パーティー
「ダメなものはダメですねぇ、ライルさん」
次の日、作戦通り毎日狩れる相手を選んで申請を出しに来たんだが、この日はミレイさんがいなかったため別の男が担当になっていた。
ビヨンドという名前の受付だが、喋り方からしてもうなんというか、性格が悪い。
「え、でもこれDランク向けだよな?」
ギルドの規定で前後一つのランクまでは依頼を受けることができるはずだ。
「Dランク向けは十分に人が死ぬ依頼なのです。一人でオーク5体なんて、Eランクなりたてのひよっこ、しかもテイマーの貴方に出来るはずがないではないですか」
完全にテイマーを馬鹿にしているが、まあこれはどこもそうだから仕方ないと言えば仕方ない……。
俺自身テイマーだったから冒険者の道を諦めたくらいだからな……。テイマーは雑用係。これが常識だ。
考え事をしていると後ろから冒険者が話に割り込んできた。
「おいおい新人よぉ。あんま受付を困らせちゃいけねえなあ」
「これはこれはダッド殿。順調ですかな?」
「まあな」
「ほらほらライルさん、Cランク冒険者のダッドさんですよ。貴方のようなテイマーでは難しいでしょうが、これが頼れる冒険者というものです」
「はぁ……」
ダッドと呼ばれた冒険者は、鍛えている割に横に大柄なおっさんだった。
それもまあ、筋肉だと思えばそれなりの力になるんだろうけど、【ネクロマンス】で百以上の魔物の力を取り込んでいる俺からするとあまり強そうに見えなかった。
やっぱりBランク相当の力が身についてきたという感覚は正しかったかもしれない。
「新人は無茶しがちだが、ましてやお前さんはテイマーなんだろう? 大人しく言うことを聞いとけ」
面倒だな……。
そしてその気持ちだけ、受付のビヨンドも同じだったらしい。別の提案をしてきた。
「はぁ……もしどうしてもと言うなら、パーティーでも組めばどうですか?」
「パーティー?」
そういえばソロでやる必要もないのか。
報酬よりもランク上げをしたいことを考えればありかもしれないが……。
「おいおい。俺はこんな小僧のお守りはしねえぞ?」
こっちから願い下げだがダッドという冒険者になぜか断られていた。
「ははは。もちろんCランクのダッドさんと組ませたりしませんよ。それで、パーティーであれば受けても良いですがどうされますかな?」
「んー……」
どうかと言われれば正直気乗りしないというのが正直なところだ。
どう考えても同じランク帯で組んでもメリットがない……なんならシールの教えてくれたルートを勝手に広めるのも気が引けることを考えれば、安易に組むのはマイナスとも言える。
「例えばですが、そうですねぇ、テイマーですし、前を守ってくれる前衛職の方がいれば遊撃くらいにはなりますでしょう?」
もっとも、それなりに優秀でなければ前衛が攻撃したほうがいいということになりますが。と付け加えてくる嫌味な男だった。
そしてこれにはそれ以上に大きな問題があった。
「そもそもテイマーと組みたい冒険者なんているのか……?」
「それは……」
そう。根本的にここが問題になるため、パーティーを組むまでDランク向けの依頼を止められるとなるとそこで冒険者の活動自体が詰む恐れすらあるのだ。
そういうわけにはいかない。
「がはは。諦めて別の依頼を受けろってこった。テイマーなんだからな」
ダッドはそう言って俺たちの元を離れ、ビヨンドはあからさまにこちらを見下した表情を隠しもせず早くしろと視線で訴えかけてきていた。
ミレイさんがいるときに改めようかと思ったその時、後ろからふと声をかけられた。
「お困りでしたら、私で良ければパーティーを組みませんか?」
声をかけてきたのはフードで顔を隠した魔道士風の少女だった。
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