光と影
トニー様、大アスタージナス国というのは大王地球のEUの前身だった筈です」
「うむ、正式な継承者である17代目アスタージナス王が我が国に亡命した」
「正式な継承者でございますか?」
「16代から17代への引き継ぎ時に不正があり我が王は暗殺されかけたのだ」
「で、17代を語る現アスタージナス王はニセモノだと?」
「うむ、ダクーミ様こそが正当な王であったはず」
「お労しい事にダクーミ様は暗殺されご遺体はいまでも敵の手にある」トニー
「では今は不在扱いなのですか?」
「うむ、実は我々の王は時間を操る事が可能なのだ。しかし出来るのは
実体のない精神のみ。なんとか実体を作り上げて暗殺前に時間を戻すべく工作を
しているところ」トニー
「ですが、そのような事をしたらタイムパラドックスが生じませんか?」
「当然である、しかし我々の研究ではタイムパラドックスが生じてもパラレルワールド
になるだけで矛盾点は全て解消されるのだ」トニー
「ですが・・・」カイト
「なにやらとんでもない事になってきましたね」ゴブヨ
「確かにこの国は狂っている・・・タイムパラドックスなどを発生させたら己の
存在すら不確かになってしまうのに」神
「助かる筈の者が死んで死ぬはずの者が生きるのですからね・・・・」
「だが分かったことがあるな」神
「はい、ダクーミ自身の企てではありませんね」ゴブヨ
「ダクーミ信者の誰かではあるな」神
「先代神はダクーミを巧みに誘導したと言ってましたが?」ゴブヨ
「其方がなぜそんな事を知っている?」神
「記憶操作をしたそうですが滋賀様の記憶を私が解読しました」ゴブヨ
「ば、ばかな・・・ありえない」神
「ふ、シンジ様から暗号解読器をお借りしたのです」ゴブヨ
「こ・・・これは、人間だと侮れんな」神
「シンジ様はちょぅと人間離れしてる部分有りますから」ゴブヨ
「シンジに関しては後回し、トニーの話だとこの国の王は「精神体」と」神
「分かりませんわ、タイムトラベルをする為精神を分離出来るのかも知れません」
ゴブヨ
「うむその可能性は否定しない、しかし生体アンドロイドをよりしろとしての
精神体と考えるのが一番納得が行きそうじゃ」神
「もしくは神様のように誰かに憑依して操ってるとか?」
「それは考えづらい、我と先代神は過去に遡り媒体を探したが現存するのは
滋賀しかいないと言う結論だ、勿論未来にも行って探した結果じゃ」
「滋賀様って・・・もはや神以上の存在なのですね」
「うむ、彼の能力は宇宙で随一と言っても差し支えがない」神
「それではどのような手段でよりしろを作り上げたのでしょうか?」ゴブヨ
「今はわからない・・シンジの様な天才が滋賀クラスの媒体を作り上げたのだろう」
「現世に存在しないということは未来に現れるのかも知れませんね」
「しかし、トニーの話からすると自らその可能性を破壊しようとしてる」神
「はい、ダクーミが生き残ったら・・・そこから発生するパラレルワールドにより
現アスタージナス王も存在しなくなり結果宇宙旅行など不可能かと」ゴブヨ
「その瞬間今現在いる我々は消滅しパラレルワールドに宇宙は移行してしまう
のかもしれん」神
「これは大変な事ですねなんとしても阻止しなければ」ゴブヨ
「厄介なのはきゃつらは万が一作戦が失敗したらビックバーンを発生させて
全宇宙をリセットするという暴挙に出かねないと言う事」神
「う・・それでは奴らの作戦が成功しても失敗しても宇宙は破滅?」ゴブヨ
「とんでもない事態ということだ、だが今はカイトの行動を見守るしかない」神
カイトがトニーに質問する
「精神体をどうやって実体化させるのでしょう?」カイト
「うむ、王の考えでは媒体が見つかれば憑依し意のままに操れるそうだ」トニー
