予兆
危機?チャンス?
「パアア・・・」
夜8時漆黒の闇に閉ざされたはずのマハッタンの夜空がほんの一瞬
まばゆいばかりの閃光につつまれた、いやマハッタンだけではない全世界
「なにごと・・・」伝令を受け夕食を終えたアスタージナスが特別召集をうけ
大会議所に集合する、すでに主要メンバーが集まってきてる
「一体何があったのですか報告願います」アスタージナス
「は、まだ詳細は確認できてませんが火星と木星軌道の真ん中辺で超新星爆発級の
大爆発が発生した模様です」タラン
「超新星爆発?そんな馬鹿なありえません」アスタージナス
「は、各種宇宙天文台の観測によりますと大爆発の規模は2兆メガトン級
月が吹き飛ぶ威力だったそうです、閃光は約0.1秒と短く地球、火星、月
コロニーへの被害は微少との推測です
「人為的なテロ活動の可能性はないのですか?」イーシャ
「残念ながら早期警戒システム網は火星まで、その外でのテロ活動は今の所
発見できません」タラン
「なんたること、これは地球存亡の一大危機です、早急に原因をつきとめなさい」
今までに無いアスタージナスの叱咤
「ははっ」この時ばかりはスタージナスもジパンも平伏す
「もし、未知の敵性勢力ならば反撃や防御すら出来なくこれで人類は終わりでした
二度とこのような事態は起こしてはなりません」アスタージナス
「は、私の怠慢でした」イーシャ
「責任は人類が生き残ってからとりなさい、今は対応が先です」アスタージナス
「はは、直ちにブラン式コイル射出機で無人探査機を現地に送ります」イーシャ
「時間は?」アスタージナス
「は、10分おまちください」イーシャ
「全世界最大警戒レベル4を発動しなさい」アスタージナス
「はっ」直ちに全世界が厳戒態勢に入った
「宇宙防衛軍出動します」イーシャ
「全コロニーは緊急脱出装置発動体制に入ります」
「火星、月は超結界魔法発動防御力10倍態勢に入りました
「地球の全人類は非常用地下シェルターに避難勧告を発動しました」
「アナハイム社から急報が入りました」
「この忙しい時に・・あとにしなさい」アスタージナス
「いえ、今回の事件に関することだそうです」伝令
「む、まさか・・・またブランがなにかしでかしたか!」予見するスタージナス
「こちらダニアです、事情は後で説明しますこちらの失態でしたが人類に危険は
ありません、非常警戒態勢を解除してください」ダニア
「アナハイム社がなにか失敗をしたのですね」すこしホッとしたアスタージナス
「は、誠に申し訳ありませんでした、まさかこれほどの事態になるとは思っても
なくて軽率でした、とにかくそちらに伺い釈明いたします」ダニア
「と、言うことです非常警戒態勢は解除してください。」アスタージナス
「やれやれ」みなへたり込む
10分後ダニアが駆けつけてきた
「さあ説明しなさい、事と次第によっては厳罰免れません」厳しいアスタージナス
「は、全て覚悟の上です、責任者は私ですから」ダニア
「ブランがまたなにかしたのですね」ウラアール
「いえ、あくまでも私の責任です」ダニア
「責任問題は後回し、とにかく説明しなさい」アスタージナス
「はい、・・・溶けてしまったのです」ダニア
「なにが溶けたのだ?」スタージナス
「先日実検をお見せしました全球式のコロニーの発電源である魔石コアの
改良実検中に色つき結界魔法が熱放射に耐えきれなくなり溶けてさらに
全球コロニーが蒸発してしまいました」ダニア
「あ、あれか・・・」ジパン
「また、ブランの魔改造ですね」ウラアール
「おかしいですね、5m規模の魔石にそれほどの爆発力あるとは思えません」
アスタージナス
「はい、今回は30m級の魔石を試してみたのです・・理論的には耐えるはず
でしたが・・・予想以上の出力が放射してしまいました」ダニア
「5m級で1000万年もつシステムをなぜ改良する必要があるのですか?」
アスタージナス
「そ、それは・・・・」口ごもるダニア
「そこを説明しなければお前がここに来た意味が無いだろう」怒るスタージナス
「あの、その、スイマセン」土下座するダニア
「土下座などしても駄目です説明しなさい」ウラアール
「はい、つまり、その・・・極秘に恒星間移動計画の実検をしてました」ダニア
「おおかたそんな事だろうと予想してたわ」スタージナス
「実は新たなるシステム構築の為実検をしてましたが不測の事態により
実験システムが大爆発してしまい宇宙のどこかに消えてしまいました。」ダニア
「あまりにも危険過ぎる実検でしたね」ウラアール
「申し訳ありません、しかし、実検体は失敗しましたが時空を越えて消失したので
予想熱量の1/1億しか宇宙空間へは放出してません」ダニア
「おろかもの!ではもし全てが宇宙空間に放出されていたらどんな事態が
起きていたか分かってるのか?」スタージナス
「は、今その部分も検証中ですが多分木星位は吹っ飛んでたかもしれません」ダニア
「しれっと途方もないことを言いおる・・」スタージナス
「やってしまったことはしょうがないが今後そのような危険な実検は禁止じゃ」
スタージナス
「し、しかしこれは人類発展への避けて通れない道、一度や二度の失敗で閉ざす
には余りにも勿体ないです、どうか御慈悲を」ダニア
「これは大王の判断を仰ぐしかない、どちらにしても人類存亡に関わる事」
スタージナス
全員が大王に注目する
「今後は冥王星の倍の距離にて実検を行うようにしなさい、しかも事前登録必須です」
アスタージナス
