人類大躍進と影
人類は富を得ました・・・が
あれから5年の月日がたった予定通りイリウス第三惑星「ジェネシス」を起点に
次から次へと恒星探査は行われ今や人類は100光年の範囲で20程の恒星を
調査、開拓している。
「残念ですがイリウスほどの有益な星は100光年範囲には皆無です」ダニア
「ですが鉱物資源はもはや人類で使えきれない程の量です」アスタージナス
「しかし、これほど探査しても知的生物はおろか生物の痕跡すら見つかりません」
ブラン
「この全宇宙で生物は地球だけなのか?」スタージナス
「いえ、いままで調査した恒星は条件が厳しすぎて該当する惑星がないだけ
きっと範囲を広げれば生命体発見は出来る筈です」ダニア
「調査すればするほど太陽系の特殊性が際立つな」スタージナス
「御意、まさに太陽系自体が奇跡と言えます」ブラン
「で、次期探査船の開発はどうなってる?」スタージナス
「は、1000光年エンジンの開発はほぼ完成してます、年内に稼働出来ます」
ダニア
「せっかく大王の尽力で恒星間移動計画と人類バンクの案件人類投票で
勝利したのにこのまま成果がなければ大王のメンツまるつぶれじゃ」スタージナス
「は、焦ってるのはだれよりも我らですから」ダニア
「見込みはあるのか?」スタージナス
「申し訳ありません望遠鏡での事前調査ではほぼ見込み無しです」ダニア
「はやく1万光年エンジンを開発しないと予算打ち切りの事態もあるぞ」
「予算の件は大丈夫です我が社資金だけで100%完成出来ます」
「なんども同じ事言わすでない、国が絡まなければ大義名分がたたないのだ」
「はは、」
「それはそうと人類増加計画の方が順調とのこと」ダニア
「うむ、今のペースなら10年で人口は倍増するだろう」スタージナス
「なにしろ人間バンク法とアンドロイド法が成立したからな」スタージナス
「は、紆余曲折ありましたが結局のところ全ては人類の益となる事」ダニア
新法律ではあくまでもアンドロイドは人間の補助と制定された
人間との区別が付かないのでアンドロイドの目をLED発光させる事が義務付け
られた。
生体人間コピーはオリジナルが保存される事を条件に一体のみ認められた
カスタマイズ化は自由だが性別を変える時は必ずハラスメント操作が義務付けられる
つまり興味本位で異性になりすますことは出来ない、性別を変える場合は完全に
性格を操作されるのが絶対条件。
特別立法で軍事利用に限りオリジナル保存を条件に100体までのコピーが
認められた、あくまでも軍務時に限る。
コピー体同士の生殖行為は認められない、その機能は有してない
アンドロイドと人間の結婚は時期尚早と今回は見送られた。
しかし現実的に人格を持ったアンドロイドと人間との恋愛は生じてる
結婚や出産は認められなくても事実婚のケースは多い
これだけ制約が多いのに確実に人口が増え始めている現在の人口140億
火星ほか食料生産コロニーの爆発的増加で人類から飢えが根絶されたのも大きい
有り余る資源により人々の収入は加速度的に増加し人類皆お大尽時代となってる
労働者階級の平均年収が2千万円を越えもはや貧乏人などは存在しない
税収が多いので福祉も充実して働かなくても食べて行ける時代となってしまった。
しかし堕落した民達だが飛躍的に向上した医療システムにより皆健康そのもの
ほとんどの民がオリジナルを保存してコピー体になってるので肥満が存在しない
なのになぜ人口が増えてるかというと政府の指針により子供優遇政策が行われ
子供を⒉人以上出産した夫婦には多額の支度金が支給されてるからだ
多くの民の人生設計図、20代でパートナーを見つけ2~3人子供を作り
その後はコピー人間を作製しオリジナルは永久保存する。永遠の生を得て
あとはエンジョイする・・・・
有り余る時間、人々は行楽地へと連日押し寄せる
特に地球観光は一番の人気。人類のほとんどがコロニーや他惑星に住む現在
