イングリントにて
新章スタートです
我は元アスタージナス国王
今はスタージナスと名乗る事にした
国王を辞し自由の身となった我だが長年の夢であった
世界各地の見聞の旅。予定も目的地も期間もなし
現王から賜った支度金を元に放浪の旅に出たのである
内海を西から出るとそこは外海、今まで経験したことのない
荒海だった。与えられた船は諸外国との衝突や摩擦を防ぐ意味で
ごく普通の商船。とはいっても我が娘クリスティーナは
「ぎみっく」なる仕組みをあちこちに施してくれたそうだ
驚いたのは風が無くても「すくりゅー」なる不思議な羽で
船を進ませる事が出来る事。これはありがたい
魔石に魔力を込め直すだけで何時までも動いてくれる。
まず最初に向かったのが「イングリント」大陸と離れた島国
海上貿易が盛んな国なので容易に入港を許してもらえた
もちろん「お忍び」ご老公一同だとは誰も知らない。
ところが入港してすぐに異変に気がついた
「活気がない」
不思議に思い酒所で町民に尋ねてみる
「これこれ・・あ、いや其方・・いやいや、其元達・・」
「なんだぁ?変なオヤジだなぁ・・用件はなんだ?」
ほろ酔いの一見常連客風の町人が問いかけに応じてくれた
「あ、いや、なんだ我は他所の国から来た貿易商だが」
商う商品は一応「洋服生地」まあ、ちりめん問屋ってところか
自慢ではないが我は今まで商売なぞしたことがない
今後は覚えていく予定だ仕送りだけではみっともないからな
「ふーん、そうかい。で?」
「ここはイングリントの玄関口として海上貿易で栄えてると
聞いたのだが?なんか閑散としてる様に見えるが」
「ああ、それね、実は大陸フランク国との貿易が途絶えたからだ」
イングリントとフランクは海上貿易を通じて密接な関係だったとか
「なんで途絶えたのだ?」
「さあてねぇ、とんとわからねえ。一方的に途絶えたんだ」
話を聞くと最近突然フランク国からの貿易船が途絶えてしまい
こちらからの商船が帰ってこなくなったそうだ。
「最近ゲルマニアがフランクを征服したとか。それきり貿易が
途絶えてしまったんだよ。多くの人間が捕らえられたとか」
「なるほど、でもそれではイングリントは困るのだろう?」
「ああ、大弱りのこんこんちきだ」
どうやら大穀倉地帯のフランクから貿易が途絶えると
食糧事情の乏しいイングリントは死活問題らしい。
「今我が国王が取引相手がいないか奔走してるらしいよ」
「で、尋ねるがイングリントにはなにか特産はあるのか?」
「ああ、ウチの国は大陸以外の最果ての地との貿易もある
貴重な香辛料とか大陸で作れない穀物、絹製品などを仕入れて卸してる」
「商船の保有量でウチにかなう国はないからな」
「あとは鉄鉱石とかかな」
「最近アスタージナス国とやらでカレーなる物が流行してると
聞いたが香辛料とか米とかはほとんどウチの商船からの
取引だと聞いてるよ」
どうやらイングリントは我が国の益になってるようだ・・
「なによりも困ってるのが大豆と小麦が不足しはじめた事さ」
「小麦がないと今飲んでるエールもつくれねえ・・」
「庶民のささやかな楽しみも風前の灯火ってやつさ」
「我はアスタージナスの商人、我が国王に其方達の窮状を進言してみよう」
「けっ、一介の旅商人風情がアスタージナス王に進言だと?