「ははっ仰せのままに」ダニア
もしかして実検の永久禁止はおろか自らの処分もありえると覚悟してきたダニア
だけにこの結果は勝利ともいえる
「恐れ多いことですがそれでは実検コロニーを100程実検地点に移動することを
承認頂きたく」ダニア
「そんな莫大な予算承認できません」ウラアール
「は、今回は当社の不始末、全て当社でまかないます」ダニア
「いえ、許可出来ませんアナハイム社だけだとまたやらかされてしまいます
何が何でも半分は国が負担しますし口も出します、スタージナス様にお目付
してもらいます。」アスタージナス
「しかし、今回は研究所も現地に設営しますので遠いですが?」ダニア
「なーに我ら5人衆でいけば怖い物なしじゃ」
ジパン、タラン、ヤコブ、ヘッテはすでにワンセットに組み込まれている
「はは、スタージナス様の命ぜられるままに」ジパン達
一月後準備が整い出発の日
「それではクリスティーナ行ってくるぞ」スタージナス
「わたしよりもダーリャに声かけてください」アスタージナス
「ダーリャには家を出るときに挨拶した、心配するな」スタージナス
「今回は移動魔法ではなく新型コイル推進器だそうだ、なんだかよく分からんが
時間はかかるようじゃ」スタージナス
「とはいっても片道20時間の旅だそうですから」ウラアール
「たったそれだけの時間でこれ程の巨大コロニーを移動出来ると言うのだから
驚異的ではあるな」スタージナス
「はい、これだけ大量の物資を運べるのですからコスパとんでもないです」
ウラアール
「では、出発します」ダニア
「本当に大丈夫なんだろうな、この間のような大爆発勘弁してくれよ」
ビビるスタージナス
「大丈夫です失敗したらあっという間にあの世ですから痛くもかゆくもありません」
ダニアがしれっと冗談かます
「とはいっても今回の推進システムは徐々に加速するのでいきなり爆発ありません」
「グググググ・・・」サイド7から離脱していく100個のコロニー
「実際の所、コイル推進器は全く安全、万一にも事故はありません」ダニア
「なんだ、そうなのか手に汗握らせおって!」スタージナス
「この間の失敗は中心にある魔石コアの大きさ変更に結界魔法が耐えられ無かった
だけの失敗ですから」ダニア
「なるほど、なにがなんでも魔石コアを大きくする必要があるのだな?」
「御意、魔石コアの制御に成功すれば恒星間移動計画が大きく進歩するのです」ダニア
「しかし、事故いらいブランが居ないがどうした」スタージナス
「はあ、実は・・・」ダニア
「なんだなにかあったのか?」スタージナス
「それがすっかり自信喪失してしまって研究室に引きこもってしまいました」ダニア
「まったく研究オタクはこれだから、一回ぐらいの失敗でなんじゃ、だらしない」
スタージナス
「ご自身は一回の失政で数ヶ月寝込んでいたのに・・・」心の中で思うタラン
「ごほん、タラン其方の言いたいことは分かってるぞ」目で合図するスタージナス
「まあ、とにかく少しほっといてやれば立ち直るじゃろうて」スタージナス
「現場につくまでは暇なんじゃろ?」スタージナス
「は、約一日おくつろぎください、到着しても色々準備で1週間はかかります」
ダニア
「よし、今日は前祝いだ、酒飲もう」スタージナス
「しかし、私は制御等でやること色々ありまして・・・」ダニア
「馬鹿者一体何人の社員同行させてるのだ?今回は2万人だろ?少しは分担させい」
呆れるスタージナス
「しかし、社員達はまだまだ子供同然、目が離せません」ダニア
「大丈夫だて、現地に行くぐらい其方でなくても制御出来るわ」スタージナス
「しかし、皆が働いてるのに酒など飲んでる場合では・・・」ダニア
「馬鹿者、社長たる其方は接待も大事な仕事、客人をもてなさないでなんとする」
「はぁ・・・客人ですか・・・どちらかというと付け馬・・」ダニア
「我が剣の錆にしてくれようか!」怒るスタージナスしかし目が笑ってる
「まあまあ社長は接待してください後は任せてください」研究員A(本名エー)
エー、実はブランには劣るが大事なダニアの腹心クラス専務クラス
「バーン」研究室のドアを蹴破るスタージナス
「これ、ブラン飲むぞこっちこい」
「はあ・・・・しかし私はそのような気分では・・・」ブラン
「馬鹿者其方には大志があるのだろう?一回ぐらいの失敗で志諦めるのか?」
叱咤激励のスタージナス、誰からも愛される訳だ
「わ、わかりました、しかし今日はブラン飲みますぞ?いいのですね」
「大丈夫こちらにもジパンがいる、ダニアにも其方にも引けは取らん」スタージナス
「このヤコブとて最近は鍛錬つんでますぞ!」意気込むヤコブ
「残念だが其方では役不足、まあ玉砕するのもいいだろう」スタージナス
「どうぞ・・・」お酌をする女子従業員
「って其方セイラか?」驚くスタージナス
「お久しぶりですおじいさま」ミライも挨拶する
「しかし他の従業員の前ではスタージナス様のお孫であることは秘密にしてください」
ダニア
「分かった、それは当然じゃ」スタージナス
「しかし、スタージナス様、2人が同行してるのは接客目的ではありません
完全に実力でブランの左右の腕に上り詰めたからです、贔屓は一切ありません」ダニア
「うむ、わかった後に実力を見せてもらおう」スタージナス
「それにしても数年合わなかっただけでこれほどの美貌になるとは・・」
驚嘆するスタージナス
「恋はしてるか?」
「はい、失恋しました」セイラ
「とんでもない奴がいるな誰だ」スタージナス
