昇級
とにかくあまり【ネクロマンス】について公にすることは避け、今の俺はネクロマンサーではなくテイマーとして、しかもミレイさんの言ったとおり相棒なしのテイマーとしての活動ということになっている。
とはいえ魔王軍の過去の資料を見る限り、俺の知ってる【ネクロマンス】の使い方ではできないようなことをしている例もいくつも見たからなんとも言えないんだけどな。例えば不死の軍団を操り都市を壊滅させた幹部とか……どうやるのか見当もつかない。
俺が知る【ネクロマンス】は、殺した相手の能力を引き継ぐという能力だけだ。
この辺りも誰かに聞きながらやっていければ良いなとは思うんだけど……。
そんな事を考えているとミレイさんの方で準備が終わったらしく、声をかけられた。
「はい。これが今日の報酬です。あと、いつものありますか?」
「ああ」
ミレイさんの言ういつものというのは俺が持ち込む薬草類や木の実のことだ。
籠から取り出してギルドのカウンターへ並べていく。
一つ一つ受け取ってもらい、再び作業を待つ。顔を上げたミレイさんがぱっと笑顔を浮かべてこう言った。
「おっ! ライルさん! すごいですよ!」
「ん?」
ミレイさんの表情がぱっと明るくなっていた。
「じゃーん! なんとEランクに昇級です! おめでとうございます!」
「おお……ってあれ? 依頼のほうでいったんじゃないのか?」
「ふふーん。ライルさんはどうもランク上げを早めたいみたいだったので、薬草類はしっかりそちらにポイントも加えていたんですよ。どういうわけかライルさんの持ってくる薬草や木の実って抜群に状態もよく、種類も希少なものが混じっているので」
そりゃまあ、【剣聖】直伝のルートだからな。
「担当冒険者さんが昇級していくのは嬉しいですね!」
「ありがとう。ああ、Eランクってことは……」
「そうです! Dランクの依頼までこなせるようになります! というよりいままでFランクなのにEランククエストしか受けていませんでしたからね……」
「あはは」
よし。これでもう少し強い魔物とも戦いやすくなるだろう。
【ネクロマンス】の性質上、より強い魔物を殺せばその分早く成長できる。そのはずだ。
まあ無理に強い相手に挑まなくとも、このスキルの良いところはどんなに弱い魔物を倒してもきっちり強くなるところという話もある。
これまでEランクへ昇給するために倒してきたゴブリンの数は大体百体になると思うが、現状でも十分いろんな力を得ている。
倒したゴブリンが所持していた【スキル】を引き継いできたわけだが、ざっくりとこれまでを振り返る。
今日最後に倒したやつは【投擲】だったが、【剣術】【棒術】【攻撃強化】【防御強化】【視野拡大】など、様々なスキルが手に入っている。後半のものはステータスに組み込まれたようだが。
そして【スキル】は重なってもレベルが上っていってくれるので無駄にならない。
おかげで【投擲】や【棒術】といった多くのゴブリンが取得している【スキル】のレベルはもう30前後まで上がっていた。
【ネクロマンス】以外のことなら聞いてみても良いかも知れない。
細かいことは後で自分でも確認するとして、ミレイさんに質問をぶつけてみた。
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