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それって異世界転生とちゃうちゃう!  作者: kou2199
新章 スタージナス旅日記
68/179

サウジアラビブにて

今回はちょっと長めです

我はいまアタリカ大陸をグルッと東回りしてる

のんびりひとり旅中じゃ、(実際は船員50人)

なにやら先遣大使なる役目を負ったりと放浪の旅とは

とても思えない状態だったが、その役目もやっとで終わり

本当の意味での放浪中だ・・・


さって次はどこにいこうかのう

途中下車いや下船の時間の方が長くて実際に船旅したのは

一月もないがだいぶ船の旅にも慣れてきた


50人いる部下たちとの呼吸も随分合ってきてる気がする

今日は金曜カレーの日。週に一度のカレーの日だ

どうも旅が長くなると曜日の感覚がなくなるので

金曜カレーはとても大事な行事なのだ。


「ご隠居様、私はこれだけが楽しみなんですよぉ」と給仕の1人が舌鼓

「うむ、我もじゃ」うんうんと皆の笑みがこぼれる


「さてご隠居様、つぎの目的地はどこなんでしょう?」

かれこれ1週間どこにも寄港してないのでそろそろ皆岡が恋しいようだ


「うむ、特段予定はないが皆はどうしたい?」

「そーですね・・・実はあの、その」


「なんじゃ、もうしてみい」


「ご存じのごとく船は女人禁制でございます」

「だからなんじゃ」

「船員達は若い者が多くて・・」

「ふふーんなるほどな・・」

「で近辺にそのような場所はあるのか?」

「は、実はサウジアラビブという国がございまして」


「ふむ」


「その国の宗教は戒律がとても厳しく女人は夫以外には

目以外肌を見せてなならない国なのだそうです」


「それでは若い男には返って酷ではないか」


「そこは蛇の道は蛇ともうしまして」

「戒律が厳しい国ほど抜け道があるのです・・」


「わかったわかった、次はそこに立ち寄るとしよう」

「男子たる者たまにはハメを外すことも必要、ガス抜きじゃ」

動機は不純だがたまにはそれもよかろう


高速船は早い、つかアクセル開けすぎ・・

2日ほどでサウジアラビフについた


港につくと


白基調の建物が建ち並び人々の往来がはげしい

「繁栄してる国」だとすぐわかる


25人づつ交代で町に出るもの留守番するもので別れた

我は護衛⒉人を伴い町の酒場に繰り出す。民の意見が聞けるからだ


なるほど、確かにここは異国、風が臭いが全然違う

まるで絵画の世界のような綺麗な街並み行き交う民達

馬車の形からして違う、どこかで祈りの声がする


「これを味わいたくて旅に出たのだ」


放浪の旅なのに何かと用をいいつけられて異国情緒を

味わう暇も無かったが、ここを訪れて本当によかった


「隠居さまこの様な人混みにはスリが出ますのでお気をつけ下さい」

平民服を着ながらも周囲への注意を怠らない護衛兵が語る


「ドン」おっとご免よ

言ってるそばから私はスリでございます風の男に財布をスられた


護衛兵はS級兵士素早く男を捕らえようとする所を

スタージナスが「まあ、まて。暇つぶしじゃ」

とあえて泳がせることにした

暇な隠居はこれだから・・・


S級兵士が卒業時に支給される「スマホ」にはGPS機能付き

ご隠居の財布の位置が画面上に記される。絶対に逃げられない


3人は男からつかず離れず尾行する


男は路地裏に入り迷路のような道をスタスタクネクネと進む・・

「どこに向かっておるのか」

男はいかにもげなお店の前に立ち中に入っていく

「多分盗品買い取りの店だろうな」「御意」

さて、どうするか・・


「ここは異国の地です。いい加減にしておきましょう」

「ふむ、それもそうじゃなそろそろ踏み込むか」


店の前に立ち踏み込もうとしたら先手を打たれた

どこからともなく現れた胡散臭い男どもに取り囲まれてしまった


「見かけない顔だな、おまえらここに何しに来た?」