「媒体ですか・・・」カイト
「つまり、いま王は媒体役を探してるのだ、分かるかその意味?」トニー
「候補生を探してると言う事ですね」
「そなたもその1人だよ」トニー
「し、しかし単に頭が良いからというだけではその役目は不可能かと」
「当然である、頭脳というのは天分は勿論必要だが鍛えることが可能
しかし媒体になるなんてことは本人の適性以外要素がない」トニー
「つまりコレが私の究極の課題でしょうか?」
「うむ、いま其方を含め15人の天才を集めた、時間は無制限じゃなんとしても
手がかりを見つけて欲しい、王命である」トニー
「質問です」カイト
「うむ、申してみよ」
「タイムトラベルが可能なのは精神体と言う事は現場にて媒体役に憑依しなければ
行動出来ないのでは?」カイト
「うむ確かにそうだが秘策がある」トニー
「つまり、媒体ごと過去に遡る術があると?」
「いや違う、その媒体のDNA配列を全てコピーして運ぶという手段じゃ」
「なるほど・・とてつもないデーター量ですが不可能ではありませんね」
「しかしDNA配列を再現したところでその者の能力までコピー出来るのですか?」
「うむ、DNAの丸写しだけでは仏作って魂入れずだろうな」トニー
「更に秘策があると?」カイト
「地道ではあるがその媒体を能力に見合うまで育て上げるのじゃ」トニー
「なるほど・・」
「な、なんと先代神がアスタージナスというかクリスティーナに施した策と
全く同じ手法では無いか!」驚愕する神
「防ぐ手立てはないのですか?」ゴブヨ
「ビックバーンという狂気をちらつかされてる現状では妨害作戦が果たして
役に立つのかどうか・・」神
「ですが過去にヒットマンを送り込まれてもジエンドなのでは?」ゴブヨ
「いや、媒体作成にカイトが命じられた点で望みは残ってる」神
「どういう事でしょう」ゴブヨ
「我らもその研究の現場に立ち会えるということじゃ」神
「なるほど・・・邪魔をするのではなくなんとかしてその媒体に入り込むのですね」
「うむ、そしてパラレルワールドを引き起こすのだ」神
「えええええ???」頭が混乱するゴブヨ
「そ、そんな事をしたら敵と方向性が全く同じですよ」
「ばかもん、全然ちがうぞ」
「分かり易く教えてください」
「全くそなたを見込んでの共同作戦なのにわからんのか?」神
「ぐ、わたしは神様の媒体役です。それ以外の能力なんて・・・」
「いや、其方は理解してないがそなたの聡明さも大王とかシンジとなんら変わらない
其方自身が知らないだけ」神
「ですが、分からない物は分かりません教えてください」ゴブヨ
「ま、其方はまだ幼女ゆえ伸びしろは無限大だからな・・今回は教えてつかわす」
「というか神様と私は共同チームと仰るのならそんな高飛車ではなく素直に
教えてくださいな」ゴブヨ
「余を高飛車と言うか!」怒る神様
「高飛車で失礼なのでしたら横風とかかさ高ではいかがですか?」
「ばかもん、同じ意味じゃ、余を愚弄する気か、天罰を与えるぞ」神
「やはり意に添わないものは粛清なんですね」ゴブヨ
「ぐ、・・・・いまは天罰はくださん、しかしイエローカード1枚じゃ」
「はいはい、承りました、それで?」
「ぐ・・・こやつ」「まあよい、話を進める・・・えっとなんだっけ?」
「ですから敵との違いを教えてくれるとの話です」
「あ、そうであったな」
「はやく教えてください」
「つまりな、パラレルワールドを作り出すと言う点では敵と同じだが
こちらの都合の良いパラレルワールドにしてしまえばそもそも敵が発生しない」
神
「そ、それは正に神への冒涜・・・」
「神自身が行えば冒涜にはならん」神
「そ、それはそうですが。そんなに都合良く行くのでしょうか?」
