オークキング
「百以上のオーク、か」
「はい。最悪の場合を想定して動くべきでしょう」
メルトの言う最悪の場合とは、オークたちが進化することを指していた。
「ハイオーク程度ならいいんです。本体が強くなるだけですし、私とライルさんなら問題なく倒せるでしょうから」
ハイオークはオークの上位種。Cランク相当と言われており、冒険者以外が出逢えば死ぬ相手だ。
だがまぁ確かにメルトの言う通り、Bランク相当の二人にとって問題ではない相手ではあった。
「問題は、オークキングです」
「オークキング……か」
「まず単体で、今の私では、いえおそらくライルさんも、勝てる相手ではありません」
つまり、Aランク相当の相手というわけだ。
「そして何より、オークキングが出現すれば、周囲のオークは集団化します」
これがオークキングが恐れられる最大の理由だった。
本来出てきても五体のオークが、百の単位で集団戦闘を行うのだ。一度オークキングが生まれれば、村が複数滅んだ後、街に被害をもたらした辺りで倒せる冒険者や騎士団が到着することが多い。
天災と恐れられる魔物の一つだった。
◇
「ライルさん」
「わかってる」
ここでやるしかないということだ。
「くそ……てめえらが来て最悪のことが……」
「俺たちが来てよかったと思ってもらえるように頑張るよ」
それだけ言って俺はオークの群れに飛び込んでいく。
「なっ!? ばか! 死ぬ気か!?」
もちろん死ぬ気はない。
だがあの数に先に仕掛けられてしまえば、それこそ村は一巻の終わりだ。
「ライルさん! オークキングは向かって左手です! 右からせめて下さい!」
「わかった!」
場数を踏んだメルトの助言はおそらく正しい。
助言通り集団の右側へ向けて走り込む。まず一匹。
──オークのネクロマンスに成功しました
──魂吸収によりオークのステータスを反映しました
──スキル【暴食】を獲得しました
「ハズレか……」
【暴食】はただ食える量が増えるだけのスキルだ。
「次!」
──オークのネクロマンスに成功しました
──魂吸収によりオークのステータスを反映しました
──スキル【打撃強化】を獲得しました。ステータスへ反映します
「悪くはないけど次!」
──オークのネクロマンスに成功しました
「すげえ……」
「これが冒険者……」
「【剣聖】もすごかったがこれは……」
次々オークたちを倒していく。
剣術のレベルが23まで上がっているのでオーク相手でもサクサクと切り伏せられるのが良い。
とはいえ数が多い。そして防御力も高いし、一撃でも喰らえばたちまち相手になぶり殺される。
こちらの攻撃は溜めを作って一撃必殺を叩き込む必要があるため、それなりに時間を要する。
倒した数が十体に迫ろうかというタイミング、ようやく狙っていたスキルを手に入れた。
「よし! きた!」
──オークのネクロマンスに成功しました
──魂吸収によりオークのステータスを反映しました
──スキル【夜行行動】を獲得しました
「おお! こんなに違うのか」
途端に景色が鮮明に映る。
と、同時に、敵の全貌が明らかになり背筋が凍った。
「これ……百じゃ絶対済まないぞ……!?」
できる限り数を倒すことに集中する。
集中が切れれば死ぬ。
──オークのネクロマンスに成功しました
──オークのネクロマンスに成功しました
──オークのネクロマンスに成功しました
闇雲に、だが確実に囲まれないように注意しながら、周囲のオークを殲滅していった。