「いや、なに盗られた物を返してもらおうと思ってな・・」

と言う間もなく5人の男はナイフを取り出し斬りかかってきた


あー君達やばいよそれ以上近づいたらアスタージナスの刑務所に

送られちゃうよ・・遠いよ、帰ってくるの大変だよ

とスタージナスは心配したが・・遅かった


あっというまに3人が消えてしまった・・あーあ

「うわっ、何事」と残りの⒉人が後づさる

「曲者め、なにをした!」

曲者はおまえたちだろうが


「いきなりナイフを向ければ反撃されても文句は言えまいて」

「このーー」と2人はこりもせずに突進してくる「パっ」消滅

主を無くしたナイフが「カラーン」と地面に落ちる


「さて静かになったことだし中に入るか」


「ギイイ」と扉をあける


先ほど財布をすった男はすでにいない

店主?店員?汚らしい無精ヒゲを生やした不潔そうな男が応対する


「なんだ?うちは一見さんお断りの店だよ」


「いやなに先ほど店に入った者が売りつけた物を

返してもらおうと思ってな」


「そんな男はしらないな。店違いだろうて」

「いや、そこの箱に入ってる我の財布を返してもらえばそれで済む話じゃ」

「そんなものは知らないと言ってる。あまりうるさいと先生を呼ぶぞ」


「あー表にいた先生とやらはもうとおーーい所に旅立っていったよ」


「な、なにー、先生!先生方~」叫んでもだれもこない・・・

そらいくら叫んでもアスタージナス刑務所までは聞こえないだろうて・・


「曲者、おまえたちは何物だ」


「どうみても曲者はお前達だろうが・・さっさと返せ」


押し問答が面倒くさいとみた護衛が箱の錠前を居合いで「シュン」と

はね飛ばし中から財布を取り出した。


「うっ、なぜわかるのだ・・」


「其方が知る必要は無い、まあ、今日のところはこれで免じてくれる」


財布を取り戻しこれで用済みと帰ろうとしたところで


「せっ先生、お待ち下さい」


「其方に先生呼ばわりされるいわれはない」

「それにこんなところで先生とはいかにも怪しい輩にしか見えん」


「先生がお気に召さないのでしたら旦那様」


「いや、おぬしセンス悪すぎじゃな」

「いや、呼び名はなんでもいいのですが話が進みません」


「それはコッチのセリフだがな、まあいい何だ?」

きっとクリスティーナなら「旦那がなんだ」とか言い出しそうだな


「じつは頼みたい事がありまして」


「申し訳無いが我は悪事に荷担はせぬ」


「こんななりをしてますが私の商売は悪事ばかりではありません」


「ほう」


「裏での頼まれ事も引き受けてるのです」

「それを悪事というのだろう?」


「いえ、例えば人には明かせぬ事、お上に頼めない事などの依頼もあります」

「悪事の依頼にしか聞こえないが?」

「ハッキリ申し上げます」


「まわりくどいハッキリ申せ」


「さる高貴な身分であらせられる姫様が拐かされました」

「それこそお上の仕事だろうて」

「いえ、事はお上がらみなので」

「なに?一体なんのことやらサッパリわからん」


「ことはお世継ぎ問題を含んでまして・・・」

「悪いが我は今日港についたばかりのよそ者。そんな話には

無縁だし関わるつもりもない」


「は、それはそうでしょうが、今度の事件はよそ者の方が

都合が良いのです」


護衛と顔を見合わせる護衛が首を振る「関わらないほうが得策です」と

うーむ、しかし姫の命とあらば我の娘達も昔えらい目にあっている

他人事では無い気もする。


「引き受けるかどうかは別にして話だけは聞いてやろう」

あーあご隠居はいつもこうやって厄介事に首をつっこんで・・

護衛はあきらめ顔、ちなみに護衛兵の名はヤコブとヘッテ


店主?は語る


実は高貴なる身分のお家で家督問題が生じました

正室の長女様が本来なら家督相続の一番手なのですが

側室の産んだ次男に家督をと押す勢力が台頭してきて

血を見る騒ぎに発展していきました


事もあろうか側室側が役人に金をつかませて