「あら、おじいさまが私達の邪魔したんですけど」セイラとミライ
「意味がわからんな」スタージナス
「ブラン様はとっととカール様を娶ってしまいました」セイラとミライ
「ぶはっ」酒を吹き出すスタージナス
「それは知らなかった、まさか其方達がブランに恋していたとは、スマンな」
スタージナス
「いえ、結局はかなわぬ恋、私達が入社した時点ですでに手遅れは自覚してました」
セイラとミライ
目をきょとんとしてるブラン、まさか自分がそんなにもてるなんて一切自覚がない
「悪いが我はカールしか見えてなかった其方達を意識したことは一度もなかった」
ブラン
「いえ、一途な男子は憧れです。それでいいと思います」セイラとミライ
「うむ、我が儘三昧の2人だったが大人になったのっだな」涙するスタージナス
「で、カールは一緒じゃ無いのか?」スタージナス
「無粋ですわ・・・」セイラ
「なるほど、理解したスマンな」スタージナス
「え、え?私には全く分かりません」ジパン
「また其方だけ分からんのか・・呆れるな、おめでたじゃおめでた」スタージナス
「あ、なるほど、それは無粋でした」平謝りのジパン
「全く!父親になるというのになんじゃこの体たらく、落ち込んでる暇有るか!」
しかるスタージナス
「スイマセン確かに落ち込んでは居ましたが遊んでいたわけでは無く
新しい研究を思いつき1人で没頭していた部分もあります」ブラン
「なるほど、転んでもただ起きないブランだったな、見直したぞ」スタージナス
「で、新しいアイデアとは?」スタージナス
「は、結界魔法の強化方法を練ってました」ブラン
「結界魔法を強化出来るなんて話は聞いたことが無いな」ダニア
「は、発想をすこし変えて複合魔法路線で考えました」ブラン
「たしかに魔法は昔から相性はあるものの組み合わせや複合は可能じゃな」
スタージナス
「で現地に到着したらそちらの実検を最優先させます。地味な実検ですから
スタージナス様ご一行は暇かと存じます」ブラン
「よい、何ヶ月かかろうとつきあう覚悟できている」スタージナス
「本来研究は地味なんです、シロウトさんには退屈この上ないと思います」ダニア
「駄目じゃ、上手い事いって我らを追い返して何かするつもりじゃろうが」
スタージナス
「ははは、半分正解ですが地味なのも事実です」ダニア
「今回は大王の命でお目付役なんだから絶対に離れないぞ覚悟しろ」
一同大爆笑、酒がかなりすすんでいる
「もっと飲みたいところだが今日はこれ位にしておこう」一本締めスタージナス
翌日ようやく所定の位置に実検コロニーが到着した
「到着しましたがまだ機材のセットや準備が3日位かかります」ダニア
「その間に当研究コロニーをご案内します」ダニア
「おう、頼む我々はお上りさんじゃ」うきうきスタージナス
「それにしてもどでかいコロニーじゃな」スタージナス
「は直径30Kmですから相当な大きさです」ダニア
実検棟研究棟、社員寮、事務室、社長室などを順次見学する
「お疲れ様ですお昼になりました食堂にいきましょう」ダニア
「おおおっこのカレーは冒険旅行時代いらいの懐かしい味」感動するスタージナス
「はい、すべてロボットコックの仕事です、当時のスタージナス様の日記に
記載されていたレシピを参考に作りました」ダニア
「しかし我の日記は家族にしか見せた覚えはないが・・・」スタージナス
「あらいやですわ、私達も家族ですけど」セイラとミライ
「なるほど情報漏洩はそこからか・・」ニコニコスタージナス
「なんか人聞き悪い言い方・・」ミライ
「とにかく美味しいカレーです、ウラアールの味に近いです」ジパン
「お主は美味しい料理だと必ずウラアールと比較するなぁ」スタージナス
「当然ですウチのウラアールが世界一比較するのは減点法ですから」ジパン
「はいはい、わかったわかった」かるくいなすスタージナス
「それはそうとしてこのロボットコックも相当なものじゃな」スタージナス
「はい、学習型AIを搭載してるので常に進化しています。アナハイムの次期
戦略商品の一つです」ダニア
「ところで今日もブランは研究室入り浸りか?」スタージナス
「研究者の本分ですから当然です」ダニア
「すまんな研究に没頭したいのに付き合わせて」スタージナス
「いえいえ、接待も社長の仕事ですから」ダニア
「というか見学にかこつけてブランから引き離したいのだろ?分かってる」
スタージナス
「そ、そんなことは有りません大事なお客様ですかっ当然の接待です」ダニア
「まあ、いい、いくら隠してもウチにはタランがいるからな、お主達の行動など
全てタランには筒抜けじゃ、其方が研究のプロならタランは諜報のプロ」
スタージナス
「はははは、おたわむれを」汗ふきふきダニア
「まあ、それはおいといて、話は変わるがここのコロニーは全て地産地消なのだな」
「御意、すべて完結できるので外部からの補給は一切必要ありません
つまり恒星間移動計画に欠かせない宇宙船の実検にもなります」ダニア
「うむ、しかし最終的には「エンジン」次第、一番立ち後れてる部分なのだな?」
「御意、ブラン以下全社員が賢明に開発してますがエンジンだけは難儀してます」
「我が思うに人類が培った全ての技術を総動員しなければ達せないと思う」
「仰る通りです、あらゆる分野の底上げが必要なのです」ダニア
午後になり農園と牛宿舎、ブロイラーなどを見学視察する
「これは壮観、ブロイラーというとなんか陰湿なイメージだがここは広さを利用した
