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それって異世界転生とちゃうちゃう!  作者: kou2199
新章 スタージナス旅日記
74/179

ニューテリーイトにて

今度はなにがおきるか

大艦隊がニューテリーイトの港に到着した


すると大勢の市民が出迎えてくれた。遠くで花火と祝砲が鳴り響く

鼓笛隊のパレードが行進している

今まで見た事も無い熱烈なる歓迎ぶりに我は驚くばかり


「ようこそお越し頂き」深々と頭を下げるインデア王

「一日千秋の思いでお待ちしてました」と市長


「お世話になります」とスタージナス


「オモカッタでは償えきれない程のご迷惑をおかけして・・」

「いやオモカッタの件は両国が越えて行かなければなりません」

「ごもっともでございます」

「両国共前に進んでいきましょう」

「ありがたきお言葉」

「是非今回は王宮に来て下さい」

「うむ、今回はお邪魔することにする」

ニューテリーイトから王都はすぐ隣、目と鼻の距離


今回は開会宣言の後すぐに一般入場を受け付けた


前回の反省からやはり船内だけでは手狭なので

特設会場に5つの半円ドーム結界を施し

テーマ別のパビリオン形式を試した

商業館、フード館、軍事館、建設関連館、そしてインデアの特産品を

展示する郷土館を新設した。実は自国内製品も見本市に出品したいと

要請が寄せられたからだ。全て初の試み


そして今回の目玉は屋外に舞台を設置して「ショー」を

行うことになった、見本市で初の試み。

前回秘書4人のコンパニオンやエミコ、ハンナの受付姿が人気を博し

その分野でも需要があるのか探る為だ。


実は「前夜祭」を行い舞台を使ったショーの告知はしてある

その時点で反響がすさまじかった。


午後一番で「開始」の合図と共に入場ゲートが開く

「わあああああ」どっと待ち構えていた一般入場者が押し寄せる

今回は入場券売り場の混雑を配慮してあらかじめ予約券を販売してる


もぎり嬢が賢明に入場チケットをもぎる。大忙しだ

それぞれがお目当ての会場に走り会場内はひとで賑わう

開場して30分たらずで「迷子のご案内です」と城内アナウンスも

大忙し・・・


今回は前回の反省からカレーライスの販売は縮小し

インデア風のカリー販売に切り替えた。途端に大人気

押すな押すなとカリーが飛ぶように売れていく

ほんの一時間でソールドアウトしてしまった。

まだまだ顧客リサーチの研究が足りてない


今回初めてラーメンの他に餃子と、チャーハン

単品とそれぞれの組み合わせのセット販売を行ってみた

評判は上々。


前回で好評だったアイスとソフトクリームも爆発的人気を博した

外は気温40度の炎天下、空調の効いているドーム内とはいえ

涼を求める欲求は非情に高い。


3時半を過ぎると皆舞台に集まり出す

告知の通り4時から「ショー」なる物が開演されるからだ

普段から娯楽に飢えている市民達、何が始まるのかと興味津々


午後4時舞台が急に真っ暗にまる、魔法で暗く出来る。

おおっと観客がざわめく・・・


艶やかに身をまとった4人秘書が前座で登場する

なにやら聞いたことも無い歌を歌い出す

アスタージナス王から秘伝の「あにそん」なるものだ