でっち上げの事件を起こし「身をまもる」などの理由で

姫を幽閉してしまったのです。このままでは姫の命は風前の灯火

かといってお上に申し上げても加担したお役人の地位が

高すぎて誰ひとり協力をしてくれません。


かくなる上は力ずくで・・と正室の依頼がありました


「お上とやらにたてついても高飛び出来る輩が

最適なわけという事か・・」


「はっお察しの通りで・・」


「で、事が上手く行ったら闇から闇へ消えて

もらえる都合のいい人間を探してると」


「滅相もございません」といいつつビクってしたな。分かり易い奴


「ひひひひ、ですが先生この話を聞いた以上この地からは

逃げられなくなりました。役人に告げれば先生達はお尋ね者です」


「食えん奴だな今度は脅しか?」


「シュン」とヘッテの剣が飛ぶ

は?と店主が何事と思うまもなくそっ首が飛んで・・・

いや、隣に置いてあった怪しげな人形の首の話


「店主、人を見て話をせい。次はお前の首の番だぞ」と

ヘッテがすごむ


「うへぇ、すいません、すいません、お命だけは・・」


「まあ、話は大体分かった、で報酬は?」


「おっ興味がでてきましたか?ひひひひ」

「いくらだすのじゃ!」


「ははっ金貨500枚ほどです・・」


「信じられんなその10倍を得てるはず。まことを申せ」

「へへっ前金で1000枚後金で2000枚でございます」

「ふむそちの取り分は7000枚って所か・・」

「ははは、おたわむれを」といいつつ目が笑ってない図星だろう


「だが面白い、良し!半々で受けてやろう・・」

「へへっ」では早速前金2000枚で


本当に金貨2000枚出してきおったわ

「これを持って逃げるという手もあるが?」

「いえ、先生は逃げません。私にはわかります」

「ふん、食えん奴め、まあ吉報を待つが良い」


「我を信じるのは勝手だがこちらも手を打たせてもらった」


「へ?」


「たった今其方に即死魔法を掛けさせてもらった」

「我を裏切ったら其方もあの世いきって魔法だよ」

「ま、まさか先生は魔法使い???」

「だったらどうする?」


「それで外にいた先生達は消えた・・・」


「其方が裏切らなければなんでもない事よ」

「まっまさかそんな事があるはずは・・」

「いつでも試してみよ、すぐに結果は分かる」

「食えないのは先生の方ですな」

ははははっとお互いは笑い合う。いや店主の目は笑ってない


「いや、これは困りました。まさか現金で渡されるとは

物騒で町を歩けません。船に直行で戻りましょう」


風呂敷包みに一杯の金貨をもたされヘッテは困惑する


まあ、屈強な3人で歩けば大丈夫だろう。

船まで小一時間警戒しつつ戻った


「さてどうするか」


聞けば聞くほど我が王家のお家騒動にソックリなのだ

とても他人事に思えない。


「事件に首をつっこむのは我らだけだ

これから我ら3人、事件解決まで多言無用じゃ」

「ははっ」とヤコブ、ヘッテ


次の日甲板上に全員集合させスタージナスは告げる

「訳あって1週間ほどこの地に滞在する。その間は全員休みとする

せいぜい羽を伸ばすがいい。多少のつけはこっちに回す事を許す」

懐ホッカホカだもんね。


「うわーい」と皆喜ぶ

「交代の当番以外は解散!」蜘蛛の子を散らす


3人は船長室で作戦会議


「さて、姫が幽閉されてる場所はここじゃ」と

店主から渡された地図を広げて示す。


念のためGPSで地図を確認し照合してみたが結構正確な地図だった


「ヘッテ今から情報収集をしてまいれ。」

「ははっ」


ヘッテは諜報科も卒業してる。S級兵士は大抵2~3つの資格持

元国王付きの護衛だけに、助さん格さんクラスが求められる


さすがに我が護衛ひとりで見知らぬ町をうろちょろは出来ない

ヘッテが帰ってくるまでここで作戦を練ることにする。


「以前アスタージナスがスフィルニアとフィフリンテーノを

救出したときの手口は使えないかな?」