放し飼い、ニワトリたちが活き活きしてる・・」スタージナス
「はい、肥料の配合も化学薬品を極力減らし自然環境重視で育てています」ダニア
「宇宙の果ての最新コロニーで自然環境重視とはなんとなく面白いな」スタージナス
「はい、科学と同じでつきつめると原点に返るものですから」ダニア
「自然肥料に拘りつつも飼育するのは全てロボットというのも面白い」スタージナス
「はい、学習型ロボットの方がどんどん効率がUPしていきます」ダニア
「これでは生産農家はお手上げじゃ」スタージナス
「なんども言いますがここのコロニー全てが商売目的の実検コロニー、無駄な
物は一切有りませんし毎日グレードアップしてます、今日見たものは明日には
古いという事もあるのです」ダニア
「うむ、人類が幸せになる技術なら大歓迎じゃ」スタージナス
「このTKGをお試し下さい」ダニアが試食品を用意する
「なんじゃTKGって?」
「卵掛けご飯です」ダニア
「なるほどTKGね」ジパン
「ぬお・・・・なんじゃこりゃ・・・」ジパンは卵掛けご飯のプロを自認してる
「こんな卵掛けご飯はジパンでも食した事が無い」驚愕のジパン
「先ほどの養鶏所からとれたばかりの新鮮な卵とコロニー産コシヒカリです」
「しかし№36以外の聖水だと味が落ちるのでは?」タラン
「はい、実は先ほどとれた№36級の軟水聖水です」ダニア
「とれるものなのか?聖水って?」ジパン
「は、サイド7からここまでの道すがら特定の聖水のみを吸着させる実検も
してました」ダニア
「№36クラスの聖水は実に希少でこれ程の距離を移動したのに取れたのはほんの
すこし、改めて№36の貴重度がわかりました」ダニア
「しかしたった数日で稲作が出来たのか?」スタージナス
「いえいえ、今回は炊飯のみに超聖水を使いました、それでもこの味です」ダニア
「卵もなにか秘密ありそうだな」スタージナス
「はい、皆さんはテイロンのマグロどう思ってますが?」ダニア
「いきなり唐突だな、テイロンのマグロと何の関係がある?」スタージナス
「テイロン産マグロは魔グロなのです」ダニア
「うむ、その話はテイロンの町長、今は市長だが、話は聞いておる」スタージナス
「不思議な事ですが魔がはいると全ての食料は味が良くなるのです」ダニア
「なるほど、この卵も魔卵なんじゃな」スタージナス
「御意、新開発の魔肥料の力でこの味が完成しました」ダニア
「なるほど、すべて研究の成果か・・」スタージナス
「御意、アナハイム社の血と汗の結晶でず、商品化される前に地道な努力を
惜しまない我が社の結晶でもあります」ダニア
「これは鶏肉の味もためさない訳にはいかないな」スタージナス
「はい、今夜の宴には焼き鳥三昧あじわって頂く予定です」ダニア
「それはすごい、夜が楽しみじゃ,腹がすいたぁ」ジパン
「これこれ今昼食べてさらにTKG2杯もおかわりしたばかりじゃろうて」
スタージナス
「いえ、我は美味しい物なら底抜けですこれ位なんと言うことは有りません」ジパン
「実は魔グロも養殖してますがまだ商品化にこぎ着けてません。後数年です」ダニア
「さすがに魔グロは時間がかかるな」スタージナス
「ですが今回特別にテイロン市長から魔グロの差し入れも受けてますので
いつでも用意出来ます」ダニア
「あまり贅沢過ぎると頭が溶けるからほどほどにな、贅沢よりも毎日栄養バランスの
とれた質素な食事の方が余程大事じゃ」スタージナス
「わかりました、そのように致します」ダニア
「さ、次の場所に移動します」ダニア
コロニー内の移動は全て魔超伝導リニア、どんな場所にも2~3分で到着する
「重力スタビライザー効果で全く揺れないし加速感もないな」スタージナス
「気持ち悪いです、私はこれには慣れません」ジパン
「昨日は来賓館に宿泊して頂きましたが毎日と言う訳にはいきません住居を用意
させて頂きました」ダニア
「うむ、以前紹介してもらったモジュール住居だな」スタージナス
「はい、全員個別の一戸建てでも皆さんご一緒の集合式でも可能ですが
いかが致しますか?」
「もちろん我らはスタージナス様の護衛が目的一緒に決まってる」タラン
「それではご希望仰って下さいどのようにも組み替えますから」ダニア
「なに、どんな形にも出来るのか?」ジパン
「はい、敷地はいくらでも余ってますので100LDKでも1000LDKでも
可能です」ダニア
「お城か!」ヤコブ
「これは楽しいな」大喜びのご一行
「後からでもいくらでも変更出来ますので」ダニア
「よしこうしよう」スタージナスが決定する
「ベットルームは各自別、大広間兼会議室、食堂に厨房、風呂は大浴場」
「それだけで良いのですか?」ダニア
「うむ、住むのならそれでいいだろう」スタージナス
「それでは私の方から別に3部屋追加させていただきます」ダニア
「ほう?」
「ロボット給仕控え室とクロゼットと自動洗濯室です」ダニア
「うむ、長期滞在ならそれも必要だな」スタージナス
「洗濯物は全て専用の洗濯機に放り込んで頂ければ数時間で各自のクロゼットに
格納されます」ダニア
「正に至れり尽くせりじゃな」スタージナス
「いえいえ、いままでメイド達にやらせていた仕事の代行に過ぎません」ダニア
「残念ながらTV番組等は回線の都合で地球とは6時間の時差となります」
「思念通信は可能か?」スタージナス
「いえ、今中継ポイントを増築中ですがあと2~3日お待ちください」ダニア
「これだけの長距離なのに3日とはありがたい」スタージナス
