覚醒
選ばれし者
しかしオラは驚いた、次の日生まれて初めて読み書きを教わったのに
自分でも不思議なほど吸収していく・・・その日のウチに読み書きをすべて修得した
「ワン君、君はどこかで勉強を教わったことがあるの?」担当員
「とんでもねえだ、オラは生まれてから一度も村から出たことはねえ」ワン
「こっこれは一大事、すぐにロッテンマイヤー理事に連絡しなくては・・・」担当員
「はあ?」訳が分からないワン
次の日どこからともなく現れた怖いおじさん達にオレは囲まれてしまった
「な、なにするだ」必死で抵抗するワン
「ワン君といったね、大丈夫なにもしない、ちょっと測定させてもらうだけ」
怪しいおじさん達が言う
「おっ驚きました、これは・・・・」驚いたのはヘホコ
「うむ、これは希に現れる天才種、突然変移の一種だろう」ダニア
「おじさん達なにいってるだ?」ワン
「君はここにいてはいけない、我々と仕事をしなくては国家反逆罪だ」ダニア
「え、国家反逆罪でオラは処刑されるだか?」ワン
「君だけでは無い、この村の民全員処刑だ」脅かすダニア
「そ、そんなあ命だけは助けてくだせえ」村長
「うむ、今すぐワン君を差し出してくれたら皆の命は保障する」ダニア
「し、しかしワンはいままでおら達から離れたことがないだ」村長
「聞けばワン君のお父さんは不治の病とか?治療してあげよう」ダニア
「し、しかしお医者様の話では数年かかると・・・」村長
「我の最新医療術なら今すぐ治せる、勿論術後のリハビリは必要だが」ダニア
「お、おねげえします、オラはどこえでもいくだおとうを助けてくだせい」ワン
「よし、よく言ったではウソでは無い証に君のお父様を今治療しよう」ダニア
「あれ、持ってきてくれ」ダニア「は、」ヘホコ
№36の超聖水から精製された最新のポーション、火星にしか存在しない極秘薬
「ごくんごくん」
「どうだな?」ダニア
すくっと立ち上がるおとう
「た、たてましただ~、しんじられねぇ」
「おおお、ダニア様は神様」村民全員が平伏す
「いや、まだだ今日から1週間でリハビリしなければ元の木阿弥これからが地獄
絶対に治せ」ダニア
新型ポーションはナノ分子レベルの粒子ロボット、AIからの診断を受け
損傷を受けたDNAをロボットが補修していく、血液を燃料に生涯体内にとどまり
免疫機能を高め自己診断で病原菌を排除していく・・究極の体内医療マシーン
「へへー」土下座するおとう
「約束は果たした、今度はワンが約束を守る番だ」ダニア
「へへ、わかりましただ」ワン
「まあ、研究所に行って最初にすることは君の方言の矯正だな」苦笑いのダニア
☆
大げさに拉致されたワンだがなんのことはない村から電車で10分の
アナハイム火星支社に配属になっただけ。拉致後も村に簡単に行き来出来た
アナハイム支社が置かれてる都市は火星で一番の都市「ニューマハッタン」と
命名された。マハッタン並の大都市にしたいという願望から。
「まず君には当研究所施設になれてもらうこと、そして勉強を一月してもらう
だが君のIQならそんな時間は無駄かもしれんな」ダニア
「とは言いましてもここには研究員ほとんどいませんね」ワン
「おっさすがワン君2日で方言直ってるな」ダニア
「ここに来てからそればかり練習させられましたからね」ワン
「今はコロニー研究所に社員ほとんどが詰めていてここには数人しかいない」ダニア
「コロニーですか?」ワン
「うむ、最低500以上のコロニーをこれから作らなければならない大変な時期
なんだよ」ダニア
「で、我はなにをすれば?」ワン
「君の能力ではまだ戦力にはならない、しかし潜在能力は副社長のブランに匹敵
するのだ。つまり君は自覚しようがしまいが我が社の宝、そのつもりで」ダニア
「早く戦力になりたいし村に仕送りをするため稼ぎたいです」ワン
「うむ、すでに村には支度金を送金したががんばってくれ」ダニア
「私の考えは火星の農業改革をしたいのです」ワン
「うむ、火星農業はあくまでも地球式をなぞっただけ独自の物はないな」ダニア
「はい、農作機にはまだまだ改善の余地があると感じました」ワン
「ほう?数日しか見ていない農作機に改造の余地があると感じたのか?」ダニア
「は、まず感じたのは火星の重力は地球の1/3なのに機械がそれに応じてません」
「ほう?具体的に言えるのか?」
「はい、地球仕様の構造なので無駄に履帯が空転してました」ワン
「なるほど、履帯が故障しやすいと報告は上がっていたが重力のせいか」ダニア
「しかし、軽い方が負担少ないのでは?」ダニア
「いえ、無駄に頑丈なのはコストが悪くなります」ワン
「確かに製造費が安くなればその分農作物のコストも下げられる・・・」ダニア
「現状の3倍の大きさで作れば効率が上がります」ワン
「よし、それではワン君の初仕事は農作機器の火星仕様化だ」ダニア
「えっ?しかし私は仕事なにも知りません」ワン