「使えると思いますが血が流れすぎます」

「たしかにな」

「今回の事件は犠牲者を極力出さぬようにしなければ

本当にご隠居様がお尋ね者になります」


「さもありなん」


「だが部分的に使えるかもしれんな」

「そうですね部分的に結界を解除する魔石は有効でしょう」

「おっ意見が合うな・・」

「ご隠居様、お言葉ですが我はS級兵士。人の心が読めなくては

卒業などはできませぬ」


「あーわかったわかった。続ける」

「で、結界を解除した後をどうするかだが・・」


「その前に館の見取り図と姫の幽閉場所、護衛兵や給仕の人数の

確認が先ですね。人数が分からなければ動きようがありりません」


「で、あるな」


「だが、」


「はっなんでしょう」

「姫を助け出すのはそれほど難しくはない」

「問題はその後だ、禍根を取り除かねば姫を救っても意味が無い」


「御意」


「愛する物を失った我のカンだが・・・」


「側室と役人は出来てるな・・」


「まっまさか・・」

「其方は所詮S級兵士止まりじゃて」

「えっいまなんて?」


「S級止まりと申したのだ」


「人の心が読めるとか申してもそれは浅い分の事」

「アスタージナスやウラアールなら更にその先を読める

だから其方はS級止まりと申したのだ」


「し、しかしお二人は国の宝で神の領域、お比べするなんて」


「だからS級どまりなんだよ。自分で自分を自慢しておっただろ?」

「人間はその位置に満足した段階で終わりじゃ

アスタージナスもウラアールも人の子だが常に高みを見てる

誰に言われるまでも無く努力を惜しまない。自慢もしない」


顔を真っ赤にしてヤコブは平伏す


「へへっー私が間違ってました。どうかお許しを」

「よい、許す。其方はすでに我の右腕じゃ」

「だか更に高みを目指して欲しいから叱咤したのじゃ

見込みのない人間には言わぬ」


「まあ、とにかく話を戻すぞ」

「はっ」


「そもそもその役人とやらに側室の子が家督を得て

なんの得がある?」


「さて、それは・・・」

「人の心が読めるのだろう?読んでみよ」

「ご隠居様お許しを・・わかりません」


「その役人は権力があっても身分が低いか

自分の子を高貴な身分にさせたいかの二つだろう」


「なるほど・・」

「えっ自分の子ですか?」

「アスタージナスやウラアールなら側室と役人と言うだけで

全てを理解するだろう」


「そ、それは神の子ですから・・・」

「我の子だ」


「自分の子でなければ誰が手など貸すものか

事が露見すれば今まで築き上げた権力が全て吹き飛ぶのだ」

DNA鑑定などない世界だいくらでもでっち上げ可能だろう


「とにかく根を断ち切らねば事件は解決しない」


「策はあるのでしょうか?」


「其方はS級兵士なのだろう。少しは自分で考えよ」

「ははっー」

「うーーん、うーーん」

「唸る患者は助からないと申すが?」とスタージナス

「ははは、それは言い得て妙ですね」大丈夫かよヤコブ君


「側室と役人の逢瀬の場を押さえるとか・・・」


「ふむ、それで?」


「役人の弱みか不正を暴くとか・・」


「多分その役人とやらは簡単に尻尾はつかませないだろうな」

「それと逢瀬の現場を押さえるのは野暮すぎる我はすかん」


「ご隠居様は他の手立てがあると?」

「うむ、まだ考え中だ」


「だが、その側室の子とやらの力量が見たい、それ次第だろう」

「と申しますと?」

「愚息なら廃嫡に追い込むことも可能だろう、だが」

「聡明だとしたら厄介だな」


夜になりヘッテが戻ってきた


館の見取り図、姫の幽閉場所、護衛の人数など全てが判明した

やはり側室と役人は出来ているらしい事

残念ながら次男は聡明な事


「ヘッテ大義であった。これで作戦が立てられる」

「ははっ」


「して、ヘッテ尋ねたき事がある」

「はっなんなりと」

「そちは我の心が読めるか?」

「は?」

「いや、よい」


一を聞いて十を知るウラアール