頭おかしいのかよ」
「いやいや、我はアスタージナス王とは昵懇の間柄進言位は出来る」
「そうかい、期待しないで待ってるよ。まあ飲めや」
まさか現王が実の娘だとは言えぬからな・・・ふふふ
「さて、と」
ほろ酔い加減のスタージナスは宿に戻り有ることを試してみる
「アスタージナス!聞こえるか?」
「えっその声はまさか父上?」
「おおっやっぱり我が思念が届く様になったようだな」
「はい、父上よく聞こえてます・・ですが」
「思念通話は私とウラアールでしか出来なかったのですが」
「うむ、実はな、レベルが100以上に達すると思念通信が
誰にでも出来る様になるのだ」
「とはいっても通信出来たのは初めてじゃがな」
「なるほど、そうなんですね。でなにかご用件でしょうか?」
「父に向かってなんのご用件でしょうかとは随分だのう・・」
「久々に声を交わすのだ、懐かしいとかなんとかないのか?」
「父上が旅に出てまだ3日ですけど・・」
「まあ、固いことを申すな。3日でも久しいということにしておけ」
「まあ、それは置いておいて、話とは・・」とスタージナスは続ける
「かくかくしかじかなのじゃ、なんとかならんか?」
「父上は旅に出てなにしてるんですか?世直しご老公とかですか?」
「なんじゃご老公って?まあいい、とにかく民が困窮してるのじゃ」
「印籠でも見せて控えさせればいいのです・・・」
「は?」
「あ、それは冗談ですが、現状アスタージナス他同盟国の全てが
大豆には窮しています。どうやらフランク国周辺でしか取れないそうです」
「でも小麦ならアタリアとシグナスで十分取れてますので手配しましょう」
「外海はかなり波が高いが大丈夫か?」
「はい、最近就航した輸送船があれば問題ありません」
「ただし・・・根回しが必要かと・・」
「うむ、まかせておけ。我とイングリント王とは多少面識がある」
実は我の結婚式の際に遠方からわざわざ出席してくれたので
イングリント王の婚礼の際に我も出席したのだ
歳も近くなにかと気があって国策についてよく話したものよ
今回放浪の旅においてなによりもイングリント王に
会いたくなったので旅の最初に寄港したのじゃ。
と思いにふけっていたら
「それでは手土産としてスクリューの技術供与をお願いします」
なにかアスタージナスにも感じる所があったのだろう
「おう、あれは素晴らしいな。分かった」
「設計図を今度の輸送船で運ばせます」
「頼む」
スクリューを教えればイングリントは益々貿易が盛んになるだろう
それは回り回って我が国も豊かにしてくれる。
翌日スタージナスは交易都市「エール」市長との面会を求めた
そうかエールという酒はここが発祥なのだな・・
「受付」にいくと行列が出来ていた
どうやら陳情申し込みがひっきりなしの様だ皆困窮してるのだろう
しかし、受付とやらの態度が横柄で鼻持ちならん!
えらそうにふんぞり返って権威を振りかざしている。
よく観察してると「袖に何かを入れろ」と催促してる、けしからん
ようやく順番が回ってきた・・・
「で、用件はなんだ商人!」
「は、市長に取り次ぎ願いたく・・・」と一応かしこまってみる
「市長だと?ならん市長はお忙しいのだ面会をもとめるのなら・・」
わかっておろう?と我を見る
「こやつ、即死魔法でも掛けてやるか・・」と思ったが止めておく
すっと胸元から印籠を・・・じゃなくて王家の紋章入り魔石を見せる
王家の紋章入り魔石は王家の証。ただものではない証
「ええい、頭が高い!控えおろう!この紋章が目に入らぬか!」
などとは一切言って無いが厳しい目線を受付風情に送る
「こっここここ・・」おまえはニワトリか!
