目的
俺が一旦怒りを鎮めたのを見て、メルトがほっと息をつく。
ポツポツと話を始めた。
「私の目的は、兄を止めることです」
「止める……?」
「はい。ライルさんに兄が何をしたかも、聞いています」
真っ直ぐとこちらを見て話すメルトにはある種の覚悟のようなものが読み取れた。
「兄は、変わりました。勇者になってから、それまでの優しかった兄なんて幻想だったんじゃないかと思うほど」
あれが優しかったなんて、冗談でも思えない。想像もできないし、したくない話だった。
「国内では最強の勇者の称号を受け、どこに行っても英雄として歓迎され、ときに畏れられる存在ですが、そのやり方の強引さに不満を覚える人もやはり、います。それこそライルさんのように……」
「まぁ、そうだろうな」
俺への態度を見ていればあれが初めてでないことなんて簡単にわかる。
普段から、強引で、自分以外の相手のことは考えていない。そんな様子が容易に想像できていた。
「ライルさんならわかると思いますが……兄のやり方は地域によっては受け入れがたい被害をもたらしており、一部では国内最強というだけの勇者の肩書で好き勝手暴れる厄介者としての要素が大きくなっている程です」
「そこまでなのか……」
あれを嫌う人間がいることまでは想定していたが、一部がそこまで過激に嫌うことは意外だった。
勇者というのは人々のために尽くし、人々に感謝される仕事、ということになっている。そして実際勇者のおかげで守られた街も多く、その人智を超えた力を十分、国のために使っていることは知っている。
俺のときも、俺以外にはわからないようにあれをやっているくらいだ。評価を下げることが多いようには思えない。
「私は、兄を止めます」
メルトの目を見て一つの可能性が思い浮かんだ。
おそらくメルトはこれまで、兄ヴィルトの尻拭いを続けてきたのではないかと。
勇者の力は大きいが、救えない命ももちろんある。
百を救うために一を切り捨てることだってあるだろう。
そんな切り捨てられた一を、メルトは救い続けてきたのではないか。その切り捨てられた一の視点から兄を、勇者ヴィルトを見ることがおおくなったのではないか。
その結果いまのメルトには、兄ではなく勇者ヴィルトの持つ負の部分が大きく、色濃く映っているのではないだろうか。
その証拠に、俺に声をかけてきている。
「俺に声をかけたってことは……」
「はい。殺してでも、止めます」
「なるほど」
覚悟はあるということか……。
もしかすると兄のためというか、家族のためのような話になるかもしれない。
確かに各地で俺のような被害者が出ているということであれば身内が止めようとするのも理解できる話ではある。
とにかく目指す場所が同じだというのは良い。知ってる情報も俺より多いはずだ。
警戒は必要かもしれないが、利用できるものは何でも使うべきた。
「わかった」
「ありがとうございます!」
こうして俺は正式に、メルトとパーティーを組むことになった。
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Sランクパーティーのお荷物テイマー、使い魔を殺されて真の力に目覚める 〜追放されたテイマーは実は世界唯一のネクロマンサーでした。ありあまるその力で自由を謳歌していたらいつの間にか最強に〜