「勿論想定外の事は起きるだろうがなにもしなければ滅亡じゃ」
「ですがDNA配列を持って過去に遡る精神体の敵にどうやって潜入するのですか」
「ばかもん、そんなこと知るか!それはカイトの仕事じゃ」神
「丸投げ神様・・・」ゴブヨ
「なんとでもいえ、だがそれしか手段はないぞ」
「確かに・・・トニーの話ですとカイト達が開発できるまではとりあえず
宇宙滅亡はなさそうですからね」ゴブヨ
「うむ、今日明日の危機ではないと知れたのは大きい」神
「さて、これは難儀な話ですね」カイト
「まさに前代未聞、どうやって精神体の主にDNA配列を刷り込ませるのか」
カイトの同僚となったA研究員は嘆く
「精神体とは実体の無い物、例え粒子サイズでもそれは物質に違いはありませんね」
カイト
「粒子一つでも移動可能ならばこんな苦労は必要ありませんからね」
「現地で主が適正者を探した方が早いのでは?」
「それが出来ないから我らに研究せよと命じてるのですよ」カイト
「しかし、どう考えても私には不可能にしか思えません」研究員B
「ではダクーミ様が存命中に主がダクーミ様に憑依して操作すれば暗殺は
防げるのでは?」C
「話を聞いていないのですか?適正者でなければ憑依は出来ないのですダクーミ様
にその才脳があるのならとっくに主様が操ってる筈です」カイト
「うーーむ」
「というか初めからトニー様がそんなことは全て説明してます。貴方達は理解力
ないのですか?」カイト
「し、しかし・・・何一つ手がかりないのにどうやって研究せよと?」
「これだけ見込まれた天才が集まってるのです皆で検討しましょう」
「どう考えても堂々巡りなんですけど・・」D
「ふ、やはり簡単には見つからないようだな」神
「というか神に近い存在の「あるじ」とやらがさじ投げてるのにどうやって
思いつくのでしょうか?私でもとんと想像つきません」ゴブヨ
「ふ、それが神様と人間の違いじゃな」神
「あら、なんか神様なら分かってる風のくちぶりですね」ゴブヨ
「ふん、我にとっては造作無い事だが下々の者に理解など不可能だろうて」
「つまり神様には分かってるけど言うつもりはないと?」
「いかにも」
「で、万が一私が解決したら「我には分かっていた」としたり顔するんですね」
「こ、こやつ・・・まるで我がウソをついているとでも言いたいのか?」
「誰にも明かさないのでしたらウソか本当かなんて分かりようもありませんから」
「そこまで言うのなら教えて使わす」神
「おおおおおおっさすが神様本当なのですね!」ゴブヨ
「うむ、これはあくまでも理論的に出来るかも知れないという話だ」神
「はやくはやく、教えて下さい、もし本当なら先手をとれますよ」ゴブヨ
「ごにょごにょ・・・・・・・・じゃよ」神
「ば、ばかな!し、しかし確かに理論的には可能かも」ゴブヨ
「其方は先代神の偉業を全く理解していない」神
「た、確かになぜ精神体だった先代神が大王地球を作り得たのか」ゴブヨ
「恐ろしいのは今の其方達人類はその準備を出来る科学力を得てること」神
「からくりに気がつくのも時間の問題ですね」ゴブヨ
「だが今思いついたのだがこの方法を我らが先に実践出来る」神
「ですが、ここにいたのでは研究する時間も設備もありません」ゴブヨ
「分かってないな、そのためカイトじゃよ」神
「成る程・・カイトを操り極秘に我らだけが完成させる?」ゴブヨ
「いや、それはリスクが高すぎる」
「ではどうしろと?」
「カイトの功績ということでこの方法を研究させるのだよ」神
「し、しかしそれでは相手に利益を与える危険な行為」
「今はそれしか方法はない、カイトが怪しまれても宇宙滅亡という事
忘れるでない」神
「そうでした・・今回のミッションは本当に困難なんですね」