「で、ブランの実検開始はあと2日かかるのだな?」スタージナス
「はい、その時はお呼びしますのでここでおくつろぎください」ダニア
「それでは私は会社に戻りますなにかあったらご連絡ください」
ダニアは帰っていった
「きっとダニアは相当疲れたことだろうて」スタージナス
「それでは私は仕事に向かいます」タラン
「うむ、頼む、アナハイムの秘密を全て暴いてくれ」スタージナス
「なんか身内の事を暴くのは抵抗感ありますね」ジパン
「馬鹿者、きっとダニアは秘密を隠しているに違いない。今日一日で絶対
ブランはなんらかの準備をしたはず」スタージナス
「そのために私とヘッテがいるのです、お任せ下さい」タラン
「ロボット給仕は多分密偵だろう、召喚人間を使って誤魔化しておく
なにかを掴むまで何日かかっても大丈夫だからな、頼むぞ」スタージナス
「はは、それでは早速」あっという間に2人はどこかに消えていった
召喚人間のタランとヘッテが何事もないようにスタージナスと談笑する
実はこの召喚人間事ある度に使っている、いつも縮小化してスタージナスは
持ち歩いてるのだ。2人は大事な側近同然。これまでもタランとヘッテは
大切な情報を常に持ち帰ってくれてる。時には娘であるアスタージナスとウラアールを
スパイする時もある。民間人だと秘密情報から遠ざけられる事が多いのだから
スタージナス流の自衛策でもある。身内同士でも国を動かすと言う事に関しては
丁々発止なのは仕方が無い事。ジパンは全てを知っているし一緒に情報をもらってる
ジパンはスタージナスと掛け合い漫才してるが実は今やスタージナスのかけがえのない
相棒なのだ。実力は計り知れないし絶対に底をみせない。
つまりいつも5人一緒なのには訳があったのだ。スタージナス軍団といえよう
唯一心を許せる5人でもある。
「さて、仕事の話はそこまで、なにやらダニアが鳥肉料理を手配してくれてる筈」
スタージナス
「ロボットに注文してみますか?」ジパン
「うむ、ジパン頼む」スタージナス
「ちょっとちょっとそこのお姉さん!」ジパン
「あほか!ロボットにお姉さんといって通じる物か」呆れるスタージナス
「ハイナンデショウ」なんとロボットが対応してくれた
「恐ろしいなすでにジパンの行動は全てインプット済のようじゃ」スタージナス
「どこまで学習されてるのか怖い位ですね」ジパン
「夕食と酒の支度を頼む」スタージナス
「ハイ、ジュンビデキテマス」
大広間の真ん中にテーブルが現れ椅子も準備され豪華な料理が並んだ
お酒を酌してまわる万能給仕ロボット「ササドウゾ」愛想がいい
「昼にダニアが申していた通りこの鳥肉は格別じゃ」スタージナス
「お酒もきっと特産の聖水酒にちがいありません、まろやかで風味あって格別です」
ジパン
「こんな贅沢は今日までにするぞ、ダニアに脳を溶かされて骨抜きにされたら
たまったものではない」スタージナス
「は、」ヤコブ
9時頃まで酒を酌み交わしほろ酔いで宴を終える
「さ、明日もはやい寝るぞ」スタージナス
各人自分で設計した部屋に入る
「な、なんとお主もワシツか!」スタージナスがジパンに問う
「あれ~スタージナス様も、というか皆ワシツをチョイスしてますね」ジパン
「ワシツが一番落ち着くのじゃ、マハッタンの我が家も同じだ」スタージナス
「なんと、わたしの家も同じ・・・」ジパン
「ずっと前にヨハンとワシツを賭けて大人げなく戦ったものよ・・」スタージナス
「ヨハンとエメルはご結婚されて今は幸せと聞いてます」ジパン
「2人の剣舞は妖艶でそれはそれはエロかったぞ」スタージナス
「実は私もレンガポールでお二人の演技拝見しました。凄かったですね」ジパン
「さ、寝よう」スタージナス
翌日7時に大広間に全員集合すると
「おはようございまーす」
「ぬぬ、その声はイーシャ、・・いつたいどこまで学習してるのだこのロボット」
恐ろしいロボット達、声色まで研究してきてる
「しかもこの朝食はイーシャの味・・・うぬぬぬ」言葉が出てこないスタージナス
「いくらなんでもこれはやりすぎ、過ぎたる接待は逆に不快じゃ」スタージナス
「だからどこまで行ってもダニアは科学者なんですよ、人の心の神髄は理解出来ません
でも心からスタージナス様を思ってるのは疑いよう無いと思います」ジパン
「うむ、お主にそんな正論を言われるとは思ってもなかったがな」スタージナス
「はい、ジパンは成長してます」威張るジパン
「スタージナス様お気に召しませんでしたか?」ロボットが質問する
「気に入らないというか不快だな」スタージナス
「申し訳ありません私達ロボットが勝手に気を遣ってしまいました」ロボットA
「な、なに?其方達が勝手に気を遣ったのか?」スタージナス
「はい、私達を少しでも可愛がってもらおうと相談して決めたのですが・・」ロボB
「気を遣ってくれるのは分かったが人間の大事な部分には触れて欲しくない」
「かしこまりました」お辞儀をして声色を変更するロボット達
「これでいががですか?」ロボC
「出来れば全員別の声の方が親しみが増えると思う」ジパン
「はい、変更しました」ロボ達全員で挨拶する
「うむ、日々精進するように」スタージナス
「ははっ」ロボ全員
そしてテキパキ働き出した
「駄目ですなんか健気で涙あふれてきます~」ジパン
「馬鹿者、相手はスパイだと言うことを忘れるな、機嫌を伺うのも忍者の
仕事と自身で知っておろう?」思念通信でジパンに返すスタージナス
「はい、そうでした。油断なりませんね」ジパンも思念通信で返す
