終焉・・
時は起ち
あれから二年、クリスティーナ覚醒まであと三年
ダクーミの専横はとどまることを知らず。現王はもはやお飾り状態
国政の全てをダクーミが牛耳る。事実上ダクーミ王なのだが・・・
「主、吉報です、国勢調査の結果、我が国の総人口は⒉千万を切りました
2年前の調査時から比べると半減したということ、貧困による淘汰です」
ヴァイス
おびただしい「死亡届け、死亡報告書」がダクーミの前に山積みされている
「うむ、人類抹殺計画は順調のようじゃ、あと少しでバカ王の首がとれる」
「こうなった原因は現王にあると全部なすりつけるのですね」ヴァイス
「うむ、動かぬ証拠とやら、ありとあらゆる方向からでっち上げ済じゃ」
ダクーミ
「無から創造するダクーミ様、さすがです・・」
「悪巧みも一種の芸術なのだよ。全ての辻褄が合わないと民は信じぬからな」
「期は熟したとみるべきです」ヴァイス
「うむ、この最悪の国状により王排除運動を仕掛ける絶好の機会到来じゃ」
「それにな、ついに世紀末兵器を我が手にいれたのじゃよ」ダクーミ
「はは、かねてから某国より交渉を重ねた超魔石入手ですね」ヴァイス
「そなたのお陰じゃ、長きにわたり某国との交渉大義である」
「恐れ多きお言葉、いよいよ17代アスタージナス王誕生でございますな」
「これで、天上天下唯我独尊とも言われるドラゴンを手に入れられた」
「ふへへへ、しかもこのドラゴンは我の意のまま操れる召喚魔物」
「ダクーミ様究極の研究成果でございますな」
「うむ、これでなにがあっても余は無敵じゃ」ダクーミ
「ま、事実上すでに余は国王同然だからな、既成事実の上書き程度の事」
「御意」
「王位継承は本人の意思かもしくは王族全ての承認が必要、王が急逝することも
あるからな、当然のしきたりといえる。」
「ですが、王とそのお妃様しか所在がわからぬ現状、如何にして移譲
させるのですか?」
「そこでだ、民草を利用するのじゃ」
「今までの失政を白日の下にさらし国民の反感を得て王をつるし上げる」
「しかし、王が処刑されてしまったら誰が王位敬承を認めるのでしょう」
「だから、お妃、フロレッツェア様のおでましと言う事だ」
「成る程、それゆえ時間を掛けて籠絡した・・」
「ふはははは、フロレッツェアは我の洗脳魔法によりすでに自我などない
我の思うがままよ」ダクーミ
「ですがそれでは不自然さが露呈しませぬか?」
「ばかもの、世間にフロレッツェアは我の物ですなんて言えるか!それこそ
姦通罪でこちらの首が飛ぶわ」
「表向きは現王の忠実なお妃を務めさせて悪事暴露後に悲劇の主人公に
なってもらう筋書きなのだ」
「つまり失意の中でもお国の為に誠心誠意働くという筋書きですね」
「うむ、泣く泣く余に王位を継承させるという段取りでなければ世間は納得
しない」ダクーミ
「余は当初固辞するも国の為に身を粉にして働く為了承という設定なのだ」
「嘘八百のでっち上げで現王は納得するのでしょうか?」
「納得するもしないも、国民に処刑されてしまえば死人に口なしだ」
「し、しかしダクーミ様は現王は影武者だと看破されてるのでは?」
「影武者だろうがなんだろうが公の場で処刑されればそれが事実となる
後から実は私が王様ですなんて名乗り出れるわけが無い」
「な、なるほど・・・無理を通せば道理が引っ込む」
「おもしろいだろ?余を謀ってるつもりがウソでも真実に入れ替わるのじゃ」
「オオオオオ」地鳴りにも似た国民の怒りが王宮外でこだまし始める
「なにごと」王の間で眠るアスタージナス16世が護衛兵に尋ねる
「王様、大変でございます、暴徒が王都全体を包み込んでしまいました」
「な、なんと・・・」
「暴徒というよりも国民全員が怒りに震えてまする」従者
「なんとか怒りを静めることは出来ぬか?そうじゃダクーミを呼べ!」
「ははっ」
「王様、なにごとでしょう」ダクーミが来た
「お、おう、民が暴徒化してしまった様じゃなんとかこの事態を収めてくれ」
「は、容易い御用でございます。今から私が言う通りにしてください」
「う、うむ分かった」
「なによりも王様の威厳を誇示することが大事、今すぐ国民に姿を見せて下さい」
「し、しかし怒り狂う民にそれは逆効果では?」
「大丈夫でございます、異を唱える民衆には我の魔法で粛清いたします」
「手荒な事はいかん、返って民主を煽ってしまうぞ」
「いえ、王家に刃向かう輩は処罰が絶対、王の威厳を見せれば愚かな行為など
あっという間に沈静することでしょう」ダクーミ
「バカ王めそんな訳ないだろ、余はさらに民衆を煽るつもりなのだ」
内心で王を見下すダクーミ
アスタージナス王は惨めにもガクガク震え歩行もおぼつかない従者が両手を抱え
会場へと運ぶ、まるで死刑執行人のごとく・・・
「民衆のほとんどは余が洗脳魔法で操ってるのだ沈静など出来ぬぞ」
ふふふとほくそ笑むダクーミ
「バカ王め今日がこの世の見納めじゃ・・・っても召喚人間の影武者か
ま、どっちでも効果は同じだがな」勝利を確信するダクーミ
民衆の矢面に立つアスタージナス罵声の嵐で物が舞う・・高まる処刑ボルテージ
その刹那
クワッと目を見開いたアスタージナス16世、さっきまでとは別人28号
「皆の者良く聞け~!」一体どこからこのような腹に響く音が出せるのか
勿論「拡声魔法」なのだが
数万の暴徒達は王の一喝で「しーん」と静まりかえる
同時に「シュワー」得体の知れない液体が四方八方より暴徒に降り注ぐ
「ぎゃああああああ」
なにごと?