地球観光は究極の贅沢。
一方の地球側も環境破壊に繋がる資源開発を一切廃し環境保護に全力を尽くし
クリーン地球は全人類の憧れへとなっている。皆長期休暇には地球でバカンスが
当たり前となった。風光明媚なジパン、シン、USAの一部EUの山岳地帯
とくにテイロンとワイハの人気度は一番、連日押すな押すなの大盛況
「これがブランが描いていた人類の行方か?」ダニアが問う
「人類の幸せを切に願っていましたがこのような堕落は想定外です」ブラン
「飢えがなくなり安定すると人類は堕落するのだ」ダニア
「しかし、皆が幸せというのは究極でもあります」ブラン
「もう人類に生産性や創造性はなくなってしまった」ダニア
「これが神の望みなのか?」ダニア
「そんなことは私には分かりません」ブラン
「このまま1000光年一万光年と探査を続けても全く無意味なのかもしれん」
ダニア
「いえ、それは違います研究開発というのは永遠のテーマ、終わりはありません」
ブラン
「予算とにらめっこしながら細々研究していた時代の方が幸せだったな」ダニア
「もはやアナハイム社の社内留保は1京円以上、使い切れません」ブラン
「いらないというのに国は予算押しつけてくるし・・・」ダニア
「国も有り余る留保金のやりばに困ってるのでしょう」ブラン
「社員1人に1億円以上配ってもいいが多分よろこばないだろうしな」ダニア
「もはや社員はお金で働きません、面白い研究を求めてるだけですからね」ブラン
「この閉塞感いったいどうやって打破するのだ?」ダニア
「恒星間移動計画時みたいな熱い何かが必要かと」ブラン
その時
「ダニア様面白い観測データーが100光年先に設置した観測機から
送られてきました。
「ま、まさかガンマ線バーストか?」身を乗り出すダニアとブラン
「いえいえ・・まずこのデーターを見て下さい」観測員
「なになに・・・」ダニア
「ふーん・・・」一緒に見るブラン
「な、なに~」2人同時に叫ぶ
「このデータは本当なのか?」ブラン
「は、間違いありません。今も同じデーターが届いてきてます」
「今すぐ他の観測機もその方向にレンズを向ける様に、3点観測が必要だ」ダニア
「これは恐ろしいデーターです、今すぐ大王に知らせねば」ブラン
「話をする前に我の独断で構わぬ、新型船の設計図を作る様に」ダニア
「は、今すぐに着手します」ブラン
「我は大王への具申書を今から徹夜で作る、籠もるぞ」ダニア
2人はそのまま別の専用研究室に閉じこもってしまった。
2日後
「今から地球に行って大王に具申する、ブランは引き続き設計作業を進める様に」
「はは、お戻りになる前に設計図完成させます」ブラン
「いや、今回は地球に滞在して完成の報を待つ、なるべく早く頼む」ダニア
「了解しました、すでに勝手に草案は作ってましたので」ブラン
「うむ、多分そうだと思っていたブランさすがじゃ、頼りにしてるぞ」ダニア
ジェネシスから冥王星までは一瞬だが、冥王星からが遠い
「なんとかコイルエンジンの性能は上がらんノか?」ダニア
「はあ・・・重力スタビライザーを使わなければもっと速度出ますが」操縦士
「よい、切れ、今回は我しか乗っていない多少の宇宙酔いは覚悟の上」ダニア
「分かりました、それではお覚悟!」
「ビュイーーーン」
「グ・・・」シートに押しつけられるダニア
「グググググ」凄まじい加速Gに押しつけられる
「こ、これならあと2時間で到着し、します・・・ぐぐぐぐ」操縦士にとっても
初めての経験ちなみに船内では2時間でも実時間は5時間半、物理の法則は破れない
結局船内時間2時間で到着したが体調を大きく崩したダニア
「これでは意味が無い、もうこれはこりごりじゃ」ダニア反省
重症の操縦士は入院してしまった。如何に普段訓練不足かが露呈した
「どうしました?フラフラですよ」ダニアを見て心配するアスタージナス
「スイマセン冥王星から早く到着しようと焦って失敗しました・・うううう」ダニア