実はヤコブも先日晴れて魔力レベル100に達し思念通信が使える
「ヤコブも気を付ける様に」スタージナスが発信する
「は、はい、相手はスパイだと認識してます大丈夫です」ヤコブ
召喚人間の二人はスタージナスが思念で命令すれば命令通りに動く問題無い
「さて、ダニアの話だと今日一日は完全に暇、どうするか?」スタージナス
「ここにじっとしてるのも芸がありませんね」思念ジパン
「うむ、なによりも外で何が行われてるのかここでは一切わからんな」スタージナス
「他のコロニー視察に出かけますか?」思念ヤコブ
「いや、出かけたとしても我々の行く先には監視の目がありなにも見せてくれない
はずじゃ」思念スタージナス
「むうう、ダニアめそれではまるで謀反ではないか」ジパン
「いや、そうではないダニアとブランの夢を達成するためには慎重なのだろう」
スタージナス
「つまり、今の我々は彼らの夢を邪魔する厄介者?」ジパン
「きっと二人にはそう写ってるのだろう、我は味方なのだがな・・・」
悲しむスタージナス
「思念ですから本音を言わせてもらいますが、確かに最近は二人に風当たりが強く
どれほど国益をあげても二人に還元してない風に感じてました」ジパン
「うむ、それは我も痛感してる。なんとか二人をサポートしてあげたいのだが
我は民間人とはいえ大王やウラアールに敵対する訳にはいかない。つらい所じゃ」
スタージナス
「ならば今回の視察も我らの判断でお目こぼしするのも国益かもしれませんね」
ジパン
「うむ、其方は昼行灯ではないと常日頃思っていたが本音を聞くと益々切れ者だと
感じる」スタージナス
「な、なにを仰いますか私は道化者、皆様のペットでいいのですそれが本望です」
ジパン
「うむ、わかってる、頼むぞ」スタージナス
「監視付きだとしてもやはりお役目上外の視察も必要だな、そうしよう」
スタージナス
「よし、今日は皆で外を見学しよう」スタージナスが皆に伝える
「それではそのように手配致します」ロボットA
自然にロボットAがリーダー格になったようだ。学習AIこわひ
「はい、アナハイム社と連絡が付きました30分後に広報担当が迎えにくるそうです」
ロボA
「しかし、其方達は話すほどにどんどん発音が流暢になっていくな」スタージナス
「はい、皆様の音声を逐一解析して研究してます。」ロボB
「僭越ではございますがこれからは外出時も皆様をサポートさせていただきます」
ロボ一同頭を深々と下げる、ちなみにロボットは10台稼働し接客するのは5台の
ようだ、残りの5台は接客も出来るようだがあえて控えているのだろう。
「うむ、頼りにしている」あえて断らないスタージナス
「おはようございます」広報官が到着した
「うむ、今日は外にでてコロニーの準備状況を視察させてもらうよろしく頼む」
「はは、それではこれより港にむかい最新鋭の宇宙戦艦に搭乗頂き準備状況を
皆さんで視察しましょう。私は広報担当のマイヤーでございます」
「伺うが、其方は人間か?アンドロイドか?」スタージナス
「いえ、ロベルト様から生まれたクローンでございます」マイヤー
「悪かった、気にしないでくれ生い立ちなどは関係無い」スタージナス
「いえ、お話させてください、私はクローンとして生まれ大王の慈悲により
この命を救われたのです、幸運に恵まれアナハイムに入社できダニア様の御慈悲で
この職に就くことが出来ました。全てはスタージナスさまのお陰」マイヤー
「それは買いかぶり、我は何もしていない」スタージナス
「は、ありがたき幸せ。今日は皆様のご案内をさせて頂く任務をいただき
天にも昇る気持ちでございます。本当にありがとうございます」マイヤー
「きっと想像もつかない激戦を勝ち抜き今の位置を得たのだろう、苦労が忍ばれる
とともにこの者もたぐいまれなる才能の持ち主なのだろう、人材発掘力において
ダニアはアスタージナスに次ぐ才脳の持ち主なのは間違いない」スタージナス直感
「あ、話が長くなりましたそれでは出発しましょう」マイヤー
魔超伝導リニアに乗り込み2分一行は宇宙港に到着
「こっこれが最新鋭の宇宙戦艦?」見上げるスタージナス
「なんだこれは、何にもついてないしツルッツル???」ジパン
「はい、余計な突起物は一切ありません、さ乗りましょう」マイヤー
乗り込む一同
「中は意外と密集してるな」スタージナス
「はい、あくまでも戦艦ですから居住性は良好とは言えません」マイヤー
とにかく見た事も無い計器類と見渡す限りのモニター類通路は人がすれ違うのが
やっとの状態、正に軍艦そのもの
「さ、司令室をご案内します」マイヤー
さすがに司令室は広く作られている
「今回の本艦はまだコクレンに受け渡し前なので正式には軍艦登録されてません
防衛目的以外では火力一切使用禁止状態、あちこちに封印テープが貼られています
ご了承ください」マイヤー
「うむ、つまりこの戦艦自体も我の視察対象なのだな」スタージナス
「御意」マイヤー
「ということですから乗員も全て社員。大部分はロボットです」マイヤー
「つまりドローンとほとんど変わらないという事だな」スタージナス
「はい、どのような危険な任務にも堪えられます」マイヤー
「出航します」マイヤー
「ふ、今回も全く動いてる感覚がないな、重力スタビライザーはすごいな」ジパン
「しかし、外を見る窓が一つも無く全てがモニター画面越しでは自宅でテレビ
見てるのと同じじゃな、いくらでも情報操作可能じゃ」スタージナス