4人が来ているのは「こすちゅーむ」なる物らしい


「なんたる可愛いらしさ。」VIP席で見ていたスタージナスが立ち上がる

「司令落ち着いて下さい」ヘッテがたしなめる

「う、うむわかっておる」


しかし熱狂した観客のボルテージは上がるばかり全員総立


「なんたる破廉恥な姿じゃ」太もも露わの4人にスタージナスは激怒

「あの衣装は大アスタージナス王の直伝だそうです」

「あにそん必携の衣装なのだそうです」


「うう、王命となら仕方が無いが・・我は悲しい・・」

「我だけの4人があのような者どもに囲まれてあられもない姿で」


「司令、落ち着き下さい」


ぱっと照明が消えてまた真っ暗になる・・・


再び照明が当たると今度は着物姿のエミコとドレス衣装のハンナが舞う

エミコは次々と扇を開いては閉じ開いてはひらひらと泳がせ

優雅な舞を披露する、その足裁き指先の一本に命がこもっている

これは相当稽古しないとこうはならないだろう


方やハンナはクルクルとバレリーナの様に舞う。凄い凄すぎる


「あんなに高く足をあげてはならん、破廉恥すぎる」

「ペターっと床に足を広げるのもいかん!、けしからん」

再び立ち上がり激怒するスタージナス


「司令落ち着いてください」


和と洋の一体化、観客はうっとりとしてため息がこぼれるばかり


「馬鹿者こんな催し我はゆるさん今すぐ中止じゃ」

「司令落ち着いてください」


とかなんとか言って一番興奮してるのはスタージナス。


ふっと再び照明が消える、すぐに2人に照明が集まる


「やや!」今度は剣士のスタイルになっている


それぞれが得意の剣と槍の技を披露する


「うわーーー」今度は大歓声と大拍手


見えない、2人の剣と槍先が見えないのだ

「シュンシュン、ビュビュ」息一つ乱さず2人の剣が舞う

これには周辺を警備してた護衛兵がビックリする

剣を志すものならばこれがどんなに凄いのか分かるのだろう


続いて人型標的が置かれる


「シュンシュン」エミコは標的を7枚おろしにする

「エイヤー」ハンナは標的5つを同時に串刺しにする

標的一つは人間ひとりを倒すのと同じに調整されている

つまり一瞬でエミコは7人、ハンナは5人絶命出来る腕があるのだ


絶世の美女が眉一つ動かさずに標的を倒す・・・

観客は「シーン」と静まりかえったあと「わーーー」と大熱狂


「うぬぬ、けしからん!あの2人は我のものじゃ、見世物ではない」

歯ぎしりスタージナス


「司令落ち着いて下さい、あれは単なる見世物です」

「いかん、見世物だなんて不埒すぎる!」

実はうれしくてうれしくて仕方が無いスタージナス

自慢で自慢で・・・あれは我が護衛だと大声を上げたいのだ

「面倒くさい」ヘッテはスタージナスの性格を良く知ってる


はぁはぁと息も絶え絶えのスタージナス怒りに燃える風に装ってるが・・

大興奮で今夜は眠れないかも知れない。


「それでは本日のメインイベントです」まだなにかあるのか?

「ふん」スタージナスの鼻がさらに高くなっていく

「いままでのは前座と場内でアナウンスされていただろ」

スタージナスは知ってるようだ


三度照明が消えて今度はきらびやかなカクテル光線が当たる


男女2人の登場だ


「紹介します!ヨハーーーン、エーーンド、エメーーーーール」

プロレスか!