ダクーミが煽動用に集めた召喚人間が聖水の浄化能力によりドロドロに
溶けていく
さらに数万の一般民衆が突然「ボー」とつったつ
「お、おらは一体なにしてるんだ?」洗脳魔法が聖水により浄化解除された
「ギョ・・ばばかな」策士ダクーミが謀られた
「これは不味いです直ちに転移魔法でお逃げ下さい」ヴァイス
「ばかもの、ここまで余をだばった王が転移魔法など許してくれるはずがない
転移したらそこは無限牢獄間違いなしじゃ」意外と冷静なダクーミ
「ダクーミ諦めよ、全ての悪事は我が配下により露呈してる逃げ隠れできぬぞ」
「バカ王めお前の言う事など誰が聞く物か!」ついに本音を吐露するダクーミ
「沈着冷静な其方をそこまで追い込んでしまったと言う事か」アスタージナス
「お前を陥れる為なんでもした余をまだ庇うつもりか?」
アスタージナスの脳天気にあきれかえるダクーミ
「今なら全てを許す、今まで通り国の為働いてくれぬか?」
「お前の無限大脳天気にはもううんざりじゃ。ここで決着をつけるしか
道などない」自らを追い込むダクーミ
なぜか13人いたヴァイスが一人しかいない・・・後世を託したのやも
「ヴァイスの残党とやら聞け、ゲルマニアへ下るつもりならば無理じゃぞ」
「ふ、お前ごときに叶う相手ではないぞ、戯れ言をいうな!」ダクーミ
「いや、残念ながらお前らの蜂起を引き金にイングリントは大義名分を得て
すでにゲルマニア征伐に動きだした。魔物兵への対処方法は今みた通りじゃ」
「勿論イクジナスも同じ、アタリヤやコロッモ、コルト国が軍事侵攻を
開始してる。ものの数刻で決着するだろう」アスタージナス
「なぜじゃ、なぜお前は我らの弱点を知り尽くしてるのじゃ?」
「其方は信じてくれまいが、神のご加護をうけたからじゃ」
「ばかな、そのような世迷い言通じるとでも・・・」
「真にすまぬが其方のこの2年間十分に利用させてもらったのだ」
「ば、ばかな・・・余は踊らされていた?」
「更に付け加えるとお主の領、つまりダクーミ領にいるドラゴンとやらも
もうすぐクリスティーナ軍が成敗する段取りなのだ、勿論ウラアールも
イクジナス国境門を警戒してる、魔物兵が挙兵しても無駄なのだよ」
「其方達はどこでそのような悪巧みをしていたのだ?」
「悪巧みとは失礼な、正義の鉄槌の間違いだ」アスタージナス
「組織というのはな、其方みたいに独裁で動くものではない全員の行動力
あってこそ機能するのだ。思い知ったか!」アスタージナス
「く、黒幕がいるのだろう、白状しろ!一体誰だ」
「ウソ偽りなく神様のご加護だ、何度も言わすな」
「く、もはや是非も無いこれまでじゃ」剣を構えるダクーミ
「よせ、今のお前では余に勝てぬ」
「痴れ者、今まで兄者に遅れをとったことなど一度もない」
「わからぬのか?兄の慈悲と言う物が・・・」手加減していたのだろう
「ぐぐぐ、最後まで余をバカにするのか」雄叫びを上げて突進するダクーミ
「すまぬ、ダクーミ・・・・」目にもとまらぬ閃光
「ブシュウ・・・」ダクーミは操り人形の糸が切れたのごとく崩れ落ちた
実際、神のご加護という魔法を神様から授かっていたので王剣の冴えは
普段の3倍増し。
全てが終わった
史実より三年も前倒しながらダクーミは散った・・・これでいいのだろうか?