「ははは、そんな事・・」焦るマイヤー図星つかれたのだろう
「いいぞ、都合の良い部分だけでも」達観してるスタージナス
「は、誠に申し訳ありません、私はアナハイムの人間・・・社命が全てで」
すでに断腸の思いのマイヤー、きっと辛いのだろう
「よい、其方の立場は分かってる」スタージナス
当たり障りのない実検コロニーの準備状況をモニター越しに視察し状況説明を
マイヤーから受ける
「明後日には一号機が実検を開始する予定です、念の為我々は30億Km程
避難します、前回の様な爆発事故時に被害を受けない措置です」
「うむ、今回の実検は届け出を受けてるので問題無い」スタージナス
「新素材のテストか?」ジパン
「は、詳しい事はまだ申し上げられませんが、実検データーは全てコクレンに
提出します」マイヤー
「新布団魔法との複合だな」ぼそっとスタージナス
「え?」汗が噴き出るマイヤー
「いや、なんでもない独り言じゃ聞き流せ」スタージナス
すでにタランとヘッテからの思念通信である程度の情報は掴んでいる
ちらっと言うことでマイヤーの顔色を伺って見たのだ
「それはともかく、この新戦艦の性能も視察する、火力を見せなさい」
スタージナス
「しかし、それは今回の視察内容に含まれてないので想定外です」マイヤー
「マイヤーと申したな?我は全権大使でもある、国の名代なのだ命令権もあるぞ」
威嚇するスタージナス
「ははい、それでは社に聞いてみます」マイヤー
「うむ、それでよい」スタージナス
「はい、今社から連絡来ました、全てスタージナス様の命令通りにとのこと」
「よい心がけじゃ」満悦のスタージナス
「それでは、空砲ではございますが主砲の発射から」マイヤー
「船体の外側に高密度のコイルが巻かれていまして前方と後方に主砲が撃てます」
「うむ、推進器を兼ねたコイル砲だな」スタージナス
「発射」射撃手が発射ボタンを押す
「ズン」ほんの少し船体が衝撃を受ける
「で、実包の場合の威力はどのくらいじゃ?」スタージナス
「は、それは自由自在です電磁パルス砲ならば被害を与えずに敵船を拿捕出来ます
最大出力にすればコロニーを吹き飛ばせます」
「恐ろしい破壊力だな」スタージナス
「絶対に発砲する事態は防ぐべきでしょう、抜かずの剣であるべきです」マイヤー
「その他の武器は?」スタージナス
「は、通常型のミサイル関係は全て搭載可能です」マイヤー
「側面防衛、攻撃には小型コイル砲40門が左右に取り付けられています」
「うむ、戦艦として申し分ない火力だな」スタージナス
「戦闘機にも乗ってみますか?」マイヤー
「うむ、せっかくここまで来たのだ乗ってみる」スタージナス
「は、今回は多目的機20人乗りにご搭乗いただきましょう」マイヤー
勿論味も素っ気もないのっぺらぼう
「おお、これはまるで輸送機そのものじゃな」スタージナス
「内部の状態はオスプレーそっくりですね」ジパン
しかし相変わらず揺れないし外を見るのはモニター越し
「まるっきり乗ってるきがしない、サイド7のおもちゃシュミレーターの
方がよほどリアルだ」ジパン
「あれは子供だましのおもちゃ、本物は兵士の負担があってはならないのです」
マイヤー
「つまり、撃墜されて初めて実感するんだろうな」ヤコブ
「絶対に撃墜されません」キッパリいいきるマイヤー
「うむ、わかった、そろそろ戻ろう」スタージナス
「大王が言っていたとおりこれではロマンもなにもない実用第一の
味も素っ気も無い魂もない気がしてならん、つまりつまらん」スタージナス
「しかし、兵士の安全が第一それ以外にありません」マイヤー
「うむ、それは当然だがシロウトにはうけない」苦笑いのスタージナス
「さ、船にもどり昼食にしましょう」マイヤー
一同は食堂に案内される
「ここは食堂兼ブリーフィングルームです」
大型のモニターが壁面天井一杯に張り巡らされている
「見せたくない画面は停止中じゃな」皮肉交じりのスタージナス
「いえいえ、そ、そんな事はないんですが」しどろもどろのマイヤー
「1540の231発動」館内アナウンス
「これは聞かせたくない情報の暗号化だな」アスタージナス
「いえいえ、そ、そんなことは決して」もごもごマイヤー
「ここのレーションはまともじゃな?」スタージナス
「はい、艦隊任務は長期が多いですからその配慮です」マイヤー
「確かに陸軍のレーションは酷いからなぁ」経験済みのジパン
「兵舎もご案内します」マイヤー
3段ベットが並ぶ一般兵のベット
「こちらが下士官用です」2段ベットでいくらか広い
「こちらが幹部、および艦長室です、今は空き部屋ですが」マイヤー
「うむ全てが簡素で実用的合理的に出来てるな」スタージナス
「実際は搭乗員なしでも運用出来ます」マイヤー
「こちらが機関室です、エンジン部は秘密につき見せられません」マイヤー
「うむ、大体はブランからの設計図を見てるので理解してる」スタージナス
「まあ、ほとんど潜水艦と構造的には同じじゃな」スタージナス
「実際潜水艦がもっとも近いですね」マイヤー
「話は変わるがブランの準備状況はどうなのだ?」スタージナス
「は、予定通りです」マイヤー
「と言う事は我らは今日一杯は暇なんじゃな?」スタージナス
「はい、午後はどうされますか?」マイヤー
「いや、今日はこの船に泊まる、我は艦長室に泊まるぞ皆は好きなところに
泊まるがいい」スタージナス
「ははっ」一同従うしかない
「本艦を操縦してみますか?」マイヤー
「いや、つまらなそうだから止めておく、どうせ自動操縦だろ?」スタージナス