艶やかなバイオリンの旋律が流れ出す


2人の剣舞が始まる


「うっ」息をのむ大観衆


それは絡みつく、舞う、剣先に色気が走る、緊張が走る

顔以外肌を一切露出させていないのにエロい


「これは未成年禁止レベルだな・・」


見ているだけで心臓がバクバクする、芸術の枠を逸脱してる

男女の絡み・・・なんの行為もしていないのに「いやらしい」

上品に高貴に「いやらしい」見ていられないが見ずにいられない


剣と槍の交錯だけなのに・・・


あ、女性客がひとり失神した、あちこちでバタバタ人が倒れる

警備兵が予め訓練されてる通り担架を用意し医務室に運ぶ


「王立魔法院生時代からふたりの剣技は失神者続出だったのだ

こうなるのは当然じゃて」スタージナスは予想していた

「だから今回の目玉として無理矢理連れてきたのだ」


悩殺剣技魔法と言えるかもしれん。このふたりの剣舞はヤバすぎる

見ている物が魔法に掛かってしまうのだ。


エミコとハンナは煌々たる高みを現実に見てため息まじりに絶望する


「絶対にあの2人の領域に達することは不可能だわ」


「しょうが無いですわ、2人は夫婦同然なんですから」と

分かったような口でダーリャが2人を慰める


クルクルと回っていた⒉人は最後に絡み合い抱き合い見つめ合う

ヨハンがエメルを深く倒し込む、ググググとエメルは身を反らせる

スポットライトが2人を照らす。音楽が終わり演技の終了を告げる

2人が手を繋ぎながらペコッと深くお辞儀をして挨拶すると

場内割れんばかりの大喝采地響きにも似て・・


「本日の催しは全て終了しました又のご来場心からお待ちしてます」

無粋に現実に引き戻す場内アナウンスが響き観衆はやっとで我に返る


帰り道は2人の話題で持ちきり


「いや、我らは4人組がいい」と一部のおたくは4人組に熱烈な支援を

誓っている。「毎日応援に行く」口々に賛同の声が上がる


「いや俺達は真ん中の2人組に惚れた!カワイイのにものすごい腕前

あんな剣士になら4枚おろしにされても文句いわない。」


翌日からはブロマイドとパンフレットが開演前から売り切れる事態となり

後にレアアイテム化して空前の値段で取引される事となる。


「これ!広報部なにやってるんだ、またリサーチが足りてない」

スタージナスの叱咤が飛ぶ。需要に供給が全然追いついていない


夜、スタージナスは王宮に招かれる護衛はヤコブとヘッテ


「招待ありがとうございます」

「お待ちしてました」


挨拶の後着席し料理が運ばれてくる


「それにしても貴国には毎回驚かされます」

「さて?なんでしょう」


「またまた、今日の舞台ですよ」

「はあ?」

「あのような催しは我が国では初めてでございます」

「実は我が国でも初めてでした」

「なるほどそうでしたか・・」


「しかし、あれですぞ、これは大いなる可能性を感じますね」

「実は我も同感です」

「華があり斬新、しかも演じ手の熟練度たるや」

「はい、我が国で一番の剣士ですので」


「やはり・・・」


「最後の2人は是非我が国の最高軍事顧問として迎え入れたいのですが」

「それは無理です大王の専任護衛兵ですので。いくらインデア王でも」


「そうですか・・・やむおえません」


「しかし、中座の2人は是非譲っていただきたいのですが」

「絶対にムリです、あれは我の専属護衛につき」


「むむむ、それでは前座の4人を頂きたく・・・」


「あの4人をお望みでしたら我が国との友好はこれまでと言うことに」

「全部駄目ですか・・・」


「駄目です」


「あれも駄目これも駄目では困りましたな・・・」

「いえ、そんな事はございませんその他のお望みでしたらなんなりと」

目がキラリンのインデア王


「その言葉に二言はありませんな?」

「は、このスタージナス命を賭して約束します」


「4人これへ・・」パンパンと手を叩くインデア王

うら若き娘4人が王の横に並ぶ


うっこの先の展開読めたけど怖くて言えない・・


「この4人をスタージナス様のそばめとしてお許しください」

「なっなにを突然!」


「我が国は大アスタージナス国に返しきれない恩を背負ってます

これはほんのささやかなお礼ですので絶対に受け取っていただきます」

無理矢理押しつけが「お礼」なのか?