「その体調では話になりません、明日にします」アスタージナス
「グググ・・・はあはあ・・・せめて報告書だけでも読んでください」
バタっとその場に倒れてしまったダニア、過度で長時間の加速Gは命の危険もある
「馬鹿な事をしたものよ」呆れるスタージナス
「ともかくみんなでこの報告書を読んでみましょう」アスタージナス
「ば、ばかな!」全員が叫び声を上げる
「しかしわざわざ体調を崩してまでダニアが駆けつけてきたほどですから」
イーシャ
「うーむ、これは由々しき事態、早急に調査しなくてはなりません」アスタージナス
「しかし、1万5400光年の彼方・・・今すぐの調査は不可能かと」ウラアール
「今すぐUSAの留保金を吐き出しなさい!どのくらいあるのですか?」
アスタージナス
「え、それは・・・民間人もいますので公表出来ません」ウラアール
「人類の非常事態になにを言うか!」怒るスタージナス
「わ、わかりました、思念通信でお伝えします」
「約10京円ほどです」ウラアール
「うむ、それでよい」
「ため込みましたねぇ」呆れるアスタージナス
「何が起きるか分かりませんからこれ位は必要です」ウラアール
「しかし、そのお陰で今回は予算を豊富に回せるな」スタージナス
「ダニアの体調が戻るのをまち新型船製作を着手させなさい、予算はいくら
かかってもUSA持ちです」アスタージナス
「ありがたきお言葉、今ブランが設計図を作っています。数日お待ちください」
ダニアが思念通信に参加してきた
「思念通信は体に悪い、今は休め」スタージナス
「設計図完成まで私も地球で待ちます」ダニア
「わかった、はよねれ」スタージナス
思念通信はダニアの体調に悪いので普通会話に切り替える
「で、実際の所1万光年を越える時空移動は可能なのか?」スタージナス
「は、我の掴んでる情報では予算次第だとか」タラン
「実現可能として、で?そこに行ってなにをするつもりなのだ?」スタージナス
「まずは徹底的な調査ですね」アスタージナス
「しかし、ダニアの報告だと人類初の人類以外の知的生命体との遭遇かも
しれん重大事態だぞ、覚悟はあるのか?」スタージナス
「今からあらゆる事態を想定したシュミレーションが必要でしょう
その中には当然有事も含まれるでしょう」アスタージナス
「バカを申すな、それでは我々は侵略者だぞ、いいのかそれで?」
「あくまでも想定の範囲の話です有事が前提ではありません」ウラアール
「相手が万一いると想定して、相手の科学力が分かりませんね」ジパン
「万一イリウスを作った相手だとしたら太刀打ちなど出来ない」
スタージナス
「だとしたら相手も攻撃の意図はないでしょう、わざわざイリウスを差し出して
おいて攻撃的とは思えません」アスタージナス
「イリウスとは関係ない相手かもしれません」ジパン
「そもそも知的生命体などはいない可能性も十分にあります」ゴブータ
「しかしあり得るのか?太陽系と全く同じ状態の星の存在」スタージナス
「しかも第三惑星は完全ハビタルゾーン、恒星の年齢も約50億年・・・
太陽系と全く同じです」アスタージナス
「このデータをみると明らかに恒星光に揺らぎがあります・・・」タラン
「なにを意味する?」スタージナス
「人工的だとすると・・・・ダイソン球・・・」タラン
「しかもこの揺らぎの指数は恒星光の約10%・・・現在人類はやっとで1%」
タラン
「つまり単純に考えて人類より10倍科学力が進んでる?」スタージナス
「それは短絡的過ぎるかも知れませんがダイソン球があり人類よりも利用度が
高いとすると科学力は我らを凌駕してるとみて間違いないでしょう」タラン
「これは・・触らぬ神に祟りなしでは?」ゴブータ
「うむ、全ての可能性を含めてダニアとブランに尋ねたほうがいいだろう」
スタージナス
いよいよこの物語の最終局面なのだろうか?
いよいよ最終局面?