「いえ、そ、そんなことはけっしてないのですが・・」マイヤー
「我は日記を付けるから夕食まで艦長室にこもるぞ」さっさと部屋にこもる
スタージナス
「皆今日はこれまであとは自由時間にしていい」スタージナス
ジパン以下全員それぞれの幹部室にこもる、スタージナスの意をくんでいる
「我は今からステルスゴーストで艦内を偵察する、皆はそれぞれ出来る事を
して欲しい」思念通信で皆に指示するスタージナス
部屋に引きこもった皆を見届けマイヤーはほっとする「やれやれ」
モニター画面を切り替えて実際の船外の風景を映し出す
こそっとスタージナスのゴーストがマイヤーの後ろに立ってるのには一切
気がついていない
「ダニア様ご命令通り皆様の接待つつがなく進行しています」マイヤー
ダニアに経過を報告してる様だ
「うむ、今日は船内に一泊するとは想定外だったがやむを得ないだろう」ダニア
「して、この後はどういたしましょう」マイヤー
「うむ、本当に心苦しくて一歩間違えると反逆行為と受け取られてもしかたない
実検をこれから行う、だが決して国益以外はない、だが今の国には我々の先進すぎる
行為を理解していただけるとは考えられない・・・まあ最悪我が処分を受ければ
済む事、とっくに命などは捨ててる」ダニア
「で、ブラン様はいまどちらに?」マイヤー
「うむ、すでにここから1000億Km先に移動済そこで新実検を行う」
「しかし、そこは大王の許可域から遠く外れていますね」マイヤー
「それ程危険度が高いのだ、今のコクレンでは絶対に許可を受けられない」ダニア
「やはりここでの実検はイミテーションだったか、タランの報告通りじゃ」
スタージナスは理解した
「しかも我らをここに釘付けして時間稼ぎ、茶番すぎるわな」スタージナス
「実際の予算はコクレンに申請した額の4倍以上、アナハイム社の存亡に関わる額」
ダニア
「は、我ら全社員ブラン様に賭けています、悲願です」マイヤー
「やはり先ほどの1540の231、つまり午後3時40分に2度目の実検を
プラン3で1000億Km先で予定通りという艦内放送だったのだ」スタージナス
すでにスタージナスは231実検の意味をタランから受け取っている
実は前回の実検失敗の報告書もタランから受け取っている
前回の失敗の第一原因「予想を超えた魔核臨界連鎖の暴走・・・」
つまり大王が一番忌み嫌う「核」なのだ
「こんな報告書を大王に見せたら恒星間移動計画などは根本から中止だろう」
スタージナスはブランによる未曾有の危険性と有用性を理解してる
「前回の実検で実検体が時空を越えて消滅しなかったら放射熱は1兆倍
木星と火星は危なかったかもしれない、4億の民の生命が危険だったのだ」
「いや、それどころではない、木星と火星が消滅したら地球への影響も計り知れない
太陽系全てが全滅だったのかもしれない」スタージナスは恐怖する。
「本来ならばダニア、ブランを拘束、アナハイム社解体が筋なのかもしれん」
葛藤するスタージナス
「しかし、この局面をもし越えられたら人類の発展は飛躍的になる」
スタージナス自身もおのれの命を賭けてでもブランに協力したいと思ってる
231実検の意味するプラン3・・・・・・
ブラン自身が実検体に乗り込んでの人体実験を意味する。
つまり失敗即自身で責任を取るという意味、ブランも決死の覚悟
「退路を断ち、背水の陣亀割勝家の心境だな・・・正に科学バカ」
「つまり、前回の失敗は10mの魔石を1kmの結界魔法で囲ったのですが
内部を№36聖水で満たした為に予想を遙かに超えた臨界が発生し
聖水まで臨界連鎖状態に陥り計画出力の数兆倍のエネルギーになってしまい
最終的に結界魔法まで臨界を起こしてしまったのが真相ですね」思念通信のジパン
「うむ、この極秘報告書によると実検体は1000光年先まで飛んでいった
可能性を示唆してる、勿論実証不可能だが」思念スタージナス
「も、もしそれを人類が制御可能になったら数㎝の魔石ですら太陽系内、
数十㎝の魔石で隣の星まで移動可能になりますね」思念ジパン
「うむ、だから今回の実検で1000億Kmからここまで移動するつもりなのだろう
約1/100光年、一つの目安だろう」スタージナス
「成功したらコスト減途方もないですね」ジパン
「いや、それはどうだろう魔石は小さく出来ても安全装置関係で費用がかさむはず」
冷静に判断するスタージナス
「あと2分ですね」思念ヤコブ
「うむ」
「実検開始まであと1分、30秒、10、5、3、2、1」
「目の前にブラン機現れました、損傷ありません実検成功です」伝令
「おおおおっやった」マイヤーが泣き崩れる
「あれ、後ろに何かいる?」うっかりゴーストスタージナスが触れてしまった
しかしすぐに後ろに下がったので大丈夫だろう
「気のせいか・・・ま、いーや」落ち着くマイヤー
「まったく馬鹿な事をしおって・・・」スタージナスも感動してる
そおっと部屋に戻るゴースト
「と言う訳で実検は成功したようじゃ皆安心せい」思念でジパンとヤコブに送る
「マイヤーは明日どんな顔して我々に報告するか見物ですね」思念ジパン
「いや、実検などはしていないぞ、明日はブランが当たり障りのない
申請通りの実検をして見せてくれて成功に歓喜して感動して終わりじゃよ」
スタージナス
「茶番に付き合うわけですね」ジパン
「政治はつらいのじゃ、腹芸も時には必要、大王達を納得させる方便じゃ」
スタージナス
いろいろ理解をしてくれるスタージナス