「我が国選りすぐりの美貌の者を厳選してます

我が娘もいます是非お近づきの印に・・・そばめでいいのです

それも駄目でしたら飯盛り女、女中、奉公人、奴隷でも結構です」


「しかし、理由が分かりません」

「それはスタージナス様が原因です」


「えっ我が?」

「はい、」

「なんでじゃ?」

「分かりませぬか?」


「わからん」


「スタージナス様はサウジアラビブからの4人を引き受けました

それは国と国にとって大事件なのです」


「はあ?しかしそれはサウジアラビブが強引に押しつけて来て訳で」

「では、我が国の強引にもおつきあい頂きます」


「ぐっ」


「スタージナス様は先ほど二言はないといいました」

「つまり、初めから無理難題を言いつけて最終的に無理難題を押しつけた」


「はい、いきなり4人を出しても無理ですから」


「それが貴国の恩返しか?」


「はい、この4人はサウジアラビブに一歩も引けを取りません

徹底的に教育してきました。絶対に貴国の損にならない自信があります」


「スタージナス様は若い娘を好むとお聞きしたので皆13歳を

そろえました」


「いやいや、それは大誤解、我は別に若い娘が好きと言う訳では」

「まあ、歳はともかく我が国の至宝ばかりなのは確かです」


「しかし、困った物よ、すでに6人も抱えてこれ以上は無理なのだ」

「何を仰いますか普通の王家なら2~30のそばめは当然です」

「二言はないのですよね?」再確認するインデア王


「うううむ困った・・・」


結局「うん」と言って無いのに4人が付いてくる・・・

「我々はもう帰る家がありません、今生の別れは済ませてます」

「駄目というのでしたら・・・」

しかし、それしかないのか?


というかもう少し離れてくれない?ビタととりつかれて歩けん


「申し訳無いがこのまま家に帰ってはくれぬか?」

「帰る場所はスタージナス様の所です」


「しかし、今いる6人以外に情を与える事は無理じゃ」

「それで構いません。先輩のお邪魔はしませんし無理矢理

求めたりしません。我々の能力を見てから判断してください」


「しかし家柄もあるし粗末には扱えまいて」

「いえ、家柄や身分は捨てました。奴隷扱いを覚悟してます」

「我が国には奴隷制度はない、奴隷とはなにかも知らぬ」

「では、我らが奴隷とはなにかを教えましょう」


「いらぬ、それは絶対に認めない」


「とにかく手始めはスタージナス様のメイドで結構です」

「うむ、仕方が無い6人にはその旨紹介しよう」


「嬉しゅうございます、我々は今日からメイドです」

「ご主人様、なんなりと申しつけ下さい!」

「なんでしたら今晩のとぎも・・・」


「面倒な事を言うでない。我を主人と認めるのなら主命に従え」

「ははっなんなりと」腕に胸にまとわりつく4人

「まずは離れなさい」


「出来ません」


「主命には従うと申したではないか」

「いくら主命でも我々の決意以上ではありませぬ」


「わけわからんな」


「はい、ご主人様」

「われわれはすでにご主人様の盾なのです不審者から守る義務があります」

「いや、それは護衛兵がいるから」

「申し訳ありませんが護衛兵よりも我らの方が強いです」


「なっなに・・・」とヘッテが食いつく


「残念ながらヘッテ様には足りない武器があります」

「なんだそれは」

「我らは「女」という絶対的な武器があるのです、だから無敵なのです」

「はあ?」わけわからん


いったい女という者は想像も付かんことを言い出す

しかしそれはダーリャと同じ「個性」なんだろうて・・


ベターと抱きつかれたまま帰宅する

これでは「新しいメイドじゃ」などと言っても誰も信じまい。


「やっぱりそうでしたか・・・」ダーリャは分かっていたようだ

「其方知っていたのか?」

「当然ですわ、我がサウジアラビブが4人付けば間違いなく

インデアも4人かそれ以上差し出すと思ってました」


「事実上の人質なんです」とスアートは語る

「大アスタージナス国への服従の証なんですよ」ハンナも語る

「実は我ら2人も人質と同じです」とエミコとハンナ


「知らぬのは我だけか・・・」スタージナスは肩をすぼめる


「まあ、わかった。それで其方達の名前をまだ聞いておらん」


「は、私はイーシャ、インデア王の第四王女です直系です」

「私はキラン、インデア王の第三側室の第五王女です」

「私はマヤ、イーシャ王女の側仕え、下級貴族の娘です」

「私はネハ、キラン王女の側仕え、元奴隷です」


皆13歳


「元奴隷とな?」

「はい、キラン王女に取り立てられました愛具です」


「愛具・・・・・???」スタージナスが目をグルグル


「ですがキラン様は私に指一本触れてません。奴隷が出世するには

愛具になるしか道がないのです」


「あまりにも聡明でしたので私が是非にと取り立てました」とキラン


「ですが、たった今から4人はスタージナス様の僕、立場は対等です」

「うむ、我に仕える者全て身分を問わぬ。文句は言わせない」

「ただし、使えぬ者は不要じゃ、甘える者、ねだる者、我が儘もうす者

我には不要、即刻出て行かれよ」


「我は不要ですか・・・」ダーリャ、心当たり有るのか?