「其方の王は最悪人類が移住すれば逃げられると甘い考えのようだが宇宙が滅亡
したらそんな考えは甘すぎたと後悔してもはじまらんのだ」神
「やはりカイトに研究を完成させて過去に戻り我々の都合の良いパラレルワールドを
作るしか方法はなさそうですね」ゴブヨ
「はじめからそう言っておる」鼻高々の神様
「ははーー恐れいりました」ゴブヨ
「ふん、今頃われの偉大さに気がついても遅いわ!」
その夜カイトは夢の中で神様の啓示を聞いた
「・・・・・・・」
ガバッと飛び起きるカイト
「成る程!そうか!」
カイトは突然解決方法が閃いたのだ
「で、我々はどうするのですかここにいたら成功しても失敗しても
生存不可能ですが?」ゴブヨ
「当然我々も同じ方式で過去に移動するぞ」神
「し、しかしここから脱出することは不可能です」ゴブヨ
「ばかもん、我を侮るなと何度も申しておる」神
「ここに移動したときに座標点は全て判明しておるわ」神
「しかし座標点が分かったところでここの結界を突破出来ません」
「其方は勘違いしてるな」
「え?」
「ミノフ粒と言うのはあくまでも究極の透明化粒子、結界でもなんでもない」
「し、しかし当然コロニーの外殻には厳重な結界が張られてるはずです」
「すべて調査済じゃ、ミノフ万全と信じてるこの国は聖水を要する結界を
無駄な行為と信じて廃止してるのだよ」神
「つまり現在位置さえ把握していればミノフの外に出て帰還可能なのですね」
「うむ、しかし時間がない、帰還などはせぬ」」神
「はい、ミノフの外にでて敵の後を追うのですね」ゴブヨ
「ちがう、後を追っていては先手などはとれない」神
「分かりました!派遣される以前に先回りして準備するのですね」
「難しいのはダクーミなる者が暗殺される瞬間に移動したのでは敵とて
間に合わないということ。媒体を教育する時間が必要なのだ」神
「なるほど、それをどうやって知るのか・・・」
「頭悪いのう、其方は」神
「ぐ、・・・まってください今考え中です。」
「わかりました!カイトに研究の主導権を与えたのはその情報を確認する為!」
「お、珍しく正解じゃ」神
「ふふーんだ、私だって伊達に神様の媒体してるわけではありません」
「それぐらい出来て当然じゃ、これからもっともっと難局が訪れるのだぞ」
「はい、それは分かってます」
「其方と話してる内に外に出るシステムは構築しておいた、後はカイトが
研究を完成させて実行時の情報を得るだけじゃ」
「さすが神様仕事が早いですね」ゴブヨ
「う、おほん、これぐらい神なら当然じゃ」威張る神様まんざらでもない様だ
「あとな、我々がカイトの体内にいる以上最適性者と判断されるのも想定済じゃ」
「つまりカイト様のDNA配列がコピーされる可能性ですね」ゴブヨ
「うむ、もしかしたら敵側の憑依人間を操れるかもしれない」神
「なるほど、火中の栗作戦ですね」
「うむ、其方にしては気の利いた作戦名じゃな」神
「あくまでもコピーなので意のままになるかどうかはまだ分からんがな」神
「なにもしないよりはマシですわ」
「話は違いますが私と同時にこの国に忍び込んだゴブータ様はどうしてますか?」
「うむ、先代神と話合ったがゴブータはここに残り洗脳魔法の効率的な使用方法
を研究してるところじゃ、勿論ゴブータも意識は戻ってる」神
「別のアプローチをしてるのですね」
「うむ、なんとか我々が失敗した場合のビックバーン阻止作戦を練ってる」神
「なるほどダブル作戦展開中なのですね」
「うむ、詳細については秘密漏洩の恐れがあるので控えてる我らの作戦の
詳細も伝えてはいない」神
「これで安心して我らも作戦遂行目指せますね」ゴブヨ
「だが、失敗するつもりなどないぞ」神
「当然です、絶対に成功してみせます」




