決着
「おい。死ぬぞあいつ!?」
「ビビって動けなくなったんじゃねえのか?!」
動かない俺を見て勘違いした声が上がる。
動かなかったのは単純に、力比べでどうなるか見てみようと思っただけだ。
ダッドの巨体がようやく目前に迫り、剣を振り下ろした。
──ガキン
「なっ!?」
「馬鹿な!? ダッドの野郎手抜いたのか?!」
「いや、あれは殺す気の一撃だったぞ」
ダッドの大振りの剣を頭上で受け止める。
「てめえ……何しやがった……」
「何もしてない」
剣を弾き返す。
「ちっ……このやろ……」
思わぬ抵抗に対応しきれないダッドがバランスを崩してたたらを踏む。
その隙に、ダッドの胴体めがけて横薙ぎに剣撃を浴びせた。
「ぐはっ!?」
さすがはCランクというだけあり一応は受け止めたが、その威力までは殺しきれず吹き飛んでいった。
「嘘だろ……?!」
「いや待て……聞いたことあんだろ?」
「あ? 何をだ?」
「ライルは本当の力を隠してるだけだって噂だよ!」
そんな噂になってたのか……?
「【剣聖】シールの基礎を培い、天才神童とうたわれながらペットショップなんて道楽でやってたのも、いつでもこうやって稼げるようになるからだとか……」
それについてはシールのおかげでギリギリ経営できてただけで実態は本当に死にかけるレベルの金の無さだったけどな……。
「じゃあ【剣聖】レベルってことなのか!?」
「なんでも噂じゃ勇者がひと睨みでたじろいだらしいぞ」
「なんだそれ! すげえじゃねえか!」
あらぬ誤解が生まれていた。
「とにかくすげえぞ!」
「おい審判よぉ、てめえ随分ダッドと仲良かったみてえだけど、この状況なんだ、もう決着はついてんだろ」
「しょ、勝者ライル!」
わあっと歓声に包まれる。
なぜかギャラリーをしていた冒険者たちに気に入られてしまったようだった。
◇
「大変失礼いたしました……これでパーティー申請は完了です。それから、オークの依頼はもちろん、規定通りCランク向けの依頼も全てお受けください」
さっきまでの態度はすっかりなりを潜めてヘコヘコと頭を下げる受付の男、ビヨンドがいた。
騒ぎを聞きつけた他の職員に事情を聞かれ、今はもう横で完全に見張られているため何もできない。
「先ほどはこの者が大変失礼いたしました」
「いえいえ……」
ギルド、しっかりしてるんだな。
ちなみに次の日ミレイさんに死ぬほど怒られた彼は別の場所に飛ばされたらしい。
さよならビヨンド。おそらくもう会うことはないだろう……。
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