「大丈夫、君の着眼点はすでに一流あとは実践のみ」ダニア
「あと君達家族が心配しているヨンについてだが・・」ダニア
「消息がわかったのですか?」ワン
「すまない、ほんとうにすまない・・・」
「えっ?」
「記録を調べたが250年前に君達は縮小化されたがヨンだけは
王様への貢ぎ物として差し出された様だ」ダニア
「そ、そんなぁ・・・・・」
「しかしその後ヨンは単なる奴隷ではなかった」
「えっ」
「溢れる美貌と才覚で出世していった様だ」ダニア
「10年後に側室に昇りつめ2男2女をもうけその中の長男は
後に上級貴族として名をはせ250年後のいまも家系は続いている」ダニア
「おおっそれは凄い」ワン
「そして今のシン王、ヨウキ王がその末裔だ」ダニア
「ばっばかな・・・」溢れる涙を抑えきれないワン
「ヨンひとりでどのくらいの苦労をしたのか・・・」ワン
「それは凄まじい努力だったことだろう、家族だけを支えにしてたのかも
しれん、今は遠い過去の話だ・・・」遠くを見つめるダニア
「これはあくまでも推察だがヨンを人身御供にするため君達が
邪魔になったのだろう、真っ先に縮小化されてしまった痕跡がある」ダニア
「許せねえ・・・」ワン
「結局悪辣非道なシン王は250年後君達の末裔ヨウキ王によって滅ぼされた
因果応報とも言えるだろう、正に江戸の敵を長崎で討つだな」ダニア
「わたしはヨンの意思を引き継ぎます、研究者として人類に貢献します」
力強く拳を握りしめて決意を新たにするワン
「こんな悲劇は二度と繰り返さない、そのためには民が豊かになること
全力でとりくみます」ワン
「うむ、頼んだぞ」ダニア
事情を知ったシン国ヨウキ王がワン一族にたいし深くお見舞いの言葉を寄せ
「王家一族として迎える意思があります」と申請してきた
しかしワンはこれを丁重に断った、「私達は王族にはなりません、両親は
普通の百姓を強く望んでいます、私はこれからアナハイム社を支えなくては
なりません」
「それでいいのか?」ダニア
「はい、それで結構です我々は自分自身で身を立てます誰の世話にもなる
つもりはございません」ワン
「よし、わかったそう伝えておく」ダニア
「王族入りの意思なし」知らせを聞いて落胆するヨウキ王
ヨウキ王の立場としてはいまや自分しか血筋が残っていない現状でワン達を
是非とも取り込みたかったのだが・・・
「簡単な話ヨウキ王がご成婚されれば済む話です」ゴブーミ
「しかし、今結婚する気は全くありません、ああ素晴らしい殿方いないもの
でしょうか?」ヨウキ
「それにしてもワン君は惜しい・・・希代の天才とか、我が一族にとりこめれば
どれほどシン国に有益だったことか・・・」惜しがるヨウキ王
「それならば王命で取り込めば済む話ですが?」ゴブーミ
「そんな事今の世ではできません、民主国家が逆流してしまいます」ヨウキ王
「ならば、今後当人の知らない所でサポートしワン君の身が立つ様にしましょう」
ゴブーミ
「そうですね、我が国始まって以来の天才、必ず出世させましょう」ヨウキ王
こうしてワンは、知らない所で強力な「タニマチ」を得てしまったのだった
「なんとかワン君、夫に出来ないかしらね」ヨウキ王
「ま、まさかご先祖様を御相手にされるのですか?」ビックリゴブーミ
「250年といえば7~8世代経過してます、医学的にはまったく
問題ないレベルです」ヨウキ王
「しかし、・・・なんというか倫理感が」
「そんなもの根拠ありません、科学的に問題がないのですから」ヨウキ王
「だってあんなイケメン、皆が放っておくはずありません。時間がないのです」
あらら、ヨウキ王一目惚れって・・・写真でしかみてないだろ?
「あの、ヨウキ王はまだワン君にお会いしてないはず」ゴブーミ
「ふふふ、今は早期警戒システムがあるのです、空港でのワン君の動画
拝見してます」ヨウキ王
「ってそれほとんど犯罪行為に近いと存じますが?」ゴブーミ
「私はシン国王、多少の無茶は許される立場です、しかもこれは国家安泰へ
つながる重大事項」ヨウキ王
「というか単に王様がワン君に惚れただけでしょうに・・・・」ゴブーミ
「それほどまでににワン君に惚れたのなら王の特権で奪えばよろしいかと」
ゴブーミ
「そ、そんな事は出来ません、さっきから何度いわせるのですか?」ヨウキ王
「なんだか、全く私には王の行動がわかりません」処置無し顔のゴブーミ
「とにかくワン君に悪い虫がつかないように忍者を派遣して影から操作して
ください、これは王命です」
「ははっ」数人の忍者がその場から出立していった
「国家権力の横暴ですわ」呆れるゴブーミ
「国家の宝をどこかの虫に獲られるわけにいきません」当然顔のヨウキ王
ワン君はいつのまにか巨大な国家権力に翻弄される運命となってしまった
なにも知らないワン、今日も火星の農業発展へと研究を進める
知らない所で暗躍が・・