一を聞いて百を知るアスタージナス

確かに神の子かもしれん・・

我は部下の心を一でも知れてるだろうか・・・

ヤコブには言い過ぎた。ヤコブはよく働いてくれてる

我が王として失敗したのは部下の心に気づけなかったからじゃ・・


「イスハーク様、イスハーク様」

夜明け近く寝所で眠りについていた側室の子イスハークに誰かがささやく


我とてアスタージナス同様の透明人間魔法を使える

アスタージナスのとは魔法としての性質は違うが用法は同じだ。

正確にいえばフィフリンテーノの魔法と同じ様にゴーストを作り

思いのままに操作できる。今回は完全透明化したゴーストを

イスハークの寝所に忍び込ませて遠隔発声の術でゴーストを

通して会話してる。


「ん、誰じゃ」眠気眼で応じるイスハーク


「お静かに願います、私は遠い国から参りましたスタージナスと申します」

ふと辺りを見回すイスハークだが誰もいない、だが人の気配はする


「何用でしょう?」

「イスハーク様は聡明な君とお聞き及んでます、今から申します事を

黙って聞いて頂きたく」


「うむ、これだけの警備の中、我の命を狙う訳でも無く近づいて

きたからには、それなりの理由があるのだろう。申されよ」


「ご理解いただき感謝に堪えません」


「さて、イスハーク様はどこまで知られてますか?」

とお家騒動のあらましをかいつまんで説明するスタージナス


「ま、まさかそのようなことが・・」

イスハークは12歳、物事の分別がつく年齢だ


「我が父上の庶子ではないことに薄々気がついていた・・・

髪の色も瞳も父上とは異質、母上とも違う。我は誰の子なのだ?」


「それは今イスハーク様が知る必要はありません悲劇が起きます」

「政治か?」

「お察しください」

「して、我はなにをすればよい?」

「今は姫を救うことが一番大事です。その後是非協力賜りたく」

「申して下さい」


ヒソヒソヒソ・・・・





今回は時間が限られてるのんびりしてる暇はない

「今夜決行する」


「はっ」ヤコブ、ヘッテ


一台の荷馬車がサウジアラビフ最大の港湾都市リビトをカッポカッポ

たいそう大きな館に面する石畳の道で停車した。


御者はヤコブここで待機

スタージナスとヘッテは正面の門から堂々と館に入っていく


「まてぃ」と門番⒉人がが槍を交差させて行く手を阻む

「コテ」固まって小さくなった

なに食わぬ顔で固まった2体をヘッテが荷馬車に放り込む


範囲限定結界解除魔石を胸にさげてるスタージナスとヘッテは

館に侵入していく。


ほとんどの護衛兵、給仕、メイドは寝静まっているが

不寝番が数名警備していた。が、アッサリと固められてしまった

つつつつと迷い無く真っ暗の館内を進み

豪華な作りのダーリャ姫が眠る部屋へ入る


起こして事情を説明する暇などない。スっと固まってもらう

スタージナス得意の「氷結、縮小化魔法」だ

今回は絶対に犠牲者を出せない隠密作戦


門から堂々と出た二人、荷馬車にダーリャ姫を入れて

門兵2人を門に戻し中の護衛兵共々数分後に解除する仕組みになっている

多分誰一人として姫が救助されたことに起床時間まで気がつかぬ筈だ

気がついたとしても「神隠し」としか思えない筈だ


船には持ち帰れないので予め手配していた宿に運び

魔法を解除し事情を説明する。


「身の危険は感じていました。お助け頂き感謝いたします」

ダーリャ(14)聡明で美しい姫だった。慌てず騒がない

お姫様教育がしっかりしてるのだろう・・我がアスタージナスには及ばんが


「さて、今後ですが・・」

「そうですね、今家に帰っても私の身の置き所はないですね」

「ご安心下さい。今私の配下が動いています

いましばらくここで待機していただき、時が来たら動いて頂きます」


「万事お任せいたします。それにスタージナス様みたいな素敵な紳士

となら例え騙されてても私は本望です・・・」


我の娘よりも年下なのに一体何を言っている???