「へへっーー」と土下座する受付風情
「さきほどから面白い事をしておったな?」
「へへっーなにとぞお目こぼしを・・」
平伏す受付(下級貴族)に周囲は驚きを隠せない「この商人何物?」
「まあ、それは良い。とにかく市長に取り次ぎせい」
「ははーっすぐに」立ち上がって駆けて行く受付風情
すぐに「こちらに・・」と市長室に案内される
「これは前アスタージナス王、ようこそおいで下さいました」
さすがに我の顔を知ってるようだ
「うむ、だが我はすでに隠居の身、今回はお忍びだ」
「大アスタージナス国の元王様がお忍びですか?」と市長
「うむ、ま、それはどうでも良いこと。用件があって参った」
「ははっなんなりと」
「実はここで民の話を聞く所によるとフランク国からの貿易が途絶えて
大変困窮してるとのこと・・」
「ははっ恥ずかしながらその通りでございます」
「それでじゃ、かくかくしかじかなんだがどうじゃ?」
「ははっーそれは願ってもないお申し出ですが
我がイングリント国王にお伺いを立ててみないと・・・」
「当然である。すぐに話を通せ」
「ははっ一両日までになんとか」
「うむ、こころよい返事を期待しておる。それまでは滞在しておる」
「まさか元王が市井の宿などに・・いけませんすぐに準備します」
「お忍びと言っただろう?これで良いのだ。民の意見を聞く
絶好の機会じゃ」
「それでは早速イングリント王に・・」と市長は席を立った
うむ、市長は実直のようだ。少し安心した
再び地元の飲み屋に赴き市井に紛れるスタージナス近況を探る
「なんでもゲルマニアの軍門に降ると皆殺しらしいぞ」
「魔物兵に食われてしまうとか」
「フランクも今は人っ子ひとりいないらしい」
「結界も反逆防止も効かないらしい。恐ろしい相手だそうだ」
「大丈夫さ、反対勢力のアスタージナス大王は慈悲深く平和を
愛する王と聞いた。なんとかしてくれるって」
「だが、我が国はどちらつかずの状態だろう?どうなってしまうのか」
「なんとかアスタージナス陣営に味方できないものだろうか・・」
「こんな時勢だから使者を立てる訳にもいかないしなぁ」
「なんでもゲルマニアからの嫌がらせでクラーケンが出没し
商船が襲われてるらしいし」
む、海獣はこちらにも出現しておったか・・・
ダンボの耳状態のスタージナスは更に聞き耳をたてる・・
「通商が途絶えたらゲルマニアに下らなくてもみんな飢え死にだ」
「わが海軍はどうしてるのだ?」
「当然クラーケン退治を行ってるがあまりにも海は広い」
「それにクラーケン退治の大魔法を使えるのが国王しかいない」
「いままではフランクと合同で討伐隊を派遣してたのだが・・」
翌日スタージナスは再び思念通信でアスタージナスと会話した
「イングリント王との面会はあと数日かかるが小麦などの緊急支援
物資を先行して発送して欲しい。」
「わかりました」
「あと、輸送船の他に護衛船も派遣して欲しいのじゃ」
「海軍力が必要なのですか?」
「うむ、こちらにもクラーケンが出没して通商破壊してるのだ」
「お言葉ですが護衛艦に搭載してるクラーケン退治の武器は
とても高価で我が国の防衛目的以外には使えません」
「わかっておるが今はイングリントの民を救うのが急務じゃ
出来ない願いをしておるのだ。これは父として娘に対する命令じゃ」
「お父上は私以上に情にもろく慈悲深い方ですね」
「う、おほん!今はそんな無駄話はどうでもよい」
「はっ、ここで恩を売るのは将来への投資と言う事にしておきます」
「うむ、たのむ其方しか頼りになるものはいないのじゃ」
「いえいえ、工面するのはすべてウラアールですお礼はそちらに」
「うむ、ウラアールにも礼を述べておく」
「すべて了解しました」
2日後ようやくイングリント王との拝謁が叶った
国民救済の為奔走してるのだろう以前に会ったときと比べ
頬はげっそりとそげて目の下にクマが出来てる
王たるもの威厳が大事だというのになんじゃこの有様は・・
ってつい最近の我もそうであったな、人のことは言えんな
