極に送られていたら100%全滅だった」
スタージナスは青ざめた。
移動を開始して二週間ようやくピックアップ予定地にタラン隊はたどり着いた
しかし悪天候の為その場に3日ほど足止めされる・・・
遭難は「助かる」と思った時が一番怖い。
「タラン様本当に助かるのでしょうか?」隊員
「馬鹿者、弱気でどうする、今までそのために努力してきたのだ」タラン
「我々はタラン様の配下で本当に幸せです、タラン様がいなければ我々は
全滅間違いなしでした」
「我とて恐怖はある、しかし出来る事を全力で行えば必ず活路はある
必ず助かるという信念が一番大事なのだ」タラン
4日目ついに天気は回復し救援オスプレイが上空から降りてきた
「遅かったな」タラン
「お待たせしました。早速もどりましょう」
「しかし、このオスプレイというのは実に優秀、荷物はつめるし移動速度は早い」
「は、我がUSAの魔改造により巡航時にはジェットタービンエンジンを
ふかすことにより時速800Kmでの巡航が可能になりました。」
わずか30分のフライトで待機していた護衛艦にたどり着き無事タラン達は
救助された。その場で準備万端の医務室に運ばれ隊員全員が入院した。
アスタージナスとの長距離衛星通話により愛する大王の声を聞くタラン
「タラン様お疲れ様でした。しかも⒉千万も縮小体を見つけていただいて
大成果でした。」涙でかすれがちながらもタランを褒めるアスタージナス
「まさか再び大王のお声を聞けるとは思ってませんでした」タラン
「とにかく今はゆっくり休んでUSAにお戻りください。お待ちしてます」
「は、土産話は一杯覚悟してくださいね」タラン
リオデジャネイヨに城郭都市と前進基地を設営し⒉万の移民と3万の魔物兵を
駐屯させる措置をとってスタージナス隊は一旦マハッタンに引き返す
途中でタラン隊の船団と合流し大王とタランは涙の再会を果たした。
「おやつれになって・・・」タランを熱く抱きしめるアスタージナス
「生きて生還できたのは僥倖です。奇跡でした」タラン
なせ南極なのか・・・