我はやはり人の心が読めぬのか??


「ご隠居様全ての準備が整いました」とヘッテ


「それでは参りましょうダーリャ姫」

すっとエスコートするスタージナス。所作が王家、家筋は隠しようがない


行き先は王宮、王様にお目通りが叶ったのだ

つまり高貴な身分の依頼主とは王その者って事


「そこの旅商人、苦しゅうない面をあげぇ」


「はは、お目通りかない恐悦至極にございます」

「さて、其方この度わが娘ダーリャの救出、大義であった」

「褒美をつかわそう・・」


「恐れ入りますがその前に申し上げたき事が・・」

「申して見よ」とアラビブ王


「アラビブ王国での王位継承問題についてですが」


側にいたヒシャーム大臣がさえぎる

「これ、そのような事旅商人が話せる事ではない

控えよ。」


「よい、申して見よ」


「は、恐れながら・・・」


「イスハーク様におかれましてはすでに神殿入りを御決意され

王位継承を放棄されています」


「なっなに・・」周囲がドッとざわめく

「騒ぐでない!」とアラビブ王


「その話はすでにイスハーク本人からの申し出で余が認めた事よ」

「なっなぜですか?」といぶかるヒシャーム


「なぜじゃと??」

「まあ、それは後の話じゃ」


「はあ?」


「その前に大事な話がある、皆心して聞け」

「ははっー」


「実は先日隣接する大アスタージナス王国より我が国にとって

有意義な提案がなされたのだ」

「提案とは?」何も知らされていないヒシャーム


「我が国に運河なる物を通しアスタージナス内海と我がアラビブ海とを

繋げるという壮大な話じゃ」


「これが実現出来たらいままでアタリカ大陸廻りを強いられてきた

海上貿易の利便性が飛躍的に高まる。物資の値が下がり

我が国にとって大利益をもたらすのじゃ」


「更に大アスタージナス国王は我が国が大量に埋蔵してるとかの

石油なるものの発見、精製、出荷の全てを無償提供してくれる

との提案があった」


「知ってのとおり我が国は海上貿易にて港湾都市のリビトだけは

活況を呈してるが残念ながら他の地域に富は及んでない民はまだまだ

窮してるのが現状である」


「王様、お待ち下さいそのような重大な提案は私以下

担当大臣に話を通し事前協議が必要でございます」


「残念だが今回は其方を通せない」


「な、なにゆえ・・」


「其方は今回の王位継承に深く干渉し、こともあろうか己の子を

わが王子と偽り王家を乗っ取る計画をたてたからだ・・・」


「あわれ王子は全てを察し政治の表舞台から自ら去ってくれた」


「なっなにを申されますか、なんの証拠があって・・・」


「全ては我が側室ナジャーフが自白してくれた」

「それにそこに控える旅商人とやらの密偵による其方の不正経理が

山ほど提出されてる。そして其方の数々のでっち上げ事案もじゃ」


「今回もありもしない事件をでっち上げ王女をかくまうとかで

幽閉し亡き者にしようとした件、全ての証拠をつかんでおる」


「それに今回の王女救出依頼についても護衛兵などに犠牲が出た場合

正室を糾弾すべき工作も行っていたことも露見してる」

「もともと其方が王女救出を怪しげな輩に依頼し事を荒立て

正室を追い込む手はずだったのであろう?」


「なにを申されてるのか分かりません」


「全てそこにいる旅商人からの提言によってじゃ」


「な、な・・そのような胡散臭い旅商人と私、どちらを信じるのですか?」


「もちろん、旅商人に決まっておろう」

「は?????」

「ここまで言ってまだ分からんとは其方パァーなのか?」


「まったく理解出来ません」とヒシャーム


「そちらに控えてるお方は前アスタージナス王その者だからだ」


「えっえ・・」目がクルクルまわるヒシャーム