「アスタージナス王お久しゅうございます」とイングリント王
「いえいえ、今は隠居のみです国は娘に全て任せてます」
「アスタージナスに神降臨との噂です一度女王様にお会いしたいですな」
「はっこの戦が終わり平和が訪れれば行き来は簡単になるでしょう」
「早くそうなって欲しいものじゃ」とイングリント王
「市長からは聞いたがアスタージナス大王が我が国に援助して
いただけるとか?」
「は、左様にございます」
「やめてくださいスタージナス様、我らは友にしてそのように
へりくだって頂くのは不本意です」
「わかりました。それでは・・」
「イングリント!どうする?悪い話ではなかろう?」
「悪い話所か喉から手がでてる・・だが、本当に信じていいのか?」
「たったいま友だと話したばかりではないか。我を信じよ」
「これはしたり、それでは是非お願いすることとしよう」
「で?」とイングリント
「で?とは?」とスタージナス
「もちろん条件があるのだろう?言ってくれ。金か?物資か?」
「我が王が望む条件とはただ一つ」
「今度の大戦、必ずこちらからの反撃がある」
「ふむ」
「その際に呼応してフランク国を占領して欲しいのじゃ」
「更にそのまま入植して穀物生産を再開して欲しい」
「な、なんと!」
「しかし、フランクの民がそれを許す訳がなかろう?」
「原因は調査中だが今フランクに民はひとりとしていない」
「ゲルマニア恐るべし。一体かの国はなにが目的で侵略行為をするのか」
「とにかくゲルマニアに占領された国は全ての民が消滅してる」
「わかった、正しこちらにも条件が出来た」
「申されよ」
「今このときを持って我がイングリントは大アスタージナス国に下る
そして傘下として今後の戦に協力させて頂く」
「そんな大事なことを今決めていいのか?」
「余と其方が友達ならば両国は運命共同体じゃ善は急げと申すからな」
「其方は大アスタージナス王国からの先遣使者なのだろ?」
「あ、いや、まあ、あーーーそんなところだ」
そんな気は全く無かったが言われてみればやってることは
先遣使者そのものだな・・
「少し時間をくれ、いま我が方でも協議する」
「は?」
「・・・・・・・・・・」
「返事が来た、大旨了解だそうだ」
「えっまさか思念通信が出来るのか???」
「余が知る限りでは思念通信が可能な者は過去にはいたが
今は聞いたことが無い。さすがは大アスタージナス王国だな」
「実はな、面会に時間が掛かってる内に我が方の支援物資は
エールに到着してるぞ」
「なんと手回しのいいことだ」とイングリントは目をグルグル
「して、これは新たなる船の推進方法を記した設計図じゃ」
「な、なんと・・」目をグルグルどころか目が潤み出す
「これからの両国との友好関係を示す証だよ」
「ありがたいことです」
「更にだが・・・」とスタージナスは続ける
「輸送船が移動中にな複数のクラーケンに襲われたのだが」
「な、なんとそれは一大事。大被害だったのでは?」
「いや、我が軍の護衛艦がクラーケン12匹を退治したようだ」
その場で腰を抜かすイングリント。本当にひっくり返ってる
「だが、クラーケン退治の武器とやらはとても高価な代物
12匹も退治したらどれほどの費用がかかっったのやら」
「それも友好の手土産という事にしておいてくれ」
「さらに護衛艦はイングリント周辺の海域を警備中だ
我が輸送船が帰港するまでささやかながらご助力いたす」
「とっとんでもない事です・・この恩は必ず」
「お互いにへりくだらない約束だろ?かしこまるでない」
その時伝令からの報告がイングリント王に知らされる
「な、なんと・・・」
「アスタージナスの輸送船なるものの大きさが途方もないと
報告が来た、我が国の商業船の100倍以上の積荷量だったとか
しかも3隻も来たとか・・・受け入れの文官が腰抜かしたとか」
なにしろウチの輸送船5万トン級だからね
アスタージナスめ、また見栄を張り3隻も寄越したか・・