「其方は第一秘書ではないか!我に欠かすことは出来ない」

「わーい」新参者4人に当てつけるように抱きつき顔を埋める


「これこれ、はしたない」もう嫌がらないスタージナス


あれ?とイーシャ達は4人で顔を見合わせる


「ふーん、抱きついてもいいんだ・・・」ニヤっとするイーシャ


「ともかく明日から4人にはメイドとして働いてもらう」

「先輩の6人はいろいろ教えてやってくれ」

「はーい」


「ぬ、護衛兵もすでにタダならぬ関係なのか」

キランは疑う


「専任護衛兵が「その」役目を兼任するは良くある話」

イーシャもエミコとハンナの仕事を確信した。


「タラン、この4人に部屋を与えよ」

「はっ」とタラン


とりあえず社長室の隣をメイド室として与えられて

4人部屋とした。個室を与えるのは仕事を見てからになった


客室とはいえ本来1~2人部屋、かなり狭い

シングルベットにソファを付け足して4人がやっとで寝れる

寝返りすらも困難な狭さ。しかしクロゼットとユニットバス

ミニキッチンは完備されている


「今日は遅いのでもう寝ましょう」とスアート

「おおっこんな時間か明日も早い寝るとしよう」スタージナス

7人は何時もの様に社長室続きの寝室に入っていく


「お、お待ち下さいスタージナス様」

「ん?何じゃ?」


「秘書4人と護衛兵2人と一緒に寝所入りなのですか?」

「だから最初に言ったはずだ、6人以上に情は与えられぬと」


「こっこれは大変・・・すでにそういう関係なのか・・」

覚悟してたとは言え現実を見て愕然とするイーシャ達


「分かりましたそれで構いません、われわれもご一緒します」

「なにが構わないだ!、それは出来ないと最初に申しておる」


「それで良いと強引に押しかけて来たのだろう?」


「わ、分かりました今日の所は引き下がりますが・・」

「引き下がっておれ!」

わざと突き放すスタージナス


「もうこれ以上情に流される訳には行かないのだ許せ」

とスタージナスは心で謝罪しつつも突き放つ。


実はその夜しくしくと泣きはらした4人だったのだ

どれほど心細かっただろう・・・

王命なので強引に押しかけてきたが現実は厳く絶望的

気丈にとりつくっていても実際はか弱き少女なのだ・・


翌朝4人は誰よりも早く起き仕事の準備をする

とはいっても誰も何も教えてくれない。自分の仕事は自分で探すのだ。


「其方達は明日から奴隷と思ってスタージナス様に尽くすのじゃ

それが我が国を救う唯一の方法。全ては其方達の活躍次第。

すでに縁は切った退路はない。覚悟して望め!」

インデア王にはきつく命じられてここに来ている。


泣くのは昨晩で終わり、今日からは全てを捧げないと生きて行けない

帰る場所はない全て覚悟の上だ。


「まずは着替えを探すのです。どこかにメイド服が有る筈です」

即席で与えられた部屋のクローゼットには何もない

持参した手荷物はほとんどない、着の身着のまま状態。


「イーシャ様私が給仕室を探して参ります」とマヤ

「みんな聞いてください、我らは昨日から身分は奴隷です

様付けは止めて下さい。それは主人に大変失礼な行為ですから」


「わかりました、い、イーシャ」

「それでいいのですマヤ、頼みます」

