対応
「よくぞ参られた……と言いたいところですが……見ての通り、状況が状況でございます」
村長の老人は険しい顔だった。
「わかっています。現状、異常発生しているオークを私たちである程度の数まで撃退します」
「我らの村の周囲、もはや異常に増えたオークの数は百はくだりません。失礼ではありますが、たったお二人でどうこう出来るとは……」
まあ、普通はそう思うよな。
だがこの点については一発で信頼が得られる便利なものをメルトが持っている。
「これを……」
「こ、これは……! まさか銀級の……」
村長が驚愕する。
それほどまでにBランクの冒険者というのは珍しい存在だった。
「ちっ……兄とおんなじバケモンかよ……」
「こら、やめんかアヴェル」
最初に俺たちに絡んできた男はアヴェルというらしい。
恨まれたものだな。勇者も。
今回は俺と同じく勇者を恨むものが見られたという発見と、原因となった話にシールも絡んでいることから複雑な感覚だった。ただまだまだ他人事のようにこの状況を眺めていられる部分があって楽だったが、メルトはそうではないだろう……。
余計にヴィルトに対する怒りが増すな。
「銀級の冒険者となれば心強い限りです。ぜひ村を襲うオークを……と言いたいところですが、これは依頼にはできません。我々にその金を払う余裕などもう……」
「わかっています。怪我人の治癒も行いましょう」
「ありがとうございます」
そう言って頭を下げる村長だったが、メルトを前に複雑な表情は崩さなかった。
◇
「いつもこんなことしてんのか?」
「はい。この顔で活動していればやはり皆さん、すぐに気づきますので」
男女の差はあれど二人とも整った顔立ちをしているせいでわかりやすく似通っているわけだ。
「わざわざ勇者を知ってる奴らのところを回らなければ……」
「そうですね……」
メルトは弱々しく笑うだけだ。
そのつもりはないんだろうな……。
まあ俺も、勇者へ固執しなければこの能力を使って自由気ままに生きることだってできる。だというのにこうしているわけだからまぁ、人のことは言えないわけだ。
「まあ、仕方ないか」
今日も結局、村の中で寝泊まりすることは歓迎されない状況だった。
結果、あの壊れた家屋が立ち並ぶ元村の入口で野宿をしている。
今は二人、火の番をしながら村から出されたわずかな食事をとっているところだった。
「村長も複雑だろうな……」
「そうですね。こうして食事をもらえただけありがたいと思いましょう」
どのみちオークの活動時間は夜。
普段は動きの鈍い昼にこちらから探して仕掛けるが、この場所がすでに相手にとって狩場となっている以上、ゆっくり眠る余裕などないだろう。