「なに我が国にとってはとるにたりない物資だから遠慮するな」
ウラアールのうめきが聞こえてえくるようだ・・ふふふ
腰を抜かしていたイングリント王が今度は土下座に変わる
「このご恩は決して忘れない。これで民は救われる」
「ささ、イングリント王、顔を上げてくれ我らは対等なのだ」
「いえ、さっきも申し上げた通り我が国はすでに傘下に下りました
これからはなんなりと命令してください。」
「最初に申したとおり我が王の条件はフランク国の占領と入植だけだ」
「ははっお任せ下さい」
輸送船からもちこまれた公式宣誓書に調印しイングリントの
アスタージナス傘下決定が正式に発効した。
こうしてイングリントは救われ周辺のクラーケンは討伐され
海運業が保たれた。
ちなみに正式にイングリントとアスタージナスとの貿易協定が結ばれ
定期便が就航する運びとなった。
イングリントの特産品が満載された物資が届き同盟国はますます
経済発展した。なによりもカレーライスの値段が下がった。
なにかと接待を受けそろそろおいとましようと考えていたら
アスタージナスから思念通信が届く
「父上いよいよ明日から大反抗が始まりますイングリントに
呼応を頼みます」
「あ、そうだ、それのために我は滞在していたのだったな」
「もう、父上、国の将来が掛かってるのです。頼みますよ」
父に対してなんたる言いぐさ!とは思ったが黙っておこう
「あの、思念通信なんですから聞こえてますけど・・」
「ごほん、いまのは聞かなかった事にしておけ」
「とにかくイングリント側の準備は万全に整っておる
わが輸送船も一度積荷を積んで帰港したがまたこちらに来ておるので
人員輸送につかうつもりじゃ」
「よろしくお願いします」
かくして我も参加してフランク国占領軍は総勢2万の軍勢で
フランク国に上陸した・・・だが、敵の抵抗が一切無い
数人の召喚人間が自爆攻撃を仕掛けてきたが我が軍の精鋭S級兵士が
即座にに布団拘束術を施しほぼ損害なしでしのいだ。
軍勢とは言ってもそのまま入植するのが目的なのであらゆる職種の
民達が参加した。
驚いたことに本当に誰ひとりもいない。町にも農村にも・・・
ただ収穫を終えた穀物が大量に倉庫から発見された、手つかずで
気味のいいものではないが当面の住宅はそのまま拝借することにした
軍勢は全員が男だけなので輸送船を往復して穀物を運び帰り船で
家族を呼んだ。祖国を離れ入植を志願した民百姓だけなので
すでにフランクに骨を埋める覚悟は出来ている。
その数日後にゲルマニアは陥落した。詳細はわからないが
とにかく戦があっけなく終了した。皆は歓喜にむせぶ
フランク再出発に力を貸していた我もほっと胸をなでおろす
「この地での我の仕事は終わった」もうイングリントは大丈夫だろう
最後にエールに立ち寄り市井のみんなと勝利の美酒によった
「まさかあのときの商人が本当にアスタージナス王に進言してくれたとは」
「な、われが言った通りだろ」ご満悦のスタージナス
そこに・・・
なんとお忍び返し。イングリント王が似合わない平民服で乱入してきた
「へへへっー」と全員が平伏す
「よい、今日はお忍びである。皆の衆顔を上げてくれ今日は余のおごりじゃ」
「うわーー、なんて話が分かる王様だぁ」と皆歓喜をあげる
「スタージナス様是非王宮に来て欲しかったのですが・・」
「なんども申しておろう?我はお忍びだ」
「我は民が好きなのだ、もう王様の仕事はこりごりなのだよ」
「余もそれが出来ればどんなに幸せか・・・」とイングリント
「其方はこれからだ。我がアスタージナスを支えてもらわないとな」
「はっ肝に銘じて」
「これでお別れでしょうか?」
「我は放浪の旅の最中なのだ、それに長居しすぎた」
「は、それでは引き留めはしませんが何かあった際には
必ずお立ち寄り下さい。約束ですぞ」
「うむ、その時は頼りにするよ」
万感迫る思いで2人の友情は固く結ばれた
こうして我が旅日記の最初のページが埋まった。
イングリントは救われました