素早くマヤとネハが給仕室を探しに部屋を出る


「さて、その間に・・我ら2人は厨房に行って食事の事を

聞いてきましょう」「わかりましたイーシャ」とキランが応じる


給仕室を探し当てたマヤとネハが中にいた一番偉そうな人に尋ねる

「あの、私昨日かスタージナス様メイドとして拝命した者ですが」

「はい、タラン様から伺っています。そちらに伺うつもりでした」と

給仕長のサラが傅く


「我々は今日から給仕長さまの部下でございますお顔をお上げ下さい」

「はあ、?」

「それでこれから仕事をする為の服装を支給していただきたく」


「なにか考え違いされてるのかと思いますが」


「す、済みませんでしたお許し下さい」ばっと土下座するマヤとネハ


「うわっ、そうではございませんお顔をお上げ下さい」

逆に土下座返しするサラ


「今後このような間違いは二度としませんお許し下さい」マヤ


3人で土下座するので埒があかない


「ですからマヤ様はスタージナス様直属のメイドですので

我々の上司なんです」


「二度としません、どうかお許しを」マヤとにかく謝る

え?あれ?ようやく気がつくマヤ


「只今服などをお持ちしようとしていたのですがあまりにも

早く来られたので間に合いませんでした、お許しください」サラ


サラは部下に命じ服やその他の必要品をとりまとめ

「さあこれからそちらに伺います」とマヤにかしこまる


「サラ様、申し上げたき事があります」

「はい、マヤ様なんなりと」

「我ら4人は昨日からスタージナス様の奴隷です

奴隷に部下などいません、サラ様はこれより我らの上司です

これは誰がなんと言おうと譲れません」


「はあ?でも・・・」


「これは、スタージナス様に厳命して頂きます上下関係は

一番大事なんです。我々は奴隷、それは譲れません」


「はあ」


部屋につくと部屋にいた3人が土下座する

「この度はお世話になります、今後もよろしくお願いします。」


「はあ・・」

平民あがりのサラには貴族様に頭下げられるなんて

絶対にありえない事だったのだ。


「しかし、それでは私がタラン様に叱られてしまいます」


「いえ、これからなんでも教えてもわなければなりません

上下関係は譲れないのです」4人の決意は固い


「こんなしっかりしたお嬢様は初めてだ」サラは感心した


「では、早速ですがこれにお召し替えください」


「それとメイドの起床時間は朝5時に決まってますそれ以上早いのは

逆に迷惑なのです気をつけて下さい」


「ははっ」


素早くその場でテキパキと着替える4人。着替え所など

あり得ないと覚悟してる。メイドに羞恥心はいらないと


「えっ」とビックリするサラ

「明日からはそちらでお召し替え下さい、女子が人前で着替えるのは

はしたない行為ですから」


「ははっかしこまりました」


なんかこの子達放って置けない、サラはすでに胸一杯になってる


それでは今後の仕事内容ですが・・・

さっとメモをとりだす4人


「スタージナス様の朝食は基本社長室で取ります

秘書4人様と護衛兵様もご一緒です。」

「あと朝の打ち合わせのためタラン様やグフタス様

他の部署の部長などがご一緒される場合もあります。

部屋に居る方を素早く数えて的確にお願いします」


