回想編 無能
不安そうにこちらを見たシールに俺は満面の笑みでこう伝えた。
「すごい才能じゃんか!」
「そうなのかな? そうだよね!」
「ああ!」
「ふふ、でも私がこんなに凄かったら、ライルは一体何になっちゃうんだろうね?」
俺と話してようやくいつもの調子を取り戻したシール。
「すぐにでも王国騎士団や王都の学園から声がかかります! どうするかは慎重に判断してください」
「わかりました。でも私は多分、ライルと一緒に冒険者をやります!」
「そうですか……それも良いと思います。シールさんのご活躍はきっと、神も楽しみになされてますよ」
「えへへ」
150年ぶりの【剣聖】。
その結果に沸いたのは本人よりもむしろ街の大人たちだった。
「すげえぞ! あのシールが剣聖だ!」
「いやまあライルのやつにずっとくっついてたんだ。実際もう、大人でも剣の腕じゃ敵わねえって話だったぞ」
「じゃあライルは何になっちまうんだ!?」
「剣聖より上ならもう、剣神とかか?!」
「勇者かも知れねえぞ!」
「何にせよ楽しみなやつだ!!!」
大人たちの期待の声はしっかり耳に届いていた。
この時の俺にとってはこの声も心地良い声援だった。
そして俺の番。
「貴方が噂のライルさんですね。私も楽しみです」
「ありがとうございます」
俺に特別な何かが得られることは、この時点で誰もが確信をしていた。
誰もがその瞬間を楽しみに待っていた。
だが……
「まさか……」
「何かありましたか?」
信じられないものを見た目をする神官に呼びかける。だがその目は、明らかにシールの時と違って、ネガティブな想像を掻き立てるのに十分な表情だった。
そしてその想像は残念なことに、的中した。
「その……申し上げにくいのですが……貴方の天職もスキルも、どうやっても見つけられないんです」
「は?」
天職なし。
スキルなし。
これではどの分野に進んでも、その道での活躍は難しいという宣言だった。
「ですが……すでにドラゴンがこれだけなついていらっしゃるので……」
「なら見つからないだけで……!」
「ええ……可能性があるとすれば……」
その言葉最後の希望のようだった。
だがすがったその言葉さえ、最終的に俺を打ちのめすものになってしまった。
「テイマー……非戦闘系の職業ですが、今のご様子ならご活躍の可能性も……」
「テイマー」
神官のいう活躍というのは多分、騎士団の馬や竜の世話をするくらいの話だろうか。
だってテイマーが過去、英雄のような活躍した事例なんてない。
飼育係の別名。雑用係以上の意味で使われることのないもの。
だからこそこの適職診断にすら名前が出ないものだった。
時系列がめちゃくちゃわかりにくいので補足します
1話 現在→回想
2話 1話の回想シーンよりさらに以前
3話 2話と同じ
4話 1話の回想シーンに戻る
8話くらい? 現在にもどる予定
です
よろしくおねがいします!
本番は現在に戻ってからですがよろしくおねがいします