「全てを話さないと理解出来ないようだから教えよう」


「全ては大アスタージナス国の意思なのだ」

「我が国と取引するにあたりウミを出せとの意思なのだ」

「余はいままで全て其方に頼り切っていた。まさか裏切られてるとは

痛恨の極みよ」


うーんこれって我と全く同じケースだ・・・我はバカ殿だったのか


「スタージナス様は先遣大使としての身分を隠し其方達に接近し

悪事を明らかにしたうえで排除させ我が国と正々堂々と取引する

策だったのだ。故にお前はパァーだと申したのだ、分かったか!」


「恐れいりました・・」と全てを観念し平伏するヒシャーム


「追って沙汰有るまで謹慎せい」


江戸時代なら切腹せよとの命令だ。この世界でも自決しろと言うことだろう


「この度は誠にお世話になりました。王女救出の恩、そして我が国を

救っていただいた恩。決して忘れませぬ」


「うむ、これでこの件は一件落着だな」


どうも我が勝手に依頼を受けた事なのにまたしてもアスタージナスの

手の平然だった事が腑に落ちないが、それで納得してくれるのなら

それもいいだろう。真実を知る必要は無い。


これで用は済んだと立ち去ろうとしたとき


王座のすぐ隣に控えていたダーリャ王女がスカートの裾を両手で持ち上げ

猛然とダッシュしてくる・・


「ガバっ」抱きつかれおいおい泣かれる・・・な、なにごと


「ダーリャはスタージナス様をお慕いしてます。どうかお情けを・・」

な、なんだお情けって?????


「ダーリャはスタージナス様の正室か側室、それもだめなら愛人に

なりたいと所望してるのです」アラビブ王


「ば、ばかを申されるな我はダーリャ様より年上の娘がいるのですぞ」


「歳なんて関係ありません、我が国では女から求婚が許されてるのです」

「いや、いくらなんでも出会って1日も経ってないのに」

「時間は関係ありません私は決めました」

「我が国の女性は情が厚くての・・・一度決めたら絶対に譲らんのだよ」

とアラビブ王は諦め顔で語る・・


「しかし王位継承をいま決めたばかりですが・・」

「あー、それは問題無い。余には王子、王女がまだいくらでみいるのでな」


「しかし我は放浪の旅の途中、聞こえはいいが無頼の徒ですぞ」

「何を仰いますか・・各地に先遣大使として赴き大役を果たしてる

風にしか見えませぬ」


これはいかん!大誤解である・・・

しかし、今何を言っても信じてはもらえそうにない・・・しかし困った


「私はどこまでもスタージナス様について行きます」と抱きついて離れない

「しかし、我はこれからどこに旅するのか予定も無いのだぞ」

「素晴らしいです。絶対に一緒に行きます。駄目ならこの場で自決します」

なんと物騒な・・しかし目が目が・・恐ろしい、こはい、逃げたい


「もう諦められよ。」アラビフ王はすでに公認状態


やむをえん・・まあしばらく厳しい船旅を経験すればすぐに

国にかえりたくなるだろう。しかたがない


「そこまで覚悟があるのなら付いて参れ」

「ただし、其方は未成年船内にも教師役はいるのでしっかり勉強はしてもらう」

「正室も側室も、愛人も不要だ。それでよければ」

「はい、よろこんで」

「それでは父上、母上、これよりダーリャは旅立ちます今生の別れです」

なんて娘だ・・・


王家から過分すぎる褒美を賜り船に戻る4人、つかダーリャいい加減に

抱きつくのはやめなさい!


ヘッテはまたまた風呂敷包みに金貨をギッシリつめヨタヨタと歩く

「ご隠居様、これでは物騒すぎます」

「あと少しで船じゃガンバレ」


船に戻るともうクタクタに遊び疲れた皆が風呂敷包みとダーリャにビックリ

わいわいとはやし立てる、まったく迷惑な話よ

しかも何を思ってるのかこの娘。服一つ持ってきてない生活どうすのだ?