「ははっ」


「ご存じかとは思いますが秘書様4人と護衛兵様⒉人はスタージナス様と

夫婦同然の間柄。対応を間違う事なき様にお願いします」


「はい」


「6人様は天井人様として扱ってくださいね」


「ははっ」


考えが甘かったとイーシャは覚悟した

すでに我々が入る隙間などはないのだ・・

だがそれもいいだろう。スタージナス様に尽くすのみ

そして6人様にも尽くすのみ


考えて見ると昨日の出来事、抱きついたのは迷惑だったに違いない。

なんということを初日からしでかした事か。


「話を戻します、今までは給仕が朝7時になったら朝食を

運んでましたが、今日からはお願いしますね」」


「は、先ほど全て伺ってきました」

「まー、なんて気がつくこと・・」


「はっお昼は社長室で部長を囲んでの昼食会議、食事の

段取りも伺って来ました」


「これは将来有望です。仕事とはかくあるべきですね」


「それで夕食はその時に応じて臨機応変と聞きました」

「そうですねスタージナス様はご多忙夕食がどうなるかは

その日にならないと分かりません」


「それでご主人様のお召し替えについては?」


「それについては6人様が行ってるようです。

身の回りの世話は全て・・・」


「メイドとして立ち入ることは可能でしょうか?」

「それは貴方たち次第でしょう、信用を得れば少しずつ・・」

「わかりました強引にならないように頑張ります」

「ご自身のお仕事はご自身で探して下さい」


「ははっ」


「それでご主人様が不在の時は給仕室でお手伝いしていいですか」

「ま、まさかそんな事は必要ありません」


「いえ、早く仕事を覚えなくてはなりません奴隷に休み時間なんて

ありません」


「イーシャ様とキラン様は王女様そのような扱いは出来ません」

「いえ、我ら4人は国を捨てて来ました。帰る所はありません

それに王女の身分は昨日で捨ててます。4人は奴隷で構いません

その覚悟です」


「ううううう、なんてけなげな」サラが涙をぽろぽろ流す


「サラ様時間がありません今から我々は仕事の時間です」


「そ、そうですね。頼みます」

もうサラは熱烈なイーシャファンになった


スタージナス達が起きてきた

何時もの様に身の回りを世話するダーリャ達


アズハールはスタージナスの顔色を確かめ健康チェックする

多少医術の心得があるのだ


脈を取るアズハール、実はスタージナスすでにドギマギ中なのだ


「いかん顔にでてはまずい、平静を保たねば」

「スタージナス様いかがしましたか?目が落ち着きませぬ」

「いや、なんでもない」


「昨日の4人はどうしておるかの?」


「さて、あれほどの強引さですから今日も大変でしょうね」と

ダーリャ


いやいや其方が来たときほど大変ではないと思うが・・


朝食の時間


「おはようございます」元気よくメイド4人が挨拶する


「うん、おはよう。今日も良い天気じゃな」


「はい、」


テキパキと仕事をこなす4人


「はて、マヤとネハは分かるがイーシャとキランがメイド仕事が

出来るとは意外じゃな」


「は、ご主人様に気に入られる様に精一杯頑張ります」とイーシャ


ん?昨日の我が儘で強引なイーシャではなくなってるな??


「其方達の待遇についてだが」

「ははっ」

「其方達はあくまでもインデア王からの大切な預かり物故

メイドとは言っても身分が違う。給仕達の上司待遇である」


「いえ、ご主人様それは違います」

「なにが違うのじゃ?」

「我ら4人は昨日限りでインデア国とは縁を切ってます

王様とはなんの関係もありません。」

「我々はなにもない奴隷なのです。昨日申し上げた通りです」


「馬鹿なそんな訳に行くか!」

「いえ、これは我々の望みです先ほど給仕長様にも確認してます」


「タラン!どういうことじゃ?」

「はっ今この4人が申したとおりの様です」

「インデア王に尋ねたところ縁を切ったのは本当みたいです」

「ば、ばかな・・右も左も分からない所に娘達を放り込んだのか」


「覚悟は本当みたいです」


「昨日はサウジアラビブとの一件と同じ押しかけ案件と思ってたが」

「其方達なにを考えておるのだ?」


「もうその答えは何度も申し上げています」

「我らは奴隷としてご主人様にご奉公するだけ。以下も以上もありません」


「まあ、面白い、どこまで続くか見てみよう」

「は、ありがたきお言葉」


その日以来4人は全く迫ってこなくなった、拍子抜けだ

それどころか炊事、洗濯、掃除全てを完璧にこなし

手が空いたら給仕室に手伝いにいってるそうな・・


そうこうしている内に無事見本市は明日で終了する


スタージナスは社長室に4人を呼ぶ


「さて、其方達明日からは航海に出るのだが帰るのなら

今日が最後だぞ?帰るのなら止めはしないが・・」


「いえ、ご主人様に一生ついて行きます。ようやく祖国を

離れられて本当にご奉公出来る喜びで一杯でございます」


「そうか・・・、それではこの三日間よく働いてくれた褒美に

個室を与えよう」


「とんでもございません何度も申し上げた通り我らは奴隷です

奴隷に個室なんてありえません」


「我が国に奴隷制度はないと申しておる。遠慮するな」


「いえ、けじめでございます、この程度の働きで個室など

我々が納得出来ないのです」


本当は4人で寄り添って寝ないと心細くて寝れないからなのだが


「なんとけなげな・・・」スタージナスの脳内ポイントが上がった。


「あの奴隷が言うのは差し出がましい事ですが」


「許す、申せ」


「ははっ、それでは・・・」


「6人様がただならぬ関係なのは知っていますが・・」

「なっなにを申しておる」

「それでですが、身の回りは奴隷の仕事でございます」


「うん?」


「出来ればご主人様と6人様のお世話もしたく・・」

「しかし、我々は今の所上手く行っているのだ手伝いなど不要」


「それではせめてご主人様だけでも・・」


「いらぬ、寝室に入れるのは6人だけじゃ誰もいらぬ」

「はっ、かしこまりました」

「本当に我の我が儘でスマンが其方達に情は与えられない」

「はい、十分に承知しております」


な、なんだこの素直さは?これが本来の性格なのか?

いや、だまされん我はだまされん・・・


ニューテリーイトでの見本市が終了した


閉会式のパーティにインデア王が来た


「4人の様子はいかがでしょう」インデア王


「は、驚くような働きぶりです」

「それを聞いて安心しました」

「その件なのですが・・」

「はて?なんでしょう」インデア王

「彼女達が我々は奴隷だと言って聞かぬのです」スタージナス

「は、そう言って聞かせました。」

「しかし、それはいくら何でも酷すぎましょう」スタージナス


「とんでもありません、我が国と貴国は対等、平等と申されてますが

我が国はそれに甘えては駄目なのです」


「ですが、我が国としては王女が奴隷では他国からの心証が悪すぎます」

「いえ、他国も貴国との対応について身のほどを知るべきなのです」


「お考えは変わらないと・・・」


「すでに4人とは縁を切ってます。我が国とは関係ありません」

「もしお気に召さなくばご自由に処分されて構いませぬ」

「ま、まさか・・・」

「我が国の覚悟と4人の覚悟。どうかお受け取り下さい」


自分の子達をここまで突き放せるものなのか・・・

我には出来ぬ・・我の甘さか、国を任されるとはここまで非情さが必要なのか


「この件についてはもう決定してますスタージナス様も了解されたはず」

「うむ、そうであったな」

「しかし、こちらに任された以上どう取り扱うかもこちらの自由という事だな」

「すでにご処分済みなのですね・・・せめて亡骸だけでも埋葬いただきたく」

「な、なにを勘違いしてるのでしょう、処分などは絶対に致しません」


「は、勘違いご容赦を、とにかくもう何をされようが我が国には関係ありませぬ」

「わかりました」スタージナス


つつがなく閉会式も終わり会場の片付けも終った


船団がニューテリーイトの港を離れていく

インデア王以下市長、大臣達が総出で手を振る「お達者で~」


次ここに来ることはあるのだろうか・・永久の別れかもしれない

デッキ上で我らも手を振る「さようなら~」

奴隷だからと固辞する4人を無理矢理横に並ばせている


ふと4人を見るスタージナス、気丈に振る舞う4人

「最後のお別れをせぬか!」とスタージナス


「我々には親も兄妹もいません、誰に別れを告げるのですか」イーシャ


「ばかもの!、今生の別れぐらい素直にせい、これは命令じゃ」


「はい・・・」というやいなや両目からあふれ出す涙

ついに堪え切れなくなり4人は声を上げて号泣する・・・


遠く離れていくインデア王の両目にも涙が止まらない



また4人増えました

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