さて騒ぐのはここまで


「出かけるぞ・・最後の後始末じゃ」

「はっ」とヤコブ、ヘッテ

付いてこようとするダーリャを無理矢理残して3人は最初に行った店に行く


「ギイイイ」扉を開けるとあの無精ヒゲの店主がそこにいた

「いらっしゃい、あ」

「依頼は完了した報酬を受け取りに来た」


「顛末は聞きました。お世話になりました」


と残りの金貨3000枚を用意し出す

「これは私の個人的なお礼です」とさらに500枚上積みしてくれた

どうやらこの店主は悪に加担はしてないようだ。生きてるのが証。


「ぐっ」またしてもヘッテがヨロヨロと風呂敷を背負って歩く

店をでて狭い路地をクネクネすると・・・「来たか」


今度は本当の悪党10人に取り囲まれた。ナイフではない剣や槍

フルプレート装備、これは野盗ではない兵士、剣士の類だろう

さしずめヒシャーム子飼いの残党というところか


「我らは全てを失った。明日から職探しよ、その前にお前達は

死んでもらう」


「大人しく職探してれば明日も生きていられたのになぁ」

「ほざけ、我らは王国内でも名をはせた一流の剣士、誰にも遅れはとらん」

「悪党の片棒をかつぐ一流剣士とは片腹痛いな」


「なにー、もはや問答無用覚悟しろ」

10人が一斉に斬りかかる


「ビシ、バシ、」目にも止まらぬ剣技でヤコブとヘッテの剣が冴える

一撃二殺とはこのこと無駄のない隙の無い剣技は美しくもある

あまりにも剣速が鋭すぎて残像すら見えない・・オズ○の消えるスイング並

さすがは我が厳選した護衛兵、誰にも遅れはとらない。


あっという間に7人の胴と首が離れた骸が転がる

一流剣士を名乗る残りの3人はあまりにもの実力差に戦意喪失

「あわわわ」と逃げ出す・・


「生かしても世の為にならん成敗!」と我が言うと


「シュパ」とそっ首を飛ばすヤコブとヘッテ


わずか1~2分の斬劇


「ご苦労、これでこの町でするべき事は全て終わった船に帰ろう」

「はっ」息一つ乱さない2人に我は改めて感謝した。


船に戻るとなせか女が4人いた???しかも荷物半端ない

「スタージナス様、私の側仕え3人これからは一蓮托生です

どうかよろしくお願いしますね」


「どの子でもお気に召せばスタージナス様のご自由に」


ぎゃあ、1人でも難儀してるのに4人か

しかも皆歳端もいかない小娘ばかりふざけるでない。

というか50人も荒くれ男がいる船内で

こんな小娘がいたらなにが起きるかわからん責任もてん


「ダーリャ1人なら乗船をみとめるが他は絶対に許可しない」

「そうですか・・それはざんねん。皆自決させます・・・」

「こらこらこら、まて、まてい。そんな物騒なこと言うでない」


「我が国では自分の決意が通らなければ自決するしかないのです」

なんちゅう教育だ!


「この者たちは私が4歳の時からずっと一緒なのです。孤児院育ちで

身寄りがありません。側仕えしか生きる術を知りません

どうかお情けを・・・」


押しかけ女房が4人かよ・・

アスタージナスとウラアールが聞いたらなんと申すか


「し、しかしだな我が船には男ばかり50人其方達の操が心配で」

「大丈夫ですスタージナス様以外の殿方か近づけばいつでも舌を切ります」

それしかないのか?つまり何時でも決死の覚悟と言う訳か・・


とにかく無事アラビブ国最大の港湾都市リビトを出港した

多分二度と戻らないであろう・・・本当にいいのか4人!


出港の前に実は船内を改造した

女人禁制のはずの船に4人も乗り込むのだ女性専用の設備

改築が必要になった。部屋も増やさねばならんし

幸いというか費用は今回稼いだ7000枚の金貨で十分まかなえた


我ら3人が命がけで働いてきたのに他の者は遊興三昧の1週間

金貨150枚もつけを寄越しおって。本当に不謹慎な奴らだ

まあ、今回は余計な4人が増えてしまったが路銀が心配だったので

ちょうどいい稼ぎになった。当分仕送り要求はいらないだろう


旅日記の3ページ目が埋まった


まさかのハーレム展開?

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